― レビュー ―
遅れてきた本格派シングルプレイRPGがついに登場!
アイスウインド デイルII 日本語版
Text by K.サワノフ
2005年03月22日

 

■じっくり読ませる重厚なストーリー

 

オリジナル版の発売から約2年半。本格派RPGファンがずっと待ち望んでいた「アイスウインド デイル」の続編が,ついにローカライズされて登場だ。今度の冒険は,前作から約30年後の世界が舞台となる
 「アイスウインド デイルII(以下,IWD2)」は,本格派RPGの開発元として知られるBlack Isle Studiosの作品だ。今回メディアクエストによって日本語ローカライズされたわけだが,オリジナル版の発売は2002年の8月と,ちょっと昔のことになる。前作「アイスウインド デイル」はセガによってローカライズされているが,IWD2はスルーされてしまったため,日本語でのプレイをあきらめていたファンも多いはず。遅くなったとはいえ,日本語版の登場はやはり嬉しいところだ。

 IWD2の舞台となるのは,前作(Icewind Dale:Heart of Winter)から30年後の世界。ストーリー的に直接の関係はないため,前作を遊んでいなくてもまったく問題はない。とはいえ,「アイスウインド デイル」や,拡張パックの「Icewind Dale:Heart of Winter」(日本語版は未発売)などをプレイした人なら,物語の随所で聞きなれた名前を発見し,より楽しめることだろう。

 IDW2のストーリーは,主人公一行がゴブリンの大群に襲撃されているタルゴスの港町に着いたところから始まる。プレイヤーはキャラクター6人から成るパーティを操って,ゴブリンの撃退から始まる長い冒険に挑んでいくことになる。
 基本的にほぼ一本道のメインストーリーと,多数のサブクエストで構成されている本作。ストーリー作りには定評のあるBlack Isle Studiosだけあって,"読ませる"展開は,さすがのひと言だ。世界観の描写の上手さは相変わらず秀逸で,冒険を進めるにつれて少しずつ語られていく重厚な物語は,すぐにプレイヤーを物語に引き込んでくれる。前作アイスウインド デイルのストーリーでは物足りなかったという人も,今回は満足できるのではなかろうか。

 グラフィックスの見た目などは,より強化されているものの,前作から大きな変化は見られない。グラフィックスはある程度まで完成の域に達している,ということでもあるだろう。そもそも2年半前のゲームということもあるし,最新のゲームと比較しても意味はない。2DベースのシングルプレイRPGとしては,十分なクオリティと感じられた。相変わらずのいい雰囲気のBGMとも相まって,プレイヤーは心地よくゲームに集中できるはずだ。

 

パーティがタルゴスの船着き場に到着したとき,すでにタルゴスの船着き場はゴブリンの襲撃を受けていた 序章では,タルゴスを守るための戦いが描かれる。開始早々,街を襲撃してくるゴブリン達を撃退するのだ 街の防衛戦での活躍を認められた主人公一行は,タルゴスの司令官から新たな任務を与えられる

 

主人公のパーティは,北部から襲い来るモンスター達に対し,激しい戦いを繰り広げていく。どこも雪景色だ ゲーム中には,メインストーリーに沿ったクエスト以外にも,いくつものサブクエストが用意されている 行く先々で登場するNPCも,一筋縄ではいかない個性的な連中ばかり。彼らの存在が物語に彩りを添える

 

 

■奥が深く,自由度の高いゲームシステム


まずは6人のパーティメンバーを作り,ゲームを始めよう。役割分担はしっかり考えてバランス良く作ろう
 Black Isle Studiosは,「バルダーズ・ゲート」「ネヴァーウィンター・ナイツ」など,テーブルトークRPG「Dungeons & Dragons」のルールをもとにした作品を多数発表している。「アイスウインド デイル」シリーズも,そうしたD&D関連作品の一つだ。ちなみにアイスウインド デイルは,バルダーズ・ゲートの舞台である"ソードコースト"よりはるか北方の"ノース"が舞台で,ゲームシステムも非常に似通った姉妹作である。

 D&Dをベースにしているという点は,D&Dを知らないプレイヤーにとっては,いま一つとっつきにくいという弱点でもある。確かに本作は,同社のこれまでの作品と比べるとだいぶプレイしやすくなってはいるものの,それでもまだまだハードルの高さが感じられた。ゲーム中に提示される情報がかなりの量にのぼり,またそれに伴いインタフェースが複雑になっているため,不慣れなプレイヤーはどうしても戸惑ってしまうのである。

