2006年1月に発表されたiMacとMacBook Proを筆頭に,着々と進むMacのIntel製CPUへの移行。2月28日には,Macファミリーの中でも最も低い価格設定で省スペースの「Mac mini」もIntel製CPUへの移行を果たした。
新しいMac miniは,アップルとしては初めてチップセット内蔵グラフィックスコアを採用した製品。となると気になるのは,ゲームをプレイするときの性能だ。そこで今回,ベンチマークテストや実際のプレイフィールをもとに,Mac miniを評価してみることにした。
■チップセット内蔵グラフィックスコアを採用した初のIntel Mac
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コンパクトでシンプルなデザインの筐体は,リビングなどに置いても違和感がないだろう。先代と同じく,スロットローディング方式の光学ドライブを搭載している
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まずは,Mac miniのスペックをざっと説明しておこう。CPUは,上位モデルがCore Duo/1.66GHz,下位モデルがCore Solo/1.50GHzとなっている。この点,ディスプレイ一体型のiMacと比較すると,やや低いスペックだ。
なお,前述のとおりMac miniは,Intelアーキテクチャを採用したMacシリーズとして,初めてチップセット内蔵グラフィックスコア,「Intel Graphics Media Accelerator 950」(以下,GMA950)を採用している点も特徴的。GMA950は,Mac miniで使用されているチップセット,「Intel 945GT Express」に内蔵されているものだ。
GMA950は,チップセット内蔵型とはいえ,ピクセルシェーダを内蔵しており,Windowsの世界ではDirectX 9世代のものとなっている。最大出力解像度が2048×1536ドットだ。また,Mac OS X v10.4“Tiger”の「Core Image」に対応している点も特徴だ。
なお,GMA950のグラフィックスメモリは,メインメモリから割り当てられている(最大80MB)。そのため,システムが利用可能なメモリは,搭載メモリよりも少なくなってしまうだけでなく,メインメモリの帯域幅もフレームバッファで使われてしまう。
この点は,Mac miniをゲームマシンとしてフル活用しようとした場合,ネックになるだろう。
■ベンチマーク結果を見る限り,OpenGLの処理能力は高い
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背面上段には,共に光デジタル接続に対応したライン入力,ヘッドホン端子が。電源は下段左端の専用コネクタに差し込む。イーサネットポートは,1000Base-Tに対応。先代と比べ,USBポートが二つ増え,計4ポートとなっているのは嬉しい改良といえる |
それではこれより,Mac miniはゲーム機としてどの程度まで使えそうなのか,複数のベンチマークテストを使いつつ,検証してみよう。ただしゲームタイトルの場合,「Universal Binary」(以下,UB IntelベースのMacでネイティブに動作するプログラム)化されているものがまだ少ない。そこで,PowerPC向けのプログラムを動作させるトランスコード環境「Rosetta」を使用した場合の評価も同時に行うことにする。
今回,テストを行ったMac miniは,Core Duo/1.66GHz(メインメモリ1GB)と同じくCore Duo/1.66GHz(メインメモリ512MB),そしてCore Solo/1.50GHz(メモリ512MB)の3台。これに加え,比較用として2004年8月にリリースされた「iMac G5」の20インチモデル(PowerPC G5/1.8GHz,GeForce FX 5200 Ultra/64MB,メインメモリ512MB)を用意した。
なお,ベンチマークの結果,Core Duoでメインメモリを1GB搭載したものと,512MB搭載したもの(標準構成)では,512MBのものが若干高い成績を残している。今回試用したMac miniの1GB版サンプルは,1GBのDDR2 SDRAMが1枚という構成だった。Intel 945GT Expressはデュアルチャネルメモリアクセスに対応しており,メモリを2枚単位で運用すれば,理論上帯域幅が2倍となり,パフォーマンスの向上が期待できる。Apple StoreのBTOメニューでは,メモリ増設が2枚単位になっているため,実際に購入して利用する場合,今回のテスト結果よりも若干高い性能が期待できるだろう。
