― レビュー ―
またもや大きく進化した人気シリーズ最新作
三國志11
Text by K.サワノフ
2006年3月17日

 

■美しく巨大な3D一枚マップで描かれる中国大陸

 

多くのファンを魅了してやまない歴史ストラテジー,三國志シリーズ。その最新作は,昔ながらのターン制&君主担当制だ

 本作はコーエーの大看板である,三國志シリーズの最新作。今さら説明するまでもないだろうが,後漢末期から三国時代にかけての,中国の覇権争いをテーマにした歴史ストラテジーゲームだ。日本のPCの歴史とともに発展してきたこのシリーズも,ついに11作を数えるに至った。

 

 前作「三國志X」は,「三國志VII」や「VIII」の流れを汲む「全武将プレイ制」を採用していたが,本作のシステムはガラリと変わり,「三國志IX」や「VI」以前と同様の「君主担当制」となっている。プレイヤーは割拠する君主のいずれかを選び,大陸に覇を唱えるために奮闘していくのだ。

 

 また,三國志IXと同じ「一枚マップ制」が採られていることも重要だ。大陸全土が広大な1枚のマップになっており,内政も戦闘もその上でシームレスに行われていくのである。
 ただし,三國志IXのフェイズ制とは少し異なり,ゲームは昔ながらのターン制で進行する。10日を1ターンとして計算し,1か月は3ターン,1年は36ターンから成る。マップは陸上/海上を問わず,すべてヘックスで区切られており,部隊はヘックス単位で進行し,各種施設(後述)もヘックス単位で建設される。
 ちなみに,今回の一枚マップはフル3D。カメラの拡大/縮小と回転,視点の角度変更などが,ある程度は可能だ。上空からなるべく広い地域を見るのもよし,ぐっと寄って大迫力の画面を楽しむもよし。まあ,もう少し変更できる範囲が広くてもよかった気もするが。なお,彩墨画のような色合いで描かれた地形は非常に美しく,単に眺めているだけでもなかなか趣深い。景色は季節によっても変化し,プレイヤーの目を喜ばせてくれる。

 

三國志IXに引き続き,中国大陸全体を一枚のマップに収めてしまった本作。その壮大なグラフィックスには,思わず目を見張らせられる 3Dマップは,マウスを使って拡大/縮小,回転,視点の角度の調整が可能。移り変わる季節によっても,グラフィックスは変化する 大陸全体の勢力図が一目で分かる「中地図」。通常のマップはあまりに広すぎるため,たまに中地図もチェックしないと時代に取り残されそう

 

 本作で用意されているシナリオは,全部で8本。うち7本は,「184年1月 黄巾の乱」や「211年7月 劉備入蜀」などと,歴史の節目節目に合わせて用意されたもの。史実に基づいて各君主や武将が配置されているので,好きな君主を選んでプレイできる。
 史実でない残り1本のシナリオは,仮想シナリオ「英雄集結」だ。これは,三國志に登場する全君主,全武将が年代を超えて集まり,しのぎを削るというもの。これまでの作品ではパワーアップキットで提供され,好評を博したこのシナリオが,いきなりプレイできるわけだ。中国全土に君主がびっしりと散らばっていて,まさに一触即発状態となっており,いつどこから襲われるかわからない,大乱戦が展開される。シリーズのファンにとっては,たまらないシナリオといえよう。
 なお,上記のシナリオとは別に,「おすすめシナリオ」として,「三国志演義」における代表的なシナリオと君主の組み合わせが8本用意されている。担当君主まで決まっているので,三国志にあまり詳しくない人は,まずこれから始めるといいだろう。
 ちなみに本作の登場武将は,670人。一部の有名武将は年齢(年代)によって顔グラフィックスが変化するという,手間のかかった新要素が本作より実装されている。また,ホットシートによる最大8人での対戦プレイも可能だ。

 

 ゲーム開始時にもう一つ注目したいのが,格段に充実した初期設定。ゲームレベル(初級/上級)はお馴染みだが,能力変動(有効/無効),顔CG変化(有効/無効),妖術・落雷(有効/無効),女性武将(史実武将/イベント),寿命(史実/長寿/仮想)などといった項目,また一騎討ちや舌戦の(見る/任意/見ない)といった設定も可能。ファンの声を何かと反映させているようだ。

 

7本の史実シナリオは,「三国志」の歴史の節目ごとに用意されている。これまでのシリーズ作品とほぼ同じと考えていいだろう 「英雄集結」は,時代の枠を超えて君主,武将を集めたお祭り的シナリオ。もちろん,武将たちの生没年や寿命などは仮想のものになっている 「おすすめシナリオ」では,史実シナリオと君主の組み合わせの中から,プレイしやすいものをピックアップしている。初心者に最適だ

