ファイア・デパートメント

Text by UHAUHA
2nd Sep. 2003

火災現場で炎と戦うファイアファイターを指揮しろ

 迫り来る炎に立ち向かい消防活動/救助活動を行う消防士の仕事を味わえるRTSゲーム「ファイア・デパートメント」。海外では「Fire Department」(フランス語版),「Emergency Fire Response」(英語版)というタイトルで発売されているが,ナツメが発売するファイア・デパートメント日本語版は,音声/メッセージともすべて日本語化されており,純日本人でも安心してプレイできる

 プレイヤーの目的は,615消防署の消防指揮官となり,刻々と状況の変わる火災現場において消防官/消防車両に迅速かつ的確な指示を与え,容赦なく襲い来る炎を相手に火災被害を最小限に食い止めることだ
 本作は,火の海に囲まれて消火作業を行い,逃げ遅れた被災者を助けるために自ら危険を犯し火の中に飛び込んでいく過酷なファイアファイターの仕事を余すことなく再現している。すべてを統括して指揮できなければ,人命救助はもとより,火の勢いを止めることすらできないだろう……。

周辺に有毒ガスが広がり始め(上部ゲージ),火の手が家屋を襲う。早く対処しなければこの周辺はあっという間に燃え尽きてしまうだろう 本当に燃えているような炎が見事。燃えやすい段ボールが多いため火の回りが早く,急いで消火しなければ大変なことになる

 

バリエーションに富んだ10種の火災を収束させるべし

セクターごとにやるべきことが表示されるので,チェックしておこう。非常に美しく描き込まれた風景だが,指揮次第では焼け野原と化してしまうのだ

 ファイア・デパートメントには,ストーリー性のある10種のミッション(火災現場)が用意されており,各ミッションは複数のセクターで構成されている。
 セクターごとに用意されたいくつかの課題をクリアし,すべてのセクターをクリアすれば,ミッション完了となる。最終評価では仕事の出来映えによりメダルが授与されるので,栄誉ある金メダル五つ(難易度"ハード")を狙っていきたいところだ

 ミッションの一つ「国際問題」を簡単に紹介しよう。
 キルギス大使館で行われている歓迎会が終わりに近づいたとき,3階で原因不明の爆発が起き,大使館から火の手が上がる。同時に大使館の前を走っていた数台の車も爆発に驚いて事故を起こし,道路には炎上する車と多数の怪我人がいるという状況だ。
 建物の中には,大使と名高いゲスト達が閉じ込められ助けを待っており,またキルギスの文化遺産である美術品も多数展示されている。人命を救うのは当然のこと,美術品も焼失すれば国際問題に発展してしまう……。
 セクター1では建物の突入,セクター2では道路にいる負傷者の救助/美術品の確保,セクター3では大使館とゲストの救出という流れで進められ,最終的にすべての炎を消火すればミッション完了となる。

 どのミッションも上記のようなシリアス(?)でドラマチックなストーリーが背景にあり,冒頭での渋めのナレーションとムービーが気分を盛り上げてくれるのだ。ミッションごとにバックドラフト(※1),フラッシュオーバー(※2),爆発,有毒性の煙,液体火災,ガス火災,漏電,金属火災,森林火災など異なったシチュエーションになっており,ミッションにより戦略を変える必要も出てくる。

白い煙の見える部屋は放っておけば間違いなくフラッシュオーバーが発生する。発火する前に放水して室温を下げなければ面倒なことに ドアを開けるとバックドラフトが発生することがある。ドアを開けた消防官は危険な状態になることが多いため,別の消防官が対処できるように配置しておくべし

※1「バックドラフト」
  閉め切られた室内などで火はくすぶっているが,一酸化炭素などの発生で密閉空間に燃焼性のガスが溜まり,酸欠状態になることがある。この状態で部屋の出入り口が開けられるなど大量の酸素が流れ込んだときに,爆発的燃焼を起こす現象

※2「フラッシュオーバー」
  火元は小さくても熱蓄積により室内温度が上がり,可燃物が発火点まで達した途端に部屋全体が一気に燃え上がる現象


 火災現場は,細かく描き込まれた3Dナナメ見下ろし画面で表現されており,自由に視点の移動,回転,縮小拡大ができる。

 ミッションにより使用できる人数や車両に違いがあり,限られた人数で消火を行わなくてはならず,ゲーム中はかなり忙しくマウスを操作することになる
 指示を出す消防官を選ぶのは左クリック,範囲指定することで複数の消防官を同時に選択することも可能だ(Ctrlキーでも可)。消火や移動,その他の行動の指示はすべて右クリックで行い,ドアを開ける/壊す,被災者を救助する,車両を動かすといった特定アクションは,カーソルにアイコンが表示されている状態で右クリックすればOK。
 "消防署"ミッションがチュートリアルになっているため,一度プレイすれば一連の操作はすぐに覚えられるはずだ。

