最も低価格なIntel MacであるMac mini。もちろん,Boot Campを使えばWindows XPのインストールが可能だ |
アップルコンピュータが4月6日に発表した「Boot Camp」は,Intel製CPU(およびアーキテクチャ)を採用したMac(以下,Intel Mac)上で,Windows XPを動作させるためのツールだ(要Mac OS X v10.4.6)。
Mac OSの次期メジャーアップデート,「Leopard」(レパード)ではこの機能が実装される予定で,それに向けてのパブリックβという位置付けである。
とはいえ,Intel製CPUを搭載したMacでWindowsも動作させられるとなったら,試してみたくなるのが人情というもの。
そこで今回,4Gamerとしては最も気になる点,「Mac miniにWindows XPをインストールした場合,ゲームを遊ぶ環境たり得るか?」を検証してみた。
■Boot CampでWindowsとMacのデュアルブートが可能に
Intel Macでは,CPUはもちろんのこと,チップセットなどもWindowsマシンに搭載されているものと同じだ。ただ,Windowsマシンで使われているBIOSの代わりに,EFIと呼ばれるファームウェアを搭載している関係で,EFIに対応していないWindows XPは,これまでインストールできなかった。これをクリアすべく,Intel MacにWindows XPをインストールしようという賞金付きコンテストが行われていたのは記憶に新しいところだ。
こういった動きの中,アップルはIntel Mac上でWindowsを動作させることについて,表立って否定することはなかった。このあたり,従来のアップルの姿勢とは一線を画しており,様々な憶測を呼んでいたのだが,結局のところアップル自身がIntel Mac上でWindowsを動作させることを計画していたというわけだ。
さて,Boot Campを使ってIntel Mac上でWindowsを動かすために,必要なものを確認しておこう。まずは,アップルのサイトで公開されているBoot Campそのもの。そして,Windows XPのインストールCD。もう一つは,Intel MacでWindows XPを動作させるときに必要な,各種ドライバ類を記録するためのブランクCD-R(DVD-Rなどでも可)メディアだ。ちなみにWindows XPのインストールCDは,Intel Mac購入者を対象にOEM版を販売しているショップもある。
それでは早速インストール……といきたいところだが,その前にIntel Macのファームウェアをアップデートする必要がある。このアップデータもまた,アップルのサイトでダウンロード可能だ。
準備が整ったらBoot Campを使ってWindows用のパーティションとドライバCDを作成しよう。その後,Windows XPをインストールしたら,この時点でWindows XPが起動する。仕上げにドライバCDから各種ドライバ類をインストールすれば,作業は完了だ。所要時間としては,おおよそ2時間程度といったところだろう。
Intel MacにWindows XPをインストールするには,Boot CampでWindows用のパーティションを作成する必要がある。なお,全領域をWindows用にすることも可能 | Windows XPインストール後は,起動時にOSを選択できる。「Virtual PC」のように,Mac OS上でWindowsを動作させるようなことはできない |
■CPUのパフォーマンスは,Core DuoがCore Soloを圧倒
今回は,「Mac mini」のCore Duo/1.66GHzモデル,Core Solo/1.50GHzモデルにBoot Campを使ってWindows XPをインストールし,そのパフォーマンスを計測してみた。なお,Core Duo/1.66GHzモデルに関しては,512MBのメモリを搭載したものと,1GBのメモリを搭載したものの,二つを使用している。
ただし1GBのほうは,1GBのDDR2 SDRAMが1枚という構成。そのため,Mac miniで採用されているチップセット「Intel 945GT Express」の,デュアルチャネルメモリアクセス機能をフルに活用できていない。Apple StoreのBTOメニューでは,メモリ増設が2枚単位なので,実際に購入した場合は,今回のテスト結果よりも良い成績が見込まれる。
なお,Boot Camp自体はノンサポートのパブリックβという扱いになっている。そのため,以下のベンチマーク結果は,2006年5月1日段階のものであることを,あらかじめご了承いただきたい。というのも,今後各種ドライバなどが更新されれば,さらに高いパフォーマンスが引き出される余地もあるからだ(その逆もあるかもしれないが)。
まず最初に,FutureMarkの「PCMark05」を使用し,ベンチマークテストを行った。このベンチマークツールはマシンの総合的なパフォーマンスを測定できるものだ。さらに,19.95ドルを支払ってAdvanced版のレジストを行えば,CPUやメモリ,グラフィックスといった個々のスコアなども測定可能だが,Advanced版は商用利用ができないライセンスのため,今回はProfessional版を使用している。
PCMarkの結果はグラフ1のとおりだが,Core Duo/1.66GHzがCore Solo/1.50GHzを圧倒。CPUのスコアは1.5倍弱の差がついている。コアが二つあるからといって,単純に2倍というわけにはいかないが,デュアルコアの能力を見せつけられた感じだ。
