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[CEDEC 2019]ゲーム制作の現場における「心理的安全性」とは。ヘキサドライブのQAエンジニアが語る,「言える化」の重要性
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印刷2019/09/10 21:33

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[CEDEC 2019]ゲーム制作の現場における「心理的安全性」とは。ヘキサドライブのQAエンジニアが語る,「言える化」の重要性

 しばらく前からビジネス界隈で話題となっている「心理的安全性(Psychological Safety)」は,集団作業が求められるゲーム開発においても重要な概念である。ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2019」の2019年9月4日に行われたショートセッション「心理的に安全な状況を作り出し,すべてをかき混ぜる方法」では,この心理的安全性を開発現場で活かすための知見を語るものとなった。

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 講演を行ったのは,ヘキサドライブのQAエンジニアである森田和則氏だ。氏は2018年にヘキサドライブに転職したが,そのときに「安心して働ける職場である」と感じたのだという。
 ただ,怒鳴ったりする人がいないので安全に仕事ができる一方で,制作物に対しての意見(ツッコミ)や,仕事上の感情のぶつけ合いもまた,少ないと感じられた。ゲームには,こうすれば100%面白くなるという正解はないのだから,もっと感情(熱量)をぶつけ合い,全員で作る方がより良いものができるはずだ,と森田氏は考えたという。

ヘキサドライブのQAエンジニアである森田和則氏
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 そのためには部署間の関係や,組織そのものの改善が必要だ。そう考えた森田氏は,仕事をする傍らさまざまな部署に自作ツールを持ち込んで,プロジェクト終了後の振り返りを行うことの重要性についての講演を社内で行うなど,精力的な活動を展開。その結果,転職からわずか3か月でポストモーテム(プロジェクト終了後の振り返り会)のファシリテーション(発言を促す,話の流れを整理し,相互理解をサポートすること)を任されるようになったという。
 ポストモーテムについて,当初は責任を追及する“魔女狩り”ではないかとする誤解があったそうだがそれも解け,プロジェクトを進めながらの振り返りが定着。チームビルディングを意識するスタッフも増えるなどの成果も得られたそうだ。

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 心理的安全性とは,参加メンバーが気兼ねなく発言でき,「本当の自分を安心してさらけ出せる」と感じられる雰囲気や場のことだ。これは誰にでも経験があると思うが,会議の時は何かと萎縮しがちなものである。無知・無能と思われたくない。プロジェクトの進行を阻害するネガティブな意見を出す人間だと思われたくない……といった不安があるからだ。
 しかし心理的安全性が高ければ,不確かなことでも質問・指摘しあえ,非を認め,失敗を恐れず挑戦できる。しかし,心理的安全性が高い=メンバーがなれ合っているというわけではない。チームへの信頼があるので,安心してリスクを冒せる。森田氏は,こうした状態を「より高みを目指し,安心して斬り合える」と表現していた。ゲームの面白さを少しでも高めるため,厳しい指摘を行い,互いに切磋琢磨していく。ノルマをこなすサラリーマンというより,高みを目指すクリエイターの働き方といえるだろう。

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 では,心理的安全性を高めるにはどうすればいいかというと,「言える化」の推進が必要だという。言える化は「思い込みを取り除き,気軽に発言できる。不確かなことでも発言できる」「新入社員やベテランの区別なく相談ができ,助けを求められる」「問題や間違いを互いに指摘しあえる」といった3段階からなっており,これを進めることが心理的安全性の高さにつながっていく。

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 もちろん「言える化を推し進める」と宣言すれば,即座に心理的安全性も高まる……などというものではない。言える化を進めるには,相手を知り,自分も知ってもらうことが必要だ。コミュニケーションの量を増やし,話しかけてもらいやすいタイミングを増やして信頼を獲得する。そして,相手が何を考え,大切にしているかを理解し,さらに自分の内面もさらけ出すことによって,言える化がスタートするという。
 ありがちなのが,コミュニケーションのために面談の場を設けるような取り組みだが,それよりは短い時間でも,こまめに話しかけていくほうが有効とのこと。こうした言える化を進める管理者・支援者としては,以下の4つのポイントを心がけると良いのだという。

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●話しやすそうな雰囲気を作る


 相手が話しに来るのを待つのではなく,自分から話しかけに行く。
 「相談があるなら話にくればいいのに」という考え方ではなく,話にこられない人ともコミュニケーションするため,権威を自分で下げるのだ。
 毎日,リフレッシュのときにコーヒーを持ってフロアを歩き,相手に時間があるようなら直接話しかけ,忙しそうなら近くで雑誌を読むなどする。コミュニケーションを取ろうと意気込むより,休憩としてリラックスするのが良いという。すると,何気ない会話のなかから相手を知ることができ,相談を持ちかけられたりするといった効果が上がったとのこと。

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●自分を知ってもらう


 自分は何ができるか,どのような人間であるかを知ってもらう。
 相手からすると自分は突然現れた人物であり,プロジェクトにどのような貢献をできるか理解されていないからだ。そのためには,社内に対してであっても,講演などさまざまな機会を捉えて自己紹介(自分が何をできるかアピール)をするのが有効とのこと。

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●早期に行動してもらえるようにする


 相談や報告,質問を早めに受けられるようにする。
 何か問題が起こった場合でも,早期に対策を取れた方が良いからだ。そのためには,報告や相談といった行動そのものに感謝することが必要だ。相手がスケジュール遅延などの悪い報せを持ってきた場合,そこで自分が怒ってしまったのでは報告しづらくなってしまう。それよりは,報告に来てくれたこと自体を感謝することにより,相手も継続して報告を上げてくれる。
 もちろん,自分も報告を継続するのが重要だ。質問や相談を受けた後,状況が変化していないと再度のコンタクトを取りづらいものだが,それでも「状況が変わっていない」ことを話す(担当者に相談しに行ったが不在だったなど)ことで信頼を得られるという。

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●最小コストでかきまぜる


 ここでいう“かきまぜる”とは,状況を変化させて人同士のコミュニケーションを計ること。予め,協力してもらえそうなスタッフと接点を増やすことにより,相談しやすい状況を作り出す。そして,効果的なタイミングで情報を多くの人に伝えることにより,興味のある人間を探す……といった取り組みにより,少ないコストで協力体制を築き上げることができる。

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 組織そのものを大きなプロジェクトと捉え,全員でチャレンジできる環境を作り出だすことは,100%以上のゲームを生み出す原動力となる。とはいえ,人間はできることしかできないし,いきなり変化することもできない。だからこそ,こまめなコミュニケーションや,相手との関係構築によって,変化の種をまいておくことが大切だ。森田氏は,そうした切っ掛け作りを続けていこうと受講者に呼びかけ,講演を締めくくった。

ヘキサドライブ 公式サイト

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