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[インタビュー]DreamHackの日本上陸で目指すものとは
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印刷2023/03/17 17:00

インタビュー

[インタビュー]DreamHackの日本上陸で目指すものとは

 世界で人気の“複合型エンターテイメントゲーミング・フェス”「DreamHack」が,「DreamHack Japan」として2023年5月13日(土)・14日(日)に幕張メッセで開催される。

 「DreamHack」はLANパーティーとeスポーツをルーツとし,コンテンツと規模を拡大しながら世界中で実施されている,ゲーマーにとってはまさに夢のフェスティバルだ。

 「DreamHack」を訪れて本場のLANパーティーやeスポーツを体験したことでその魅力に取り憑かれ,国内でLANパーティーやeスポーツ活動を行なうようになった業界人も少なくない。

 この「DreamHack」がどのような経緯で日本初上陸を果たすのか,運営委員会はどんな「DreamHack」を作り上げようとしているのか,そしてそれは日本のゲーマーから「DreamHack」として認められるようなものとなるのか。

 今回,実行委員会に独占インタビューする機会を得たので,これらの疑問を率直にぶつけてみた。

画像集 No.001のサムネイル画像 / [インタビュー]DreamHackの日本上陸で目指すものとは

「DreamHack Japan」公式サイト


DreamHackはどのようにして日本に上陸したのか


4Gamer:
 まずは委員会の皆さんの自己紹介と,DreamHack Japanにおける役割について教えていただけますか。

Donovan Auyong氏:(以下,EFG Donovan氏)
 ESL FACEIT Groupでカントリーマネージャーを務めるDonovanと申します。
 2005年にeスポーツを始めて,Counter-StrikeのWorld Cyber Gamesシンガポール予選に出場するなどしました。その後はエンターテイメントを広げる側に回り,2006年からイベント・展示会・コンサート・韓流・J-POPなどに13年間携わってきました。ESL FACEIT Groupに加わりゲーミングの世界に再び足を踏み入れたのが2020年のことです。その後,日本の事業責任者となりました。今回のDreamHack Japanについては,DreamHackのライセンサーでありつつ,委員会の一員として共に作り上げていく立場です。

Donovan Auyong 氏 / ESL FACEIT Group カントリーマネージャージャパン
画像集 No.002のサムネイル画像 / [インタビュー]DreamHackの日本上陸で目指すものとは

野口 勉氏:(以下,SME 野口氏)
 ソニー・ミュージックエンタテインメントで音楽を中心としたコンサートやフェスティバルイベントの企画・制作を行っています。

 DreamHack Japanをソニーミュージックが主催するというところに魅力を感じて,プロジェクトに参加しました。DreamHack Japanではライブなどを担当していきます。

野口 勉氏 / 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント ライブクリエイティブグループ 企画制作部 部長
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辻郷孔凡氏:(以下,SME 辻郷氏)
 ソニー・ミュージックエンタテインメント eスポーツ推進室の辻郷(つじごう)と申します。普段はコンサートのライブストリーミング事業を担当しています。元々,この会社にeスポーツを持ち込みたくて新卒で入社しまして,ここ1年くらいeスポーツに携わっているという形になります。

 学生の頃から「リーグ・オブ・レジェンド」の実況解説や「Hungry Summoners」というeスポーツのサークルをやっていまして,コミュニティ大会をずっとやっておりました。自分のeスポーツに対する知見や想いを込めて,DreamHack Japanに臨ませていただいています。

辻郷孔凡氏 / 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント コーポレートビジネスマーケティンググループ eスポーツ推進室
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青沼弘樹氏:(以下,STARBASE 青沼氏)
 STARBASEの青沼と申します。普段はライブ・イベントなどの制作を生業としています。同時に企業に対してエンタメを利用したマーケティング,コンサルティングプランを提案し制作業務を行っています。このような形でビジネスの領域とエンタメの領域を行き来し,DreamHack Japanでの役割としてはDreamHack Japanのブランディングのローカライズ,それに準じて広告,プロモーションをPRチームと協力しながら動いています。