グラフ1は,Mac OS Xの世界では定番ともいえる「XBench 1.2」(UB版)の結果だ。ここでは,ネイティブ状態とRosetta上での両方の結果を用意している。
CPU Testに関しては,iMac G5/1.8GHzが優勢だが,Thread Testに関しては,Core Duo/1.66GHzの数値がかなり高く,Core Solo/1.50GHzでもiMac G5の数値を凌駕している。また,OpenGL Graphic Testでは,Core Duo/1.66GHzがiMac G5/1.8GHzの約2倍の数値をたたき出すなど,高いグラフィックス性能を実現している様子がうかがえる。
なお,Rosetta上でのOpenGL Graphic Testに関しては,Core Duo/1.66GHz,Core Solo/1.50GHz共にネイティブより劣る結果になっているが,それでもiMac G5/1.8GHz以上の成績だ。ただし,CPU TestやMemory Testに関しては,Rosseta上でのパフォーマンス低下が顕著に表れている。このあたりから推察するに,異なるコードの処理による落ち込みを,描画のパフォーマンスである程度カバーできているのかもしれない。
グラフ2は,「CineBench 9.5」の結果だ。CineBenchはOpenGLのパフォーマンスを計測するベンチマークソフトで,最新版である9.5は,UB対応である。
こちらでは,Mac miniとiMac G5の差異が興味深い結果となっている。詳しくは表を参照してほしいが,Mac miniではOpenGLのシェーディング処理を,グラフィックスコアよりCPUで行ったほうが断然高速である。一方,iMac G5は逆の結果になっている。
GMA950のドライバがチューニングされることにより,ハードウェア処理のパフォーマンスが向上する可能性はあるだろうが,現時点ではこのような具合だ。
■Universal Binaryのゲームは快適に動作
Mac用のゲームで,UB化されたものをいくつかプレイしてみた。まずは,Pangea Softwareの「Enigmo 2」。宇宙空間を模した3Dパズルゲームだが,Core Soloでもとくにストレスなく遊べた。Mac miniでゲームを遊ぶなら,とりあえずこのあたりから手を付けてもいいかもしれない。
また,同じくUB化されているLaminar Researchの「X-Plane」(デモ版のダウンロードは,macgamefiles.comの「こちら」)も,とくに問題なくプレイできた。独立したグラフィックスチップを持つiMac G5と比べても遜色はない。
これらのことから,UB化されているタイトルであれば,チップセット内蔵型のグラフィックスコアを採用した機種であっても,3Dゲームをそこそこ遊べると考えてよさそうだ。
とはいえ,UB化されたゲームはまだまだ少ない。そのため,多くのゲームはRosetta上でプレイすることになるだろう。そこで,UB化されていないタイトルとして,マイクロソフトの
「マイクロソフト ヘイロー コンバット エボルヴ Mac版」を試すことにした。ちなみに,ヘイローには“タイムデモ”の機能があり,フレームレートを計測できる。その結果が
グラフ3だ。
ネイティブで動作するiMac G5でも30fpsに達することはなかったが,Rosetta上で動作するMac miniは,残念な結果になっている。すべてのエフェクトをオフにしても,10fps強なので,快適にプレイできるとは言い難い。
ヘイローは,日本語化されているMac用ゲームタイトルとしては,唯一のFPS。それだけに,UB化が期待されるタイトルの一つである。今後の対応を期待したいところだ。
■ゲームマシンとしては未知数 UBタイトルの増加に期待
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Mac mini本体とACアダプタ。本体内部に電源ユニットを持たないMac miniは,ACアダプタ経由で給電する。コンパクトな筐体とは裏腹にACアダプタはかなり大柄で,奥行きは本体とほぼ変わらない |
上記のように,ベンチマークやゲームタイトルの動作状況から,Mac miniのパフォーマンスを検証してきた。事前にある程度予測はできていたが,やはり現時点ではUB化されたゲームタイトルが少ないため,Mac miniのゲームマシンとしての性能を見極めるのは時期尚早といえるだろう。
だが,UB化されたものに限っては,Mac miniのような低価格マシンでもなかなかのパフォーマンスを見せてくれているのも事実。やはり,一刻も早く,そして一本でも多くのゲームタイトルがUB化されることを期待したい。