 また消防官/消防車両の状況は画面下にあるサムネイル画像でも判断できる。サムネイルの中にアイコンが表示され,何もなければ放水中,"?"ならば待機中,顔のマークであれば被災者救出中,何かを訴えている場合はオレンジに点滅するなど,画面上で個々に探さなくても一目瞭然というわけだ。
このサムネイルは直接消防官を選択した場合と同様に機能するため,酸素補給などは消防官のサムネイルをクリックし,消防水槽車のサムネイル上で右クリックすれば補充に向かう。サムネイルを使いこなせば作業効率もぐっと上がるだろう。

事態を把握し,頭を使い迅速に消火できるすべを見つけ出そう

 消防官には,体力を示すライフゲージと,酸素量を示す酸素ゲージがある。
 炎にさらされるとライフゲージが減少し,離れると回復する。ただし深刻な状況になってしまうと自然回復はできず,救急車で手当を受けなければならない。

放水用はしご車や水槽付きポンプ車はあまり近いところは消火できないため,油断していると炎の洗礼を受ける。消防官に消火の指示を与えるべし

 さらにライフゲージが減り続けると最終的にはその場に倒れてしまう。この場合はほかの消防官が救助に向かうしかない。ただでさえ人手不足の火災現場において,倒れた消防官と救助する消防官の計2名が離脱するということは,消火作業に大きな支障が出るということが想像できるだろう。

 酸素ゲージは消火活動を行うと消耗し,酸素がなくなると消火活動が行えなくなる。酸素が切れたら消防水槽車で補充する必要があるので,できるだけすべての消防官に近い位置に消防水槽車を配置しておくのがベストだ。そして酸素を使い切る前に交替で消防水槽車に向かわせるようにし,放水を止めないようにするといいだろう。

 消火をメインにする基本ユニットのほかに,被災者や消防官の応急処置などを行う救急隊員,車両や機械類の操作/爆弾処理などを行い工作要員,大型の障害物や金属物を切断撤去するエンジンカッター工作員,体熱服に身を包み猛火へ突入する耐熱服着用隊員,ワイヤーで高所への移動が可能なフックワイヤー工作員といった専門技術を習得している5人のスペシャリストがいる
 スペシャリストも消火作業が可能だが,消火能力が低く,歩く速度も遅く(フックワイヤー工作員は速い)設定されている。

 消防車両は救急車,消防水槽車,水槽付きポンプ車,救助用はしご車,放水用はしご車,ブルトーザなどを直接操作でき,またミッション途中で工作要員などが動かせる車両も登場する。
 ミッションにより使用できる車両が異なっており,前述したように消防官の酸素の補充は消防水槽車で,被災者や消防官の治療/救助は救急車で行うため,可能な限り現場から近いところに配置すれば迅速に事を進めるだろう。
 また大量の放水が可能な水槽付きポンプ車,放水用はしご車も水の貯蔵量に限界があり,水が無くなったら消防水槽車を横付けして補給しなければならない。
 なお消防車両にも耐久性を示す耐久ゲージがあり,炎にさらされれば徐々にダメージを負って最悪は爆発炎上してしまう。そのため先ほど"可能な限り現場から近いところ"と書いたが,火元からは遠ざけておこう。

爆発の危険のある自動車をなんとか消し止めたが,隣で燃えている炎も消火しなければ再び出火する可能性が高い 自動車の消火が間に合わなければ,爆発により一面が火の海と化す。こうなると焼失面積は増え,消火の時間もかかり,クリア後の評価に響いてしまう

 このゲームの敵である"炎"は,炎ごとに抵抗力(ゲージで表示される)が違い,簡単に消えるものもあればなかなか消えないものもある
 抵抗力の強い炎はユニット総出で放水を行えば鎮火も早いのだが,燃えているのが1か所だけということは少ないため,手薄になった場所の延焼を許してしまう
 そうならないためにも数名ずつグループにして火の手のあるところに割り振り,同時に多くの場所の消火に当たるなど頭を使う必要がある。また燃える物すべてに耐久性があるので,爆発炎上しやすい物から優先して消火していけば,被害を最小限に押さえられるだろう。

