■全5キャンペーン,13ミッションからなる火災現場
火災現場で迫り来る炎に立ち向かう消防士達の,勇敢さと苦労を思う存分味わえる本作。火災の恐ろしさを嫌というほど知ることになるだろう。消防指揮官(プレイヤー)として的確かつ迅速な指揮が求められる |
火災に立ち向かう消防士をテーマにした,リアルタイムストラテジー「ファイアー・デパートメント」(日本語版はナツメから2003年に発売)。プレイヤーはあらゆる火災現場で襲いかかる炎と闘う消防士や消防車両の指揮を執り,消火活動や人命救助を行うという異色のRTSゲームだ。
その"ファイアー・デパートメント"のシリーズ最新作が,10月28日にズーから発売される「ファイアーキャプテン 〜ファイアーデパートメント2〜」だ。ゲーム中のテキストはしっかり日本語化されており,英語の苦手な人でも安心だ。以前ファーストインプレッション的な記事を掲載しており,そちらも併せて見てもらうとして,個人的にイチオシな本作につき,もう少し踏み込んで紹介していきたい。
メインの"キャンペーンモード"には五つのキャンペーンが用意されており,それぞれ三つのミッションで一つのキャンペーンが構成されている(キャンペーン5のみミッションは一つ)。計13ミッションの内容は,都市,工業地帯,森林地帯,港,スタジアム,地下鉄などさまざまなシチュエーションで,それぞれ特性の異なる火災と戦うことになる。各キャンペーンは,「花火工場で起きた火災が原因で製造プラントの火災が発生し,製造プラントの火災が原因で石油化学プラントの火災に繋がる」といった具合に,三つのミッションを通してストーリー性のあるドラマチックな展開。ミッション中にも平行して関連した火災が発生するなど,臨機応変に迫り来る炎と戦わなければならない。
各ミッションとも難度が初級,中級,上級と用意されており,ミッションをクリアすると活動内容が評価されてメダルが授与される。もちろん目指すは上級の金メダル五つになるわけだが,初級でさえ銅メダル五つを取るのに苦労する本作では,金メダルなんて一つ取るだけでも大変だ。
本作ではダイナミックファイアー,ダイナミックスモークシステムにより,前作と比べて炎や煙の再現が一段とリアルになった。「パチパチ」という燃焼音とシンクロして,本当に燃えているような錯覚を覚えさせてくれる。もちろん見た目だけでなく,放射熱による発火,燃焼物ごとの燃え方の違い,風の影響による延焼の違い,フラッシュオーバー,バックドラフトなど,現実の火災で起こりうる状況が再現されており,モニターの中に広がる世界は本物の火災現場と同じといえよう。
民間人を救出するべく,ときには自分の身を危険にさらして炎の中へ入っていかなくてはならない | 崩壊や爆発するオブジェクトには耐久バーが表示される。耐久バーがなくなる前に消火しないと被害が広がる | ミッション中にも事件&事故が発生し,別の火災が発生する。ドラマチックな展開だが,本当に勘弁してほしい |
チュートリアルでは基本的な操作などを学べる。実際に消火作業も行うが,実は一度,失敗してしまった | ストーリーの繋がった三つのミッションで構成されるキャンペーン。初級ですらメダル五つが取れない始末 | ゲーム前のブリーフィングで各種情報を得る。消火栓の位置,火災タイプ,民間人の位置は要チェック |
■迅速に指示を出せ! 炎に勝つも負けるもキミ次第
最初の場所の火災鎮火も見えてこないのに,別の場所で火災が発生。炎の色の違いで火災タイプが違うことが分かる。ほかの消防署からの増援要請も可能になったので(画面下消防ユニット一覧),すぐに要請を出そう |
火災現場で活動できる消防ユニットには,消火/救助作業を行う"消防士"のほかに,救急救命士 / 救助機動隊員 / 技術隊員 / 耐熱服着用隊員 / ポータブル放水砲 / 科学機動隊員 / 災害救助チーム / 機動偵察隊員といった特殊作業を行うスペシャリストがいる。彼らは主に,消防士にはできない特殊作業に駆り出される。
