[GC番外編]ライプチヒのゲーマー事情 〜 ゲーム企業が選んだテスティング・グランド
2004/08/25 23:03
 Game Conventionは,E3やECTSのようなプレスを含む業界人を想定したものではなく,あくまでもファン優先の特殊なイベントだ。ブースに立っているのは現地法人の人間かコンパニオンばかりで,実際にゲームの開発者がじっくりと説明してくれる光景は見られない。口を挟まずゲーマーに自由に遊ばせ,その反響のみに期待しているという雰囲気だ。ゲーム企業にとって,ロンドンよりもライプチヒを選んだ魅力とはなんなのだろうか? 

 2003年にGame Conventionが開催されてから,ヨーロッパ全土は元よりイギリスの販売元さえもECTSに出展するのを見合わせ,"ヨーロッパ最大のゲームショウ"の称号はあっさりとドイツのGame Conventionに戴冠された。Eidos Interactive社やCodemasters社なども地元ロンドンのECTSには出展せず,この時期のイベント参加はGame Conventionに絞り込んでいるようだ。
 人口48万人のライプチヒは,ヨーロッパの真ん中に位置することからドイツ最古の商業都市として栄え,中世にはバッハを生み出した芸術の町として台頭した。数十年に渡る共産主義の統治は,前衛的なライプチヒに大きな影を落としたものの,そもそも共産政権崩壊につながる民主化運動が始まったものこの場所である。
 宗教裁判によりルターがカトリック教を見限ったのも,ナポレオンの東欧侵攻が阻止されたのもライプチヒであり,「自由」という言葉が非常によく似合うザクソン人の街と気風が残されているのである。
 大学進学率も29%と比較的高く,ファッション,音楽,飲食産業,さらには街中を台無しにしている英語のグラフィティに至るまで,最近ではかなりのスピードでアメリカ大衆文化が流れ込んでいるように見える。考えれば15年前まではアメリカや西欧のサブカルチャーとは隔離されていた場所なのだから,今はなんでも貪欲に受け入れている段階なのだろうか。

 2004年のGame Conventionへの入場者が10万人を突破したと発表されたが,単純に考えればライプチヒのかなりの人口がメッセに集まっていることになる。家族連れよりも中高生が圧倒的に多いように見えるので,夏休みのイベントとして受け入れられているのかもしれない。期間中はホテルの占有率も高いので,実際には郊外やドイツ各地から駆けつけているゲーマーも多いのだろう。
 アメリカ人のゲーマーを見慣れているからかもしれないが,ドイツのゲーマーはごく普通に見える。アメリカやイギリス,フランスではすっかり浸透している「オタクカルチャー」も伝わっていないようで,これだけの青少年が集まっているのにアニメのTシャツを着ていたりコスプレしていたりする人は皆無だ。「公認された遊び人」「謹賀新年」などと書かれたTシャツは見かけたが,ライプチヒの人達がどれだけ日本を知っているのか,興味を持っているのかは疑わしい。

 会場では,配られるグッズを求めて歩き回る入場者が多く,雑誌であろうとバッジの首かけであろうと必死になって集めて回っている光景は微笑ましい。グッズをもらうためならDJのかけ声に合わせて手を揺らし,会社名を1日中叫んでいる。女の子も連れだって参加しており,会社のロゴの入った紙バッグにポスターをいくつも差しながら歩いている様子は,まるで縁日でそぞろ歩きをしているようだ。
 かと思えばモヒカンにロングブーツという出で立ちの,そのまま街から流れてきたようなパンク風の若者が,普通にゲームに興じている。会場は歩けないほどギュウギュウ詰めとなり,とにかく異常なほどの熱気に包まれているのだ。
 ひょっとすると,こんなに純朴にゲーム文化を受け入れているから,各メーカーにとっても新作のテスティング・グランドとして最適として受け入れられたのではないだろうか。ゲームの開発会社や歴史,スタイルやジャンル,プラットフォームには何の思い入れもなく,とにかく興味が湧いたものを遊んでみる。企業も必死で売り込んで,ドイツ東側のマーケットを開拓し,ブランドを確立しようとしているのかもしれない。しばらくすれば,この芸術都市ライプチヒから,独特のゲーム文化が生まれてくるのだろう。(奥谷海人)




<会場で見たドイツの不思議>
●フロアはゴミだらけ
いらないパンフや雑誌折り込みのハガキはすぐに捨て,やがて紙吹雪のように散乱する。タバコだってポイ捨てなので引火しないか気がかりだ。会場のフロアは午後になる前にゴミで溢れかえり,まるで暴動のあったサッカー会場のようになる



●女の子が多い
コスプレイヤーが存在しない代わりに,ライプチヒの繁華街を歩いているのが似合いそうな普通の女の子が会場でゲームを楽しんでいる。ゲーム関連のイベントで,これだけ若い女性が参加しているものは数少ないはず。なんか不思議



●規制だらけの展示ソフト
ゲームで表現されるバイオレンスの規制が厳しいドイツらしく,多くのブースで対象年齢が書かれた看板が掲げられている。会場一番人気の「DOOM 3」は販売不可能,「Shadow of Chelnobyl」は18禁,「Prince of Percia 2」だって14禁。中には12禁看板もある



●暴力はダメでも性文化はオーケー
暴力描写は厳しいのに,なぜかセックスには寛容。半裸のダンサーが会場で踊りまくっており,未成年が「Singles」を楽しんでいる。Vivendi Universal Gamesの「Leisure Suit Larry」ブースでは,本物のトップレスダンサーが踊っていたほど。本当に不思議だ




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