■史実に基づいて再現された数々の作戦の指揮官となれ
第二次世界大戦で最も有名な,ノルマンディ上陸作戦をミリタリーRTSとして体験できる本作。次々と着岸する上陸舟艇から走り出す数百のユニットは圧巻。RTSならではの"どう攻めるか……"を楽しもう |
そのノルマンディ上陸作戦を,リアルタイムストラテジー(RTS)として再現したのが「D-DAY〜ノルマンディー上陸作戦〜」だ。プレイヤーは連合軍の指揮官となり,枢軸軍と交戦しながら司令部の命令(目標)を達成していく。メルヴィル砲台,ノルマンディ上陸作戦,カランタン制圧,コブラ作戦など歴史的に有名なミッションが用意されており,歩兵や戦車部隊を使ったミリタリーRTSならではの,"戦術面"を存分に味わえる。
開発は「デザートラッツ 〜 砂漠の鼠 vs 北アフリカ軍団 〜」を手がけた,ハンガリーのDigital Reality社が行っており,ゲームエンジン,ゲームシステムはほぼ同じだが,デザートラッツは"北アフリカ戦線",本作は"ヨーロッパ戦線"と,舞台が異なっている。ゲーム画面はRTS定番のクォータービューで,画面上のすべてのオブジェクトが3D処理されており,カメラの視点を回転させたり,拡大/縮小表示させたりしたときも,近景から遠方まで細かく描き込まれているのが分かる。その中をちょこまかと動く歩兵や戦車を見たとき,映画のワンシーンを見ているような気分になれるのは,さすがビジュアル面で定評のあるDigital Realityといったところだ。
本作は"Normandie Memoire協会"の全面協力により,D-DAYに関する情報について過去に前例がないほど詳しく触れられている。史実をできる限り忠実に再現しようというこだわりが,たいへん強い。各ミッションのブリーフィング画面にて"歴史的背景" "ミッション史"を確認できるので,一読してからプレイすればグッとゲームの世界に引き込まれるはず。またメインメニューからアクセスできる"付録"には,ノルマンディ上陸作戦に参加した元兵士の証言,実際の貴重な映像フィルム,登場する歩兵や車両ユニットの詳細説明が収録されており,ミリタリーファンでなくても必見だ。
橋の爆破など,必須ではない第2目標や隠し目標も用意されており,成功すれば有利な展開に持ち込める | 探知範囲の広い偵察兵で,先の状況を把握して戦略を考える。真正面から突進しても被害が拡大するだけだ | ノンサポートながらフリーカメラモードも用意されており,お好みの視点で大迫力の戦いを眺められる |
テキストは日本語化されており,ミッションを理解するのは容易だ。史実も合わせて読めば勉強になるはず | 登場するすべてのユニットは"兵器辞典"で見られる。細かくパラメータが用意されていることが分かるはずだ | ミッション完了後には達成した目標,倒した敵の数,自軍被害数などが見られる。納得できなければ再挑戦だ |
■ユニットの一つ一つを細かく操りたくなるゲーム性
やはり試してみたいのが戦車部隊による突進だろう。視界に入る敵戦車に総攻撃をかけて壊滅させる気持ちよさは格別。しかし視界外から飛んでくる砲弾や地雷原に気をつけないと大きな被害を被る |
キャンペーンで一度クリアしたミッションは,シナリオモードで個々に挑戦できる。シナリオモードではキャンペーンと同じ標準のユニット編成のほか,部隊編成を自由に組み直すことも可能で,キャンペーンミッションとは違った楽しみ方もできる。
●第一章 侵攻の準備
・ペガサス橋(1944年6月6日00:16)
・メルヴィル砲台(1944年6月6日03:00)
・サント・メール・レグリース(1944年6月6日03:15)
・一番長い一日(1944年6月6日06:30)
オーバーロード作戦で最初に行動を開始したイギリス第6空挺師団の,ペガサス橋占領作戦から始まるキャンペーン。最後はオマハビーチミッションだ。
●第二章 橋頭堡の確保
・カランタン(1944年6月22日早朝)
・シェルブール(1944年6月23日午後)
・カーン(1944年7月18日朝)
・サン・ロー(1944年7月18日正午)
アメリカ第101空挺師団による,カランタンの町の敵掃討戦から始まるキャンペーン。建物から建物へと移動し制圧していくような市街戦を楽しめる。
●第三章 橋頭堡からの突破
・コブラ作戦(1944年7月27日午後)
・ブルーコート作戦(1944年8月7日夜明け)
・モルタン反攻(1944年8月7日夜明け)
・ファレーズ孤立地帯(1944年8月20日朝)
第4機甲師団の「コブラ作戦」から始まり,パリ解放の5日前までを描いたキャンペーン。最初から大規模な戦車戦を楽しみたいなら,このキャンペーン。