消防車両ユニットはポンプ車 / はしご車 / 高所放水車といった定番車両のほか,泡原液運搬車 / 山林火災車 / 消防艇 / 消火ヘリなど計13種類が登場する。
これら消防ユニットに指示を出して消火/救助作業を行うわけだが,簡単なようで実に奥が深い。炎には抵抗力があり,抵抗力が高いほど消えにくい炎を意味する。抵抗力の低い炎であれば消防士1人でも容易に消し止められるが,抵抗力が高い炎は複数の消防士や車両で作業しないと消えにくいのだ。
すでに火の海になっている場合は,周辺から消火していかなければ延焼を許してしまうし,火災で発生した熱が離れた建物に吸収されて発火する"放射熱"も再現されており,火の手のない建物への放水も必要になる。またマップ内には,爆発や崩壊する恐れのある物もあるため,二次災害に繋がりそうな部分(黄色い耐久バーがあるもの)への引火も阻止しなければならない。
消防署からの応援(増援ユニット)などが来ると,消防ユニットの数は20人以上になることもある。こうなるとプレイヤー自身がパニックになりそうになるが,グループ化するなどして,無駄なく効率的に動かせるか否かがキモだ。
火災には,燃焼物により「一般的火災」「化学的火災」「電気的火災」「金属的火災」の4種類あり,火災に見合った消火剤を使わないと消火どころか事態を悪化させてしまう。例えば水は一般的火災への効果は高いが,化学的火災には効果が薄く,電気的&金属的火災に使用すると危険といった具合だ。
悩ましいのが,消火剤には残量があるという点だ。消防士は消火剤が切れたらポンプ車両まで行って補充する必要があり,消火位置から車両までの距離があれば,消火作業を中断する時間は長くなってしまう。場合によっては複数の消防士がその場を離れるということも発生するため,補充タイミングをずらすのがポイントだ。また消防士の消火剤は入れ替えが可能で,最初は消火泡を使っていても,水の入った車両で補充すると中身を水に入れ替えられる。化学的火災が鎮圧できたら,一部の消防士の消火剤を変えて一般的火災に対応させるなどすれば,消火効率もグンと上がるだろう。
消防士よりも消火能力の高いポンプ車,高所放水車などは,マップ内に配置されている消火栓,生化学セルと接続すれば,消火剤が減ることなく消火作業が行えるようになる。水などは河川,海,池からも補給が可能だ。消火栓や生化学セルからの供給は消火作業において重要になるため,ゲーム開始前のブリーフィングで位置をしっかり把握して,車両を適切な位置に配置したい。
車両の移動について触れておくと,前作では1台ごとに自分で運転する感覚で移動させていたため手間が掛かったが,本作では消防士などと同様に指定場所をポイントするだけで移動してくれるのが嬉しい。狭い道などでは引っかかって身動きを取れなくなっていることもあるのは,まぁご愛敬だ。
ここで,"救命救急士だけで複数の民間人を救助するテクニック"を紹介しておこう。火災現場には多くの民間人が残されているが,民間人一人一人に消防士,救命救急士を付けていたら火災の延焼を許すことになる。とくに,比較的消火しやすい火災の初期段階では致命的だ。民間人にはパニックで身動きができない人,すでに気を失って倒れている人がいるが,実は身動きできない人は一人ずつ救助しなくとも,声を掛けて回れば後をついてくる。また,倒れている民間人は抱き抱えて移動すると時間が掛かるため,その場で治療を行う(コントロールウィンドウの注射器マーク)。治療が終わると民間人は立ち上がり,やはり後をついてきてくれる。これを使えば何人も同時に救助できるのだ。
また立っている民間人は,救急車を近くに移動させると勝手に乗り込んでくれるというのも覚えておきたい。これで消防士は消火作業に専念できるため,火災延焼はかなり抑えられる。体験版でも使えるので試してほしい。
瓦礫の下に埋まってしまった民間人は,災害救助犬チームを使って探し出し,救助機動隊員で瓦礫を排除する | 化学的火災は水では消えにくいが,消火泡を使うとみるみる鎮火していく。火災に見合った消火剤を使おう | 前作にはなかった,消防車両への消火剤補給。水は消火栓から,消火泡は生化学セルから補給できる |
