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ポーランドゲーム業界の著名人が唱える,コロナ禍終了後,開発チームに必要なのは「思いやり」
ゴップ氏は,「The Witcher」を開発中のCD Projekt REDに参加し,同作のプロデューサーとしてゲーム業界でのキャリアをスタートさせた人物だ。「The Witcher 2: Assassins of Kings」では,自ら望んでPR&マーケティング担当に転身し,その後,City Interactiveで「The Lord of the Fallen」の,またDestructive Creationsでは「Ancestor Legacy」の開発に携わった経歴を持つ。2018年以降はFlying Wild Hogに在籍して「Evil West」をプロデュースしたのち,現在,同社で未発表プロジェクトのプロダクトディレクターを務めているという。
そんなベテラン開発者であるゴップ氏は,トークセッションの冒頭「最近のゲーム開発者,とくに若い世代はゲームプロジェクトが完成する前に会社を辞めてしまうことが多くなった」と述べた。これは,必ずしも会社に忠誠心を持たない人が増えたといった若い世代に対する批判ではなく,「これからゲーム企業が向き合っていくことになるであろう1つの兆候なのかもしれない」と言う。
今回のトークの隠しテーマは「お互いへの思いやり」であり,「若い世代がそそくさと辞めていくのは,彼らが,大切に扱われていないと感じているから」ということを示唆しているようだ。
コロナ禍後のゲーム開発現場ではリモートワークから抜け出せないゲーム企業もポーランドには多く,生産性という点では不利になってきた。ゴップ氏は,小さなスタジオでは以前からリモートワークという開発スタイルが存在していたことを強調しつつ,開発が遅延するプロジェクトが多い割にはインフレで人件費が高騰しており,ゴップ氏はリモートを続けることのデメリットに言及した。
「コーヒー休憩のため,たまたまキッチンで顔を合わせた異なる部署の開発メンバーが談笑し,それが意見交換につながるようなシステムは,リモートでは形成できていない」と,オンラインミーティングだけではカバーし切れない,オフィスでの共同作業の強みを訴える。そして,これからも変化がなければ経営が立ち行かなくなり,キャンセルされるプロジェクトが増えていくかも知れないとした。
さまざまなメーカーでプロジェクトを切り盛りしてきたゴップ氏は,リモートからオフィスに戻る際に最も注意しなければならないのは,お互いを尊重することだという。
優れたコンセプトアーティストが,自分のイラストが作品にマッチしないからという理由で使ってもらえないことに憤慨したり,自分のコードをいじられたプログラマーが1日かけて黙々と元に戻す作業を行ったりなど,ゴップ氏自身,コロナ後,オフィスのぎこちない空気が目につくようになったと指摘する。
2022年11月にリリースされたアクションRPG「Evil West」は,発売4年前の2018年11月に開発がスタートしたプロジェクトだ。ゴップ氏は,チーム内のコミュニケーションを円滑にするため,週1回は各部門の進捗状況を報告する「Weeklies」を実施し,月に1回はプレイアブル版を作る「Monthlies」という,小さなマイルストーンを達成していく開発システムを採用した。しかし,折からのパンデミックによって,アニメーション制作に時間がかかり過ぎるキャラクターモデルの仕様を変更せざるを得なくなった。その際にも,不満を持つ開発メンバーは少なくなかったはずだという。
リモートではそれぞれのペースで作業ができたが,人間関係の構築が必要なオフィスでは,上から下,下から上,そして横のつながりを綿密にして,コミュニケーションを取っていくという,ある意味,基本に立ち戻ってお互いに接していくべきであると話す。
「もう17年もゲーム開発に携わっていますが,毎日を楽しんでいますし,残りの毎日も楽しんでいきたい」というゴップ氏。「ミーティングでは長く話す必要はなく,自分の意見を数行にまとめるクセをつけ,若い人は自分の意見を言えば良いし,ベテランや幹部は自分たちの状況をしっかり解説しながらも,彼らの意見を聞いてあげるべきでしょう」と述べてセッションを終了した。
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