「エンジェリック・ヴェール」は,大河ドラマ的なストーリーと,戦闘のパズル的要素が魅力のファンタジーストラテジー(タクティカルRPG)だ |
今回紹介する「エンジェリック・ヴェール」は,パズル性の高い戦闘と大河ドラマチックなストーリーが特徴のファンタジーストラテジー(本作の場合タクティカルRPGと呼ばれることのほうが多いかもしれないが)だ。主人公と,なぜかそれを取り巻くにぎやかな女性陣は,王国の危機を救うべく配下の兵士ともども各地を転戦する。
舞台となるベルーナ王国は,突如隣国のジェレニア共和国の侵攻を受け,国王が殺害されてしまう。それを契機として10年前の内戦の余燼(よじん)が再び燃え上がり,有力者同士の確執やジェレニア政府の思惑が交錯する中,戦局は混迷を極める。
そうした中で主人公一行は,ときにコミカル,ときにシリアスなドラマを展開しつつ,進むべき道を模索していくのだ。
2005年春には続編の「エンジェリック・ヴェール新伝 エフェメール島綺譚」の発売が予定されている本シリーズの,概要と魅力を紹介していこう。
舞台となるベルーナ王国は,突如隣国のジェレニア共和国の侵攻を受け,国王が殺害されてしまう。それを契機として10年前の内戦の余燼(よじん)が再び燃え上がり,有力者同士の確執やジェレニア政府の思惑が交錯する中,戦局は混迷を極める。
そうした中で主人公一行は,ときにコミカル,ときにシリアスなドラマを展開しつつ,進むべき道を模索していくのだ。
2005年春には続編の「エンジェリック・ヴェール新伝 エフェメール島綺譚」の発売が予定されている本シリーズの,概要と魅力を紹介していこう。
ストーリーは,3Dキャラの演技と,2Dの顔グラフィックス,キャラクターボイスを伴う会話で進む。ちなみに左下のピンクのキャラは,ルシアンの妹スピカ | 主人公と女性陣によるスラップスティックなやりとりもお楽しみの一つだが,基本のストーリーはいたってシリアス。主人公と軍司令官の会話シーンだ | キャラの魅力(威力?)を存分に発揮したコミカルな会話の例。こちらの画面は「エンジェリック・ヴェール・プログレス 〜ウェスペールの迷宮〜」から |
主人公と各ヒロインとの会話は,ストーリー上ごく自然で控えめなもの。あざとい描写が苦手なヒトにも楽しめるだろう |
今日のワンポイントレッスン : ストロング |
ストレート・ロングの髪型ないし,その髪型をしたキャラクターを指す略語。今回のキャストで該当するユズリハを見ても分かるように,えてして和風キャラ/武道少女が獲得する称号なのだが,普段つつましいキャラがキレて日本刀を振り回したり,ところ構わず矢を射たりするのも一種のお約束である。 |
戦闘と戦闘の合間には,これらキャラクター同士の掛け合いでストーリーが示される。場面に合わせてアクションをとるローポリゴンの3Dキャラクターに,キャラクターボイスと表情付きのキャラクターグラフィックスが添えられた会話シーンはなかなかユニーク。各キャラの萌えポイントを生かしつつも,あくまで大河ドラマ的なストーリーテリングの大枠を守った内容で,責任の重大さに逡巡する主人公を励ます,覚悟のほどをいじましい言葉で示す,といった場面が多い。エンディングを左右する会話もごくあっさりしているので,分岐点であることを意識しながら返答を選びたい。
敵キャラの間でもドラマが展開されること,男性陣がイケメン揃いであることも,この作品を語るうえで見逃せないポイントだろう。女性プレイヤーにもオススメ……なのかもしれない。
敵キャラの間でもドラマが展開されること,男性陣がイケメン揃いであることも,この作品を語るうえで見逃せないポイントだろう。女性プレイヤーにもオススメ……なのかもしれない。
フィオ
主人公の幼なじみで,勝ち気な女の子。根っこの部分は純情かつナイーブで,実はベタベタする気満々らしいのだが,持ち前の(?)がさつさで数々のトラウマを負わせてきたために,主人公からは少々恐れられているフシがある。クラスは「シルバーナイト」で光属性,AGLが高く,移動/攻撃とも素早いキャラクター。(CV:飯塚真弓) |