青沼弘樹氏 / 株式会社 STARBASE HEAD OF CREATIVE CONSULTING DIVISION
画像集 No.005のサムネイル画像 / [インタビュー]DreamHackの日本上陸で目指すものとは

4Gamer:
 まずは,DreamHackが日本に来ることになった経緯についてお聞きできればと思います。いつ頃から,日本でやろうという話が出てきたのでしょうか。

EFG Donovan氏:
 自分がESL FACEIT Groupに加わる前の2019年頃,日本からスウェーデン本国のDreamHackにお越しいただき,日本開催に関するお話をいただきました。コロナ禍となり,しばらく動きがありませんでしたが,2021年に自分が責任者となり日本での開催に関する話が進んでいきました。ESL FACEIT Groupとしても日本でビジネスプランを立ち上げ始めていて,日本で何をやっていくか模索していました。DreamHackが最初の一歩としてベストではないかという判断でした。

4Gamer:
 DreamHackを日本で開催するにあたり,3社体制の委員会となったのはどのような経緯でしょうか?

STARBASE 青沼氏:

 僕はeスポーツには明るくない人間なんですが,Donovanさんとお話しする機会があったときに初めてDreamHackの存在を知りました。それから調べてみるとDreamHackには「BYOC」「EXPO」「Esports」「Music」「Activity」という5つのカテゴリがあること。そして,その5つのカテゴリに日本のイケてるエンタメコンテンツやeスポーツマーケットに存在する数多くのIP,商品を注入することも可能で,すごく日本に合う素晴らしいイベントプラットフォームだなと思ったんです。

 DreamHackを開催できればeスポーツの裾野を広げることにもつながるのではないかと。5つのカテゴリ・マーケットに関わるさまざまな人たちがDreamHackの下でまとまり,交錯することで,よりバリューアップできるのではないかと考えたんです。

 そして,日本で開催するためにはパートナーが必要でした。そこで,eスポーツに長けていてライブ制作もできる人材が揃ったソニー・ミュージックエンタテインメントさんにお声がけして参画していただきました。

4Gamer:
 そういう流れで,ESL FACEIT Group,ソニー・ミュージックエンタテインメント,STARBASEによるDreamHack Japan実行委員会が組成されて,現在開催に向けて準備を進めているということですね。

STARBASE 青沼氏:
 そういうことになります。


日本でも始まるDreamHackに期待すること


4Gamer:
 各社でどのような狙いや期待をDreamHackの日本開催に求めているのか,聞かせていただけますか。

SME 野口氏:
 お話を頂いた時は,日本でもeスポーツのイベントが少しずつ開催されていっている中で,eスポーツという言葉はまだ,コアなファンの言葉として広がっているものだったと思います。僕,ゲームをやらない人間なんで,偉そうに話せることではないですが,eスポーツの存在は知っていて,音楽のコンサートに足を運ぶファンが少しずつ重なっていく可能性が見えるマーケットだなと感じていました。

 eスポーツに集まってきている,若い,エンターテイメントに貪欲な人たちと,音楽シーンをなんとかしてつなぐことができないかと考えていたところに,DreamHack Japan 開催のお話がきまして。内容を聞いたらすばらしいですし,1も2もなく,ほぼ2つ返事でやりましょうと言った記憶があります。

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4Gamer:
 辻郷さんは,SMEのeスポーツ好き若手社員という立場ですよね。日本でDreamHackを開催出来ると聞いた時にどう思われましたか?

