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トレーディングカードゲーム「アクエリアンエイジ」を対戦型オンラインゲームにした「アクエリアンエイジOnline」。ゲームルールをレクチャーするチュートリアルも備えている |
各種カードに漫画/アニメチックな女の子のイラストをあしらったアクエリアンエイジは,国産トレーディングカードゲームとして比較的長い歴史を持つ。現在では発売当初からのSagaⅠ,増えすぎたカードをいったんリセットし,仕切り直したSaga II,そして同様の趣旨でもう一度仕切り直す(6月発売予定)Saga 3と,代を重ねてきている。
実を言うとアクエリアンエイジのゲームソフトとしては,プレイステーションで「東京ウォーズ」という作品が出ていたのだが,これはカードゲーム版とまったくシステムの違うものになっており,すでに覚えているヒトもまれな気がする。
今回取り上げるアクエリアンエイジOnlineは,当然ながらこれとはまったくの別物で,そのクライアントプログラムは現在アクエリアンエイジの公式サイトで配布されているチュートリアルソフト「ビギナーズインストラクター」をベースにしつつ,ネットワーク対戦機能を付加して開発されたものだ。
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対戦中画面。手前側が自分,上が相手の場だ。画面下に上だけ見えているカードが手札,その上が支配キャラクターエリアで,そこに置かれているのが支配しているキャラクター |
アクエリアンエイジのカードイラストには人気漫画家やアニメーター,イラストレーターが多数起用されている。美樹本晴彦や垣野内成美,石田敦子,七瀬葵といった大御所から,コゲどんぼ,さあぺんと,かなん,後藤なお,羽々キロといった新進気鋭の人材までさまざまだ。これらのメンバーにはほかのキャラクターゲームの原画やキャラクターデザインを手がけている人も多く,そういう意味でキャラクターゲームのプレイヤー層とクロスオーバーする部分をターゲットにしているのだ。
またそのイラストに関しても,巫女さん,メイドさん,アイドル声優などという,これまたキャラクターゲームとぴったり一致するモチーフを擁しており,好きなイラストレーターのお好みのキャラ(造形)のイラストにこだわってデッキに組み入れたりもする。また,カードのトレードやシングルカード販売(ゲームショップにおいて,通常の中身の分からないパック販売ではなく,カード1枚単位で販売すること)では人気イラストレーターの描くカードが,ゲーム内での有効性とは別に高い価値でトレードされたり高値で販売されたりもする。
ちなみに筆者の知人はSaga Iのころに冗談半分で,すべて巫女さんのカードで固めた「巫女タンデッキ」(タン=単。Magic:the Gatheringをやっている人なら分かるかもしれないが,単色デッキの意である)を考案して使用していたが,実は巫女さんカードのうち1枚は最強クラスのキャラクターであり,なかなかの勝率を誇っていた。同様にイラストレーター決め打ちの「水上広樹デッキ」も,主力になるキャラクターが巫女さんのため,うまく使えばけっこう強かった。まあ,いささか極端な例だとは思うが。
一応確認しておくと,カードに登場するキャラクターはほとんどが女性である。1999年7月に発売されたカード版アクエリアンエイジに,後から加えられたレギュレーション(ルール/使用カードの制限)である「シンプルスタイル」(当初の名称はリミテッドスタイル)では,女性プレイヤーの獲得が大きな目標とされたため,その専用エクスパンションである「オリオンの少年」(2002年11月発売)に至って,初めて男性キャラクターが登場したという経緯がある。まあ,そこで起用されたのは,言うまでもなくBL系イラストレーターさんだったりするわけだが。
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シングルプレイの「ストーリーモード」で対戦することになるキャラクター達。左から,東海林 光,瑪瑙(めのう),フェンリル。ストーリーモードの内容は,公式サイトで配布されている初心者向けチュートリアルソフト「ビギナーズインストラクター」のものと同じである。なお,ここで対戦するキャラクターについては,すべてゲーム中にカードが存在する。とくに白の東海林 光は,イニシアチブ(先制攻撃)のスキルを持っているため,デッキの主力にしているプレイヤーも多い強力キャラだ |
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アクエリアンエイジの性格を物語るカード群。アクエリアンエイジOnlineで現在使えるカードではないが,参考までに。セーラー服の女子高生から巫女さん,袴姿の女給さんなどキャラクターゲームでよく登場するヒロインの造形を利用した絵柄が多数存在し,さらには宇宙船が女性に見立てられて(いやまあ,確かに昔から船は女性にたとえられるが)入っていたりもする。ちなみにこの「クラウディア」は以前筆者がデッキのメインに使っていたキャラクター。相手の意表をつくのに向いていたのがその理由だ |
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アタック宣言を行ったところ。対戦相手がガードを選ぶと,ガードしたキャラクターとのバトルになり,ガードしない場合はデッキからカードを引いてダメージ判定を行う。ちなみにアタックしているキャラクターはファクター3 コスト0で5/4/4と能力も高く,ブレイクコストが比較的低いので速攻に向く「女子中学生"皆口 茗子"」 |
シンプルスタイルはもともと入門ルールとして策定されたものであり,ゲームの基本を理解するには適している。とはいえ,ほかのレギュレーションでは残り3種類のカードと,それを使ったレスポンス(相手のカードアクションへの割り込み/リアクション)の駆け引きこそが対戦のキモであるため,シンプルスタイルとそれ以外では別のゲームと言ってもよいくらい,プレイスタイルが変わる。本作の現時点での問題はここにあるといえよう。
