■シングルで育てた"英雄"をマルチで使えるRTS
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後半に強力なユニットで圧倒するか,速攻で一気に勝負をつけるか……好みの戦術によって英雄を選ぶのもありだろう |
WBCといえば,ゲームシステム自体は一見普通の2D RTSだが,なんといっても「英雄」の存在が特徴的なシリーズである。英雄は軍団の要となるユニットで,呪文や建造物占領の能力を持ち,アイテムを装備したりクエストを授かったりできる。
さらに際立った特徴として,英雄は経験値を得て成長していくことが挙げられる。1ステージ内でユニットが成長するのは今では珍しくないが,WBCシリーズの英雄は,各ステージで得た経験値,レベル,アイテムなどを次のステージに持ち越せるのだ。
シングルプレイで育てた英雄ユニットは,マルチプレイ対戦でも使用可能で,これこそ本作が歴代ファンに根強く支持されている理由だ。対戦では,すでに相手の英雄が相当強い場合もあることを覚悟しなければならないだろう。ほかのRTS以上に,まずはシングルプレイをみっちりやり込んでからマルチプレイで遊ぶことを推奨したい。
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ゲーム内容自体は戦闘あり生産ありの,比較的オーソドックスなRTSといってもよいだろう | 敵の英雄を倒すことによって得られる武器や防具などのアイテムは,次回のプレイにも持ち越されるのだ | 敵との戦いと平行して,発生したクエストをこなすことも可能。ユニットや資源を獲得するチャンスだ |
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英雄のレベルアップ後は,任意のステータスにポイントを振り分ける。どこから強化するかも考えどころ | 16種族もあると,種族によって建造物が全然違うのが見ていて楽しい。外観だけでなく,それぞれにまったく違った特性があり,種族の個性を際立たせている |
■16種類もの種族(陣営)が存在するRTS
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キャンペーンモードは単に敵を滅ぼすだけではなく,ステージによってさまざまな勝利条件がある。スカーミッシュでも勝利条件は選べる |
"ナイト"は騎兵ユニットに恵まれた種族で,飛行ユニットにさえペガサスがいるという徹底ぶりである。ユニットの生産に必要な資源が黄金と金属に偏っているので,序盤からどんどんユニットを作って速攻を仕掛けるのは難しく,市場を作って"通商"を行えるようになるまでは,我慢が必要かもしれない。
"プレイグロード"はゾンビやグール,スライムなどの異形のモンスターとヒュドラ,ワイヴァーンなどの超自然のモンスターを数多く従える種族。相手を病気にしてしまう能力を有する不浄な一族だ。
"スウォーム"は砂漠に暮らす昆虫種族で,生産スピードの速さがウリだ。低レベルユニットの量産が比較的容易であり,速攻を仕掛けるのに向いている。
"サラーシ"は爬虫類型の種族で,高レベルユニットに恐竜がいる。拠点となる太陽寺院では水晶を費やすことによって,広範囲の火炎呪文を使用できるので,攻め入るときには注意が必要だろう。
種族は16種類だが,自分がプレイする種族(英雄)を決めた後,プレイヤーはさらに,英雄のクラスを28種類の中から選ぶことになる。前作には20種類のクラスがあり,種族によって就けるクラスに制限があったが,今回はまったくの自由。つまりWBC3における英雄の種類は,ある意味かなりバリエーションが増したことになる。また,英雄が使用できる呪文は前作では100種類程度だったが,WBC3では130種類にボリュームアップした。
シングルのメインとなるキャンペーンモードは,前作では各種族で領地を奪い合うという国盗り合戦だったが,WBC3は舞台であるイシーリアの世界を旅して壮大な物語を追う,RPG色の強いものとなっている。
プレイヤーが選択した英雄(種族)は,各地を巡りながら,目的や勝利条件などが異なる各ステージをクリアしていく。旅の途中では,居酒屋で傭兵を雇ったり,商人からアイテムを購入したりといった行為のほか,状況によっては他種族と同盟を組める。
種族によってストーリーの展開が若干異なってくるが,このモードには明確なエンディングは用意されていない。メインのストーリーを完結させたあとでも,各地を旅して冒険を続けられるオープンエンドとなっているのだ。キャンペーンモードでの英雄の成長は,前述した通り別のゲームに持ち越せる。キャンペーンモードがオープンエンドの形を採っているのは,そうした英雄育成の面からの配慮であろう。
シングルプレイのスカーミッシュモードに関しては,前作と変わらない。これはすぐさま戦闘(純粋にRTSの部分)が始められる簡易モードで,とくにいじる必要がなかったということなのだろう。
前作からの変更点を以上のように書き出してみたが,基本的な戦闘システムなどは前作とほぼ同じだ。シリーズの1作めと2作めを比べると,それなりに変化もあったが,2から3への変化はマイナーチェンジといった感もある。
これは,WBCシリーズのシステムが前作ですでにほぼ完成形だったということだろう。1から2が出るまでには2年半もかかったが,2から3までは1年半。この開発期間の短縮は,制作者側の自信の表れと見ても良いのではなかろうか。
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各種の騎兵ユニットをひたすら強化するのがナイトの勝利への近道となる。序盤はつらい感もあるが…… | 本来はおどろおどろしいはずのプレイグロードのユニットの軍団。あまり不潔な感じにも見えないが | 虫軍団であるスウォームの建造物は,まさに"巣"と呼びたい外観。ここから虫がわらわら出てくる |
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恐竜軍団が形成できれば,サラーシはかなり強力だが,そこまで行くにはかなりの金属と黄金が必要だ | 選べるクラスがズラリと。どのクラスがどんな特性を持つのか,マニュアルにもないのはちょっと不親切 | 1ゲーム1体しか現れない究極のユニット,タイタン。コストも制作時間もすごくかかるが,破壊力は極悪 |
■一つの道を極めるか,広く浅く楽しむか
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洞窟の中で敵と戦うステージ。それまで視野が及ばなかったところから,いきなり敵が出現してビビッてみたり。まったく油断がならない |
また,マルチプレイの設定はスカーミッシュに準じたものとなっており,それなりに幅広くプレイ条件を選択できるが,日本語版では制作元のEnlight Interactiveのロビーに繋がらなかったりするあたりは,やはり残念に感じる。もっとも,これは海外ゲームの日本語版ではありがちなことだとは思うが……。
不満点も少し書いてみたが,やはり1回のプレイだけでなく,アイテムを集めたり英雄を育てたりといった,"積み重ね"を楽しめるRTSというのは貴重である。RTSファンはもちろん,RPGの要素を持つ本作ならば,今までRTSをプレイしたことがない初心者でも入っていきやすいのではなかろうか。
お気に入りの種族の英雄をとことん育て上げてみるもよし,広く浅くいろんな種族の英雄でプレイしてみるもよし,若干地味ではあるが,じっくりと長く遊べる好ゲームである。
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キャンペーンモードスタートのときのグラフィックスも,やはりどうしても古くさい感じは否めない | キャンペーンはお金稼ぎ,アイテム獲得のためのようなステージも多数あり。英雄を強くするのに利用しよう | マップはオリジナルのもののほかに,エディタを使えばユーザー自身でも作成できる。マルチプレイでも使用可能 |
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建造物の名称は,わりとミもフタもないものが多かったりして。ちなみにこれはディーモンの建築物 | ちゃんとチュートリアルモードもついてるので,RTS初心者でもすんなりゲームに入れるであろう | ゲーム立ち上げ時に表示されるヒントには,ときにこんな笑えるものも混ざっていたりして |