SME 辻郷氏:
 eスポーツをやっている身からすれば信じられないような話で,すごく感動しました。
 LANパーティーは日本全国のさまざまな場所で開催されていますが,DreamHackは日本とは違う規模感を持つIPなので,それが日本にやってくると聞いた時に自分たちが運営するという不安と期待が入り交じった感覚になりました。

4Gamer:
 自分がDreamHackを運営出来るなんて,思いもしない展開ですよね。

SME 辻郷氏:
 そうですね。関われるものだとは思っていなかったので,すごくわくわくしています。

STARBASE 青沼氏:
 事業として,これだけバリューのあるイベントですから成功させたいというのがまずありました。
 DreamHack Japanというのは,日本を含む東アジアにおけるDreamHackブランド初の展開で,ESL FACEIT Groupにとっては最初の試金石になりますので,是が非でも成功させたいと思っています。

 DreamHackはワールドワイドに展開しているイベントプラットフォームなので,多くの方々を巻き込みながら,日本の良いコンテンツを注入することで,海外などにも日本のいいIP,コンテンツを出していきたいと思っています。

 企業系のコンテンツなどをDreamHackで展開できるというのはうちの会社としてもメリットですし,海外で日本のエンタメが認められるというのも,日本全体のバリューアップにつながると思っているので,これらを目指してやっていきたいと考えています。

EFG Donovan氏:
 ESL FACEIT Groupとしては,まずこのパートナーシップを実現したいと考えていました。

 ESL FACEIT Groupには「ESL」「FACEIT」「DreamHack」といったブランドがあるのですが,どれもゲームやeスポーツ専門です。私たちが日本でビジネスをしていく上で,いろいろと足りないものがありますが,それを埋めてくれるのが今回のパートナーの皆さんです。

 ソニー・ミュージックエンタテインメントは巨大な音楽・アニメのIPを持っており,ライブを制作することができます。STARBASEは日本のイベントのプロモーションノウハウに長けています。

 ESL FACEIT Groupの目標としては,3社で協力して日本におけるDreamHackビジネスの柱をまず作りたいと考えています。そこから,さまざまな展開を広げていきたい考えです。

4Gamer:
 さまざまな展開というお話が出ましたが,具体的にどのようなものを想定されていますか。ESL Japanとしてeスポーツの大会プラットフォーム展開などがすでに行なわれていますが。

EFG Donovan氏:
 それは,グローバルのESLプラットフォームサービスを使った展開ですね。多くのタイトルで大会を行なったりしています。

 今後展開していきたいと考えているのは,日本のマーケットに向けた,適切な大会・サービス・商品を作り上げることです。そのための第1弾がDreamHack Japanの開催になります。

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4Gamer:
 DreamHack Japanを開催する上で,こんな人たちに楽しんでほしい,届いてほしいというような,ターゲット層の設定はどのように考えているでしょうか。

EFG Donovan氏:
 幅広く多くの方に来ていただきたいですが,2つの大きなグループになると思います。
 30〜40代くらいの「懐かしい」とか「親しみ」を持っていただける方,10〜20代の「流行っている」「格好良い」と思ってもらえるようなグループというイメージです。

 ただDreamHackは,特定のオーディエンスのためのイベントではなく,みんな自由な楽しみ方ができるカーニバルのようなコンセプトのイベントなので,このようなグループを中心にいろいろな方に楽しんでほしいと思っています。

SME 野口氏:
 Donovanがいま言ってくれたターゲットで全く相違はないですが,日本にDreamHackを呼ぶ側の立場としては,そこに「ゲームにのめり込んでいない人」を呼び込みたいと考えています。
 ゲーム人口はすごく多いじゃないですか。その中で,のめりこむほどではないというカジュアルな人,ゲームを見て楽しむマーケットというのが,これからどんどん拡大するだろうなと思っているんです。

 今回のDreamHack Japanはコアなゲーマーだけが楽しめるイベントではなく,カジュアルなゲーマーも楽しめるイベントです。eスポーツを楽しんでいる人に,すばらしい音楽がある事を知ってもらう,逆に音楽のライブに参加している人に,見やすいeスポーツのエキシビションマッチを観戦してもらうということを考えています。両者からの歩み寄りでこのマーケットを大きくしていくことかできたら,というのがDreamHack Japanにおける私たちの狙いです。

