■ユーザーの期待が膨らむ本作をクローズドβで試してみる
コンシューマゲーム機で人気のRPG"テイルズ オブ シリーズ"がMMOPRG化。ナムコ初の本格的オンラインゲームとなるわけだが,果たしてその出来栄えは……? |
そして,その世界観を受け継いだオンラインゲームが,現在クローズドβテストが行われている「テイルズ オブ エターニア オンライン」(以下,TOEO)である。テイルズ オブ エターニアのオンラインゲーム版開発着手のニュースが流れてからここまでの間,シリーズのファンとオンラインゲーマーの期待を集めてきた本作は各方面から,今年度にサービス開始が予定されている数々のMMORPGの中で,注目作の一つに挙げられている。
今回は,そのTOEOの肝となるシステムを説明しつつ,実際にクローズドβテストをプレイしてみた印象を書いてみよう。
■"エターニア"世界へ没入するための仕掛け
キャラクターは,性別,職業,髪型,髪の色,輪郭,目の形,瞳の色を自分好みに選択して作成できる |
時代的にもエターニアの物語とかぶっているので,もしかすると今後エターニアのキャラ達と,ゲーム中で出会うかもしれない。オリジナルを考慮した作りにも,期待したいところだ。
ゲームをスタートすると,キャラ作成の画面へ。ちなみに,TOEOでキャラクターデザインを担当しているのは,オリジナルと同じくいのまたむつみ氏。さすがにキャラ作成用パーツの一つ一つをいのまた氏が描いたというわけではないだろうが,自分が作成したキャラクターも,どことなくいのまた氏のイラストのように見える。これもまた,"テイルズ オブ シリーズ"のファンにとっては,嬉しいところだ。
キャラクターは,性別,職業,髪型,髪の色,輪郭,目の形,瞳の色を選択して作成し,職業は,戦士,剣士,聖晶霊術士,魔晶霊術士,格闘家の五つから選択が可能。とくに職業は,今後のプレイスタイルに大きな影響を与えるため,慎重に決めなければならない。ちなみに筆者は格闘家を選択した。
また,キャラと同時に出身地も決めるのだが,ここでも"木陰の村モルル","学問の街ミンツ","商業の町バロール"の三つの中から選択することに。なお,ゲームのスタート地点はそれぞれの出身地と対応している。
各キャラクターのグラフィックス。左から戦士,剣士,聖晶霊術士,魔晶霊術士,格闘家 |
ちなみに,今作でのフィールドはすべてクォータビューの2Dで描画されている。オリジナルであるエターニアは,フルポリゴンで拡大・回転が可能な3Dで描かれていたので,少々意外だが,プレイヤーキャラクターのグラフィックスとの兼ね合いや,エンカウントチャットのしやすさ,歩きやすさの点において,この見下ろし限定の2Dマップもそれなりに実用的だ。遊びやすさを重視した結果なのだろう。また,公式サイトで「原作では描かれなかったフィールドも冒険の舞台となる」と明言されているので,それも先々のお楽しみ要素といえるだろう。
選択できる出身地の一つ,学問の街ミンツ。このミンツ大学の構内には研究室や教室がある | モルルの宿屋,くつろぎ。樹上に築かれたモルルの特徴的な建物の様子が見て取れる |
商業の町バロールの北部広場はいつでもにぎやか。いたるところで露店が見られる | フィールドはこのように2Dで描かれている。優しく,温かみがある絵柄が特徴 |
■新戦闘システム,オンライン リニアモーション バトル システムについて
原作のエンカウント方式とは違い,本作では敵シンボルキャラをダブルクリックすると戦闘になる |
本作では,それをオンラインゲーム向けにチューンした,"オンライン リニアモーション バトル システム"(略してO-LMB)を搭載,画面構成などはほぼ原作のエターニアと同じものとなっている。
だが,実際に遊んでみると,コントローラーとマウス&キーボードの違いもあってか,微妙に操作感が異なり,最初は戸惑った。その戸惑いの原因となっている要素で最たるものは,コンボタイマーの存在だろう。
このタイマーは,最初の攻撃を繰り出す瞬間から減り始め,何もしないとそのまま消滅するが,タイマーが消えるまでにファンクションキーなどを押して別の攻撃を入力すればコンボ(連続攻撃)が発生する,というもの。
原作のリニアモーション バトル システムは,タイミングよくボタンを押せば(もしくはコマンド入力をすれば)コンボが発生していたのに対して,今作では,極端な言い方をすればゲージがなくなるまでの間にキーを連打してコンボを発生させるものとなっている。これには"テイルズ オブ シリーズ"をやりこんだプレイヤーであればあるほど,違和感を抱くはず。
