■オーソドックスながらも堅実な作りが魅力
緻密で美しいゲーム画面。3段階のズームアップが可能だ |
セイクリッドは,剣と魔法を駆使して敵と戦いながら,さまざまなクエストを達成していく,もはや定番となった2DタイプのアクションRPG。つまり"ディアブロ"タイプのゲームシステムで,物語に沿った冒険以外にも,レアアイテム探しや,インターネットやLAN環境でのマルチプレイなどを楽しめる。ゲームの操作感についても,基本的に同系統のアクションRPGを踏襲している。マウスの操作やキーボードショートカット,装備やアイテムの扱い方など,さまざまな点でディアブロライクな作りになっており,経験のあるゲーマーならとても親しみやすいだろう。
プレイヤーキャラクターとして選択できるクラスは,接近戦を得意とする腕力型の「グラディエイター」,特殊な剣術や支援・攻撃魔法も使いこなす「セラフィム」,弓技を基本に自然を利用した魔法が特徴的な「ウッドエルフ」,敵の動きを封じる技が多く剣術にも秀でた「ダークエルフ」,地・水・火・風を操り回復技も備えた「バトルメイジ」,変身により能力が向上し,敵を操る,生気を吸い取るなどが可能な「ヴァンパイア」の全6種。
特徴的なのが,どのクラスも剣や弓などの物理攻撃を基本戦術としている点だ。この手のゲームならばたいてい攻撃魔法や支援魔法に重点をおいたクラスが存在するものだが,序盤においてもクラスによる戦い方や難度の差はさほど感じられず,スムースに物語を楽しめる。
本作は既存のアクションRPGを意識し,改良したと思われる点が随所に見られるのも特徴だ。例えば戦況に応じて瞬時に使用武器を切り替えられるショートカットや,過剰とも思える細かなパラメータ表記,広大なマップでもストレスなくクエストを進められるよう配慮された,馬での移動や矢印などなど……。これらのおかげで,プレイヤーはスムーズにゲーム世界へと入り込めるのである。
プレイヤーキャラクターは種族と特性の異なる6人から選択可能。性別は種族ごとに固定されている | ゲームクリエイト時にはチュートリアルが用意されており,基本動作はここでマスターできるので初心者も安心 | 冒険には直接関係のないオブジェクトも。「墓」を調べると,そこには開発者からのメッセージが記されていたり |
アイテムやCombatArtsはもとより,パラメータもカーソルを合わせると詳細が表示される親切設計 | 時間の概念があり,クエストの中には日数制限があるものも。雨や霧,雪といった天候の演出もなされる | 米国版では削除されていた血飛沫描写も日本語版ではこの通り。当然,Blood表現は制限もできる |
■「COMBO」システムでオリジナルの連続技が炸裂
武器やCombatArtsは画面底部のアクションスロットにセットされ,使用する種類を瞬時に切り替えられる |
これら敵との戦いにおいて重要な要素となるのが,「CombatArts」という特殊能力。CombatArtsとは,魔法や剣術など各クラスそれぞれに備わった特殊能力を総称したもので,例えばバトルメイジは攻撃や回復,防御などの魔法を使いこなし,グラディエイターなら敵を退けたり連続攻撃を繰り出したりする技を覚えていく。これらのCombatArtsには「ルーン」というアイテムが必要で,クラスごと,技の種類ごとに専用のルーンが用意されている。また,同じルーンを重ねて使用することでCombatArtsが強化されていく。
さらに,上のCombatArtsを最大四つまで組み合わせたオリジナルの連続技を作れる「COMBO」というシステムが用意されている。通常,CombatArtsは一度発動するたびにゲージの回復を待たなければならず,連続,もしくは即次の技は繰り出せない。しかしCOMBOを使えば,CombatArtsの連続発動が可能となる。
世界の各地にはポータルが設けられており,一度開いた場所へなら瞬時に行き来が可能となる | ソケットが空いた武具には,空いた数だけルーンなどを埋め込める。もちろん,取り外すことも可能 | クラスの異なるルーンは取り替えてもらえる。ルーン四つとなら,好きな種類のものと交換可能だ |
COMBOシステム
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■メイン30種,サブ200種以上の充実クエストに挑む
