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[TGS2022]Xperia 1 IV専用デバイス「Xperia Stream」をじっくりチェック。実用性はあるものの,課題も見えてきた
基本的な製品情報は,製品発表記事を確認してもらうこととして,まずはXperia Streamの概要を軽くおさらしていこう。Xperia Streamの製品名に「for Xperia 1 IV」とあることから,「もしかして,ほかのスマートフォンでは使えないの?」と思う読者もいると思うが,残念ながらそのとおり。Xperia Streamは,Xperia 1 IV専用の周辺機器で,そのほかの製品では利用できない。仮に次世代のXperiaが登場したとしても,Xperia Streamがそのまま使えるかどうかは不明だ。
スマートフォンの買い替えサイクルが長くなっているとは言え,短いスパンで機種変更をする人も多い。外付けの周辺機器が1つの機種でしか使えないとなると,導入しにくい面もある。その点を現地にいた開発陣に聞いてみたのだが,「将来の製品については,どうなるか分からない」とのことだった。
話を製品に戻すと,Xperia Streamの公称本体サイズは,約185(W)×80(D)×39(H)mmで,公称本体重量は約142gだ。Xperia 1 IVを装着すると,左右に少し大きくなる程度のサイズに収まる。
一方で,横から見ると端末の端から中央にかけて厚みが増す湾曲した形状であるため,横持ち時に端末を持ちやすくなる。とくにTPSやリズムゲームなどと相性がいい。滑りにくい表面処理も加えて,ソニーらしい作りといえるだろう。ゲーム用途グリップとしては,これまで触れてきた類似アイテムにおいて,最も作りがシンプルで,そのうえ持ちやすい。
縦持ち時のことはあまり考えられていない作りではある。ただ,ファン部分の出っ張りが指をかけるのにちょうどいいので,縦持ちでも意外にいい具合だった。
縦持ちするゲームで,それなりに高い負荷で長時間プレイをするタイトルと言えば,「Pokémon GO」くらいだろうか。ただ,後述する「HSパワーコントロール」の存在も含めて,縦持ち派ゲーマーでも導入を検討する価値はありそうだ。L字型のUSB Type-Cケーブルがあれば,給電しながらのポケモンハントも快適そうである。
インターフェイス類は,4極3.5mmミニピンヘッドセット端子や,HDMI出力端子,100BASE-TX対応有線LANポート,USB Type-C(給電のみ)を備える。いずれも本体下側面に並んでいるので,ヘッドフォンやUSBのケーブルをつないだ状態でも,あまり持ちにくくならない。すべてのポートにケーブルをつなげると,ビジネス向けノートPCにおけるドックのような印象だ。
注意点としては,Xperia StreamのUSB Type-Cポートは,データ通信に対応せずに給電にしか使えないということだ。データ送受信もできるのであれば,別の意味で遊べたのだが。
有線LANは100BASE-TXとなる。ソニーによると,ゲームであれば巨大なデータの通信は,あまりしないからという判断になったそうだ。ゲームの新規インストールや,アップデートのときはより高速な有線LANが欲しいときもあるので,この仕様には疑問を感じる。
Xperia Streamを装着すると,Xperia 1 IVに搭載するゲーム用機能「Game enhancer」の「ゲームモード」に,Xperia Stream用のUIが加わる。ここではリアルタイムのフレームレートや,メモリ使用率,ディスプレイの明るさ,ストレージ使用率といった情報に加えて,電源の接続状況や供給電力,Xperia Streamのファン回転数などが表示できるのだ。
また,画面の右側では,ファンの回転数やサーマルリミット,リフレッシュレート,タッチ反応速度などを設定設定できる。いかにもゲーマー向け製品らしい項目だ。とりわけ,Xperia 1 IVには,内蔵バッテリーを介さずに,本体に直接給電する「HSパワーコントロール」という機能があるので,給電しながらのゲームプレイに都合がいい。
SoC(System-on-a-chip)の動作は,熱を起点として管理される。Game enhancerでは,以下の2項目を設定可能だ。
- サーマルリミット:本体の温度許容値を引き上げる(ヘルプの文章ママだが,サーマルスロットリングに入るタイミングを変更する認識でいいとのこと)
- サーマルブースト:サーマルリミットの上限を引き上げる
サーマルブーストを有効化すると,サーマルリミットで設定した本体の温度許容値を超えて,SoCのクロックを引き上げることが可能だ。これらの設定は,画面左側にあるデバイス温度レベルを参照しているようで,「SoCの温度は見ていない」といった意味合いの説明を受けた。SoCだけでなく,バッテリーやディスプレイパネルも熱源であるから,このような動作になったのだろうか。
