[E3 2006#029]会戦級RTSの決定版がさらに進化!「Medieval 2: Total War」
今年,セガのブース内でプレイアブル版が出展されていた「Medieval 2: Total War」は,国内では知る人ぞ知るCreative Assembly社の看板RTSシリーズ「Total War」の最新作だ。 本作は,シリーズ第2作にあたる「Medieval: Total War」と同じく,11世紀後半から15世紀前半頃までの中世ヨーロッパを舞台としており,十字軍遠征やモンゴルの来寇,そして百年戦争などはもちろんのこと,遠く海を隔てた新大陸への侵略などもカバー。 数千ものユニットによる大会戦を表現する独自のゲームエンジンはさらにブラッシュアップされており,鎧や剣の表現などは格段に進化。ユニット個々の挙動も,ある者は足を狙って槍を突き出し,またある者は斧を敵の頭めがけて振り下ろすなど,さらにディテールが細かく作り込まれており,映画さながら……否,もはや映画を超えるほどのド迫力の戦闘シーンを楽しめるようになっている。
……とはいえこのTotal Warシリーズ,国内では知らない人も多いと思われるので,ここで概略を紹介しておこう。 同シリーズは,3Dグラフィックスで表現された広大な戦場を舞台に,数千ものユニットが暴れ回るド迫力の戦闘シーンが特徴的な作品。その完成度たるや,各国のゲームメディアの賞を総ナメにするほどで,海外では根強いファンが多数存在しているのだ。 売り上げも,それぞれミリオンにこそ届かないものの,コンスタントに数十万クラスを捌く人気シリーズであり,今やRTSというジャンル全体の中でも,代表的な作品の一つといえる。ただその半面,日本国内では,なぜか一部のマニア以外にはあまり認知されていないシリーズでもあるのだ。
話を戻そう。Medieval 2: Total Warの基本的なゲームシステムは,以前と同じく,ターン制の戦略モードで内政および戦略策定を行い,軍隊のコマ同士がぶつかると,リアルタイムの戦術モードへと移行する形。これは,前作からのファンとしては安心して遊べる内容と言えそうだ。もともと完成度の高いシステムを搭載していた本シリーズだけに,ここは大きな変更は必要としない部分であろう。 とはいえ,教皇への影響力という新たな要素が戦略上で重要な位置を占めるなど,当時の世情をより反映するためのゲームルールの追加や,建てられる施設の種類/扱いが変わっているなど,細かい変更は多数施されている。
また,本作のウリであり,すべてといっても過言ではない戦闘シーンの描写に関してだが,出展されていたプレイアブル版を見る限りでは,従来作に比べて大きな変化こそないが,確実に進化しているという感触だった。 モデルやテクスチャといった表面的なグラフィックス自体の進化は一目瞭然だが,今作からは,戦場の臨場感を演出するために,BGMの音量をやや抑えめにし,鬨の声や蹄の音といった効果音をより前面に押し出すといった手法も取られているのだという。 以前から,敵陣からこちらの陣地めがけて弧を描いて飛んでくる弓矢の雨などは,迫力満点の一幕といえたが,今作の臨場感はそれらをさらに上回る出来映え。また大砲で兵士が吹き飛ぶと,周囲の兵士の装備品が返り血で朱色に染まったり,兵士の死体がどんどん折り重なって戦場に蓄積され,戦闘が進むほどに凄惨の体を催したりなど,細かいエフェクト類も着実に進化しているようであった。本作は良くも悪くも(いや,ほとんど“良い”のだが),Total Warシリーズの正統進化形と言っていい内容なのだ。
ブースにてゲームの解説をしてくれた,Creative AssemblyのゲームデザイナーDan Toose氏
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ちなみにマルチプレイヤーに関してだが,最大で3対3の6人をサポートするとのこと。ブースにいた開発スタッフに聞いたところ,何か新しいゲームモードが追加されるとの話であったが,「今はまだ秘密」とのこと。これまで,シングルモードの充実ぶりに対して,マルチプレイモードの貧弱さは否めなかったTotal Warシリーズだが,筆者としては,本作にはマルチプレイも盛んに行われる対戦ゲームとしての進化も期待したいところ。新たに追加されるというゲームモードに期待である。
さて,いろいろな意味で非常に注目すべき本作ではあるが,最後にやや悲しい情報もお知らせしなければならない。というのも,英語版は今秋の発売を予定している本作だが,同作のパブリッシングを担当しているセガの案内によると,今のところ,本作を日本で発売する予定はないそうなのである。 確かに本作は,マニア色が強く,中世ヨーロッパを舞台にした戦略ゲームと,日本国内ではなかなか馴染み難いタイトルかもしれない。しかし,世界的にこれほど注目されているゲームが日本で(少なくともセガからは)発売されないというのは,一ストラテジーファンとしては非常に残念な限り。今後,いずれかのメーカーがパブリッシングに名乗りを挙げることを期待したいところである。(TAITAI)
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