クエスト情報は1冊の本にまとめられ,現在の進行状況や履歴が一目で分かる仕組みだ |
ただしこの世界のいたる所に,助けを求めている人間がいることもお忘れなく。これがいわゆるサブクエストで,かの名作RPG「Divine Divinity」を髣髴とさせる200種類以上のサブクエストが用意されている。基本的にサブクエストは物語の本筋とは無関係だが,コンプリート後の報酬やレベル上げの意味合いも含めて,できるだけ多く発見し,攻略したい。
サブクエストは受けるも受けないもプレイヤーの自由だ。その目印はキャラの頭上に輝く「?!」のマークで,このマークのついた人物に話しかけると,依頼内容が表示される。
上記のメインクエスト,サブクエストとも大きく関係するのが,画面の底部中央にある二つの矢印。これらが指し示す方向は現在進行中のメイン/サブクエスト両方の進行方向を表しており,大きな針がメインクエスト,小さな針がサブクエストとなる。このおかげで次に行くべき場所が把握しやすくなり,クエストの場所を探し回るような労苦が軽減されるのだ。また,前述のように本作には時間の概念が存在し,クエストの中には「1日以内にお願い!」などといった制限時間付きの依頼があったり,道を歩いていたら突然クエストが発生することもあったりと,その内容も変化に富んでいる。
最後になるが,ネットワーク機能について紹介しよう。本作はLAN環境ではもちろん,インターネットを介した16人までのマルチプレイヤー機能も実装している。インターネットを利用する場合は海外の仲介サーバーを通すほか,回線速度に自信があれば同梱のサーバーアプリケーションにより自分でゲームサーバーを立ち上げられる。また,マルチプレイヤーのルールには,レベル上げやアイテム集めが目的の「Hach'n Slash」,クエストを協力して進める「協力」,対人戦闘用の「PvP」の3種類があり,目的に合わせたゲームが楽しめる。日本語版を使用したプレイヤー同士なら日本語でのチャットも可能だ。
COMBOシステムや馬による移動など,本作独自のシステムはあることはあるのだが,総じてそれはゲームの"特徴"として取り上げるには少々忍びない。むしろ本作のウリは,ディアブロなどの良作を踏襲しつつ,細かい点で改良が重ねられた"馴染みやすいゲームシステム"にあるようだ。例えばディアブロで魔法重視のキャラを選択した場合,マナの枯渇は戦いの中断を意味する。しかし本作では,マナやMPといった概念自体が取り払われ,体力の続く限り戦えるのだ。
また,広いマップでクエストを探して走り回る退屈な時間よりも,馬で高速に移動しスムーズにクエストを進行したほうが"Hack&Slash"の楽しさを堪能できるし,各能力値やアイテム,CombatArtsにマウスカーソルを合わせるだけで詳細が表示されるため,マニュアルの閲覧も最小限で済む。ほかにも,上で取り上げたシステムの一つ一つが,馴染みやすいゲームシステムを形作っているのだ。
ただ一つだけ残念なのは,選択できる六つのクラスに,あまり特徴がないという点。ウッドエルフやグラディエイターは多少の違いがあるものの,それぞれパラメータやCombatArtsがどこかしら似通っている。これもパーティプレイ時の役割分担を煩雑にしないための措置など理由は色々と推測できるが,もう少し各クラスに実質的な個性が欲しかった。
ともあれ本作は,すでに海外では絶大な支持を得ているタイトル。ディアブロにハマった人はもちろん,この馴染みやすいゲームシステムなら幅広いユーザーに受け入れられるだろう。
マルチプレイヤーのロビー画面。ここには世界中の人々が集まっているので,基本言語はもちろん英語 | 全体マップでは,青と黄色のマークでクエストの目的地が示されている。迷うことはあまりない | 「ガーゴイル退治」は1日以内のサブクエスト。このほか「相手に見られたら任務失敗」なんてのもある |
ボスクラスのモンスターと勘違いするほど巨大なドラゴン。これでも中盤のサブクエストクラスである | スタート直後から購入できる"馬"は,遠くに乗り捨ててきても即座に呼び出せる便利な移動手段だ | 成績や進行度を一覧で確認できる。第三章に進んでいながら未だ11%しか開拓できず。世界は広大だ |