登場する歩兵ユニットは将校,ライフル兵,機関銃兵,狙撃兵,バズーカ兵,火炎放射兵,偵察兵,工兵,衛生兵の兵科に分かれた9種類。将校はほかの兵士ユニットと比べてHP(ヒットポイント)が多く,銃弾に対する抵抗力があり,偵察兵は枢軸軍に発見されにくく探知範囲が広い,工兵は地雷の敷設,除去が可能。……など,兵科ごとに特有の能力がある。
車両ユニットについては戦車,対戦車砲,大砲,偵察車,輸送車など,連合軍と枢軸軍合わせて60種類も用意されている。車両ユニットに歩兵を乗せると,歩兵の能力が車両にプラスされる。将校を乗せれば射撃精度と移動速度が速くなる,機銃兵を乗せれば戦車の機銃精度が上がる,バズーカ兵を乗せると再装填時間が短くなる,といった具合に強化される。
戦車は部位によって装甲強度が異なるので,正面よりキャタピラや背面を狙ったほうが破壊しやすい。敵兵に見つからないように回り込んで背後から攻撃を仕掛けたり,味方戦車で敵歩兵や戦車を引きつけておき,側面や背面からバズーカ兵で攻撃するなど,兵士一人単位の細かい運用が鍵となることが多い。
各ミッションでは通常の目標のほかに隠し目標が用意されており,達成すると援軍が来たり,空爆回数が増えたりなどのボーナスがもらえる。本作には生産という要素はなく,キャンペーンゲームでは最初に登場する歩兵/車両の種類と数は決められており,損失の補充は一定の条件を満たすとやってくる援軍だけが頼りだ。
ただし,戦車などのユニットや固定砲台は,敵から奪取できる。修理車,牽引車などは狙撃兵にサクッと運転手を倒してもらい,戦車は特殊攻撃の"砲台攻撃"を使って砲台を壊すと,乗員が慌てて飛び降りる。そこを一掃して戦車を頂いてしまうのだ。単独で行動している敵戦車を見かけたら,常に奪取を狙っていきたい。
お決まりのパラシュート部隊の降下ももちろん再現。制限時間付きのミッションもあるので即配備しよう | 戦車に歩兵を乗せて性能アップ。最大乗車数があるのが悩ましい。ちなみに兵器1が砲塔,兵器2が機関銃 | 偵察機で敵の配置を把握したら空襲で地上部隊の妨げになりそうな兵器を破壊。対空砲で撃墜されることもある |
戦車の脅威となる地雷は工兵が撤去。移動スイッチを自由移動にすれば周辺の地雷を勝手に撤去してくれる | ユニットはグループ化して行動させるのが基本。頭上のアイコンで兵科が判別しやすいのが嬉しいところだ | 目標は重要な第一目標,サブ的な第二目標,そして隠し目標がある。ゲーム進行に従って追加されることが多い |
■遭遇するまで戦力の分からない人間相手のマルチプレイ
キャンペーンゲームも面白いが,AIとはひと味違った戦いを繰り広げられるのが,人間を相手にするマルチプレイの魅力。定番の3種類のゲームモードが用意され,世界中のプレイヤーと対戦可能だ |
マルチプレイではシングルモード同様に,与えられたMP(ミッションポイント)を消費して,自由に部隊を編成できる。相手がどんな構成にしたかは戦場で遭遇してみないと分からず,どういった編成にするかが悩みどころだ。車両への搭乗兵も設定できるため,通常より強化された戦車も使える。ある程度は予想していたが,実際にやってみると戦車戦がメインになってしまうのは仕方ないところか。
ゲームの作りは大味なところもあり,一見するとライト感覚な初心者向けなのだが,キャンペーンには難度を初級に設定しても難しいミッションが含まれており,ミリタリーRTS初心者の人は何度も敗北を味わうかも知れない。苦労していたところも戦術次第で難なくこなせるようになってくると,俄然面白さが増してくる。もちろん腕に自信のある人は難度上級以上で挑戦すると良いだろう。
史実を忠実に再現したキャンペーンゲーム,部隊編成のおかげで同じマップでも毎回状況が異なるマルチプレイ。興味のない人には尻込みされがちなミリタリーRTSであるが,たまには一歩ずつ軍を進めて展開していく……こんなゲームにじっくりと挑むのもいいだろう。
多方向から攻めて敵の戦力を分散させることも可能だ。味方を囮にして背後から攻撃するのが効果的 | 使っていて気持ちいい火炎放射兵だが,使いどころは難しい。倒されると大爆発を起こして自軍の被害甚大 | イギリス軍の水陸両用戦車M4シャーマンDD。ノルマンディ上陸作戦では多くが波浪により沈没したとか…… |
高い防御力を誇り,あらゆる物を燃やすチャーチル・クロコダイル。燃え尽きた家屋は轟音とともに崩れ落ちる | バリエーションに富んだマップで楽しめるマルチプレイ。細かくゲーム設定を変更することも可能だ | マルチプレイではMP:ミッションポイント(右上)だけユニット編成可能。歩兵を乗せて強化した戦車を投入!! |