PCゲーマーの神器として挙げられるのは,一にも二にもビデオカードだろう。それ以外だと,CPUやサウンドカード,メモリーなども3Dゲームを満喫するには肝要だ。しかし,案外見落とされているその他の周辺機器も,ゲームを快適に遊ぶうえで重要なアイテムだったりする。  
 
思えば1998年のこと。アメリカのプロゲーマーの先駆け的な存在といえる"Thresh"ことピーター・フォング氏が,Microsoftの「Microsoft
Mouse 2」をエンドース(endorse:推奨)。これは,1983年に195ドルという価格で発売された「Microsoft
Mouse」の後継機種で,1993年から活躍していたエルゴノミックなデザインのボールポイントマウスとして,周辺機器の筆頭機種だ。
現在の激しい市場競争から思えば悠長な進展だが,Thresh氏がMicrosoftの野球帽をかぶった頃からLogitech社も一流のハードウェアメーカーとして台頭し始め,やがて1999年にはMicrosoftが「Intellimouse
Optical」「Wheel Mouse Optical」「Natural Keyboard」などを次々と発表。アジアのハードウェアメーカーも追随することで,さまざまな製品が登場するようになった。
まさに1999年は,「ゲーム周辺機器・勃興の年」となったのだ。
その理由は,「Windows 98」と同時にリリースされた「DirectX 5.0」の登場の賜物ともいえた。話せば長くなるが,ソフトやハードのメーカーはDirectXというAPIの規準に沿って製品を作るだけで,市場に出回るすべての製品に対応できるようになったわけである。Windowsにとって大きな革命であったと同時に,さまざまな中小企業に活躍のチャンスが訪れたというわけである。
1995年4月 | DirectX(Windows SDK)リリース |
1995年8月 | Windows 95リリース |
1996年5月 | Microsoft社,IntelliMouse(Wheel Mouse)リリース |
1997年8月 | DirectX 5リリース |
1997年8月 | Microsoft社,SideWinder ForceFeedbackリリース |
1998年8月 | Windows 98リリース |
1998年8月 | Creative Labs社,Sound Blaster Live!リリース |
1998年9月 | Microsoft社,IntelliMouse Explorerリリース |
1999年3月 | Logitech社,Wingman Gaming Mouseリリース |
1999年5月 | Microsoft社,Dual Strikeリリース |
1999年8月 | Creative Labs社,EAXテクノロジを公開 |
1999年9月 | Saitek社,Cyborg 3D Joystickリリース |
1999年11月 | Trustmaster社,NASCAR PRO Digital Racing Wheelリリース |
2000年11月 | DirectX 8.0リリース |
2001年8月 | Creative Labs社,Sound Balster Augityリリース |
2001年8月 | Microsoft社,Strategic Commanderリリース |
2001年10月 | Windows XPリリース |
2002年9月 | Logitechh社,MX Opticalエンジンを公開 |
2002年12月 | DirectX 9.0リリース |
今回は,筆者が勝手に「中小メーカー勃興5周年」ということにして,アメリカで発売されている周辺機器を中心に紹介してみよう。ただし,変り種趣向の筆者に合わせて,異色な製品ばかりになっている。
家族や隣近所に迷惑をかけず,深夜にゲームを満喫するには,ヘッドホンは必須のアイテムである。マルチプレイゲーマーなら,手頃な値段で質の良い音を楽しめるセンハイザー社の「HD202」あたりが定番といったところだろうが,個人的にお勧めしたいのは,ヘッドホンなのに5.1chのサラウンドサウンドが楽しめる,Zalman社の「Theater
6」(ZM-RS6F)だ。
このヘッドホンの特徴は,なんといっても一つのヘッドセットで本格的なサラウンドサウンドをシミュレートできることだ。これは両側に三つずつ水平に配備されたスピーカーで,中央はセンタースピーカーを,そして手前はフロント,背後に位置するのがリアスピーカーを擬似するのである。コネクタも,サウンドカードのそれぞれのインプットに振り分けるように,三つの端子が用意されている。重さは316.8gで,前述のセンハイザーHD202と比較すると3倍ほどの重さになるが,普通に装着している分にはつらくない。
周波数レスポンスは50Hz 〜 20kHzと,高音域への対応がもう少し欲しいところだが,このヘッドホンを一度ゲームなりDVD映画なりでトライしてみれば,これまでとは違ったサウンドが楽しめるはずだ。最近ではマイクロホンが追加されたモデルもリリースされている。
▼キーボード |
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Ideazon社「Zboard」
価格:49.99ドル
詳細/問い合わせ:
http://www.zboard.com/
Zboard is a trademark of Ideazon, Inc. DOOM 3 Charactersc 2004 Id Software, Inc. All Rights Reserved. DOOM 3? is a trademark of Id Software, Inc. All Id Software, Inc. property is used under license.
