連載 : イース・オリジン連載 ホップ,ステップ,ダームの塔


イース・オリジン連載 ホップ,ステップ,ダームの塔

最終回:「トール=ファクト」編

 

「トール=ファクト」編において本作の真相が明らかに

 

行方不明だったトールが,女神捜索隊の敵として立ちはだかったのだから驚きである。彼の存在はユニカ/ユーゴ編における最大の謎の一つ

 「イース・オリジン」の冒険者達にアドバイスをお伝えしていく本連載も,いよいよ最終回。前回までで塔はラスボス直前まで登り詰めてしまったため,今回は第三の主人公「鉤爪の男」こと「トール=ファクト」編の模様を紹介していこう。

 

 トール=ファクトとは,本作の主人公の一人「ユーゴ=ファクト」の兄にあたる人物。かつては神殿騎士団の副長を務めていたものの,半年前にサルモン神殿の浮上時間を稼ぐ戦いで,「サウル=トバ」と共に行方不明となっている。その後しばらくのあいだ消息は分からなかったものの,イース・オリジンにおいて女神達を狙う「闇」の一員として,逆に女神捜索隊の前に立ちはだかってきたのだ。

 

 しかしユーゴ編とユニカ編の内容では,トールは本当に彼らを裏切っていたのか,あるいは何か別な思惑があっての行動だったのかは,最後まで不明のままであった。また,「レアとフィーナはいったい何の目的で黒真珠を持ち出したのか?」などといった物語の核心部分は,ユニカ編とユーゴ編では最後まで触れられていない。

 

トールは,かつて神殿騎士団の副長を務めた人物。しかしイースを守るためにサウル=トバと共に戦地へ赴き,長い間消息不明となっていた トールと同様,女神達の目的もユニカ/ユーゴ編では結局分からないまま。トール編の物語では,この二つの謎に切り込んでいく

 

 ゲームの初期段階で選べる主人公はユニカとユーゴの二人だけだが,この両者でゲームをクリアすると,新たに三人めの主人公として,トールでもプレイできるようになる。つまり,女神捜索隊ではなく「闇」の視点で本作のストーリーを辿ることにより,これまで不明だった謎が,ついに解明されるというわけだ。

 

トール編は「闇」の視点で塔を駆け上がっていくのが面白い。アクの強い闇の幹部達とのやりとりにも注目してほしい ダレスに肩入れするトールは,その見返りとして塔の内部にいるモンスターの力の吸収を望む。そこまでして力を欲する真意とは? 各地にあるセーブポイントはもちろん利用できる。ストーリー面はさておき,少なくともプレイ感覚は基本的にユニカ/ユーゴ編と同じだ

 

 

かつての同胞とも剣を交えるスリリングなシナリオ展開

 

塔の内部で待ち受けるボスを次々と倒していく。ちなみに彼らを含めたモンスターの主であるザバは,トールに対して怒り心頭だ

 実際のトール編におけるゲーム内容だが,基本的にはユニカ編やユーゴ編と一緒で,ダームの塔を登っていく。ステージ構成も一部を除いてほぼ同じであり,女神像ならぬ「邪神像」によるデータセーブや,「クリスタル」でのワープ,「魔の因子」(女神の加護)よるパワーアップなどといった,同様の環境も揃えられている。
 ただし,主人公としての立場が女神捜索隊に相反する「闇」の一員であることから,ストーリー展開はまるで異なる。今回トールは闇の領主「ダレス」からの指令を受ける形で,女神のレアとフィーナ,そして黒真珠を捕獲すべく,塔の一階からしらみ潰しに探していくのだ。

 

 もちろん,トールとは別に女神捜索隊の面々も塔の内部を探索している。ときには,ユニカ/ユーゴ編において「闇」の幹部と遭遇したように,探索中の両者がばったりと出会ってしまうこともある。そのときに発生する数々のイベントこそ,トール編における最大の見どころの一つだ。

 

 ここで,女神捜索隊のそれぞれのメンバーの立場から,トールがどのような人物として映るのかを考えてみてほしい。例えばユーゴにとってはコンプレックスを感じさせる兄であり,ユニカにとっては亡き父の部下だ。また神殿騎士団のガレオンにとっては,かつて共に肩を並べ戦った同胞でもある。
 現在「闇」の一員として動くトールは,(少なくとも表面上は)イースの仲間達を裏切っていることになる。それまで両者が親密な間柄だっただけに,どう考えても笑顔で再会,というわけにはいくまい。実際に,彼らと剣を交える展開すらあるのだ。

 

地味だった女神捜索隊の面々も,ついに面目躍如のときが。それぞれのメンバーにたっぷりと見せ場が用意されているので期待しよう

 

