[G★2006#91]突如発表されたHanbitの新作,徹底的に日本向けのMMORPG「Aika」を隅々まで紹介
Hanbit Softは11月10日,G★2006の会場で新作MMORPG「Aika」を発表した。会場内のプレスセンターで開かれた発表会に,韓国内/海外から40人以上の取材陣が駆けつけたことからも,その注目度の高さがうかがえた。 本作の開発元は,同社の子会社であり,「With Your Destiny II」(以下,WYD)のデベロッパとして知られるJoyImpact。同社の目標は,これまでのMMORPGの欠点を解消し,より多くの人にプレイしてもらえるタイトルに仕上げることだという。
開発期間は1年未満とのことだが,ゲームが動作する様子を見る限り,完成度は十分高いように感じられた。また,日本,韓国,中国といったアジア地域のプレイヤーの好みに合うユニークな要素が盛り込まれているという印象を抱いた。それは,彼らがWYDなどの開発を通して,ノウハウを積み重ねてきたからこそといえるかもしれない。 ともあれ,「グラナド・エスパダ」をサービス中のHanbit Softの新作であるだけに,本作には多くのファンが熱い視線を送っている。
Aikaの大きな特徴の一つとして,さまざまなシステムが大規模な戦闘に最適化されていることが挙げられる。本作は,ライバル国との戦争をメインテーマとしており,プレイヤーはさまざまな戦術を駆使して戦いに臨むことになる。 また,多様な形態のモンスターが登場することや,モーションブラー効果をサポートしていることも特徴だ。この効果によって表現される,コンボスキルで敵を連打するときの打撃感には目を見張るものがある。 さらに,低いスペックのマシンでもクオリティの高いグラフィックスが描画されることも注目に値する点だ。
4Gamerの取材班は,G★2006が開幕する直前の11月8日にJoyImpactのオフィスを訪れ,開発チームのリーダーJung,Jin Ho氏や,企画チームのリーダーLee,Yoon Hee氏へのインタビューを行った。本作について詳細な話を聞けたので,ぜひご一読を。
■With Your Destiny IIで培ったノウハウを活用
4Gamer: これまで,私達もAikaに関する情報は一切つかんでいなかったので,今回の発表には驚かされました。開発はいつ頃始まったのですか?
Jung,Jin Ho氏
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Jung,Jin Ho氏(以下,Jung氏): 企画自体がスタートしたのは2005年10月です。そして,2006年5月に開発が本格化し,その後社内での審査にパスし,開発が正式に開始されました。
4Gamer: 開発期間はかなり短いほうだと思いますが,これほどまで仕上がっているということは,開発チームに多数のスタッフが在籍しているのですか?
Jung氏: いいえ,スタッフは24人しかいません。WYDのゲームエンジンを2回にわたって大幅に改良しており,最適化が進んでいるため,それほど多くのスタッフを必要としないのです。
4Gamer: そうなんですか。意外に少ないので驚きました。それでは次に,AikaとこれまでのMMORPGとの違いを教えてください。
Lee,Yoon Hee氏
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Lee,Yoon Hee氏(以下,Lee氏): そうですね,とくに大きく違う点はないかもしれませんが,プレイヤー達が好む要素を徹底的に盛り込んでいくことが目標です。 私達はWYDで,低いスペックのマシンでもクオリティの高いグラフィックスを描画できるクライアントを開発しました。Aikaでは,大規模な戦闘にフォーカスを絞れるよう,そのゲームエンジンを最適化しており,一つのチャネルで最大2000人のプレイヤーが戦闘に参加できるシステムとなっています。 グラフィックスに関しては,中世ファンタジー風の美麗さを持ち,なおかつアジア地域のプレイヤーに違和感を与えないように注意しつつ,制作を進めています。また,足跡や草の動きから,キャラクターがどのように移動したかが分かる演出にも力を注いでいます。
4Gamer: 話を聞く限り,なかなか興味深い要素が盛り込まれているようですね。演出面では,どのような特徴がありますか?
