Desert Rats vs. Afrika Korps
Text by 奥谷海人
ノルマンディ上陸作戦やスターリングラードの攻防など,第二次世界大戦のメジャーな戦いにスポットライトを当てたゲームが増える中,久しぶりに北アフリカ戦線を描いた「Desert Rats vs. Afrika Korps」が,欧米で3月にもリリースされる。
砂埃やタイヤの動きまでが表現された美しいグラフィックスと,定番ながらも手堅いプレイ感で,すでに公開されているデモでも完成度の高さが伺える。戦争モノやRTSが大好きなゲーマーには,かなり期待できそうな作品だ。
■機甲師団が砂漠で激突するリアルタイム戦略シミュレーション
「Desert Rats vs. Afrika Korps」は,3Dグラフィックスを駆使した本格的なRTSだ。
本作のテーマになっている北アフリカ戦線は,最近では「Battlefield 1942」などでも扱われているものの,ヨーロッパ内地で行われた戦闘と比べるとゲーム化されることは少ない。太平洋ではちょうど真珠湾攻撃が行われたころであり,我々日本人の関心も大きいとはいえない。
だがドイツ/イタリアの枢軸軍からすれば英雄ロンメル将軍率いるアフリカ機甲部隊が活躍した戦線であり,イギリスやアメリカを中心にした連合軍にとっては,地中海側からドイツを脅かすための重要な戦いであった。
機械化した兵器で戦い合う地上戦としては,史上初ともいえる重要な歴史的イベントでもあるのだ。
帝国主義国家の牙が剥き出しになった北アフリカだったが,次々と兵力を投入していく連合軍(俗称:デザート・ラッツ)と,旧式の兵器と少ない物資で孤軍奮闘するロンメル将軍のアフリカ軍団の激しい戦いは,両陣営にとっても感慨深い歴史の一幕なのである。
結果的には,ヒトラー政権に疑問を抱いていたロンメルが負傷してドイツに帰還している間に,彼の意思とは関係のないところでヒトラーの暗殺未遂事件が起こったことから,ロンメルは嫌疑をかけられて服毒自殺を強要されることになる。そのため彼は,ナチスドイツ側の司令官の中でも例外的に同情されることが多い人物なのである。
Desert Rats vs. Afrika Korpsではロンメル将軍自身は登場しないようだが,ゲームのストーリーはニュートラルに描かれており,キャンペーンには,両軍の立場で10ミッションずつが用意されている。戦前は友達同士だったが,運命の成り行きで今は戦っているという英軍とドイツ軍の司令官が,それぞれのキャンペーンの主役なのである。
キャンペーンは,トリポリやトブルクなど市街地での戦闘や,偵察,要人のエスコートなど多岐に渡るミッションで構成されている。それぞれのミッションの冒頭では,史実の紹介や作戦,ゲーム目的などのブリーフィングが行われる。
またキャンペーンモードをクリアした人,あるいは単に面倒臭く思った人には,ミッションをジェネレートしてくれる,17種のマップからなるインスタント・モードも用意されている。
ゲームが始まると,誰もがDesert Rats vs. Afrika Korpsの美しさに圧倒されるはずだ。「Command & Conquer:Generals」などごくわずかに前例はあるものの,第二次世界大戦の情景をここまで描き込んだRTSは,これまで皆無だったといっても過言ではない。
フレームレートを維持するためか,カメラモードはアングルを変更することこそできないが,左右360度に自在に回転できるし,ズームを使って15mから120mまでに設定された距離に視点を置くことが可能だ。物理効果も秀逸で,タンクにはサスペンションによる弾力吸収が感じられるし,爆破によって飛び散る部品や兵士なども描写されている。クッキリと描かれた影から車両の後塵に至るまで,灼熱の砂漠の風景が見事に表現されているのだ。
■さまざまなユニットを管理しながらも,壮大なキャンペーンが楽しめる
Desert Rats vs. Afrika Korpsでは,ゲーム中に資源を採掘するようなことはなく,「サドンストライク」や「MechCommander」のような形式で,あらかじめ与えられた兵器で師団を構築する。
