ギルティギア ゼクス
Text by Gueed 27th Dec.2001
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オープニングムービーのワンカット。彼は本作の準主役ともいえるカイ・キスク |
本作を象徴するワンカット。敵は血だるま自分は火だるまで,もうなにがなんだかわかりません |
筆者が"ソレ"と出会ったのは駅前のゲーセン。その日も,好んでプレイするバーチャファイターなどの3D格闘アクションをひととおり見た後(やれよ),いつものように新作ゲームを物色したりしていた。
どこのゲーセンにも必ずといってよいほど設置してある2D格闘アクション,いわゆる"格ゲー"コーナー。いつもと変わらぬゲーム群の中にひときわ異彩を放つゲームがあった。目を平行法や交差法にして歩いていても飛びこんでくるド派手な画面,そして女性の黄色い声と,男の気合がこもった叫び。いうまでもない,本作「ギルティギア ゼクス」(以下,GGX)である。
本作は,プレイステーションで発売された「ギルティギア」の続編として登場。アーケードでリリースされ,後にコンシューマ機にも移植されるほど人気を博するという,"格ゲー"界でスマッシュヒットを飛ばした作品である。
'90年代前半に格ゲーの火付け役してデビューして以来,およそ現在のオーソドックスな2D格闘アクションの操作スタイルを確立した"ストII"。そう,「波動拳!」「昇竜拳っ!」という声をゲーセンにけたたましく鳴り響かせていた"アレ"だ。"ストII"を踏襲した作品はカプコンやSNKを始め,それこそ星の数ほどリリースされている。非常に陳腐な言い方で申し訳ないが,本作も例外なくその操作スタイルを脈々と受けついでいるといえよう。が,本作が同ジャンルのほかゲームと同じ進化をたどったかというと答えは"否"である。
今回サイバーフロントが,そのアーケード&コンシューマ界のちょっとした異端児GGXのPC版を発売した。なかなかPCに移植されない"格ゲー"というジャンルで,しかもバリバリにコンシューマライクな本作だが,ほかのゲームと一線を画したコンセプトと,そこに秘められた魅力を紹介していこう。
超美麗なグラフィックスで……って,そんなの聞き飽きた!
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大技の発動時は背景も変化する。黒の背景がシリアスなストーリーを連想させる |
本作の特徴の一つに,ズバ抜けて美しくかつ派手なグラフィックスが挙げられる。しかし前述したように,同ジャンルのゲームはそのほとんどが"ストII"を踏襲したもの。ほかの作品と差別化する主たる要素として"見栄え"を派手にして,戦闘中の興奮度を高めるのは基本中の基本だといえる。どこぞのベンチマークのような派手さだけを前面に押し出す(と感じる)作品が多いなか,本作にはあきらかに"美しい派手さ"へのこだわりが伝わってくるのだ。
スクリーンショットを見ても一目瞭然だが,とくに攻撃時,防御時,必殺技発動時などのエフェクトは素晴らしいのひとこと。細緻に渡る描き込みと透明処理,そしてほかのゲームと比べて圧倒的な画面情報量が見るものを魅了する。炎や雷のエフェクトは,開発者みずから業界最高のクオリティを自負しているほどだ。
さらに無視できないのが,作り手の狂気(?)を垣間見ることのできる凝りに凝った"技"の数々。後述するが本作には"一撃必殺技" "覚醒必殺技"など,ほかの作品でいうところの"超必殺技"にあたる大技が存在するのだが,それも大きな見どころ。とくに一撃必殺技は,発動から15秒近くも技のアニメーションが続くものがあったりと,食らった瞬間にコントローラを手放してしまいたくなるような技も少なくない。
また,この作品に登場するキャラクターは個性がハンパじゃなく,オーソドックスな剣で闘うものやカマで闘うものから,ビリヤードのキューを手に闘う者,果ては手術用のメスを手に闘う者がまでがいる変わりダネぞろい。もちろん必殺技のアニメーションも,それぞれの個性をいっそう際立たせるものに仕上がっている(例えば,ビリヤードのキューが武器のキャラクター"ヴェノム"の必殺技アニメーションは,ナインボールのブレイクショットだったりするのだ)。
言葉で言っても伝わりにくいだろう。百聞は一見にしかず,思わず撮影してしまった"一撃必殺技"の連続スクリーンショットを見て想像してみてほしい。
円熟したゲームシステム+αが練習意欲をソソります
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成功すると全身が白く光る直前ガード。ガード後の硬直を軽減する上級テクニックだ |
ハナシを筆者と本作との出会いに戻そう。
初めて出会った駅前のゲーセンで,筆者はあえてそのゲームを無視した。なぜか? それは過去の経験上,キャラクター性の強いゲームはゲームシステムがおざなりになってしまう傾向があると思っていたのだ(これは完全な筆者の偏見です,スマン)。しかしその予想に反して,本作のゲームシステムは緻密な計算のもとに設計され,開発者の思惑と企みがてんこ盛りな内容に仕上がっていたのである。
まずは,そのネーミングセンスを若干疑いながら(?)も,ひときわ興味をソソるシステム"ロマンキャンセル"(以下,ロマンC)。技のキャンセルは古くから存在していて,基本システムとして組み込むゲームが多いのは周知の事実。このロマンCも例にもれず,発動した技を強制的にキャンセルして連続技へつなげたり,大技の硬化時間を短縮するなどを目的として使用する。
しかし,キャラが空中判定のときに(ジャンプ中や空中に飛び上がる技の最中)ロマンCをかけた場合と地上判定時でのソレとでは,キャンセル後の制限や連続技の組み立てに違いが出てくるなど,けっして一筋縄ではいかない奥の深いシステムだったりもする。キャンセル後の連続技の組み立てには無限の組み合わせがあり,自分のプレイスタイル沿ったもの,また単純に好みの連続技を見い出す楽しみも残っている(余談だが,この"ロマンキャンセル"のネーミングは開発側でもひともんちゃくあったらしく,当初は"ドタキャン"なども候補に挙がっていたらしい)。