ディスプレイ関連の設定項目についても触れておこう。最大リフレッシュレートは,アプリに依存するため割愛するとして,「タッチ反応速度」と「タッチ追従性」の項目を調整するとどうなるか,「PUBG mobile」で確認してみた。
タッチ反応速度はLowからHighまでの4段階,タッチ追従性はLowからHighまでの3段階で切り替えられる。タッチ反応速度はLowとHighで差を体感しやすい。その一方で,タッチ追従性の調整は効果が分からないままだった。機能の説明文では,「指の動きを忠実に」とあるので,アサルトライフルやスナイパーライフルなら,恩恵がありそうなのだが……。あるいは,お絵描き用アプリなら違いが分かりやすいのかもしれない。
また,Game enhancerでは,映像のフレームレートを確認できるが,その値を常時表示するような機能はない。スマートフォンのゲームでは,いま何fpsくらいで,ゲーム映像を表示しているのか分からないものがほとんどだ。フレームレートや端末の温度を確認しながらプレイしたいゲーマーはいるはずで,いま一歩という残念な部分はある。
以下に,Game enhancerで確認できた機能説明をまとめて掲載しておく。詳しく知りたい人は,写真をクリックして拡大画像を見てほしい。
Xperia Streamの冷却機能にも目を向けよう。
冷却は背面のファンから吸気して,Xperia Stream内部のスリットを空気が流れてXperia 1 IVの背面全体を冷やしたあと,本体正面の左右端にある隙間から排気する仕組みだ。
正面から出てくる風はぬるくもなく,変につめたくもない。風量が強すぎることもない絶妙な塩梅である。ディスプレイの熱が気になりにくいのもポイントだ。 端末全体の熱を抑えるので,微妙な手汗も抑えられるだろう。この部分の作りを気に入る人は多いはずだ。
TGS 2022の会場でXperia Streamを試したところ,回転数をAUTOに設定した状態で,4800〜5700rpmの範囲で動作していた。会場内は相応にうるさい環境ではあるのだが,4800rpmではファンのノイズや駆動時の振動があまり気にならなかった。一方,5700rpmまで回転数が上がると,ファンの風切り音や微妙な振動が気になるようになった。
ゲーマー向けノートPCでもそうだが,基本的にXperia Streamの使用時は,ヘッドフォンやイヤフォン使ってゲームサウンドを聞くのが適切だろう。また,ファンの振動は冷却効果とのトレードオフなので,回転数を上げれば振動も気になるようになる。
なお,空冷ファンは最大10200rpmまで回転数を上げられるのだが,うるさすぎてまったくもってゲーム向きではない。ベンチマークテストを実行するときに使うくらいだろう。
重要な点は,Xperia Streamのファンコントロールは,Game enhancerに登録できるアプリでしか機能しないことだ。登録できない場合は,ファンのコントロールができないので,温度に応じた適切な冷却は期待できないという。
そのほかに,Xperia 1 IVの機能としては,最大リフレッシュレートとタッチ反応速度,タッチ追従性をゲーム中に素早く変更できる設定パネルを,ゲーム画面の上にオーバーレイ表示できるようになったことや,シャッターボタンへの機能割り当てなどが挙げられる。いずれも便利な機能だ。
余談だが,Xperia Streamが発表されたときに,知人のストリーマーから相談があった。それは「Xperia Streamは,自撮りの配信にも使えるか」というものだ。答えとしては「イエス」。ただ,変則的な運用となるうえ,ソニー開発陣の想定外な使い方なので,うまく行くかは分からない。ゲーム以外の用途でも使えるかは,ソニーストアなどで実機をチェックするほかないだろう。
実機に触れつつ,開発陣に質問できたので,Xperia Streamについて分からなかった点が,だいぶ明確になった。気になる点がいくつかあるものの,ゲーマー向けスマートフォンの周辺機器の中では,Xperia Streamは,しっかりした作りである。とくに,持ちやすさの点でいえばトップクラスであり,スマートフォンをゲーム用途に多用している人ほど,納得できる機能を備えている。
一方で,一部分かりにくい項目や仕様があったり,ファンのノイズが気になったりといった課題を見られた。開発陣は「ご意見お待ちしております!」とのことで,今後も改善が続けられるようだ。個人的には,有線LANとHDMI出力をUSB Type-Cにまとめてほしいな,といったところで本稿を締めさせてもらおう。
ソニーのXperia特設サイト
4Gamerの東京ゲームショウ2022特設ページ
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