端的に言えば,"幻想的な風景"というたったそれだけのウリで世にそのゲーム性を問い,今日の擬似3Dアドベンチャーの基礎を築いた「MYST」(ミスト)。初代MYSTの発売からちょうど10年,シリーズの通算4作めとなる「MYST IV:REVELATION」のデモ版が登場した。
本作は,フルマウス操作,基本2Dグラフィックスというシリーズの伝統はそのままに,前作「MYST III:EXILE」で実装された時空間移動などのフィーチャーをごっそり継承した作品。「スプリンターセル 3」にも携わるUbiのモントリオールスタジオが担当したグラフィックスエインジン「ALIVE」を使用し,擬似3Dによる違和感の除去や,オブジェクトへのインタラクティブ性を高めるなどの進化を特徴としている。ただシステム的に大胆な改変があるわけではいため,ゲームとして見た場合は,シリーズの根幹システムをブラッシュアップしたマイナーチェンジ路線と考えていいだろう。
MYST IVの舞台は,前作の10年後。AtrusとCatherineの夫婦とその息子,娘達が主な登場人物となる。Exileでストーリー的には一段落したが,今回は彼らの娘Yeeshaが失踪したという設定で物語がスタートする。また初代MystにもいたAchennerとSirrusも再登場するなど,シリーズファン向けのサービスもあるようだ。
さてそんなこんなでゲームを始めてみたが,やはり音楽,グラフィックスは抜群の完成度だ。
360度パノラマの擬似3Dの2Dグラフィックスは健在で,"III"と同様,静止画の表面上に蝶などの3Dオブジェクトを動作させて動きをつけ,しばしば"紙芝居"とたとえられる2Dのチープさを払拭している。もちろん基本はプリレンダだが,水の表現などにキチンとDirectX 9フィーチャーを活用して重厚でリッチなグラフィックスに見せているあたりはやはりうまい。
デモ版には,Atrusの部屋の中を探索して一部の設計図を解読し,暖炉内のエレベータを動作させるまでが収録されている。エレベータの作動スイッチはパズルになっているが,解法を明確に意識しなくてもタッチアンドトライで解をはじき出せるため,難度は低い。グラフィックスに目を奪われさえしなければ,正味10分〜20分というボリュームだ。
さてアドベンチャーゲーム初心者,ましてやMYSTシリーズ初プレイならこのレベルでも満足できるかもしれないが,本デモ版は,収録ボリュームを含めコアなファンにとっては少し期待はずれの内容かもしれない。そもそも前作から引き継いだフィーチャーである時代(Age)の移動に関してはまったく触れないし,パズルの難易度を調整するために搭載されたとうい「ヒント・システム」の存在も感じられない。
唯一今作のフィーチャーとして具体的にタッチできるのは,"写真を撮る"という機能だろうか。この写真は簡単なメモと共にその場の情景を保存しておけるのはもちろん,Ageの移動に使用できるもの。本デモ版でも,Yeeshaが落としたと見られる魔法のネックレスを使用すると過去の出来事がフラッシュバックされるという演出があり,"時間の概念"の必要性がプレイヤーに示唆されるが,実際に時代の遷移には至らないようだ。
英語版の発売は2004年9月。"EXILE"に引き続きシナリオライターを務めるMary氏によれば,日本語化も予定しているという。今回は文字の入力もあるため2バイト文字への対応に若干の苦戦が予想される。ただ日本でも,Macintosh/Windowsユーザー問わずファンが多いことだし,ローカライズに名乗りを挙げるメーカーが出てくるよう,期待したいところだ。(Gueed)
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