 そして,トールと女神達との関係にも注目してほしい。というのも,当時のレアとフィーナは,女神ではあるものの決して完璧な存在ではない。ときには悩みを抱えるなど,人間らしい(?)一面も持ち合わせていた彼女らにとって,トールは良き相談役でもあったのだ。ときにトールとレアの間柄には,イースシリーズのファンは大いに驚かされることだろう。

 

 トール編では,4フロア単位のステージをクリアするごとに,かつての仲間達とのやりとりを振り返るイベントが挿入される。こうして,一体どうしてトールが現在の道を選ばねばならなかったのか,というのが少しずつあらわになるというシナリオに仕上がっているのだ。

 

かつての仲間との戦い,弟ユーゴとの確執,そして女神との再会。さまざまな思惑をはらみつつトール編のストーリーは進展していく

 

 

テクニカルさは求められるものの,きわめて快適にプレイできる

 

鉤爪による通常攻撃は,単純に連打するだけでも強い。スキル習得後も,宝石でレベルを上げるまでは通常攻撃のほうが扱いやすいくらいだ

 続いて,トールをキャラクターとして操る場合の性能面に目を向けてみよう。トールのメインウェポンは,両手に装着した大きな鉤爪だ。これによる引っかき攻撃はとても速く,攻撃ボタンを連打すると最大5回まで連続攻撃できる。ジャンプしたときに一度攻撃ボタンを押すと,着地までの間に自動で4回も攻撃するといえば,どれだけ速いかが分かるだろうか。

 

 そのほかの攻撃方法については,ユニカと同性質の「下突き」と,「スライディング」が可能だ。スライディング攻撃をモンスターに命中させると,ランダムで一時的にDEF値を下げられるほか,これを使わないと先に進めない場面も一部で登場する。

 

 スキルはユニカやユーゴと同様,3属性用意されている。最初に習得できる「風」のスキルは,瞬間移動を伴った攻撃を行う。この移動先は二通りの指定ができ,方向キーを入れている場合はその方向へ,移動キーがニュートラルの状態だと,最も近くにいる敵へと自動的に向かっていく。つまりスキル使用ボタンだけを連打すれば,MPの続く限り勝手にモンスターを狙い続けてくれるのだ。
 「雷」のスキルの使用時は,鉤爪に雷をまとわせて強烈な突き技を行う。攻撃できる範囲は比較的狭いものの,うまく命中させると強烈なダメージを叩き込める。もちろんユニカやユーゴと同様,装甲が硬いモンスター全般に対しても有効な攻撃手段だ。
 そして最後に習得する「炎」のスキルは,使用すると炎を身にまとって回転しながら上昇していく。当たり判定がほかのスキルよりも広いのが特徴で,空中に浮かんでいる敵に対してはとくに命中させやすい。

 

スライディングを使わないと先に進めないような場面は,たいていその奥に宝箱が用意されている 風のスキルは攻撃用よりも,瞬間移動の面で重宝する。致命的な攻撃を受ける寸前でも,これを使えば逃げられたりする

 

雷のスキルは,「スキル溜め」で使うと攻撃範囲の狭さを克服できる。メインの攻撃手段にもできるほど強力である

 トールは「闇」の一員となったときに,「魔の因子」を受け入れることで通常の人間とは違う存在となっている。そしてブーストを使うと,トールは正真正銘の「魔人」となり飛躍的にパワーアップするのだ。例えばユニカ編やユーゴ編では,特別なアイテムがないと先に進めなかった局面でも,トールの場合はブースト状態だけで切り抜けることが可能。さらに意外なことに,ブースト状態の間は「聖獣ルー」のしゃべる内容も理解できたりする。

 

 トール編におけるプレイフィールとしては,あらゆる行動が素早いためにテクニカルな印象を受ける。おそらく,最初はこの感覚の違いに戸惑うことだろう。しかしそのぶん,操作に慣れキャラクターのポテンシャルを発揮できるようになると,きわめて軽快にプレイできる。これまでユニカ編とユーゴ編をクリアできた人なら,きっとトールも苦労せず使いこなせるだろう。

 

炎のスキルは頭上方向への攻撃範囲の広さに目が向きやすいが,実は足元の当たり判定もそれなりの広さがある ユニカやユーゴは,聖獣ルーのしゃべる言葉は理解できなかった。ルーの言葉が分かる魔人トールは,正真正銘の魔物ということか 写真はバースト使用時のもので,この状態が数秒間続く。見た目にふさわしいダメージを備えているので,積極的に使っていこう

 

 

本作を購入したのならぜひともトール編までプレイしてほしい

 