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4Gamer:
 eスポーツやLANパーティーはコアゲーマーの楽しみ方だと思うので,音楽などのカルチャーと交わって拡大していくことは個人的にも期待したい点です。

SME 野口氏:
 一つ怖いのはコアゲーマーの方とかDreamHackのことをよく知っている方たちに「こいつら全然違うことやっているな」と思われてしまわないかという点ですね。そこについては,しっかりとやっていきたいと思っています。


日本でどのようなDreamHackを作り上げていくのか


4Gamer:
 DreamHackはスウェーデンが発祥で,いまでは世界中で開催されるようになりました。国によって,展開されるコンテンツに特色が出たりするものなのでしょうか?

EFG Donovan氏:
 ESL FACEIT Groupのポートフォリオにはいろいろなブランドがありますが,DreamHackはその中で最もローカライズしやすいものになっています。DreamHackが強いのは欧米で,eスポーツコンテンツの部分はほぼ同じなのですが,開催エリアによって人気なものが異なります。たとえば,FPSだとヨーロッパではCounter-Strike: Global Offensive,アメリカだとCall of Dutyシリーズが人気で,開催場所に合わせて採用タイトルを調整しています。
 日本もこれからソニー・ミュージックエンタテインメントとSTARBASEの力を借りてローカライズ企画を進めていくことになります。

 他の事例だと,インドはゲームとお笑い芸人のインターネットカルチャーが一緒になっているんですね。実況にお笑い要素を盛り込んだり,キャスターのお笑い番組があったりとか,独自なコンテンツが人気です。スペインでは,キャスターがどれだけ速く実況できるかというのがミームになっていて,ラップバトルのような実況対決をするコンテンツがあります。

 アメリカは日本と近い部分として同人カルチャーが人気で,自分のアートを作ったり,マンガを描いたり。それを紹介するArtist Alleyには大きなスペースを割り当てられるほどです。開催国やエリアに合わせていろいろなカスタマイズが可能なのは,DreamHackの強みだと考えています。

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4Gamer:
 日本はアニメ・コスプレ・VTuber・ストリーマーが強いコンテンツだと思っているのですが,力を入れた展開を期待できそうでしょうか。

SME 野口氏:
 ESL FACEIT Groupから,日本の特徴を出した日本ならではのDreamHackをつくりましょうというリクエストを最初からしていただいていたので,ソニー・ミュージックエンタテインメントとしては力を発揮できそうだと思っています。

 ソニーミュージックグループにはアニプレックスという会社もありまして,日本のアニメのカルチャーをDreamHackにうまく入れていくことで,将来的には「Anime」という一つのカテゴリになるくらいの規模感にしていくことができたら良いなと思っています。

 最初から大々的にやるのはDreamHackの入口として少し違うと思うので,そこはきちんと踏まえながら,今年のDreamHack Japanでもアニメというコンテンツを導入していきます。

 海外でも人気のコスプレは,元々日本の強いコンテンツなので,日本開催ならではのクオリティに期待しています。VTuberやストリーマーなど,他にも日本が強いジャンルのコンテンツを用意して,いろいろな方に楽しんでもらえるようにしていきたいと考えています。

DreamHack Winter 2022でのコスプレイベント
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DreamHackのコアコンセプトを守りつつも,時代に合わせて変化する


4Gamer:
 世界中で開催されるようになったDreamHackですが,これだけは外せないというコアとなるコンセプトはありますか。

EFG Donovan氏:
 1994年にDreamHackが誕生するきっかけとなったLANパーティーというものがあります。DreamHackというとこのLANパーティーの印象が強く,そこがもちろんコアとなる部分です。しかし,いまのゲーミングシーンはどんどん多様化していてパソコンだけでなくさまざまなデバイスでゲームを楽しむことができるようになっています。

