第二次大戦期の全世界を再現したストラテジーゲーム「ハーツ オブ アイアンII」で,思わぬところから戦争に参入してみる本連載,今回はここ,南アフリカ連邦からお届けします。
オランダ人移民(→ボーア人)によって作られたケープ植民地をルーツに持つ南アフリカは,19世紀末のボーア戦争を経てイギリスの傘下に収められます。その背景にあったのは,今も南アフリカの特産品として知られる金とダイヤモンドです。ボーア戦争の舞台は南アフリカでしたが,そこで争ったのは白人同士,争ったものは鉱物資源であって,現地の政治的主導権は二義的な要素に過ぎませんでした。
南アフリカは,イギリスの自治領時代を経て1934年には英連邦内の独立国となります。その内部ではイギリスの支配に対するオランダ系住民の反発が陰に陽に続くものの,それと並行して有色人種差別が強化されていったところに,この国が背負った宿命,アフリカは誰のものなのかという命題の複雑さが見え隠れします。
イギリスに協力する形で空軍を含む20万人もの兵力を提供し,第二次世界大戦を終えた南アフリカは,その後も金とダイヤモンドとレアメタルで経済を支え,西側陣営への協力を交えて冷戦時代を乗り切ります。アパルトヘイト(人種隔離政策)は国際社会から(ときに形式的なものであれ)非難を浴びますが,南アフリカはその声を,外部からの不当な干渉としてはねつけ続けます。
そうした南アフリカ政府の対応,それを支持する国民世論の裏には,ボーア戦争以来の経緯で強化されてきた,海外からの介入に対するアレルギーがありました。南アフリカの差別/抑圧政策は,少なくともその一面において,イギリスの露骨な利益追求と,アメリカ主導のダブルスタンダードな陣営維持策が,落とした影をまとっていたのです。
有色人種主体の抵抗運動が実を結び,制度としてのアパルトヘイトが撤廃されたのは,実に1991年になってからのことでした。
ここでクエスチョンです。消費財でなく少数品目の輸出用一次産品への依存(=低廉な労働力への依存と,国際経済における地位の不安定さ),アフリカ系住民の意思を汲み取れない政治体制など,南アフリカ連邦および南アフリカ共和国は,固有の問題とアフリカ共通の問題の両方を抱え込んでいました。反英/親英という軸はさておいて,南アフリカが自分の足で歩もうと考えたとき,そこにはどのような選択肢があり得たのでしょうか?