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「若手ゲーム開発者対談 学生開発者から独立開発者への道」レポート。若手クリエイターが語る,ゲーム作りの考えとモチベーション維持の方法
学生時代にゲームをリリースし,そのままインディーゲーム開発者になったという共通点を持つ「ElecHead」の生高橋氏,「シューフォーズ」のますだたろう氏,「ハグサバイバー」のmumimumi氏が登壇。ゲーム作りやモチベーション維持に関する考えや,独立系ゲーム開発者としての日々を語った。
独立開発者3人が集まり,ゲーム開発にかける日々を語る
本セッションは,学生時代に開発したゲームが世に出て,そのまま独立開発者(本セッションでは,ほかに仕事を持たず,自主開発のゲームで収入を得ている人と定義された)3人に,「Back in 1995」で知られるヘッドハイの代表取締役・一條貴彰氏が質問を投げかけるというQ&A方式で行われた。
●就職を考えなかったのか
生高橋氏:
ゲーム開発をする前は,就職しか選択肢がなかった。しかし,ゲーム作りの授業が面白く,将来的にも続けていきたいと考えたときにインディーゲームのイベントと出会い,「会社に入らずにゲームを作って生きている人がいるなら」と,自分も独立開発者を目指すようになった。
ますだたろう氏:
ずっと寝ているような学生だったので,社会人としての生活は難しいだろうと考えていた。就活はしたが,インターンですぐに体調を崩すなどしていた。卒業直前まで就職を考えており,いわば「運で流れ着いた」ような形。
mumimumi氏:
「東方Project」のZUNさんを知り,「こういう生き方があるんだ」と思った。ゲーム会社でのアルバイトもしたが,1年ほどでやる気や情熱が続かなくなり,自分は金銭のためには動かないのだと分かった。しかし,ゲーム作りは小学生からずっと継続して情熱を注いでこられたので,ゲーム作りを軸にした方が良いのではないかと感じて独立開発者になった。
●ゲーム開発のそれぞれのスタイル
生高橋氏:
「ElecHead」は音楽以外を自分で作ったが,今はグラフィックスをほかの人にお願いするといったように,チームで開発をしている。
本当は全部を自分でやりたいが,それでは時間がかかり,貯金も減るし,なかなか完成しないことに気付き,クオリティアップや今後のためにチームというスタイルにした。自分はゲームを作ることが楽しく,どう売れるかも考えず,「ゲームをプレイした自分が出すアイデアだったら面白いだろう」ということで走り出すタイプなので,あまり真似しない方がいい。
ますだたろう氏:
「シューフォーズ」はブイブイラボというチームで作っていたが,これは小学生時代からの友人たち4人による,ゲーム開発を目的としない集まりからスタートしている。今は別々の道を歩いているためなかなかチームでの開発ができないことに加え,自分一人でやりたいという気持ちがある。今は仲間とゲームを開発しつつ,個人の作品にも取り掛かっているところ。
mumimumi氏:
「ハグサバイバー」は3か月での開発を目標としており,ゲーム開発者の知り合いからお尻を叩いてもらうことでこの目標を達成できた。ゲーム開発は楽しいが,自分は共同でものを作り上げていくことはできないのではないかと思う。
●生きるための仕事と,自分のためのゲーム開発,その割合はどうなっているか
生高橋氏:
「ElecHead」を開発していたころは,週3で専門学校の講師を務めていた。人にものを教えた経験は,「ElecHead」のチュートリアルで生かせたと感じている。
今は開発とchocoZAPでの運動を繰り返す日々を送っているが,刺激を求める性分だけに,緊張感がほしいとも思う。年に2回100kmの道のりを歩くようにしているが,そのときも寄り道が楽しい。ゲーム開発も寄り道のようなもので,目的に向けてのみ進むのは辛い。
ますだたろう氏:
今は,生きるための仕事としての開発が7,自主制作が3という割合。目の前のことだけを考えると,金銭を得られる前者を優先すべきだが,そのままでは“人の仕事を請けるマン”になってしまう。
将来的なことを考えると,自主制作を進めなければならないと感じて頑張っている。今は4本のプロジェクトが並行で走っており,「いいゲームを作らないと死ぬ」という状況だが,これほど楽しいことはないと感じている。