 大事なのは「持ち込んで楽しむ」ということなんです。PCを持ってくるBYOC(Bring Your Own Computer)に限らず,好きなデバイスを持ってくるBYOD(Bring Your Own Device)のコンセプトで楽しんでほしいと思います。

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4Gamer:
 DreamHackとしては,コアを外さなければ変化していくことを恐れず新たな展開を次々に行なっていくということで良いでしょうか。

EFG Donovan氏:
 そうですね。DreamHackは,カーニバルとかプラットフォームという存在なんです。マーケットや時代の変化に合わせて,どのようなものにでもなることが可能なイベントです。
 今後は,音楽の側面がすごく強くなるイベントになっていくと考えているので,ソニー・ミュージックエンタテインメントやSTARBASEと組むことでより強化していきます。

 最近の若い世代はゲームをプレイするより,見ている時間の方が長くなっているので,彼らに人気のVTuber,ストリーマー,クリエイター,インフルエンサーたちに実際に会える場所を提供するというようなことも考えています。

4Gamer:
 ソニー・ミュージックエンタテインメントさんと言えば,やはり音楽ということになるのですが,ライブの部分にもこだわっていく形でしょうか。

SME 野口氏:
 音楽フェスのようなイメージの本格的なライブをやりたいと企画しています。
ステージでは,日本の文化を象徴するようなものを取り込んでコラボするようなこともしていきたいなと。

 気にかけているのは,音楽とeスポーツファンそれぞれに「なんだこれ」と思われないようにすることで,お互いのファンが満足していただけるものを目指します。
音楽ライブのチケットを持っている方は,eスポーツやLANパーティーのエリアにも行くことができるので,こんな世界があるんだということを知るきっかけになればと。
 今回は,音楽を楽しみたい,eスポーツを楽しみたいというファン層ごとに会場を分けました。音楽専用エリアを設けるのは,DreamHackでは珍しいケースです。
 今後は,本場のDreamHackのように一つの大きな会場にすべてを集約して,会場にいればどれも楽しむことができるような形態も実現したいと考えています。

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eスポーツをもっと日本に浸透させる必要がある


4Gamer:
 自分はDreamHackのeスポーツを昔から見ているので「Counter-Strike: Global Offensive」「Dota 2」「League of Legends」など,世界的に人気のeスポーツタイトルを採用しているというイメージが強くあります。日本でもこのようなタイトルの大会をぜひ見たいと思っているのですが,今回はどうでしょうか?

EFG Donovan氏:
 DreamHack Japanに持ってくるeスポーツ大会は日本の市場にマッチして,盛り上がるものをと考えています。グローバルで人気のタイトルが各国のDreamHackで採用されていることはわかっていますし,日本で実施することについて調整しているものもありますが,ご存じのように,グローバルタイトルのプロカレンダーとスケジュールを合わせるのはとても難しいことなので,将来も見据えて調整していければと思っています。

SME 辻郷氏:
 自分もビッグタイトルを日本に持ってきたいというのは,気持ちとして強くあります。ただそれ以前に,eスポーツをもっと日本に浸透させる必要があると考えています。あるタイトルが流行しているかしていないかという意見が,半年くらいで変わるような状況でもありますし,まだまだ過渡期なのかなと感じている部分です。

 今回は,世界で主流なものというよりは,日本で流行しているゲームタイトルで,対戦して楽しいと思える競技性のあるものをどんどん採用していきたいと思っています。そうした体験を経て,今後,競技性を楽しいと思えてきた人たちが憧れるような世界的ビッグタイトルとか,国内外のトッププロをいろいろな形で呼ぶことができるようになれば,DreamHack Japanとしては成功なのかなと思っています。

