2006年4月で日本での正式サービス1周年を迎え,4月27日より,いよいよ大型アップデート「チャプター2」が導入される,MMORPG「マビノギ」。
4月18日の記者説明会の模様とチャプター2の概要は,すでに記事でお伝えした。ただし,アップデートの細部や狙いについては,必ずしも明らかになっていない。そこで,今回の説明会のために来日した韓国側開発スタッフdevCAT Mabinogiチームのディレクター イ・ヒヨン氏,同運営チームローカライズユニット長のメン・ジソン氏,同デザインパート長のキム・チュンヒョ氏,同プログラムパート 1ユニット長のハン・ジェホ氏に時間をもらってインタビューした。説明会での発表内容を補足すべく,細かい部分についても聞いてみたので,アップデート直前のタイミングでお伝えしよう。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。最初に,G2,G3といった「ジェネレーション」と,今回出てきた「チャプター」とを使い分けている意味合いが,今まであまり説明されていない気がしたのですが,これらはそれぞれどういった区切り,どんな関係になっているのでしょうか?
devCAT Mabinogiチーム ディレクター イ・ヒヨン氏
イ・ヒヨン氏:
「チャプター」というのは,今回の大型アップデートで新たに取り入れられた概念です。今までの,ストーリーを中心としたゲーム展開をまとめて「チャプター1」(以下,C1)とし,これから始まる探検を中心とした展開を「チャプター2」(以下,C2)としています。
4Gamer:
今後ジェネレーションという言い方はなくなるということでしょうか?
イ・ヒヨン氏:
いいえ。ジェネレーションは今後も一貫して使われる概念です。これから夏にかけて韓国で大きなアップデートがあるのですが,これは「ジェネレーション5」と呼んでいます。
チャプターが変わるのは,ゲームのメインテーマが変わることを意味しており,ストーリーの展開を意味するジェネレーションも,同時に進んでいきます。
4Gamer:
なるほど,どちらかがどちらかのサブカテゴリというわけではなく,別のものなんですね。ではC2に関して。発表会でも,プレイ内容が「物語」から「冒険と開拓」に大きく様変わりする旨のお話がありましたが,これはプレイヤーの声を受けての変化なのでしょうか? それとも,途中で方向性を変えようという考えが,もともとあったのでしょうか?
イ・ヒヨン氏:
もともと考えていた事柄です。「マビノギ」を制作するに当たってのメインテーマは「ファンタジーライフ」ですが,そのファンタジーというのは,モンスターなどとの戦闘だけを指すものではなく,「今まで見たことのない土地での冒険や探検」というのも,そのキーワードの意味に含まれると考えていました。ゲームの一つの方向性として,以前から想定していたのです。
4Gamer:
「マビノギ」は従来ケルト神話をベースにしていましたが,C2になってその色合いが相当薄まったように感じたのですが。
イ・ヒヨン氏:
「マビノギ」を最初に作るに当たって,メインストーリーを設定するためにケルト神話をモデルとしました。ですが,C2からは展開が変わるということで,むしろ特定の文化を連想させないようにデザインなども考慮しました。今まで見たことのない文化,イメージを考えているので,ケルトの影響は,C2から登場するイリア大陸には反映されないかもしれないですね。
4Gamer:
なるほど。特定の文化を連想させないのでしたら,「イリアというのはどこにあるのですか?」という質問は的はずれということになりますね(笑)。
devCAT Mabinogiチーム デザインパート長 キム・チュンヒョ氏
キム・チュンヒョ氏:
ええ(笑)。「今まで見たことがない」のがデザイン上の目的なので,現実のどこにある文化なのかは分かりません。「地球上ではないかもしれない」というのも考えています。
4Gamer:
発表会でC2のプレイシーンを見たときも,南アメリカっぽいものであるとか,どこかで見たことがある要素がちょっとずつ散りばめてある印象を受けました。
キム・チュンヒョ氏:
特定の文化というと,中国とかヨーロッパが一番に浮かぶものなので,それを避けてデザインしたのですが,それでいてリアル感があるものを作っていこうとしているので,南アメリカなどの感じも出ているのではないかと思います。あくまでもリアル感を追求した結果で,モデルにしたわけではないのですが……。
4Gamer:
探検がテーマとなったら,Lロッド(編注:ダウジングロッド)を持って実際にマップを探索していくというのも,なかなか驚きの展開ですよね。そのまんまといいますか。
イ・ヒヨン氏:
そうですね。今までのRPGには,冒険と言っておきながら戦闘が目的になってしまっているものが多いように思えます。そうではなくて「何かを調べ,発見していく」ことをゲームの内で忠実に再現したいと思ったので,Lロッドで探索したり,見つけたものをスケッチしたりという行為を取り入れました。
4Gamer:
Lロッドを持っての探索は,パーティで動くことを想定していますか? それとも,もっぱら個人で動く形になるのでしょうか?
