レビュー : Gothic 3 日本語マニュアル付英語版

洗練されたシナリオを持つアクションRPGの大作第3弾,ついに日本上陸

Gothic 3 日本語マニュアル付英語版

Text by 虎武須(Kobs)
2007年2月8日

 

どのように遊ぶか,
どんなキャラクターに育て上げるかはプレイヤー次第

 

オークが占領している街を解放する戦いは圧巻だ。敵と味方が入り乱れ,もう何がなんだか分からなくなるような乱戦を堪能できる

 Gothic 3は2006年10月にまずヨーロッパで発売され,約1か月遅れて北米版も発売されたシングルプレイ専用のRPGだ。日本では2月2日,フロンティアグルーヴから「Gothic 3 日本語マニュアル付英語版」が発売となっているので,すでに入手してプレイしているファンも多いかもしれない。日本ではまだあまり馴染みのないGothicシリーズだが,欧米では累計150万本というセールスを記録している人気シリーズだ。
 シリーズ第3弾となる本作は,前作までの流れを引き継ぎ,主人公達が流刑地であるKhorinis島を脱出して故郷のMyrtana王国に戻ってきたところから始まる。前作までをプレイしていたほうがより楽しめるのはもちろんだが,ゲーム進行の自由度が高く,また舞台が異なっていることもあり,これが初めてというプレイヤーでも問題ないだろう。
 ゲームをスタートさせると,RPGではお決まりの“キャラクターメイキング画面”がないことに気づくだろう。性別や職業,ステータスの振り分け,さらには名前を付けることさえできないのだが,これもつまり,シリーズを通して同じキャラクターが主人公になっているからだ。

 物語は,とある村での戦闘シーンから始まる。多数のオーク達が村を襲撃しており,村民も応戦してはいるが,屈強なオークの戦士達にかなうはずもない。主人公達はわけも分からないまま,とりあえず戦闘に突入する……。
 ここはまぁ,目の前で起こっている事件なので,ほぼ強制的にオークと戦わなくてはならないわけだが,その実,Gothic3に決まったプレイ方法は存在しないのである。
 オークの軍勢に敗れ,王も行方不明になった王国では,生き延びたわずかな人々がオークの奴隷として働かされ,また,力ある者はオークの傭兵に成り下がっている。だが,いつか人間の王国を取り戻すため,反乱軍があちこちに潜伏している,という舞台設定はあるが,ここから先は,故郷Myrtanaでどう生きようとプレイヤーの自由なのである。
 反乱軍に参加し,オークに占領されている街や村を次々に奪還していくのもよし。逆にオークの手先となって,あちこちに潜伏している反乱軍を潰していくもよし。あるいはどちらにもいい顔をして淡々とクエストをこなしていくもよし。その気になれば,オークだろうと人間だろうと,目についた者すべてを殺しまくってもいい。このあたり,やはり海外RPGテイストいっぱい,といった感じだ。

 Gothic3では,レベルが上がったからといってそれだけで強くなるわけではない。レベルが上がればラーニングポイント(LP)が手に入るので,このポイントを消費してキャラクターを強化していくのである。通常,レベルがひとつ上がるごとにLPが10もらえるので,例えばそのうちの5ポイントを使ってスキルや呪文をおぼえ,ヒットポイントやマナを増やすという具合だ。LPを割り振らない部分はずっと初期状態のままであり,能力の伸ばし具合によって,次第に何らかのジョブらしきものを獲得するわけだ。
 肉弾戦オンリーの戦士,狩人,シーフ,魔法も使えるパラディン,あるいは魔術師,ドルイドなどなど,べつにジョブ名が表示されるわけでもないが,LPの割り振り方によって思い通りのキャラクターへ成長させられる。あれもしたいこれもしたい,というキャラクター作りでは成長にかなりのレベルが必要になり,ベクトルのハッキリした割り振りをすれば,低いレベルでも強くなれる。もちろん,いろいろな制約は発生するが,これはかなり画期的なシステムといえるだろう。