 

シナリオの最初には,時代背景を紹介するオープニングムービーが用意されている。これからプレイしようという人の中で,三国志をまったく知らないという人はあまりいないだろうが,どういった年代かを思い出す意味で役に立つだろう。今作からの新要素,中国語音声は好みの分かれるところ。気になるなら「ボイス音量」を「0」に設定しよう

 

 

■新たな三國志の見せ方を実現する新システム

 

 それでは,本作独特のゲームシステムについて,さらに詳しく説明していこう。
 まずは内政について。三國志11では,一枚マップの上に直接各種施設を建設していくことで内政が行われる。「市場」を建てると金収入が増え,「農場」を建てると兵糧収入が増える,といった具合だ。施設は全部で9種類ある。

  • ・市場
  •  金収入を上昇させる
  • ・農場
  •  兵糧収入を上昇させる
  • ・兵舎
  •  徴兵可能回数を増やす
  • ・鍛冶
  •  槍,戟,弩の各兵装を生産する
  • ・厩舎
  •  軍馬を生産する
  • ・工房
  •  衝車,木獣,井闌,投石の各兵器を生産する
  • ・造船
  •  楼船,闘艦を生産する
  • ・造幣
  •  周囲の市場の効果を1.5倍にする
  • ・穀倉
  •  周囲の農場の効果を1.5倍にする

 

 重要なのは,都市によって,施設を建てられる場所(空地の数)が決まっていること。限られた空間に,どんな施設をどのように建てていくか。自勢力の都市に,どのような機能を持たせるのか。そのあたりにプレイヤーの意思が反映されるのだ。
 生産国であれば兵舎などはいらないだろうし,逆に最前線であれば,あまり市場や農場を増やしてばかりもいられない。かつては前線だったところを生産国に作り替えたりなど,都市の運営方針に変更が生じたら,また開発し直す必要も出てくる。

 

 内政と対になるのが戦闘だが,こちらの特色は,さまざまな「戦法」だ。「戦法」の種類は,部隊の「兵科」によって決定される。
 すべての基本となるのは「剣兵」だが,これは最も弱い兵科だ。鍛冶や厩舎を作り,そこで槍や戟,軍馬などの兵装を生産すると,部隊をより上位の兵科にできる。基本となる5兵科の特徴を以下に挙げておこう。

  • ・剣兵
  •  最弱だが,兵装の生産は不要
  • ・槍兵
  •  騎兵に有利だが戟兵に不利
  • ・戟兵
  •  槍兵に有利だが騎兵に不利
  • ・弩兵
  •  攻撃力は低いが,間接攻撃が可能
  • ・騎兵
  •  戟兵に有利だが槍兵に不利

 このほか,衝車や井闌などの兵器を持たせて,都市攻略用の兵科にもできる。武将には一人一人,兵科ごとの適性が設定されている。適性が高い兵科を指揮させるほど,より実力を発揮してくれるわけだ。配下武将の適性をしっかり確認したうえで,各種兵装を生産していくといいだろう。
 各兵科には,それぞれ独自の「戦法」が用意されている。相手に大ダメージを与えつつ,一歩後退させる槍兵の「突出し」や,相手部隊を貫いて反対側に突き抜ける騎兵の「突破」,目標とその周囲にまとめてダメージを与える弩兵の「乱射」などだ。部隊の気力パラメータを消費するため,その使用には限度があるが,戦法を適切に活用していけば非常に効果的に戦えるのである。
 例えば,隘路で敵と出会った場合は,一度「突破」で向こう側に突き抜けてしまえば,味方の別部隊と連携して挟み撃ちが可能だ。また,「突出し」と「乱射」をうまく組み合わせれば,敵部隊を1か所に集めたうえで,一度にダメージを与えられる。さらに,「突出し」などの敵部隊をコントロールする戦法は,近くの敵に毎ターン自動的に攻撃する「弓櫓」などの軍事施設や,上に乗ると火を噴く「火種」などの罠と連携させることで,より大きな効果を発揮する。
 戦法と戦法,戦法と罠などの組み合わせのバリエーションは実に多彩。シリーズのこれまでの作品と比べ,戦闘部分のゲーム性がかなり高くなっている。うまくコンボを決めて,敵の大軍を駆逐するのは快感だ。

 