 ただし,一度ハードルを乗り越えてしまえば,情報や要素の多さはゲームの奥深さに直結していく。どんなキャラクターを作り,どう組み合わせてパーティを構成するのか。キャラクターの一人一人をどのように成長させていくのか。どんな陣形をとり,どんな戦法で敵のモンスターと戦っていくのか。本作はそういった部分での自由度が非常に高く,やり込むほどに味が出る作リになっているのだ。
 長い歴史を経て磨かれてきたD&Dのルールをベースにしているだけあって,システムのバックグラウンドは非常にしっかりしており,どんなプレイをしてもバランス的に不都合が出たりすることはない。このあたりが本作の,そして"バルダーズ・ゲートシリーズ"なども含んだ一連の作品の,最大の武器だろう。

 なお本作では,ベースとなっているルールが,前作までの「Advanced Dungeons & Dragons 第2版」から「Dungeons & Dragons 第3版」に変更されている。種族やクラスの増加,種族による職業の制限の廃止,マルチクラス概念の追加,スキルポイントの簡略化などなど,さまざまな基本ルールが改良されているのだ。
 ベースルールの変更によってとくに影響を受けたのは,キャラクターメイキング時や,レベルアップ時のカスタマイズの部分だ。キャラクターの作成,育成における選択肢が大幅に増えているのである。より個性的な,より自分の思うがままのキャラクターを作れるようになったわけだ。
 ちなみに"バルダーズ・ゲートシリーズ"には冒険の途中で仲間になるNPCが大勢用意されており,"おなじみの仲間達"との出会いや別れといったエピソードが演出の一部となっている。これに対して"アイスウインド デイルシリーズ"は,6人のパーティ全員を最初にキャラクターメイキングする必要がある。どちらが好みかは人それぞれだろうが,RPGにおけるキャラメイクや育成が大好きという人なら,このアイスウインド デイルIIが一番だろう。

 

初心者用に,あらかじめ用意されたパーティも5組ある。それぞれの設定を読んでいるだけでも面白い D&D第3版をベースとした新システムは,前作からかなり変化している。前作をプレイした人も注意すること レベルアップ時のキャラクター育成部分の自由度も高くなっている。6人分の育成は楽しいけど大変だ

 

パーティでの戦闘は,このゲームの醍醐味だ。各キャラクターの特性を活かして敵に立ち向かうべし パーティの陣形や,使用武器,魔法を少し変えるだけでも,戦闘の結果は大きく変わってしまう すっかり数が減ってしまった,読ませるタイプのRPG。各章の冒頭部分もすべて日本語化されている

 


■「PCで遊ぶテーブルトークRPG」的プレイ感覚


いくつもの小さなクエストを重ねながら,メインのストーリーは少しずつ展開し,核心へと迫っていく
 ちょっと気になる部分もある。翻訳が甘く感じられるのだ。日本語ローカライズ作品をプレイしたことのある人なら,ある程度ぎこちない日本語にも慣れているとは思うが,本作ではキャラクターの口調の不統一や,違和感のある翻訳,単純な誤字脱字などがかなり目立った。テキストの多い作品だけに,作業的にも大変な部分だとは思うが,逆にそれだけテキストが重要な作品ということでもある。もう少し気を配ってほしかったところだ。

 とまあ,ちょっと苦言を呈してはみたが,総合的に見て非常に良くできた作品であることは間違いない。一連のD&Dをベースにした作品のファンはもちろん,本格派RPG好きや,テーブルトークRPGの素養があるプレイヤーなら,絶対におすすめだ。
 とくに,NPCとの会話(選択肢が豊富だ)を中心にストーリーが進んでいくところや,細かいクエストを軸にメインストーリーが展開していくところは,テーブルトークRPGのセッションに近いプレイ感覚がある。今回のレビューでは残念ながら試せなかったが,LAN接続やインターネット経由でのマルチプレイも楽しそうだ。あまり現実的ではないが,6人のプレイヤーを集め,一部屋にPCを6台持ち込んでLAN接続して遊んでみたい,と思わせられる作品だった。

 

NPCとの会話は実に豊富。会話中の選択肢やキャラクターのパラメータによって,展開が変化することも ゲーム中には,しばしば魔法のアイテムを入手できる。その説明文を読むだけでも,なかなか面白い 6人までのマルチプレイも可能。パーティメンバーの一人一人を,別プレイヤーが担当することになる

 

タイトル アイスウインド デイルII 日本語版
開発元 Black Isle Studios 発売元 メディアクエスト/ライブドア(販売)
発売日 2005/03/11 価格 9429円(税込)
 
動作環境 Windows 98/Me/2000/XP

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