イ・ヒヨン氏:
Lロッドを使っての探索では,パーティでのプレイはそれほど必要ではありません。ですが,個人で探索するにはエリアがあまりにも広いですし,天候などさまざまな条件で結果が変わったりもします。これによって,プレイヤー同士で積極的にチャットやBBSなどを使い,情報を共有する必要性が出てきます。それもまた,一つのゲーム性となっているのです。
4Gamer:
パーティとは異なる形のコミュニケーションというわけですね。
4Gamer:
基本的なゲームシステムに関してお聞きします。ダンジョンの位置が一週間ごとに変わるとのことですが,場所が変わるものと変わらないものが混在しているんでしょうか? それとも,すべて変わるのでしょうか。
イ・ヒヨン氏:
Lロッドで発見できるものは,基本的にすべて位置がランダムに変わっていきます。それらのほかに,絵の描かれた石像というのがあるんですが,それは決められた位置にあって,クエストに用いられます。C2では最初に二つのダンジョンが公開されますが,それは発見が難しく,一週間に一度,ランダムに位置を変えます。
4Gamer:
一週間ごとに場所が変わるダンジョンというのはシステム実装上すごく難しいのではないのか思うのですが,そのあたり,プログラマのハン・ジェホさん,いかがですか?
devCAT Mabinogiチーム プログラムパート 1ユニット長 ハン・ジェホ氏
ハン・ジェホ氏:
場所を変えること自体はさほど困難ではなかったのですが,マビノギでは一つのサーバー内に複数のチャネルが存在するので「全チャネルでダンジョンの発見状態を同じにしなければならない」点は,チャレンジしがいがありました(笑)。一つのチャネルで何かが発見されたら,同時にほかのチャネルでも発見された状態にしなければならないので。
4Gamer:
なるほど,ポイントはむしろそこでしたか。発見情報が共有されるのはチャネルだけで,別のサーバーには影響しないんですよね?
イ・ヒヨン氏:
ええ,違うサーバーには影響しません。同じサーバーのチャネルに関してのみです。
4Gamer:
ここまでのお話だけで想像すると,新大陸では探検以外の普通の冒険の要素がやや薄いようにも思えてしまうのですが,実際のところどうなのでしょうか。
イ・ヒヨン氏:
イリア大陸にある遺跡ダンジョンは,C1の舞台であったウルラ大陸にあるダンジョンと同じように,パーティで入ったほうが攻略しやすくなっています。ウルラにある下級,中級,上級ダンジョンのように,ダンジョンのレベルによってドロップアイテムのランクが異なり,韓国ではダンジョンの入り口でパーティメンバーを募っている様子もよく見られます。
そういった面から,今までのプレイとそれほど変わりないと考えています。それ以外にもフィールドボスとしてドラゴンなどが登場するようになるので,新たなパーティプレイの可能性も出てくるのではないかと考えています。
4Gamer:
ウルラ大陸ではキャンプペナルティ(フィールドの同じ場所でモンスターと戦い続けると,取得経験値が最終的に50%にまで低下し続けるシステム)の存在などもあり,フィールドよりダンジョンでの戦闘のほうが充実していたように思えるのですが,イリア大陸ではフィールド戦闘のマイナス面は補正されるのでしょうか?
イ・ヒヨン氏:
C2では戦闘より探検がメインになっているので,「探検経験値」という要素が新しく追加されています。フィールドでモンスターと戦って経験値を得るだけのウルラ大陸とは,また違った感覚になるのではないかと思います。
4Gamer:
その探検経験値というのは,戦闘で得られる経験値とは完全に別のものなのでしょうか?
キム・チュンヒョ氏:
別ものです。「マビノギ」を最初に作るときにメインキーワードとして掲げられた「ファンタジーライフ」には,まず生活要素という「日常」があるわけですが,ダンジョンというのは「非日常的な行動」としての戦闘を,行う場なのです。
そして,探検をして経験を得るというのは,イリア大陸での「日常」であって,ダンジョン戦闘は同様に非日常的と位置づけられているわけです。
4Gamer:
ということは,探検というのはC1における生産に当たる位置づけになるのでしょうか?
イ・ヒヨン氏:
いいえ。生産に関してはC1でもC2でも変わりません。イリア大陸でも生産はできます。探検というのはどちらかというとC1のストーリーに当たります。
4Gamer:
なるほど……。では,探検レベルが上がると,具体的にどのようなことができるようになるのでしょうか。
イ・ヒヨン氏:
探検レベルが上がると,探索時の成功率が上がります。それ以外にも,普通のレベルアップ時と同じくAP(アビリティポイント。スキルのレベルアップに必要なポイント)が入ります。パラメータもアップするので,キャラクターが強くなりますね。
4Gamer:
探検レベル以外に,C2で新たに加わったステータス,キャラクタースペックはありますか?
イ・ヒヨン氏:
ステータスとして新しいものは探検レベルのみです。実を言うと,ゲーム内のキャラクターだけでなく,プレイヤー自身が経験を積んで,探検がうまくなっていってほしいという考えがありました。情報を収集するにもいろいろ方法があるので,それを楽しんでもらえればと。そう考えたので,多くのパラメータを追加することは見合わせました。