メモリとグラフィックスのスコアに関しては,Core Duo/1.66GHz(メインメモリ1GB)よりもCore Duo/1.66GHz(メインメモリ512MB)が高速になっているが,これは前述の理由によるものだろう。
続いて,CPUやメモリの詳細なベンチマークを計測するべくSiSoftwareの「Sandra Lite 2005.SR3」を使用した。整数演算ベンチマークのDhrystone,浮動小数点演算のベンチマークであるWhetstoneの結果はグラフ2のとおりで,演算能力はかなり高い。マルチメディア系のベンチマーク(グラフ3)もデュアルコアのパフォーマンスが好成績だ。
メインメモリの帯域幅のベンチマークはグラフ4のとおりだが,MacMiniのメモリの帯域幅はおよそ3.2GB/秒となっており,PC5300のデュアルチャネルにおける理論上の帯域幅(10.6GB/秒)と比べると3分の1前後となっている。とはいえ,メインメモリをグラフィックスメモリと共用していることを考えると,まずまずの結果といえるだろう。
■Core Duoなら,FF XIもそこそこ快適に遊べる
最近のゲームは,3Dグラフィックスを採用したものが多い。となると,マシンの3D描画能力も気になるポイントだ。Mac miniでは,チップセット内蔵グラフィックスコア,「Intel Graphics Media Accelerator 950」(以下,GMA950)を採用しているので,これの性能をチェックしてみた。
まずは,FutureMark社の「3DMark03」のベンチマーク結果を見てみよう。本来ならば,最新の3DMark06を使いたいところだが,3DMark06の要求するハードウェアスペックが高いため,DirectX 9対応のグラフィックス機能を持っているGMA950といえども少々荷が重い。そこで,あえて旧バージョンを使用している。
結果はグラフ5のとおりだが,Core Duo/1.66GHz(メインメモリ512MB)で1674というスコアを記録している。チップセット内蔵型のグラフィックス機能としては優秀な部類に入るだろう。さすがに最新の3Dゲームにはつらいと言わざるを得ないが,解像度や描画エフェクトを落とせば,ある程度対応可能だろう。また,少し前のゲームであれば,問題なくプレイできると思われる。
次に,OpenGL系のベンチマークソフトであるCINEBENCH 9.5(以下,CINEBENCH)を使用。その結果はグラフ6のとおりだ。このベンチマークソフトは,MacOS Xのベンチマークでも使用しているが,MacOS Xとは傾向が異なっているのが興味深い。
シェーディングの結果を見ると,MacOS XではCPUによるシェーディングのほうが高いスコアをあげているのに対し,Windows上ではGPUを用いたほうが高スコアを記録している。これはMacOS XがOpenGLの機能をOS内に包括していることとも関係しているように思われる。とはいうものの,スコアだけで見た場合,OpenGL系の処理はMacOS Xのほうに軍配が上がりそうだ。
そして最後にFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3(以下,FFベンチ)を使用してみた。FFベンチには低解像度モードと高解像度モードの二つのモードがあるが,その両方を計測した結果がグラフ7だ。
低解像度モードの場合,Core Duo/1.66GHz(メインメモリ512GB)で3000オーバーを記録した。このスコアはいわゆる「とてつよ」に属し,十分快適に遊べるスペックといえる。また,Core Duo/1.66GHz(メインメモリ512MB)は,高解像度モードでも2000を超えており,「ファイナルファンタジーXI」をプレイするに耐えるパフォーマンスといえるだろう。ということは,クォータービュー視点メインのものや,比較的動作の軽い3Dオンラインゲームであれば,ほぼ問題なく遊べるはずだ。
■Windowsブート対応で,Mac miniがより魅力的に
今回はWindows XPを動作させてみたわけだが,すでにWindowsの世界では次期OSである「Windows Vista」の話題がちらほら聞こえ始めている。PCメーカー各社も,Windows Vista対応のPCを「Windows Vista Capable PC」として販売している。Mac miniは,Windows Vista Capable PCと比較しても,遜色のないスペックを持っており,おそらくはWindows Vistaを快適に動作させられるだろう(その頃には,よりハイスペックなMac miniがリリースされている可能性もあるが……)。
現段階でいえるのは,Boot Campの登場により,Intel MacはWindowsユーザーにとっても気になる存在になったということ。Intel Macの中でも最もコンパクトで,低価格なデスクトップマシンであるMac miniは,前モデルと比較すると価格は上がってしまっているものの,Windowsマシンとしても使えるというのは,大きなアドバンテージだろう。
最新の3Dゲームをバリバリ遊びたい! という向きには,力不足である点は否めないが,とりあえずIntel Macを使ってみたいという人,Mac OSとWindowsの両方を使用したい人,ついでに両OSでゲームを軽く遊んでみたいという人には,十分お勧めできる。
アップルは,2006年内に全ラインアップをIntelベースに移行する予定だ。WindowsをインストールしたMacで,最新の3Dゲームを遊びたい! という人は,ハイエンドデスクトップの登場を待ったほうがよいかもしれない。