 そのLPの使い方だが,Myrtana各地に散らばる祭壇に祈りを捧げることで神から授かるか,あるいは何らかの技術に長けたNPCから教わるかの二通りの方法があり,いずれもLPだけでなく,お金が必要になる。NPCから技術を教わるためクエストをこなして信頼を得なければならない場合もあるし,それぞれのNPCによって教えられるスキルのレベルにも違いがある。そのため,より高位のスキルを伝授してくれるNPCを探す旅も必要になることだろう。

 レベル上げについては,経験値のかなりの部分をクエストで獲得することになる。低レベルのうちはモンスターを狩るだけでもいいが,レベルが上がるにつれて次第にそれは厳しくなり,おのずと数々のクエストをこなしていくことになるだろう。クエストの数は膨大で,かつ種類も豊富だ。「あれを持ってこい」「あの敵を倒して来い」といったお馴染みのものから,奴隷をほかの街まで送り届けたり,グラディエーターとなって街のチャンピオンになったり,さらに土地の制圧といったものなど,さまざまだ。よく出来たクエストが多く,いずれも単調ではないので,飽きることはないだろう。しかし,街の名前付き住人に話しかけるだけでクエストが次々に発生していくので,どんどんこなしていかないと管理しきれなくなる。Gothic3はクエストログを参照すれば,そこに何をすべきかが書いてあるといった親切なゲームではないのだ。

 

祭壇やNPCから教わる以外,この画面のように書架に目を通すことによってスキルが上がる場合もある 通常はこのように,NPCからさまざまなスキルを教わったりステーテスを上げてもらったりして,キャラクターを強化する 洞窟内でなにやら意味ありげな彫像を発見したが……。松明でゆらゆらと影が動く光の処理も見もの

 

いろいろ試すためにさまざまなスキルを習得してみた。どんなキャラクターに育てるかはすべてプレイヤーの自由だ 雪山で巨大なモンスターに遭遇。この地域はモンスターの数が多く,街にたどり着くまでかなりの危険を伴う RPGのお楽しみといえばダンジョンにある宝箱。高度な鍵がかかっている宝箱には,より貴重なお宝が……

 

 

 

息をのむ情景が描写される見事な画作りと,
ダイナミックな戦闘が楽しめる

 

SpeedTreeを駆使した野山の風景。静止画では分かりにくいが,どんなに近づいてもディティールはしっかりしている

 スクリーンショットを見ても分かるとおり,Gothic3の情景描写は素晴らしいの一言に尽きる。まずHDRレンダリングにより,ブルーム効果や遠景のぼかしがうまく効いていて,ごく自然で牧歌的な雰囲気を醸し出している。さらに木々の描写にはInteractive Data Visualizationの草木生成エンジン「SpeedTree」が採用されていて,動的LOD(オブジェクトまでの距離に応じてディテールが変化する)によるリアルな野山が形成されている。そこにある木々が風になびく生き生きとした野山の描写は実に見事で,眺めているだけでため息が出るほどの美しさである。

 ただ,そのためだろうか,ゲーム起動時のロード時間の長さはハンパではない。また,すべてのエリアがシームレスにつながっており,逐次必要なデータがバックグラウンドでロードされるため,エリア移動にともなうローディングがないところもウリなのだが,実はこれが曲者である。
 例えば洞窟に近づいたところ,突然見張りの敵が襲ってくるとする。必然的に戦闘が始まるのだが,その際に洞窟のデータがロードされるため,ハードディスクへのアクセスによるひどいラグが発生してしまう。そのため非常にカクカクした戦闘になってしまい,格下の敵にもあっさりと殺されてしまう場面もたびたびあるのだ。これではせっかくの面白さも半減してしまう。Gothic3の動作環境はメインメモリ容量1GB以上ということだが,これは最低限と考えたほうがいい。本作は非常に重いゲームだが,その原因の最たるものはスワップに起因するハードディスクアクセスだろう。