Lee氏: コンシューマ機用のアクションゲームに見られる演出を実現する,イベントアクションシステムというものを備えています。これは,巨大なボスモンスターと戦うときに,非常に派手で躍動感に溢れるアクションが行えるシステムです。といっても,それを行えるのは,特定の条件を満たしたときだけです。 また,例えば真・三國無双シリーズのように,特定のスキルを発動したときに非常に派手な演出を行うためのモーションブラー効果をサポートしています。 そのほか,同じ場所に立ったまま攻撃するのではなく,前進しながらの攻撃や,敵に包囲された状態から逃れるためのコンボ技を可能にする「ムーブメント・アタック・システム」を備えている点も,これまでのMMORPGにあまり見られなかった特徴ではないでしょうか。
■日本市場を意識し,“娘システム”を導入
4Gamer: とてもアクション性の高いMMORPGのようですね。そのほかに,ゲーマーに注目してほしい特徴はありますか?
Jung氏: ペットの自由成長システムというものを備えています。
4Gamer: Aikaにも,ペットが登場するのですね。
Jung氏: 正直にいうと,ペットというよりもプレイヤーの「娘」という表現のほうが適切かもしれません。
4Gamer: え,娘ですか。いま一つピンと来ないので,もう少し具体的に教えてください。
Lee氏: ゲーム内で,「聖約」と呼ばれる一種の契約を結んでペットをパートナーにし,成長させるというシステムですが,ここでいうペットは動物ではなく,娘として登場します。ちょうど,プリンセスメーカーシリーズのような感じです。
4Gamer: なかなか興味深いですね。
公開された画像の1枚。“娘システム”となんらかの関連があるのだろうか
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Lee氏: アイテムを用いたり,クエストをクリアすることにより,娘を成長させられます。娘は大きく三つの種類に分かれており,それぞれ6通りの成長パターンが用意されていますので,計18タイプの娘に育て上げられます。 娘を“収集”したり,いろいろな育成方法を試したりといった楽しみがあるわけです。娘は,3人まで手元に置くことが可能で,ほかのプレイヤーとの交換や,販売も行えます。……まあ,娘を交換とか,販売とかいうと不適切な表現かもしれませんが(笑)。 また,体型変形システムというものがあり,娘の成長に伴って,その体型が徐々に変化していきます。プレイヤーの育て方次第で,性格だけでなく体型もさまざまに変化します。
4Gamer: 先ほども名前が挙がりましたが,このシステムはプリンセスメーカーをモチーフとしているわけですね?
Lee氏: はい,そのとおりです。なぜこのシステムを採用したかというと,正直なところ,日本のゲームファンに訴求するMMORPGにしたかったからです。また,空に浮かぶ島を舞台としているのは,「天空の城ラピュタ」をモチーフにしている部分で,日本のゲームファンに親しみを感じてもらえると思います。
4Gamer: 確かに日本市場をかなり意識して企画したシステムのようですね。とすると,韓国や中国など,日本以外の地域ではどのような部分をアピールしていきたいと考えていますか?
Jung氏: そうですね,それらの地域で訴求する要素は,ゲーム上で大規模な戦闘が展開されるところだと思います。 もちろん,日本にも大規模戦闘を好むゲーマーがいますし,それ以外の地域にもプリンセスメーカー的な育成要素を好むゲーマーがいます。Aikaには,さまざまなゲームのエッセンスが盛り込まれていますから,それぞれのプレイヤーの嗜好に合わせて楽しんでもらえれば嬉しいです。
■最高権力者「マーシャル」が国家運営を行う政治システム
4Gamer: 聞いたところによると,Aikaには,国家の運営を行う政治システムが用意されているとか。具体的にはどのようなシステムですか?
Jung氏: Aikaでは,一つのチャネルは独立した都市国家として位置付けられています。その国の城を占領したギルドのリーダーは,最高権力者である「マーシャル」となり,行政,司法,経済に関する任務を負う3人のアルコンを任命します。ほかの国の攻撃から自国民を守ることが,マーシャルとアルコンに課せられた使命です。これは,実際の国家運営をイメージすれば理解しやすいでしょう。
4Gamer: マーシャルは大きな権力を持つだけでなく,重大な責任を負っているのですね。Aikaは,国家間の戦争に主眼を置いたゲームとのことですが,戦争をすることによるメリットはなんですか?