両勢力合わせて70種類以上のユニットがあり,パンツァーやタイガーなどのタンクはもちろん,輸送トラックやモーターサイクル,重砲などの車両ユニットから,マシーンガナーやスナイパー,メディックといった兵士までを,1ミッションにつき数十ユニット選んでゲームを進めていく。中には偵察にも利用できる戦闘機や爆撃機も用意されている。
兵士のタイプは8種類,車両は7タイプとなっていて,各陣営では同じタイプのユニットでも複数のバリエーションが用意されている。車両を修理しながら侵攻することもできるし,リーダーユニットとなるコマンダーは近辺のユニットの能力を向上させてくれる。
当然タンクや戦闘機は師団に組み込むときのコストが高いので,ミッション内容や敵の戦力に見合った構成にする必要がある。この作業が複雑に思えるプレイヤーには,デフォルトの師団も用意されているので,シングルプレイヤーモードの序盤などで,ゲームに慣れるために利用できるだろう。
Desert Rats vs. Afrika Korpsでは,兵士ユニットが実際に車両に乗って操縦するというシステムになっている。特徴的なのは,タンクやトラック,ジープなどの車両の場合,兵士ユニットを一人しか搭乗させなければ,そのユニットの視界が極端に制限されてしまうということ。タンクには最大で3人搭乗でき,やはり3人乗っていたほうが,視界範囲や攻撃力が向上する。車両と兵士ユニットの数的バランスも,師団を組むうえでは非常に重要な要素なのである。
Blitzkriegモードに設定しておけば,生き残ったユニットを次のミッションに持ち越して使用できる。各兵士ユニットには経験値のパラメータがあり,3段階で成長する。ゲーム中の資源確保が必要のないタイプのゲームだけに,次のミッションでのユニット補充を極力抑えられるような仕様は必須といえるだろう。
一つのミッションには複数の目的が設定されていて,それをすべて達成することで,より高いポイントが入ることになる。中には,プレイヤーにはまったく存在が知らされない,"隠し目的"といったものも用意されている。シングルプレイヤーモードにおけるプレイヤーの成果(獲得ポイント)次第では,特殊ユニットが入手できたりすることもあるようだ。
マルチプレイヤーモードは,インターネットやLANで,最大4人でのプレイに限定されている。ゲームモードは多様で,デスマッチやキャプチャー・ザ・フラッグのほかにも,両軍の基地と基地をつなぐTobruk to El Alameinモードがある。これは,トブルクからエルアラメンまでの広大なマップで,二手に分かれたチームでプレイするもので,実際のキャンペーンのような体験が楽しめることになるはずだ。
サウンド面でも素晴らしいデキになっており,爆破やコマンド時に出る音声や,車両から出る機械的な効果音が,当時の情景を感じさせるものになっている。
BGMは,BAFTAというイギリスのアカデミー賞に相当する栄誉を受けたこともあるコンポーザによって60分に渡るサウンドトラックが用意され,しかもウィーン交響楽団によって演奏されているという抜け目なさ。さまざまな部分で,開発者たちの"本気"が伝わってくる作品に仕上がっている。
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Desert Rats vs. Afrika Korpsを制作しているのは,以前「Platoon」というコマンドス風のゲームを開発したこともあるハンガリーの開発チーム。販売を担当するのは,ヨーロッパではフランスのMonte Cristo社で,アメリカではEncore Software社となっている。
日本人にとっては,北アフリカ戦線というテーマが地味に感じられるかもしれないが,2004年1月末にリリースされたデモ(当サイト内の紹介記事は,「こちら」)は評判が良く,2004年春にリリースされるRTSの中では,ダークホースとなる可能性もあるだろう。
ちなみに3月26日には,エムスリイエンタテインメントより本作の日本語版(8800円)が発売される予定なので,日本のWWIIRTSファンは安心して待っていてほしい。
→「Desert Rats vs. Afrika Korps」の当サイト内の特設ページは,「こちら」
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