ルシアン
獣人族「コトゥーカ」の一員で,その神秘的な力を生かしてベルーナ王国の宮廷魔術師を務めるが,少々抜けた性格ゆえに"突っ込まれ役"としての立ち位置を不動のものとしている。実は妹さんがいるのだが,こういう場合性格が正反対なのは説明するまでもないだろう。クラスは「コトゥーカ」で水属性,セリフの語尾に「ニャ」やら「にょ」やらが付いたりはしないのでご安心を。(CV:川澄綾子) |
エリーゼ
ベルーナ王国の第一王女で,主人公およびフィオはこのヒトに仕えている。国王が殺害され,王国が存亡の危機を迎える中で政治的に第一級の重要人物であり,かくまって逃げおおせることが主人公ら一行の重要な任務になっているのだが,本人はいたって気丈で気さく,危険に身を晒してでも戦争を終結に導くことが王族の務めと考えているらしい。クラスは「プリンセス」(?)で火属性。(CV:南央美) |
ユズリハ
エリーゼ王女および主人公らに何かと便宜を図る王弟グロアール公の,配下の東洋人士官。公の命令で主人公に協力するのだが,本人は異国の人間で,いささか年を食っていることを気にしている様子。メイドの変装は,少なくとも本編では必然性があったように思われるが,「プログレス」ではだいぶ香ばしいキャラクターに成長している。クラスは「ソードマスター」で風属性。(CV:井上喜久子) |
オージェル | リューベック |
本作の主人公。フィオと一緒にリューベック卿の孤児院で育てられ,士官学校を卒業したばかりの新米騎士だが,剣のウデには非凡なものがあるという。クラスは「ダークナイト」で闇属性,女性陣に振り回されるのは主人公の宿命か。(CV:萩原秀樹) | 10年前の内乱で名を馳せた騎士だが,思うところあって引退し,孤児院で戦災孤児達の面倒を見ていた。クラスは「パシフィスト」(ヒーラー)で土属性,ストーリーの要所で過去の片鱗を見せつつ主人公を助ける,頼りになるヒト。(CV:山崎たくみ) |
各キャラクターが持つ必殺技はかなり強力かつ派手。広範囲のユニットにダメージを与える,一人の敵に必殺の攻撃を繰り出すなど,タイプはさまざまだ |
ゲームはベルーナ王国の地図上を転戦することで進み,新しい場所に移動すると戦闘ないしイベントが発生して,行ける場所が増えていく。ストーリー上意味のある戦闘は,原則として一つの場所につき1回起こるだけだが,レベル上げ/資金稼ぎのための戦闘は随時行える。
戦闘はターン制で,スクエアマップに各キャラクターとその部下一人ずつを配置し,順番に動かしていく。各キャラは1回行動させるとチャージが消費され,ほかのキャラが行動している間にたまって次の手番が来るようになっているが,チャージ量はキャラのAGL(agility)ステータスが高いほど多くなるので,素早いキャラは行動回数自体が増える。
攻撃手段には剣やオノなど接近戦武器と銃,魔法があるが,装備できる武器/防具の種別はほぼキャラクターのクラス(固定)で決まるため,これは素直に考えればよい。むしろ頭の使いどころは,武器や防具の持つ"属性"だろう。
各キャラクターおよび魔法,高位の武器/防具には火・水・風・土・光・闇の属性があり,それぞれ対抗関係が設定されている。水属性のキャラクターは火のアイテムを装備できないが,水のアイテムなら効力が増すといった具合だ。同様に,防具は同属性の武器による攻撃を完全に無効化できるが,対抗属性の武器で攻撃されると倍のダメージを受ける。敵がどの属性の攻撃/防御手段を持っているか見極めるのが重要な戦術要素になるのだ。
このほか,AGLの高いキャラクターによる2回連続攻撃や,指揮官と同時に行動させることで部下の攻撃力を高める「一斉攻撃」,広域もしくは全敵/全味方に効く各キャラ固有の必殺技など,攻撃と防御のバリエーションはかなり広く,よく練られた戦術ゲームとなっている。