Jung氏: 各サーバーには,多数のチャネル(国家)が存在します。モンスターを倒したときにドロップされるアイテムの種類や量は国ごとに異なるため,それぞれの国でしか手に入らないアイテムが「特産品」として生産されることになります。この特産品の存在こそ,国家間の紛争を引き起こす主な原因となります。つまり,自国では得られない,他国の特産品を入手する手段として,戦争を行うわけです。 戦争は,ある意味で外交手段の一つといえます。例えば,自分が1チャネルのマーシャルだとします。ここで,2チャネルと3チャネルのマーシャルに対し,「4チャネルのマーシャルを討伐されたし」といった内容の提案を行います。うまく事が運べば,自国の犠牲を払うことなくターゲットとする国を混乱させられるというわけです。
4Gamer: なるほど,よく分かりました。マーシャルには,内政と外交の能力が要求されそうですね。 それでは,プレイヤーが,いずれかの国の民になるにはどのような手続きが必要となりますか? また,いずれかの国で“国民登録”を行う必要があるのでしょうか?
Lee氏: キャラクターが一定のレベルになると,いずれかの国を選び,居住権を得るためのクエストに挑めるようになります。そのクエストをクリアしたうえで,その国の行政アルコンが定めた国民登録税を納めると,登録は完了です。 どの国にも属さずに活動することも可能ですが,その場合,国による支援や値下げ恩恵を受けられませんし,国民登録を行わないと入れないエリアもあります。
4Gamer: Aikaのメインテーマとなっている大規模戦争を最大限楽しむためにも,いずれかの国の民になったほうがよいのかもしれませんね。 そのほかに,特徴的なゲームシステムはありますか?
Lee氏: 一つの国が長期にわたって大きな勢力を保つことを防ぐために,「連合チャネル軍システム」を用意しています。これは,二つ以上のチャネルのマーシャルが手を組み,“連合チャネル軍”を組織できるというものです。連合チャネル軍に参加するいずれかの国が戦争を始めると,すべての参加国が自動的に戦争状態となり,協力し合って戦えます。そのほかに,戦争に参加したプレイヤー達の名声が,その成果によって上下する「名声システム」もあります。 なおAikaでは,フィールドでモンスターを倒しても,金銭はドロップされません。モンスターを倒したことで得た素材や,それを使って生産したアイテムをほかのプレイヤーに売って金銭を得るのです。Aikaはこのような,より現実に近い経済システムを備えています。
4Gamer: ここまで聞いてきて感じたのですが,Aikaにおける国家の運営や経済システムは,「君主」を髣髴(ほうふつ)とさせるものがありますね。 それでは最後に,日本を含む各国でのサービススケジュールや,課金方式について教えてください。
Lee氏: 韓国国内については,2007年初頭に最初のクローズドβテストを,夏にオープンβテストを実施する計画です。日本国内でのサービスは未定ですが,先ほども述べたように,日本市場を念頭に置いて開発しているタイトルですし,早い時期に決定が下るのではないでしょうか。私達には,With Your Destiny IIなどを通じて得た海外サービスのノウハウがあり,ゲーム自体も,日本語や英語へのローカライズを容易に行えるよう設計しています。 課金方式ですが,基本的には定額制にする方向で検討しています。ただ,状況次第では,アイテム課金方式にするかもしれませんし,両方を取り入れたハイブリッド方式にするかもしれません。
4Gamer: 日本でサービスされることに期待しています。今日はお忙しいところ,時間を割いていただきありがとうございました。
Lee氏,Jung氏: こちらこそありがとうございました。
サービス前から大きな期待を寄せられていたグラナド・エスパダは,少なくとも韓国では大きな成功を収めているとは言いがたい。それに対して「R.O.H.A.N」は,期待の大きさではグラナド・エスパダに及ばなかったものの,かなりのヒットを飛ばしている。 韓国のデベロッパがこれらの2タイトルから学んだのは,目新しい要素よりは,プレイヤーにウケることがある程度予測できる(すでに実績のある)要素を取り入れたほうが,効果的ではないかということらしい。 Aikaには,国家運営や政治経済,プリンセスメーカー的な育成システムといった多様な要素が盛り込まれている。さらに,ゲーム画面の持つ雰囲気は,(ビジュアル的には今なお評価の高い)グラナド・エスパダにそっくりだ。このことからも,JoyImpactが上のような見方に基づいて開発を行っていることが推測できる。
Aikaが,R.O.H.A.Nのように,ペースは遅くとも着実に市場に浸透し,成功を収められるかどうか。開発元 JoyImpactとパブリッシングを担当するHanbit Softの腕の見せどころといえるだろう。(Kim Dong Wook)
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