 アクション性の高い戦闘はシリーズの特徴でもあるが,これもかなりクセのあるものだ。武器を振るう際にまず足を踏み出すのだが,これが敵を押す形となり,敵の回避率が高い場合,何か障害物にぶつかるまで敵がえんえんと後ずさりを続けてしまう。その間に,ほかの敵に襲われるといったことも一再ではない。
 また,ターゲットを固定する方法もないため,乱戦になると頻繁にターゲットが変わってしまい,斬っても斬っても一向に敵の数が減らなかったり,意図せず味方のNPCを斬りつけて,新たな(しかも不毛な)戦闘が発生したりといったハプニングが起こる。さらに,敵味方関係なく攻撃がヒットすると「ぐぉっ!」という感じでのけぞるのだが,この硬直時間内も次の攻撃が発生する。このため,たとえ相手が自分より弱くても,いったん攻撃がヒットしてしまうと簡単にハメ殺されてしまうことが多い。
 こういった点から,Gothic3の戦闘は少なからずストレスが溜まる。とはいえ,ゲームに慣れて次第にコツをつかんでくると,これら「あぁ,もう!」感が逆に楽しく思えてくるから不思議だ。不満は多いが,それをしのぐ妙な緊張感と変な熱さを持った戦闘なのだ。まあ,少なくともターゲットを固定する方法ぐらいは欲しいものだが……。

 そういったネガティブな面を差し引いても,街の襲撃など非常にダイナミックな戦闘が行えるのは特筆に価する。とりわけ味方の軍勢と共に,敵地に攻め込むという多数対多数の大規模な戦闘は,ほかのシングルRPGでは類を見ないほど迫力あるイベントだ。名声を築き上げてきた街ならなおさらで,これまで積み上げたものを一気に破壊するカタルシスを感じることだろう。これはぜひ,多くのRPGファンに体験してほしい。

 戦闘以外で一つ問題点を挙げるとすれば,旅の途中で相棒になってくれるNPC。基本的に主人公キャラクター(PC)を追いかけ,PCが攻撃したものに対して攻撃する。しかし,段差が越えられない,ちょっとした崖も飛び降りられない,なんでもないオブジェクトに引っ掛かってスタックする,といった具合でいささか使い勝手が悪い。しばらく走ってハッと後ろを振り向くと,もういなくなっているのだ。戦闘時の盾や敵の分散といった面で重宝するのだが,相棒がどこに消えたのか探しに行かなくてはならない場面が少なからず発生するのは改善してほしいところだ。

 

氷系の魔法の中には,敵を凍りつかせる効果も。凍った敵はしばらく動けないので,攻撃のチャンスだ 遠くに見える首都。ドーム状の光はなんなのか,内部はどうなっているのか,ぜひ自分の目で確かめてほしい 洞窟の内部へ続くおびただしい血痕……。いったい何が起きたのだろうか。ゴブリンが向かってくるのが見える

 

川を覗き込むとこんな感じ。透明感や光の反射など,実にリアルだ。釣りのスキルがあればいいのだが 遠く離れた場所へひとっ飛びできるテレポーター・ストーンは,新しい町に入ったらまず探さなければならない クエストをクリアすると,その町での名声や経験値などがもらえる。ときにはステータスが上がったり金銭がもらえたりする場合も

 

 

良作でありながら,傑作になれない歯がゆさも

 

プレイヤーの行動によって,オークたちに虐げられてきた奴隷達が一斉に蜂起! どこにそんな武器を持ってたんだ!