 日本で親しみのあるゲームを展開していくことで,気軽に足を運べるようになるし,訪れた会場の中でより競技性のあるeスポーツにも触れてもらえると思っています。今回はDreamHack Japanならではのコンテンツをお届けしたいので,「ハイレベルな戦い」というeスポーツタイトルの一側面以外も表現していきたいです。その中で,「PC・キーボード・マウス」に限らないタイトルもDreamHackとしてのスタンスを崩さない形でいろいろな所で遊べるようにできたらと考えています。

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4Gamer:
 ソニーミュージックグループは,2007年の日本eスポーツ協会準備委員会のメンバーでした。ソニーグループとしてもeスポーツの大会を開催したり,プラットフォームを買収したりという動きがあります。ソニー系列のグループは,これからもeスポーツに対して取り組んでいくような方向性があるということなのでしょうか?

SME 辻郷氏:
 自分は2019年入社なので当時の話は分からない部分もあるのですが,現在ですと今回のDreamHack Japanもそうですし,ソニーグループ各社が連携したSony Esports ProjectとしてTHE GAMING DAYSなどの企画を立ち上げ,VALORANTやフォートナイトの大会を開催しています。また,PlayStationのPLAY ALIVEという企画にも参画して,Apex Legendsなどの大会も行っています。プラットフォームにとらわれず,さまざまな形でeスポーツイベントの展開を続けています。

 eスポーツに関する取り組みはイベントだけではなく,番組を作ったり,プロゲーマーのときど選手のユニフォームスポンサーとして支援を行なったりしています。VTuberのマネジメントというのもあります。こういったさまざまな形でeスポーツに対するアプローチを続けています。

※インタビュー後,eスポーツタイトルやアーティスト情報の第一弾が発表された


4Gamer:
 Donovanさんにお聞きしたいのですが,日本のeスポーツシーンについて,どのような印象がありますか。

EFG Donovan氏:
 世界から見ると,日本はゲームの聖地なんです。ただ,eスポーツの成長については外から見ると遅い印象がありました。それは,賞金ルールの整備が必要だったり,日本のプレイヤーが好むゲームの種類,チームゲームは昔だとあまり好まれなかったりという部分が要因だったと思います。

 ですが,現在はプロライセンスの仕組や賞金ルールが整備されたり,ゲームの好みもシフトしていて,FPSだとVALORANT,バトロワだとApex Legendsが人気で,日本はこれからeスポーツにおいてかなりのポテンシャルを持っています。

 また,eスポーツ全体を押し上げるようなエコシステムが必要です。これは政府の方針・教育・投資なども含めた話ですね。他の国では政府が支援しているケースもあるのですが,日本はまだという部分でもあり,可能性があると感じています。

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DreamHackのコア,LANパーティーはどうなる?


4Gamer:
 DreamHackのLANパーティーは国内だと最大規模となる500シートを用意しての開催と発表されています。大型LANパーティーを開催している知り合いがいることもあり,運営はなかなか大変なのも知っているのですが,今回のLANパーティー運営にはノウハウをもったパートナーの協力などはあるのでしょうか。

SME 野口氏:
 LANパーティーに限らず,eスポーツの大会やエキシビションの運営,制作を一緒にしていく,十分な経験とスキルを持ったパートナーも想定しています。

SME 辻郷氏:
 私たちは他のLANパーティーイベントについて,競合ではないと思っています。LANパーティーが数ヶ月ごとに行なわれるのが当たり前というような流れにしていきたいと考えているので,LANパーティーの文化を共に広めていきたいですね。自分も,2019年のC4 LANに行って楽しんだ思い出があります。

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4Gamer:
 LANパーティーについて,DreamHack JapanはDay1とDay2のぶっ続け開催なのか知りたいという声をSNSでよく目にしました。コアな人は会場でずっと楽しみたいという事なのだと思いますが,こちらはどうなるでしょうか。

SME 野口氏:
 会場の都合もあり,今回についてはどうしてもオールナイト実施は難しいという状況があります。オールナイトでゲームを楽しむという熱量はものすごいと感じているので,今後の開催では実現できるようにしていきたいという気持ちはあります。