森林火災で効果を発揮する,消火飛行機による放水。連続して出動要請できないため,放水地点の決定は慎重に | 前作に比べて増えている消防ユニットの説明も読める。前作同様,4か国からユニットデザインを変更できる | 現実でも起こりうる地下鉄での地震災害もミッションとして用意。火災を鎮火できても崩壊の危険性が残る |
■待望のマルチプレイ搭載で友達と消火作業を楽しめる
待望のマルチプレイが可能となり,二つのゲームモードを楽しめる。協力プレイではほかのプレイヤーの消防車両も有効活用して消火作業にあたる。チャットでの連携も重要だ(白っぽい車両がほかのプレイヤーの車両) |
前作からの大ファンである筆者が一通りプレイしてみて感じたのが,相変わらず忙しいということだ。同時に複数のユニットに別々の仕事を指示することも多々あり,とにかく忙しい。ゲーム中は「はい,こっちオッケー」「おっと何サボってんだ! ここを消火しろ」「救助者が死にそうだよ! おら,急げ!」「うわ〜燃え広がってる……」と,本当にこんな感じでブツブツ言いながらプレイしてしまう。
本作(本シリーズ)は火元が固定されているせいか,よく"パターンゲーム"という人もいるが,正直それは事実だ。先手を打って,出火元に消防士を先回りさせておくなんてこともできてしまうのだが,これが使えるのも"子供だまし"といえる初級までだ。中級&上級ともなるとまったく通用せず,それぞれ違ったテクニックを使う必要が出てくる。
どのミッションも簡単にクリアとはいかないと思うが,いろいろな方法を試して鎮火に繋がったとき,いいようのない楽しさと達成感がある。そして,いざ最終評価を見て思ったよりも悪いと,もっとうまくやろうと再びプレイしてしまう。一つコツをつかむと,難しいけど何とかなるというのが見えてきて俄然面白くなってくる……本作には病みつきになる難しさや楽しさがあるのだ。まずは体験版をプレイして,少しでも"忙しくて難しいのに楽しい"という部分を感じられたら,製品版で多くの火災に挑んでほしい。
なお,本作では待望のマルチプレイモードが用意され,二つのゲームモードを最大4人で楽しめる。「共有モード」はキャンペーンに登場したミッションを参加しているプレイヤーで楽しめるモードで,ゲームに登場する消防ユニットを"共有して"プレイする。登場する消防ユニットをどのプレイヤーも自由に使用できるため,場合によっては同じユニットを取り合う状況になる。実際,ポンプ車など互いのプレイヤーが別の方向の消火作業を行わせようとして,放水砲がキョロキョロと向きを変えるだけで一向に放水されないという状況になることもあり,少しイライラしてしまった。
一方の「協力モード」はキャンペーンに登場したミッションは使用できず,三つの専用マップが用意されている。それぞれのプレイヤーは消防署単位でユニットが与えられ,自分のユニットのみ使用可能なため,思い通りに消火/救助作業を行える。大型水槽車などの消火剤はほかのプレイヤーと共有できるので,消火栓などがなくて困っていそうなところに,大型水槽車を手配してやるといった連携も取れて,面白い。ともかく,どちらのモードもチャットで連携を取ることが重要になりそうだ。
多くの民間人が倒れているが,一人一人助けていたら火災は広がってしまう。本文中で紹介したテクで乗り切れ | 消防ユニットはグループ化すると効率がよい。左の炎は電気を帯びているため,放水前に遮断する必要がある | 一般的火災が落ち着いたため,消火剤を消火泡に替えて大人数で一気に畳み掛ける。目標を一つずつ片付けよう |
耐熱服着用隊員は猛火の中で作業できるが救助作業は行えない。すぐ消防士/救急救命士を呼ぶ必要がある | 初級ではすぐに消し止められるような火災も,中級/上級となると目も当てられない状況になってしまう | 中毒性/腐食性ガスが広がると消防隊員もダメージを受ける。化学機動隊員で,広がったガスを中和させる |