 Gothic3では時間の流れがきちんとしているため,時間帯に応じたNPC達の生活感が感じられる。NPC同士で話し込みながら火を囲んで肉を焼いたり,夜になると就寝したりするのだ。プレイヤーキャラクターの行動に対するインタラクティブ性も充分で,街中を忍び足で歩けば「何をコソコソしてるんだ,おまえは泥棒か?」と叱られるし,武器を構えれば「武器をおろせ,さもなくば斬るぞ」と攻撃態勢に入られる。こっそり何かを盗んでNPCに嫌疑をかけられ,言い逃れに失敗すれば攻撃されるなど,AIのデキはなかなかのものだ。
 キャラクターの行動も非常に豊富で,ベンチに腰をかける,牛の丸焼きを回すなど,およそゲームに関係ない行動まで取ることができ,それやこれやで生き生きとした街の雰囲気を醸し出している。

 美しい情景,重厚な世界観やシナリオ,独特の成長システム,自由なプレイスタイルを選べるなど,Gothic3は素晴らしいゲームだ。現時点で最高の部類と言ってもかまわないだろう。だが,20人程度の開発者しかいない小規模デベロッパのマンパワー不足なのか,あるいは技術的な問題なのか,それともリリースを急ぎ過ぎたのか(これが一番ありそう),とにかく,大小さまざまな不具合によって,せっかくのコンセプトを生かしきれていないのが歯がゆい。ヨーロッパで発売されてすでに4か月が経過しようというのに,アイテムの単純な表記ミスなど「なぜ気づかないんだろう?」的な間違いが散見されるのだ。少なくとも,目立った不具合を修正するパッチの早急なリリースが望まれるし,たとえ長い時間をかけてでも「完成」を目指すべきだろう。Gothic3はそれを待てるほどに価値のあるゲームだと思うのである。

 反乱軍を率いて敵の街を襲撃するなど,身震いするほどダイナミックなプレイを楽しめる。オークにも反乱軍にもいい顔できるという,微妙な立場を利用したNPCとの駆け引きも,ほかの作品ではなかなか味わえないもので,実によく出来たシナリオだと感じる。いろいろ苦言も呈したが,不具合さえなければ最高クラスのシングルプレイRPGになり得るゲームなのである。このゲームに惚れ込んでしまった筆者のもどかしい気持ちがお分かりいただけるだろうか。
 自由度が高いため,どういうプレイをしたいのかハッキリしているプレイヤーなら,どっぷりとGothic3の世界にひたれるはずだ。砂漠から雪山まで,美しく広大なMyrtanaの地をゆっくり旅して,一つ一つの街や村をじっくり楽しみ尽くしたい,そんなゲームだ。

 

プレイヤーの射た矢がちゃんと刺さっている。細かい点だが,リアリティの面で重要なポイントだ なにやら怪しげな神殿を発見。砂漠地帯には巨大な神殿や寺院が多く存在する。そのほかの建造物もユニークだ ノマド達の信頼を得て,共にハシシンの町を襲撃する。ハシシンはオークどもと密接な関係があるのだ

 

とある炭鉱を訪れたところ,膨大な数のアンデッドが襲いかかってきた。倒しても倒してもキリがない 雪山にもひっそりと小さな町が存在する。こんな僻地でさえ,オークの脅威にさらされているのだ 街にあった牛の丸焼きを回してみる。食べられるわけでもなく,とくに意味はないのだが,実に多彩な動きが可能

 

 

タイトル Gothic 3 日本語マニュアル付英語版
開発元 Piranha Bytes 発売元 フロンティアグルーヴ
発売日 2007/02/02 価格 7140円(税込)
 
動作環境 OS:Windows XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium III/2GHz以上[Pentium 4/3GHz以上推奨],メインメモリ:1GB以上[1.5GB以上推奨],グラフィックスメモリ:128MB以上,HDD空き容量:4.6GB以上

(C)2003-2006 by Pluto 13 GmbH, Ruhrallee 63, 45138 Essen, Germany. Published by JoWooD Productions Software AG, PyhrnstraBe 40, A-8940 Liezen, Austria. (p) Deep Silver (p) 2006 by Deep Silver, a division of Koch Media GmbH, Gewerbegebiet 1, 6600 Hofen, Austria.

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http://www.4gamer.net/review/gothic3/gothic3.shtml