mumimumi氏:
最近は「NEEDY GIRL OVERDOSE」内のミニゲーム制作を請けおい,1か月ほどで完成させた。それ以外はすべて自分のプロダクトに使っている。単にお金のためだけに行動するのは辛いものがあり,お金を得ることと自分のためになにかするという欲求は重ねていかなければと思う。
●独立開発者としての時間の使い方
生高橋氏:
とくに1日のスケジュールは決めていない。徹夜を繰り返すことで生活時間がズレているが,絶対に規則正しい生活をする方がいいと思っている。
生活リズムが狂っていると,たとえば今回のようなイベントにも徹夜で出席することになり,その場で頭が回転しなくなる。やる気が出ないときはずっとゲームをしているが,そのうちに焦りを覚えてくる。開発は締め切りを決めずにスタートし,面白くなりそうな手応えを感じたら仕上げに入る。
ますだたろう氏:
自分も就寝時刻が毎日3〜4時間ずつズレていく。働く時間も1日4〜6時間のときもあれば,12時間のときもある。基本的には“締め切り駆動”のようなもので,作業の効率化には気を使っている。
mumimumi氏:
移動して働く(通勤する)のは大事。休日にオフィスを借り,ゲーム開発者のもくもく会(複数人が集まり,ユルい雰囲気の中で自分の仕事をする)もしているが,そうすると朝起きて仕事して帰宅するというルーチンができ,平日に狂った体内時計もリセットできる。
●チームアップしたい? してる? 気を付けること?
生高橋氏:
個人で開発をするのは楽。チームを組むと説明をする手間も必要。説明のためのドキュメントを作っていて「この時間があれば自分で実装できる」と感じることもある。
現在は友達感覚の人と組めたこと,言語化がアバウトでも許されるチームになったことが大きい。例えば音楽を外注するにしても,何度も説明しなければならず,自分の作業が止まってしまう。リテイクできる回数も決まっているし,自分はなかなか発注できない。
いきなり知らない人と組むのは難しく,空中分解しかねない。組む相手を探すのであれば,ゲームジャムで同じようなレベルの人を見つけるのがいいのではないか。
ますだたろう氏:
ブイブイラボのメンバーは,もともとが学校や部活での友達どうしだった。そこからゲーム開発に興味を持ち,曲や絵を作れるようになっていった。メンバーが本業を持っている場合,これを考慮してスケジュールを作るのは大変だが,仕事を振りすぎても振らなすぎてもダメというバランスがある。
mumimumi氏:
今は信頼できる人に進捗を見てもらっていて,客観的な視点からアドバイスをもらったりもしている。
●今後について
生高橋氏:
今が最高。思い描いていた生活だし,継続したいと思う一方で退屈もある。ゲーム開発と関係ないことにもチャレンジしたい。
ますだたろう氏:
今は仕事を継続しつつ,ほぼ個人での自主制作に注力している。
mumimumi氏:
ゲームは作り続けたいが,これからどういうゲームを作っていけばいいかは思い悩んでいる。
●独立開発者を目指す人に向け,最後にひと言
生高橋氏:
自分がやりたいことが会社でできるなら,会社に所属しながら作った方がいい。そうでないなら独立した方がいい。
ますだたろう氏:
「フリーランスはなるものではなく,流れ着くもの」という言葉を聞いて共感を覚えた。運の要素が強く,勧めることはできないが,「これなら続けられそう」というものがある人は,一度もがいてみるのもいいのではないか。
mumimumi氏:
一回会社の中に入ってみるのもいいのではないか。1年ほど我慢してみて,いけそうであればそのまま会社に所属すればいい。会社員と独立開発者,両方を体験してみるのがいいのでは。
このように,独立開発者となった経緯やその日常,フリーランスとして働くうえでの時間やモチベーション,体調管理などについて,それぞれ異なる立場や考えから語られた。こういった生の声はなかなか貴重であり,聴講者としても大変興味深い内容だった。
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(C)2020 ブイブイラボ
Published by Phoenixx Inc.