次に紹介するのが,試合をアップテンポに保ち,より戦闘をヒートアップさせるのにひと役かっているシステム"テンションゲージ"。画面下部に表示されているゲージを一定数溜めることによって,覚醒必殺技などの大技を発動させることができる。
しかしこのゲージが溜まるのは,ダッシュや攻撃など"攻め"に関する行動をとったときだけ。逆に,ステップバックやバックジャンプなどの消極的な行動を取り続けるとゲージが減少するという仕掛けになっていて,必然的に両者の戦いは,息をもつかせぬアツい攻防になるわけだ。せっかくの美しく派手なエフェクトの数々。消極的な戦いで消耗戦をするなど,この作品ではおことわりという意思表示がこのシステムにも反映されているようだ。
ともあれ,これらをフルに使いこなすには練習が必要。トレーニングモードもあって環境は整っているので,あとは技表を片手にひたすら訓練するのみ。まぁ,格ゲーはそれが面白さの大部分を占めていたりもするのだが。
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これはホントに格ゲーの画面か? 戦闘中に登場するアニメーションも非常に凝った作りだ |
キャラクターが行動を起すと飛び散る土煙。このあたりエフェクトに凝っているのが本作の特徴 |
このようなデカイキャラも縦横無人に暴れまわる |
これを食らうと一定時間行動が制限される |
そのキビシさゆえ,練習しないで瞬殺,練習しても秒殺……
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グリーンの輪が特徴的なフォルトディフェンス。なんと2D格闘アクション特有の"ケズリ"も無効化できる |
ダストアタックからの空中コンボは,20発以上はいることもザラ。決まると気持ちいいが,食らうとこの上なく不快だ |
そのほかにも,ダウン技を食らったときに立ち状態に復帰する"ダウン復帰"や,俗にいうエアリアルコンボの始動技"ダストアタック"といったいまでは当たり前のシステムはもちろん搭載している。
たくさんのシステムを搭載しているGGXだが「そんなにたくさんの要素は覚えられない」と敬遠してしまう人もいるだろう。もちろんすべての機能を使いこなすことによって,より高度な攻防や白熱した読み合いが楽しめるのは間違いない。しかし,実のところ細かいシステムは後回しにしても全然OK。基本となる移動方法と,ボタンを押すタイミングで連続技を発動することができる"ガトリングコンボ"さえ習得すれば結構戦えてしまうのがホントのところだ(もちろん初めのウチは,だが)。
このGGXで基本的な移動方法,そしてガトリングコンボ程度を覚えたら,友達を誘って対戦プレイをやるか,もしくは近所のゲーセンに足を運んでみるといい。しかし,いうまでもなくヤツラは猛者ぞろい。手も足も出ないまま昇天させられることも少なくないだろう。だが,この"ボロ負け"も練習意欲をソソってくれるし,なにより強いプレイヤーと戦うことで自分が使いこなせていないシステムが見えてくることもあるので,上達にはうってつけのショック療法でもある。
はやいハナシが"カッコイイ"のだ!
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本作一の変わりダネ"ファウスト"のダストアタック。見せられるだけでムカツク技というのもめずらしい |
と,足早に紹介したが,忘れてはならないのがその個性的なキャラ達が織り成すストーリーと本作のバックグラウンド。生物兵器"GEAR"を中心に,キャラクター同士の因縁や,個々のキャラクターの存在感を引き立たせるさまざまな演出が,ゲームの随所に散りばめられている。キャラクター一人につき,その他全員のキャラクター分の勝ち台詞が用意されていたり,因縁のあるキャラクター同士が対戦する場合は,試合前にちょっとしたショートストーリーが用意されていたりするのだ。ストーリー全体を把握することで,キャラクターへの感情移入が高まり,より味わい深いプレイを楽しむことができるだろう。
PC版GGXは完全移植ということで,要求されるマシンスペックさえ満たしていればほかのプラットフォームと同等のクオリティでプレイが楽しめる。プレイにはゲームのCD-ROMが必要となるが,キャラクター選択時のロード時間などが省略されていて,ストレスなくサクサクプレイできるのがPC版の強みだろう。
筆者がもっている"格ゲー"のイメージは二通りある。一つは,ストーリーやキャラクター性を前面に押し出したタイプ。もう一つは,純粋に対戦の読み合いを楽しむためのカチッとしたゲームシステムがウリの"対戦ツール"タイプだ。
本作は,その両方を併せ持っているような印象を受ける。凝ったストーリーやひとクセもふたクセもあるキャラクターも,そのキチンと設計されたゲームシステムのおかげで鼻につかないのだ。そういう意味では,前述の2タイプを好む両方のユーザ層を獲得する可能性を秘めた,興味深い作品といえよう。
最後にもうひとことだけ,このゲームを象徴する言葉があるとしたらズバリ,"カッコイイ"。だがこの言葉のニュアンスだけは,プレイしてみなければわからないだろう。(Gueed)
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扇子の裏で八つ裂きにされている敵。ご愁傷さまです |
各キャラクターのインフォメーション画面には簡単な技表がある。初心者にはありがたい心くばりだ |
攻撃されると真っ赤な鮮血が……。教育上よくないが,銀色よりはマシか |
たくさんの人が踏み倒したあげく…… |
転んだおばさんのハラでキメッ! もはや理解不可能デス。 |
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