 さて,ここまで内政と戦闘について解説してきたが,その両方に絡んでくるのが「技巧」というシステムだ。これは,新技術を開発し,自勢力の力の底上げを行うというものだ。
 内政や戦闘を行っていると,どんどん「技巧P」というパラメータがたまってくる。技巧Pが十分に貯まったら,それと金を消費して,新技巧を研究できるのだ。技巧には以下の8系統がある。

  • ・槍兵
  • ・戟兵
  • ・弩兵
  • ・騎兵
  •  各種兵科の能力の強化,新たな特殊能力の付加
  • ・錬兵
  •  気力や移動性能など,部隊の基礎能力の強化
  • ・発明
  •  各兵器の強化や,新しい兵装,軍事施設の開発
  • ・防衛
  •  各拠点の耐久力回復率アップや,防衛用施設の強化,開発
  • ・火攻
  •  火を使った攻撃の強化,開発

 当然,技巧が敵対勢力より高いレベルにあれば,戦いはそれだけ有利になる。一つの系統をピンポイントで上げていくか,全系統をまんべんなく研究すべきか。技巧は一つ上げるだけでもなかなか大変なので,自勢力の戦略,戦術と合わせて判断していきたい。

 

各都市のそばには,都市の規模に応じて決まった数の空地がある。この空地に各種施設を建設していくことで,都市の内政を行うわけだ 空地の形状によっても,有利,不利の差は出てくる。「造幣」や「穀倉」をうまく利用して,効率のいい建設をするように心がけよう 出陣の際には,部隊を率いる武将と,兵科を決定する。武将と兵科の組み合わせが適切でないと,使えない戦法が出てくるので気をつけよう

 

戦闘時には,各種戦法を駆使して戦っていこう。まずは戦法の効果をしっかり把握することが大事だ。兵科によって,使える戦法が違う点にも注意すること 戦法を軍事施設や罠と組み合わせることで,その効果は何倍にも跳ね上がる。こちらも積極的に使っていきたい 技巧は8系統。どの技巧から上げていくかは,プレイヤーの自由だ。シナリオや君主によっては,最初からいくつかの技巧を持っている場合もある

 

 

■「特技」によってさらに際立つ武将の個性

 

場合によっては,特技は能力値よりもはるかに重要な要素となる。特技をよく見て,効率よく仕事を振り分けていこう

 先日掲載した,本作プロデューサー北見氏のインタビューでも語られているとおり,三國志11はキャラクター性が非常に重視された作品となっている。もともと「三国志」という物語の最大の魅力が,個性豊かな登場人物達にあることは間違いない。
 本作では「特技」という要素が追加されたことで,武将の個性がより強くなっている。未発見の在野の士がいれば,探索時に必ず発見する「眼力」。自分より武力の低い部隊に対する攻撃や戦法が必ずクリティカルになる「神将」。毎月,所属都市の金収入が1.5倍になる「富豪」。仕掛けられた計略を見破ると,相手に同じ計略を返す「反計」。徴兵時に集まる兵士の数が増える「名声」。……と,以上はほんの一例だ。 特技の種類は非常に多く,効果を及ぼす分野も戦闘から内政までさまざまだ。
 本作では,大半の武将がなんらかの特技を持っている。おなじみの武力,知力などのパラメータや,前述の兵科適性などと考え合わせると,すべてが同じ武将はまったく存在しない,といってもいいだろう。
 敵拠点の武将や兵装など,相手の陣容に合わせて攻め手を選んだり,内政のスペシャリストチームを作り,急いで育てたい支配下の都市に送り込んだりという具合に,適材を適所に使っていけば,覇業はより楽なものになるはず。それには,自分の戦略に合わせて配下武将を適切に配置することが必要だし,場合によっては配下武将の能力に合わせて自分の戦略を調整したほうが効果的かもしれない。配下武将のラインナップと自分のプレイとの関係性が,今までのシリーズ作品よりはるかに強く,密接になっているわけだ。誰に何をやらせるべきか熟慮していると,1ターンにかかる時間はどんどん長くなるわけだが,それはもう望むところだ。本作は,じっくり考え,じっくり楽しむべき作品なのである。

 

特技は,ゲームに登場する武将達のキャラクター性を,より高めるものだ。新しい武将を手に入れたら,まずはその特技を確かめること 比較的多くの武将が持っている特技もあれば,全武将の中で一人しか持っていない特技もある。オンリーワンの特技を持つ武将は大切にしたい

 

もちろん,武将ごとの能力値や,兵科適性などを,おろそかにしていいわけではない。さまざまなファクターを考慮しつつ,人事を行っていこう お馴染みの「新武将」でも,特技の設定ができる。どういった特技があるのかいろいろ調べてみたい場合は,新武将で試してみては?