とはいえ,何度も戦闘をこなせば慣れてくるし,原作よりもカンタンにコンボが出せるようになる。原作どおりの戦闘は,他プレイヤーと一緒に戦闘をするMMORPGという特性上,難しかったのかもしれない。それらの問題点をうまく回避しつつ原作の持ち味を引き出したこのO-LMBは,慣れが必要というデメリットはあるにせよ,よく考えられたシステムだと思う。
また,戦闘自体にアクションゲーム的な爽快感があるため,単純なレベル上げ作業も既存の作品より苦にはならない(と思っている)点も,特筆すべきポイントだ。
敵を連続攻撃でぶっ飛ばす爽快感が,原作どおりにしっかり再現されているのがポイント | パーティの人数は最大4人まで。戦闘も最大4人が同時に参加して行われる | 画面左下に見える黄色い横長のゲージがコンボタイマー。これがなくなる前に次の攻撃を入力するのだ |
スキルは戦闘を重ねていくことで習得する。原作で有名な技も多数登場するようだ | 剣士のスキル,"風雷神剣"。敵を宙に浮かせつつ,メッタ刺しにする使い勝手のいいスキルだ | パーティー全員のHPを回復するナース。走ってくるナース達の姿が可愛らしい |
■"仲間との絆"を重視したゲーム性
画面中央下に見えるのがガイドキャラのねこにん。アクションを交えていろいろ教えてくれる |
ねこにんは,ゲーム開始直後のチュートリアルを担当すると同時に,これまでオンラインゲームに触れたことのないプレイヤーに対しても懇切丁寧なレクチャーをしてくれる。しかもグラフィカルに動きながら説明してくれるため(イメージとしては,「Microsoft Office」の"Office アシスタント"を想像するといいだろう),視覚的にも入っていきやすいのだ。余談ではあるが,このねこにんは原作に登場したキャラ("ねこにんの里"というところで登場)で,見た目的にもかなりの癒し系キャラであることを付け加えておきたい。
さて,最後にコミュニケーション部分にも触れておこう。他プレイヤーとのやりとりで主となるチャット部分では,"フェイスチャット"と呼ばれる独自のシステムを採用。これは,相手のキャラの表情がウィンドウ上に表示されるチャットで,グラフィックスを重視していた"テイルズ オブ シリーズ"らしい演出。小さなキャラ同士がフキ出しで会話するだけよりも,こちらのほうが会話している感じが出るため,本作のテーマである"仲間との絆"を描くためには適切なシステムなのだと思われる。実際に筆者も見知らぬ人とフェイスチャットで会話してみたが,表情変更の手間などはあるものの,従来のMMORPGでの会話に比べて,非常に相手の感情が伝わってきやすいと感じた。
また,仲間との絆という話題が出たところで,もう一つ触れておきたいのが,"おんぶシステム"について。冒険中に倒れた他プレイヤーをおんぶして町まで運搬でき,おんぶによって戦闘不能が回復したキャラにはデスペナルティ(戦闘不能になることでレベルアップに必要な経験値が減少)が発生しないという,かなりお得なシステムだ。
こう書くと,良いことずくめのように思えるが,実はデメリットも存在する。助けた側はフィールドを走れなくなり,アクティブな敵から逃げられないなどリスクを背負うことになるのだ。「自分の安全を犠牲にしても他人を助ける」精神が必要なわけだが,だからこそこの行為からは,仲間との絆をより強く感じられる。
もちろんパーティメンバーとの絆だけでなく,見知らぬ人ともおんぶを通じて絆が生まれることがある。実際,筆者も戦闘不能に陥ったとき,そのままフィールドで寝っ転がっていたら,何人もの人に「おんぶしましょうか?」と声をかけてもらえた。遠くの親戚より近くの他人。こういう親切は本当にうれしく感じるものだ。
そのほかにも,NPCとクエストをこなしていく"PENシステム"や,多人数参加型イベント(クローズドβテストでは未実装)などもあり,NPC,他プレイヤーを問わず,エターニア世界のキャラ達との絆を感じられるシステムが満載となっている本作品。最先端のグラフィックスをふんだんに使ったゲームを比較すると,見ための部分では地味な印象を受けてしまうのは否定できないが,冒険は一人でするものじゃなく,仲間と共にするもの。制作者がTOEOに託したそのメッセージは,クローズドβテストでも十分に伝わってきた。
フェイスチャットではこのように表情を変化させることで,相手に感情を伝えられるのだ | フェイスチャットはパーティー内でも使用可能。最大4人で顔を見ながら会話できる |
戦闘不能になったら,近くの他プレイヤーにおんぶしてもらえるよう,声をかけてみよう | おんぶしたまま町の教会まで運んでくれた。このまま回復すればデスペナルティはゼロだ | PENシステムは,NPCとのパーティープレイが楽しめる。心強い味方とともにクエストをこなせ |