プレイヤーの立場は「マインドブレイカー」と呼ばれる超能力者。ごくおおざっぱに言えば,このマインドブレイカー同士が,カードで表される超能力者達を操って戦いを繰り広げるわけだ。
具体的なゲームの流れとしては,まず自分の手番の最初にデッキからカードを引く(ドローフェイズ)。引けるカードの枚数は基本的に1枚だが,「支配」しているキャラクターのスキルによって,プラス/マイナスされる。
そして,まだ支配の及んでいないカード/キャラクターが行動する"勢力フェイズ"の後に,デッキから引いた手札の中にあるキャラクターカードを「勢力エリア」に置いたり,支配しているキャラクターを行動させたりする"メインフェイズ"がある。ここでは支配キャラに相手を攻撃(アタック)させたり,ブレイクカードをセットしてキャラクターをパワーアップさせたりする。
メインフェイズの後は勢力エリアに置いたキャラに「パワーカード」をセットして支配する"パワーカードフェイズ"だ。ここでキャラの精神力分だけパワーカードをセットしたキャラを支配できる。パワーカードフェイズが終了すると相手の手番になる。これを繰り返してゲームが進行する。
メインフェイズでさまざまな行動を行うときに重要になるのが,支配キャラの属する勢力と,キャラクターにセットされたパワーカードだ。勢力はE.G.O.(白),阿羅耶識(赤),WIZ-DOM(青),ダークロア(緑),極星帝国(黄)と5つあり,キャラクターはそのうちのどれかに属している。Saga IおよびSaga 3にはイレイザー(黒)という勢力もあるが,アクエリアンエイジOnlineではSaga IIを利用しているので,さしあたり登場しない。
支配したキャラクターにはブレイクカードをセットすることで,攻撃力や防御力を上げられる。ブレイクカードをセットするには,カードごとに異なるファクターとコストを必要とするが,ここで言うファクターとはその勢力のキャラを何人支配しているかを意味し,コストとはブレイクのために支配しているキャラクターから支払うパワーカードの数を示す。
キャラクターに相手を攻撃させることを「アタック」といい,これに対しては自分の支配しているキャラクターを使って「ガード」も行える。アタック,ガードとも支配キャラにセットされているパワーカードをコストとして支払うので,1回の手番では,その時点でセットされているパワーカードの数以上のアタックは行えない。アタックに対してガードが行われるとキャラクター同士のバトルとなり,それぞれの攻撃力と防御力で結果が判定され,負けたほうは捨て札になる。
ガードしない場合,アタックしたキャラの攻撃力の分だけデッキからカードをめくり,キャラクターなら勢力エリアにセット,キャラクター以外ならダメージになる。これを繰り返し,ダメージが10になるか,デッキのカードが0の状態になり,さらにカードを引く必要が生じるか,そのままターンエンドを迎えると負けである。
シンプルスタイルでポイントになるのは,いかに相手より速く,多くキャラクターを支配して強力なブレイクを行えるかだ。相手のファクターとパワーカードのコントロールはバトルで行うことになるが,そのためにはアタックを行って相手の支配キャラクターを減らす,状況によっては自分のファクターを減らさないためにあえて相手のアタックをガードしないなど,プレイヤー同士の腹の探り合いになる。
オンライン対戦では基本的にロビーで対戦相手を募る。自分で対戦ルームを作成するか,他人の作ったルームに入室するのだが,ルームには8名まで入室でき,対戦の方式も総当たり,トーナメント,スイスドロー(勝率などを基準に,最も実力が伯仲した者同士を組み合わせる対戦方法)と,実際の大会で行われているものが選べる。
互いの手番には制限時間があり,超過するとタイムアウト負けだ。対戦中にもチャットウィンドウで相手と会話できるが,チャットばかりしていると持ち時間がなくなるので,ほどほどにしたい。
キャラクターカードをクリックするとセットできる勢力エリアが示され,さらにそこをクリックすればセットできる。ブレイクカードをクリックした場合,使用可能ならコストとして支払うパワーカードを指定するよう指示される。パワーカードは複数の支配キャラクターから支払えるので,枚数分指定すればOKだ。支配キャラクターをクリックすると,アタックする相手(対戦相手または自分の勢力エリアのアクティブキャラクター)が選べ,引き続いてアタック宣言を行える。
対戦に決着がつくと,勝ったプレイヤーは相手に与えたダメージ×2枚のカードが新たにもらえ,負けたほうは数枚(相手に与えたダメージによって決まる)もらえる。
こうして所持カードを増やしていけるほか,カードのトレードも可能だ。これは同じルーム内の他プレイヤーにトレードを申し込み,受けた場合にそれぞれ出せるカードをリストアップ,チャットなどで合意に達したら成立するという方法だ。
ブロッコリーによれば,カード版のブースターパックのように,何らかの手段で追加カードを入手できる方法を導入する予定もあるとのこと。また,現在はシンプルスタイルのみの対応だが,ユーザーの要望によってはスタンダードやアルティメットへの拡張の可能性もあるとのことだ。
スタンダードやアルティメットはプロジェクトやファストカードの使用タイミングとレスポンスなど,非常に複雑かつ曖昧なルールがある。その実装はなかなかの難題だと筆者は思うが,ぜひとも実現してもらいたい。
もっとも,各種能力がインフレを起こした感のあるスタンダードなどでは,"勝てる"デッキはある程度限られてしまう。その意味で,固定した展開のないシンプルスタイルから進めていくのは悪くない。カード版での主流と異なるため,既存のプレイヤーにはあまりピンと来ないかもしれないが,戦術が大きくものをいう場面も多く,かえって新鮮なのである。
限定版のパッケージにはSaga 3のデッキセットが付属するなど,カード版との併行プレイが大いに期待されているらしい本作。6月末のパッケージ発売以降の展開が楽しみだ。