[E3 2006#157]モリニュー氏の次回作は,「プレイヤーの感情を喚起するFable 2」
Populous(ポピュラス)でスターダムにのし上がり,いまだ業界の重鎮として君臨するPeter Molyneux(ピーター・モリニュー)。メガヒットがなくても,作品がなくても,なぜかカリスマ性を持つ人
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E3記事では恒例といえる,ゲーム業界の大御所ピーター・モリニュー氏のインタビューを,今回も行った。 モリニュー氏は,彼の会社であるLionhead StudiosがMicrosoft傘下に入るなど,このところいろいろと身辺が忙しい様子。本人自らが「今年は奇妙な年」と語るのは,見せるべきデモが今回はなく,いつものように自作を見せながらのインタビューにならないためだろう。どうやら,この場で何を語るべきかについて,いささか迷いがあったらしい。開口一番,「何を話していいのか考えていたんだよ」とは,モリニュー氏の正直な気持ちだろう。
実を言うと,E3開催の直前まで,モリニュー氏のインタビューは予定されていなかったのだが,こちらから申し入れによって,急きょ時間が取られることになったのだ。本来なら一問一答形式で書くべきだが,そんな経緯もあり,以下,彼の言葉をやや翻案してお伝えしようと思う。そもそも彼自身何を話すかまったく決めていなかったのだろう。対談の場は――それはインタビューというものではなかった――考え考え,思案しながら,言葉を選んでゆっくりと行われた。早口で自分の作品をまくしたてるいつものモリニューは,そこにはいなかったのだ。
まず,おそらく世界中のメディアから聞かれているであろう「LionheadがMSに買収された件」についてだが,本人はポジティブに受け止めているようだ。直接聞いたわけではないが,関係者によれば,身売り先はLionhead自らが探していたとのこと。そりゃまぁポジティブでないはずはない。むしろ,Microsoftに買収されることは,彼がもっとも強く望んだパターンなのではないだろうか。 「Fableの制作について,Microsoftは自由にやらせてくれた。彼らは私を信頼しているので,パートナーシップは非常に良好だ。むしろFableは,Microsoftと我々が一緒に作ったようなものだと思う」とのこと。もちろん,今現在,そう言うしかない,とは思うが,それに続けて「正直なところ,スタジオを運営する仕事はクリエイティビティとは程遠いものだ。プロデューサーの仕事はもうしたくない。クリエイターであり続けたいのだ」というのはかなり本音かもしれない。
その証拠に,インタビューが始まるなり,彼は我々に「ところでFableをどう思う?」という質問を投げかけてきたのだ。こちらが「あまりピーターらしくないと思う。ゴッドゲームじゃないし」と答えると,「いつもおんなじ物ばかり作っているわけじゃないよ。たまには違うものだってやるさ」と笑ったが,「それはたぶん,私の情熱が,私のやりたかったことが十分に伝わっていなかったんだね」と考え込む様子は,まさにクリエイターの顔つきだったのだ。
5年の歳月をかけて開発された「Black&White2」。こちらはいかにもMolyneux氏らしい“ゴッドゲーム”だが,商業的な成功には恵まれなかった。「私のやりたかったことが,ほんの少しだけうまく表現できたと思うんだけど,まだまだだったね」と語っていた
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■プレイヤーが心底,愛を覚えるゲームを作ることが理想
Molyneux氏もそうだが,Will Wright,Richard Garriottなどに共通しているのは,決して奢らず高みに立たず,こちらの話を真剣に聞いて,真剣に答えようとしてくれるその態度。やはり一流は違う。ちなみに,握った右手にチラリと見えるのは爪楊枝入れ。ヘビースモーカーの彼にとって,アメリカで行われるE3は地獄。どうにも外に出られないときは,爪楊枝(ハッカ味)をくわえて気を紛らわせる
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「新タイトルについては何もお知らせすることができないんだ。もちろん『Fable 2』はすでに制作に入っているし,ほかにシークレットなタイトルもあるけど。だから,ここでは,私が今考えていることや感じていることをお話ししたい」。 もちろんモリニュー氏は,すでに多数のタイトルをベストヒットに送り込んだ伝説のカリスマゲームクリエイターであり,彼の考えを聞くことはある意味重要だろう。とはいえ,ここ数年はビッグヒットに恵まれておらず,本人もその点に関しては思うところあるはず。彼はまず,クリエイターとして重要なのは「オープンであること」だと話した。 「(Microsoftの買収によって)Lionheadが変わったのと同じように,私も変わった。面白いゲームを作るうえで大切なのは,オープンであることだ。私はさらにさまざまなことを学はなければならない」
彼は,これまでは比較的精密な設計図を描いてゲームを作ってきたが,これからは“フィーリング”を重視していく必要性を感じていると言う。フィーリングとはまた微妙な言葉だが,これは制作者側だけでなく,プレイヤーに対しても適応できる。つまり彼は,プレイヤーの感情を喚起できるゲームを作っていきたいのだ。プレイヤーがゲーム中に悲しみや愛情など,さまざまな感情を覚えるようなゲームを作りたいと考えている(「誰がこんなの作った」と怒りを覚えるゲームはあるが,そういう意味ではない)。 「(私のゲームをプレイすることで)プレイヤーに“力”を感じてほしい。その力とは,気遣いたいものを気遣う力や愛情だ。Fable 2はそういうゲームになるはずだし,これからもそうしたゲームを作っていきたい」と語り,続けて「私の情熱が伝われば,Fable 2は間違いなく誰もが,なるほど,これこそピーターのゲームだ,と納得できるものになるはずだ」とした。
正直,こうやってまとめてみると,かなり抽象的で難しい話が多かったのだが,彼の話を聞いている間は,「ああ,なるほどねえ」と感心していた。そういう説得力もまた,カリスマクリエイターに求められる資質の一つなのだろう。いずれにしろ,次回作ではそういった理想が実現されているとモリニュー氏が語る以上,彼の次回作がどのようになっているのか興味深い。まあ,「ゲームはゲームをして語らしめよ」ですけどね。
プロデューサーから再びクリエイターに戻ったモリニュー氏。今後は,余計な仕事をせず,自分の理想とするゲーム作りに専念していくはずだ。いろいろ思うところはあるようだが,20年近く第一線に立ち,今もなお現役のクリエイターであり続ける同氏の動向は注目に値するだろう。最後にモリニュー氏から読者のみなさんにビデオコメントをもらったので,それを掲載して,ちょっと異例だった恒例のインタビューを終わりにしよう。(Kazuhisa/松本隆一)
Molyneux氏が放った初のRPG「Fable:The Lost Chapter」。(そもそもがXbox用だったこともあり)Microsoftのブランドで発売され,今回の急接近のトリガーを引くことになった。「善と悪」という彼お得意の概念が取り込まれた秀作だが,ブラックでパンチの効いたいつもの雰囲気を期待していたファンは,ちょっと肩すかし
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■モリニュー氏のビデオコメントは「こちら」(24秒:4.4MB,MPEG-1)から
【訳】 4Gamer.netをご覧のゲーマーの皆さんこんにちは,ピーター・モリニューです。 これは非常に重要な瞬間です。私は,これまでになかったほど人間の感情を喚起するゲームを作りたいという情熱を常に持っていました。あらかじめ皆さんに謝っておきますが,あなたは私のゲームをプレイすることで,涙を流し,愛を感じてしまうでしょう。私はあなたがたにそれらをすべて体験してほしいのです。
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マイクロソフト フェイブル:ロスト チャプター |
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Black & White 2 |
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