 すべてのミッションで同じ方法が通用するというわけではなく,ミッションに合わせた方法で対処していく必要がある。基本は,無駄な行動を避けて可能な限り放水時間を長くするということになるだろう
 実際にやってみると最初は火の海を見ることも多いが,何度か挑戦して効率の良い方法を見つければ,いずれ必ずクリアできるはず。幸い(!?)火元となる地点はパターン化されているため,何度かプレイすれば次にどうなるかが予想できるだろう。
 ただし火の回りの速い難易度"ハード"では,何度でも火の海を見る羽目になるはずだ。勲章といえる金メダル五つを得るのは,かなり気合を入れてプレイしなければ無理だといっておく。

あたり一面が漏電しているため,耐熱服着用隊員を使い電力供給を切る必要がある。右側にある耐久ゲージに注意しながら行動させよう 大きな障害物や鉄製のドアはエンジンカッター工作員が除去する必要がある。ちなみに名前は,やっぱり……ジェイソン

繰り返しプレイしてしまう異色のリアルタイムストラテジーだ

一番難度が高いと思うミッション"森林火災"。救助ヘリが到着するまでの間,必死に被災者のいる建物を守る必要がある。酸素切れは命取りだ

 単刀直入にいえば,「完全にハマった」
 何度やっても面白いのだ。面白いけど難しい,難しいけど面白いという,一番イヤなタイプのゲームだ。
 何が面白いかといえば,消防官を火の海に飛び込ませ火の勢いを衰えさせたときの嬉しさ,逆に失敗して手の付けられないほど延焼してしまい,画面いっぱいに広がる火の海を見て何もできないでいる不甲斐なさ。ミッションが成功しても失敗しても,もっと効率の良い方法を見つけ出したくなる,そんなやり応えのあるゲームに仕上がっているところだろう
 ゲームとはいえ徐々に広がりつつ火災を前に,実際に火災現場で指揮しているような気持ちでプレイできるのは,命がけで炎と立ち向かう消防士の過酷な職業とRTSのゲーム性が見事に融合された結果だといえる。今までにない火災消火RTS,挑戦する価値は大いにあると断言しよう。

 当サイトの「こちら」にミッション"300万ドル"の途中までプレイできる体験版(当然日本語版だ)がある。"これから面白くなりそう!"というところで終わってしまう実に"やらしい"体験版であるが,体験版をプレイすればファイア・デパートメントの面白さは十二分に伝わるはず。ぜひPC上の火災現場に足を運んでほしい。

 最後にひと言。ミッションなども練られていて非常に良くできているのだが,それとは別にもっと広範囲,高階層のステージなど用意し,そこでマルチプレイを楽しめたら……とプレイしていて何度も思った。
 「2階の消火を頼む」「逃げ道を作ってくれ」「天井が崩壊したぞ,何やってんだ!!」などチャットで話ながらプレイできたら面白いと思うのだが,次回作があるのならマルチプレイ対応を望みたい。

消防車両以外の車両を移動させる場合もある。ショットでは火の勢いも弱まってきたのでテスタロッサを避難させているところ ミッション冒頭にはムービーシーンを使いストーリーが紹介される。実は実際に起きた火災がベースになっているらしい 被災者の救助も効率良く行おう。パニックになっている被災者を落ち着かせれば後ろを付いてくるので,倒れている被災者を担いで同時に2名救助できるのだ ミッション選択画面では,クリア度を示すメダルが表示されている。チュートリアルは完璧として,300万ドルは体験版をやりこんだ成果が出たらしい
被災者が危険な状況だが,カーソルのところは漏電しているため放水すれば感電して消防官が危ない。まずはブレーカーを探して電力をカットすべし 放水用はしご車を使い高所の消火に当たっている。指示した地点のみ放水するため,鎮火したら別のところを消火するように指示を出そう ミッションをクリアすると総合評価が表示される。どこが悪かったのかをチェックし,再び挑戦してみよう。ショットは難易度"イージー"の銅メダルだ オプションのステーションでは基本消防官,各車両のデザインを4か国から選択可能だ。各国混同することもできるので,たまに変えてみるのもいいだろう

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■発売元:ナツメ
■価格:7980円円
■問い合わせ先:ナツメ TEL06-6361-7232
■動作環境:PentiumII/500MHz以上(PentiumIII/800MHz以上推奨),メモリ 128MB以上(256MB以上推奨),ハードウェア3Dに対応したビデオカード(GeForce2以上推奨)
■体験版:英語版日本語版
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