 

 

■生まれ変わった「一騎討ち」と「舌戦」

 

フル3Dで描かれる一騎討ち画面。最初に基本方針を選ぶと,その後は自動で進行していく。状況を見て,的確に新たな指示を与えていこう

 最後に,武将個人対個人の対決である「一騎討ち」と「舌戦」についてだ。それぞれの詳しい内容については「こちら」でも紹介しているので,併せて参照してほしい。

 

 三国志の華とでもいうべき,猛将同士の一騎討ちは,フル3Dでスピーディに展開していく。最初に戦闘方針を決定したら,以後は自動的に戦闘が進行するので,プレイヤーは状況を見て随時方針を変更したり,「必殺モード」に入って必殺コマンドを使ったりしていく。実際にプレイしてみたところ,早め早めに指示を出していかないと手遅れになる場合が多いように感じた。方針変更やコマンド入力は,戦況の先を読んで繰り出していくほうがいいだろう。
 また,武力で多少のアドバンテージがあっても,その差は作戦ですぐに埋められてしまう。自信のない場合は,暗器,名馬などのアイテムを用意しておいたほうがいいだろう。部隊内に助けに来てくれそうな武将がいる場合のみ一騎討ちに参加する,というのもアリだろう。

 

 一方の舌戦は,いわば文官の一騎討ち。三國志Xから追加されたこの戦いは,論争で相手を打ち負かすというものだ。前作では,橋の上で議論し,相手を押し込んで橋から落としてしまえば勝ち,となっていた。
 今回の舌戦フィールドでは,双方の武将が海から突き出た岩柱の上に立っている。こちらの戦いはターン制。双方同時に話題札を出していき,その強さで勝ち負けを決める。知力の高い武将ほど,一度に多くの話題札を持てるので,それだけ選択の幅が広く,有利になるわけだ。論争で負けると心理バーが減っていき,それと同調して柱が少しずつ崩れていく。心理バーがなくなり,柱が崩れ切ってしまうと敗北となる。
 今回のポイントは,「怒り」をどのようにコントロールするかにある。舌戦中,怒りメーターが溜まると,その武将は憤激状態になり,特殊な攻撃を繰り出せるようになる。できるだけ相手を怒らせずに,自分が怒るかが勝負のカギなのだ。場合によっては,多少心理バーを減らされたとしても,相手の怒りメーターを上げないほうが重要だったりもする。怒りメーターをコントロールできる各種「話術札」や,話題札を全交換する「再考」ボタンの使いどころに注意しながら,戦っていくといいだろう。

 

 いつものことではあるが,根本的な部分から細部まで,前作とはシステムがまるで違っているため,シリーズファンでも最初は毎度戸惑わされてしまう。もっとも,充実したチュートリアルや,プレイ中いつでも参照できる用語辞典などが用意されており,すぐに新システムに馴染めるようになっている点は,さすがだ。
 逆にいうと,確かに大作ではあるが,シリーズファンや,三国志ファンならずとも簡単にプレイできるのである。興味はあるが今までなんとなく手を出しそびれていた,なんて人はこの機会に挑戦してみるといいだろう。

 

闘志が溜まると,「必殺モード」に入って,さまざまな技を繰り出せるようになる。あまり勝負を急がす,先の先を考えながら指示していこう 舌戦もフル3D。ターンごとに話題札を出して,その強さで勝負を決める。特殊な効果を持つ「話術札」の使いどころが重要だ どんなに一方的な展開でも,一度憤激状態になれば,一発逆転も可能だ。心理バーよりも,怒りゲージのほうに注目して戦ったほうがいい

 

わかりやすい上に爆笑もののチュートリアル。武将達が繰り広げる漫才は一見の価値があるので見ておこう ゲーム中,いつでも参照できる用語辞典は実に役に立つ。分からない言葉が出てきたら,すぐに調べてみよう 1台のPCを使って,最大8人プレイも楽しめる。通信対戦には対応していないが,友達同士で遊ぶのがまた楽しい

 

タイトル 三國志11
開発元 コーエー 発売元 コーエー
発売日 2006/03/17 価格 1万800円(税別),プレミアムBOXは1万2800円(税別)
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium III/1GHz以上[Pentium 4/1.70GHz以上推奨],メインメモリ:256MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスチップ:DirectX 9.0c以上に対応,グラフィックスメモリ:32MB以上[64MB以上推奨],解像度1024×768ドット以上

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