それと並んで本作の戦闘を面白くしているのがマップの作りだ。小高い丘や狭い道,吊り橋といった障害地形をうまく使って敵の攻撃正面を狭め,多数の敵と渡り合う。さらにダンジョンでは,床に用意されたボタンで扉の開閉をコントロールしたり,ワープゲートを1個1個試しながら目的の部屋を目指したりといったパズル的な面白さも加わっている。後ろに多数の敵が控える扉をあらぬタイミングで開けてしまう,強力な敵が待つワープ先に防御の苦手なキャラを送り出してしまうといった失敗を繰り返しつつ,勝ち方を探っていく。
ともすればダレがちなタクティカルRPGの戦闘だが,本作の戦闘は非常にテンポが良い。味方のヒットポイントとポーション/回復魔法をやり繰りする緊張感,首尾よく大技を繰り出したときのカタルシス(開放感)などが鮮烈に感じられ,やっていて楽しい戦闘に仕上がっているのだ。
なお,「エンジェリック・ヴェール・プログレス 〜ウェスペールの迷宮〜」は本編の後日譚で,おなじみのキャラクターがダンジョンを舞台に新たな冒険を繰り広げる。操作性はより洗練され,本編で操作できなかったキャラクターが使えるようになり,幕間狂言的なキャラクター同士の会話も増えるなど,多くのお楽しみ要素が盛り込まれているのだが,それを十全に楽しむためにも,ぜひ先に本編をプレイしておくことをお勧めしたい。
戦闘はターン制で,スクエアマップに各キャラクターとその部下一人ずつを配置し,順番に動かしていく。各キャラは1回行動させるとチャージが消費され,ほかのキャラが行動している間にたまって次の手番が来るようになっているが,チャージ量はキャラのAGL(agility)ステータスが高いほど多くなるので,素早いキャラは行動回数自体が増える。
攻撃手段には剣やオノなど接近戦武器と銃,魔法があるが,装備できる武器/防具の種別はほぼキャラクターのクラス(固定)で決まるため,これは素直に考えればよい。むしろ頭の使いどころは,武器や防具の持つ"属性"だろう。
各キャラクターおよび魔法,高位の武器/防具には火・水・風・土・光・闇の属性があり,それぞれ対抗関係が設定されている。水属性のキャラクターは火のアイテムを装備できないが,水のアイテムなら効力が増すといった具合だ。同様に,防具は同属性の武器による攻撃を完全に無効化できるが,対抗属性の武器で攻撃されると倍のダメージを受ける。敵がどの属性の攻撃/防御手段を持っているか見極めるのが重要な戦術要素になるのだ。
このほか,AGLの高いキャラクターによる2回連続攻撃や,指揮官と同時に行動させることで部下の攻撃力を高める「一斉攻撃」,広域もしくは全敵/全味方に効く各キャラ固有の必殺技など,攻撃と防御のバリエーションはかなり広く,よく練られた戦術ゲームとなっている。
それと並んで本作の戦闘を面白くしているのがマップの作りだ。小高い丘や狭い道,吊り橋といった障害地形をうまく使って敵の攻撃正面を狭め,多数の敵と渡り合う。さらにダンジョンでは,床に用意されたボタンで扉の開閉をコントロールしたり,ワープゲートを1個1個試しながら目的の部屋を目指したりといったパズル的な面白さも加わっている。後ろに多数の敵が控える扉をあらぬタイミングで開けてしまう,強力な敵が待つワープ先に防御の苦手なキャラを送り出してしまうといった失敗を繰り返しつつ,勝ち方を探っていく。
ともすればダレがちなタクティカルRPGの戦闘だが,本作の戦闘は非常にテンポが良い。味方のヒットポイントとポーション/回復魔法をやり繰りする緊張感,首尾よく大技を繰り出したときのカタルシス(開放感)などが鮮烈に感じられ,やっていて楽しい戦闘に仕上がっているのだ。
なお,「エンジェリック・ヴェール・プログレス 〜ウェスペールの迷宮〜」は本編の後日譚で,おなじみのキャラクターがダンジョンを舞台に新たな冒険を繰り広げる。操作性はより洗練され,本編で操作できなかったキャラクターが使えるようになり,幕間狂言的なキャラクター同士の会話も増えるなど,多くのお楽しみ要素が盛り込まれているのだが,それを十全に楽しむためにも,ぜひ先に本編をプレイしておくことをお勧めしたい。
いずれも「プログレス」の戦闘シーン。ダンジョン戦闘に特化した,よりパズル性の強い内容が特徴で,フロアごとに溶岩や氷など部屋の性格が変わり,出現する敵もそれに見合ったものになる |
(12.1MB) | (93.8MB) |