4Gamer:
 LANパーティーはコアなゲーマーの楽しみ方というのもあって,日本でも長年続いていますがなかなか認知されない部分もあります。DreamHackは世界一のLANパーティーですし,DreamHack Japanの注目度も高いので,これをきっかけに多くの人にLANパーティーを知ってもらいたいというような声もあります。LANパーティーを知ってもらうような告知について期待してもよいでしょうか。

STARBASE 青沼氏:
 PRについては検討を進めています。LANパーティーについて,そもそも何をやる場所なのかわからない人がほとんどだと思うので,体験をしてもらうような見せ方というのもありかなと考えています。こういうものがLANパーティーなんですよと。初めての人でも楽しめることを伝えて,そこから積み上げて大きくしていくというのも教育の一つかなと思っています。

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4Gamer:
 コアなゲーマー以外の人が興味を持ったり体験できるような案内や仕組みというのは,とてもありがたいものだと思います。

SME 辻郷氏:
 DreamHack Japanは,ゲームのオフ会カルチャーがポストパンデミックでどうなっていくかという点でも非常に重要だと思っています。コロナ禍ではオンラインで全国にたくさん友達ができたという人もいると思うのですが,そういう人たちがみんなで顔を合わせてゲームをしたりごはんを食べたりするとさらに楽しい,ということを知ってほしいなと。DreamHack JapanのLANパーティーは,そのきっかけ作りの場を提供するのに最適だと思っているので,そういった人たちにもリーチできるようにしていきたいと考えています。

SME 野口氏:
 LANパーティーはコアなゲーマーの楽しみ方というお話がありましたが,そうした人たちに「LANパーティーはこんなに楽しくて熱いんだぜ」ということを広めていただくような形でDreamHack Japanの場を使っていただけたら,理想だなと思います。

 DreamHackの魅力をさまざまな人に知っていただくために,すでに楽しんでいる人の熱量を会場で感じられるというのは絶対に必要です。

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DreamHackを日本に定着させたい


4Gamer:
 今回のお話を聞いている中で「今後」というワードが何度か出てきました。開催前のタイミングで気が早い質問かもしれませんが,2024年以降のDreamHack Japan実施も期待して良いでしょうか。

SME 野口氏:
 そうですね。これを1年で終わらせてしまうのは意味が無いと思いますし,僕がみなさんを喜ばせようとするあまり,予算を何億円も超えて使っちゃいましたみたいなことがなければ,2023年だけで終わるということはありません(笑)

 委員会では地に足を付けてやっていこうという話になっていますし,2024年以降の展開についても話し始めていたりしますので,DreamHackを日本にしっかりと定着させていきたいと考えています。

EFG Donovan氏:
 ESL FACEIT Groupでは,「BEYOND GAMING」という考え方をキーワードにしていまして,ゲーム以外のアクティビティも広げて,さらに大きなものとなることを目指しています。

 もちろん,コアとなるLANパーティーやeスポーツの部分にはしっかりとやりたいので,みなさんの力を借りて満足してもらえるものを作り上げていきます。
 2023年のDreamHack Japan,そして今後についても期待してください。

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 2023年5月13日(土)・14日(日)に幕張メッセで開催される「DreamHack Japan 2023」は,これまでさまざまな形で目にしてきたDreamHackをそのまま持ち込むものではなく,日本ならではの特色を強く打ち出したものとなりそうだ。
 「DreamHack Japan 2023」が一体どのような姿になるか,実際に目にすることを楽しみに待ちたい。

「DreamHack Japan 2023」概要

日程:2023年 5月13日(土)-14日(日)
会場:幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区中瀬2-1)
主催:DreamHack Japan 実行委員会
協賛:インテルコーポレーション / モンスターエナジー
公式サイト:http://dreamhackjapan.com/

「DreamHack Japan」公式サイト


――インタビュー収録日2023年1月末
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