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最近のゲーマー用キーボードは,バックライトで暗がりでもキーを判別しやすくなっていたり,付属のコマンドパッドで好みの入力ができたりする。この両方の機能を備えているのが,Saitek社から最近リリースされたばかりの「Illuminated
PC Gaming Keyboard」で,アメリカの有名ゲーム店舗でも販売されるほどの大売出し中だ。しかし,ゲーマー以外では誰も購入しないだろうという代物を開発した,チャレンジャーな開発元Ideazon社の「Zboard」も捨てがたい。
このZboardは,キー部分のプレート(キーセット)を本体から着脱できるようになっていて,ゲーム用と,通常のPC操作で使用するスタンダードなキーセットを自由に取り替えられる。ゲーム専用キーセットには,あらかじめプログラムされたホットキーが散りばめられており,慣れれば非常に使いやすそうなデザイン。さらに,「DOOM
3」や「Unreal Tournament 2004」などの人気ソフトなら専用のキーセットが別売りで用意されており,また「EverQuest
II」や「World of Warcraft」のようなホットキーを多用しそうなゲームにもすでに対応している。
既存のキーボードの使い勝手の悪さにお嘆きなら,試してみる価値はあるかもしれない。
周辺機器の中でも一番買い換え率が高そうなのが,マウスだ。ゲーマー達だと,Logitech社の「MX510」や「MX1000」などの反応の良いマウスが御用達アイテムで,最近ではRazor社の最新モデル「Diamondback」にも触手が伸びているようだ。アメリカでも発売されたばかりなので筆者自身は使用したことがないものの,16ビットプロセッシングによるレスポンスの良さは,すでに好評になっている。
しかし,やはり真のゲーマーを自認するのであれば,MonsterGecko社の「PistolMouse FPS」を使いたい。その名の通り,ピストル型のFPS専用光学式マウスで,800dpiの光学センサーは通常通り机上で動かす仕組みである。マウスクリックは,左クリックが弾きがねに,右クリックが弾きがねカバーの下部に割り当てられているため,ちょっとした慣れが必要だ。
実際に試してみると,さすが本物の拳銃を模しているだけあって,かなりエルゴノミックで持ちやすい。なんとなくアーケードゲームをやっているような気分になり,深夜に一人で遊んでいるとニタニタしてしまうこと間違いなし。オモシロ半分で購入するにはちょっと手を出しにくい値段だが,FPS用新ハードとしては,実にMicrosoftの「Dual
Strike」以来の挑戦者となるPistolMouse FPSの栄誉を称えたい。
ゲーム用周辺機器は,まだまだ極まった製品が存在しない,前人未踏の空白地が残されている。そのニッチを見つけ出すのは,アイデアで勝負する中小のハードウェアメーカー達なのだ。これからも,変り種のゲームアイテムを温かく見守っていこう。
次回は,デジタル・ディストリビューションをテーマに,業界の新しい流れを探っていく
■■奥谷海人(ライター)■■
本誌専属の海外特派員。メーカー製のPCを買わなくなってから10年となる奥谷氏は,最近自宅の改造にも乗り出したようだ。サンフランシスコらしく築70年という古い家に住む彼は,先週もバスルームの美化運動を敢行し,キャビネットやトイレを一新。剥がれてきていたペンキも塗り直したそうだが,「古い建築物にはアスベスト(吸い込むと肺ガンの原因になる)が使われているんじゃないか」と今になって怯えている。
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