 謎が次々と明らかになるトール編については,あくまで自分でプレイして楽しんでもらうのが一番だろう。ユニカ/ユーゴ編と比べてもズバ抜けた,トール編におけるストーリー展開の妙には,きっと唸らされるはずだ。
 もともと個性的な「闇」の幹部達はもちろん,これまでは地味な印象があった女神捜索隊の面々も含め,登場キャラの皆が,トール編では実に生き生きとしている。トールの,女神捜索隊の面々からは裏切り者のそしりを受け,もう一方の闇の幹部からも心のどこかで疑われつつも,己の信じる道を孤独に突き進んでいくという姿には,胸にぐっと来るものがある。

 

トール編はほかの二人と比較して,ストーリーの意外性が高い。プレイ前は必要以上に情報収集しないほうがきっと楽しめるだろう ユニカ編やユーゴ編では長らく謎のままだった要素が,一つずつ解明されていく。ストーリーに惹かれてグイグイ進めたくなる

 

 トール編をプレイすると,この物語が700年後の(つまり20年前に発売された)「イース」に結びついていることを実感できるのも,長年のファンにとって嬉しいポイントだ。「イース」において,「銀のハーモニカ」「イースの書」「シルバーソード」などといったアイテムが,どうしてあのような形で登場するのか? その伏線が,トール編においてしっかりと張られているのだ。
 イースに関連するストーリーとして,ファクト家が闇に堕ちる顛末だけは結局明らかにされず,このあたりは気になるばかりである。映画「スター・ウォーズ」におけるエピソードI〜IIIに相当する,別の物語の登場を期待せずにはいられない。
 ユニカ/ユーゴ編で2周めのプレイが苦痛に感じるのであれば,イージーモードでもクリア条件だけは満たせるので試してほしい。どのような形でも構わないので,ぜひトール編までゲームを進めよう。

 

もし機会があれば,トール編のプレイ後,初代「イース」に触れてみてほしい。当時とはまた違った感想を持つのではなかろうか

 

 

ゲームクリア後の特典いろいろ

 

 最近のイースシリーズのファンにはお馴染みだが,本作はゲームクリア後にいくつか特典があるので,紹介しよう。トール編のゲームモード解禁はその最たるものだが,ほかにも2種類が用意されている。まず一つめは,新規プレイのときにボーナスのSPを獲得できるというもの。SP量の計算式は,「クリア回数×1万」となっている。
 ゲームをクリア後に「1万」と聞いても,いま一つ実感がわきにくいかもしれない。が,しかしゲームの開始直後という点を考えると,これはかなりの効果。SP1万あれば6〜7種類の「女神の加護」を得られるのだ(どれを選ぶかによっても微妙に違ってくるが)。本作では主人公が3人いるとはいえ,そうそう何度も最初から始めることは少ないかもしれないが,たとえばHARDモードでのプレイの場合などに役立ててほしい。

 

 もう一つの特典は,ゲーム本編をクリアしたキャラクターで「タイムアタックモード」に挑戦できるようになるというもの。対象は道中で戦ったすべてのボスで,それぞれと個別に戦えるほか,全部と連続して戦う「Boss Rush」というモードもある。また,難度Easy/Normal/Hardでそれぞれスコアが記録されるので,腕に自信のある人もそうでない人も,適度なバランスで楽しめる。ただしゲーム本編と同様,使えるスキルや特殊攻撃は,そのボスと戦った時点で習得しているものに限られる点は注意しよう。

 

2回め以降のプレイでは,違ったスタイルで攻略してみてはどうだろうか。たとえばユニカの「大振り」や,トールの「スライディング」を活用するのは新鮮かも 画面右下のタイムカウントに注目。タイムアタックモードをプレイすると,本作の戦闘におけるテンポの良さを,あらためて実感できるだろう

 

 

■■川崎政一郎(4Gamer編集部)■■
前回も書いたが,2月から4Gamerスタッフの一員となった政一郎。彼の席は,編集長とデスクに三方向をガッチリ固められた位置。4Gamerはもともと静かな編集部だが,さらに緊張感に満ちた,とても息の詰まる席に座しているのだ。そんな彼が少しでもリラックスできるようにと,編集部の仲間達は「Oblivion」の週刊連載記事で使われたミッシェルの画像や,「ムンスター戦車博物館」取材記事で使われた松本の写真などを政一郎にこっそり送りつけており,政一郎は吹き出すのをこらえるのに必死らしい。やだなあ,社内イジメではないですよ。
タイトル イース・オリジン(Vista対応版)
開発元 日本ファルコム 発売元 日本ファルコム
発売日 2007/03/29 価格 7980円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 98/Me/2000/XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium III/1GHz以上[Pentium 4/1.3GHz以上推奨],メインメモリ:384MB以上[512MB以上推奨](Windows 98/Meでは256MB以上[384MB以上推奨]),グラフィックスチップ:GeForce 2またはRadeonシリーズ推奨,グラフィックスメモリ:32MB以上[64MB以上推奨]

(C)2006 Nihon Falcom Corporation.


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http://www.4gamer.net/weekly/yso/005/yso_005.shtml