SHOGUN TOTAL WAR -Gold Edition-

Text by TAITAI
19th Oct.2001 

 「SHOGUN TOTAL WAR -Gold Edition-」は,日本の戦国時代を題材にした"海外製"のリアルタイムストラテジーゲーム「SHOGUN TOTAL WAR」(以下,Shogun)に,"蒙古襲来"を題材にしたアドオンキット「SHOGUN TOTAL WAR -THE MONGOL INVASION-」を同梱させたお買い得なパッケージだ。国内ではエレクトロニック・アーツ・スクウェアから完全日本語版が発売されている。

豪華絢爛たる戦国絵巻をゲーム上で再現!

 「SHOGUN TOTAL WAR」は,壮麗かつ絢爛な合戦模様をフル3Dグラフィックスで再現した,"合戦シミュレーション"だ。織田家,武田家,上杉家,毛利家など7人の戦国大名から一人を選択して全国制覇の夢を目指す「天下統一」モードと,"川中島の合戦"や"姉川の戦い"などといった歴史的な戦いを体験できる「歴史合戦」モード,そして自由に戦場をカスタマイズして遊べる「かすたむ合戦」(ひらがなで表示されるのはちょっと奇妙)モードの計三つのシングルプレイモードが用意されている。また,6人までをサポートしたマルチプレイモードも用意されている。
 基本的なゲームシステムは,戦略部分がターン制となっていて,兵力を表わすコマが敵の領土に進入するとリアルタイム制の戦闘が開始されるというシンプルなもの。戦闘シーンでは部隊単位で管理されているので,画面の派手さとはうらはらに簡単な操作性となっている。分かりやすいインタフェースに徹した感があり,プレイしやすいのが特徴の一つだ。
 ボードゲーム調の戦略マップを睨みながらコマを動かしていく「天下統一」モードでは,施設の建設や兵士の訓練(ユニットの生産)のような簡単なコマンドしか用意されておらず,内政的な要素が大胆に簡略化されている。その結果,プレイヤーは戦略面での面白さだけを味わえるのだ。「圧倒的に不利だが,これを耐えきれば援軍が来る!」というようなシチュエーションを生み出して,"合戦の面白さ"を引き出す絶妙なスパイスとしての機能を見事に果たしているのである。

 拡張版を含むこのGold Editionでは,天下統一モードで開始する時代が1530年,1550年,1580年,戦国時代,元寇から選べるようになっているほか,信長,秀吉,家康,フビライ・ハーンを主人公として,史実上の有名な合戦を闘いぬく「歴史的天下統一」モードが追加されている。
 また,「忍兵」「剣聖」「長巻騎馬隊」を始めとした新ユニットの追加やマップエディタが搭載され,前作をプレイしたファンも新たな気持ちで楽しめるような盛り沢山の内容となっている。ちなみに,モンゴルシナリオでは鉄砲系のユニットが使用できないなど時代を考慮した細かい調整も行なわれており,開発者側が時代錯誤をしているわけではないことをうかがい知ることができる。

様式美と壮麗さが溢れる,黒澤映画さながらの合戦描写

 いまは亡き日本映画界の巨匠・黒澤明 監督が残した「影武者」と「乱」をご存じだろうか? 映えのある様式美と風格を漂わせ,重厚な美しさを見せてくれるこれらの映画は,黒澤 明監督が表現する芸術そのものだといえる。特に,戦国時代の名将・武田信玄の影武者の逸話をベースに戦国の世の様相を見事に描き切った「影武者」は,カンヌ映画祭グランプリを受賞し,国内だけでなく海外の人々にも大きな影響を与えた作品である。
 そんな黒澤明 監督に"多大な影響を受けた"と開発者自身が公言しているだけあり,Shogunでは,黒澤映画ばりの迫力ある"合戦絵巻"がモニター上に映し出される。土煙を巻き上げながら大軍団が移動し,両陣営が整然と陣を敷いて向かい合う様は,まさに圧巻の一言。ほかのどんなゲームでも味うことのできなかった"合戦の雰囲気"を,えもいえぬ重厚感と共に味わうことができる。
 孫子の兵法をモデルにしたという戦闘システムはよく練り込まれており,集合隊形,散開隊形,楔隊形といった陣形から,士気,疲労度,地勢の影響など,聞く人が聞けば大喜び(当然,筆者も大喜び)してしまうような要素が,複雑さを感じさせない視覚的な形で見事に盛り込まれているのだ。

壮大な歴史ロマンを感じたいプレイヤーにうってつけ

 戦国時代の凄烈かつ壮観な合戦模様を再現する試みは,これまでにもあらゆるメディアやゲームで行なわれてきた。数千人もの兵士達が戦場を駆け回る圧倒的な映像表現と完成されたゲームシステムを兼ね備える本作は,その一つの成功例であり,最高峰の"歴史エンターテイメント"であるといえるだろう。
 ただ,「芸者」が最強の暗殺ユニットということや何かが違う切腹シーンの演出など,"日本を勘違いしている"雰囲気を随所で感じさせてくれるところに,"洋ゲーらしさ"があるといえるだろう。
 史実の監修に英Leeds大学の日本史研究家が起用されてるらしいのだが,それでいて芸者が鍛え込まれた忍者のような扱いをされているのは,どうしたものかと思ってしまう。しかし,そんなところを些細な違和感としか感じさせないゲームの本質と凄みは,合戦の描写にこそあるのだ。細かい個所で目くじらを立てるのは,無粋以外のなにもでもない。日本人以外のクリエイター達が日本の戦国時代を題材にして,これほどまでの作品を作り上げたという事実は,賞賛に値することなのではないだろうか。

 「軍団を指揮する総大将になり,自在に兵を運用してみたい!」といった歴史好きであれば,一度は思い描く夢物語が実現できる本作。アドオンキットによって,壮大な歴史をさまざまな側面からプレイできるのは嬉しい部分だ。また6980円という控えめな価格設定となっているので,本作をプレイしたことのない人にはまさにうってつけのパッケージといえるだろう。
 壮大な合戦絵巻を,"体験"できる本作は,歴史好きを自認するすべてのユーザーにお薦めしたいタイトルだ。

 

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■発売元:エレクトロニック・アーツ・スクウェア
■価格:6980円
■問い合わせ先:エレクトロニック・アーツ・スクウェア TEL 03-5436-6499
■動作環境:Windows 9x/Me,MMX Pentium233MHz以上(PentiumII/300MHz以上推奨),メモリ64MB(128MB以上推奨),空きHDD容量700MB以上(1.8GB以上推奨),DirectX 8.0a以上,最大6人のマルチプレイ可能

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