大型Sim千夜一夜
Text by Murayama
第五回:交通博物館
大型電車シム初体験
本物の筐体に感激!
京浜東北線シミュレータ
形態 鉄道シミュレータ(京浜東北線(209系)
プレイ料金 無料
プレイ時間 不明(好きなだけ?)
人数 1名

 これまで4回に渡ってヘリ/大型旅客機/車/などを紹介してきたが,ずっと重要なシムを忘れていた。それはズバリ鉄道の存在である。鉄道といえばシムの中でも一つのジャンルとして確立された分野で,シムファンを自称する私としては,ぜひともチャレンジしたいカテゴリーだ。幸いにも鉄道シムといえば,東京の秋葉原に交通博物館があり,ここにはかなりデキの良いシミュレータがあるとの噂を聞いていたので,さっそく行ってみることにした。
 交通博物館は,東京は秋葉原駅の万世橋のすぐそばに建てられている。前身は,1921年(大正10年)に鉄道開業50年記念を記念して建設された鉄道博物館で,第二次大戦後に鉄道/自動車/船舶/航空機など交通全般に渡った歴史が学べる博物館へと姿を変えたことから,名前も交通博物館へと改めた。ちなみに今回取材した鉄道シミュレータは目玉ともいえる展示物で,非常に高い人気を誇っているブツ。休日では30分以上の行列は当然で,混雑時は1時間待ちになってしまうこともあるそうだ。ディズニーランドもびっくりの人気である。ちなみに右の写真は,休日のシミュレータ前。

 PCでも「電車へGO!」や「マイクロソフト トレイン シミュレータ」をプレイした経験がある筆者だが,大型筐体の電車は初めて。期待しつつ一階に設置されているシミュレータの前まで行ってみると……展示されていたシミュレータは,京浜東北線(209系),山手線(205系),東海道線(211系)と,そこから少し離れた場所に東海道線(系統不明),東北・上越新幹線(200系)の5種類が設置されていた。
 この中で筆者が気に入ったのは,京浜東北線(209系)のシミュレータだ。多くの子供が新幹線に群がっていたが,ツウなら京浜東北線(209系)で決まり。実はこの車両,見た目は普通っぽいのに意外と革新的な車両なのである。
 京浜東北線(209系)は,1993年からJR東日本に導入された比較的新しいステンレス車両で,軽さや制作費を従来のステンレス車両の1/2に押さえることに成功した車両なのだ。しかも大幅な軽量化に成功したことから,車両編成は従来のものが10両中,6両が動力車であったのに対し,京浜東北線(209系)は,10両中,動力車は4両となっている。
 ……なんていうエコロジーな車両。これぞ未来の日本を背負う車両! 最高速度やフォルムにこだわるのもいいが,こういう部分に惚れてこそ本物の鉄道ツウなのだ。と,ちょっとしたウンチクを披露したところで,シムのプレイ感に話を移すとしよう。


 京浜東北線(209系)シムは,かなりの存在感があった。まず筐体が本物の車両であるのはもちろん,運転席,計器類,ハンドルなども全部本物。さらに計器類はゲームと連動していて,走行中には状況に合わせた数値を指し示してくれる。シミュレータというと運転席の周りだけを再現したものが多いが,何の気なしに運転席から離れた場所にある車内用のブザー(?)ボタンなどを押してみたら音が鳴ってしまったのにはびっくり。なんたる再現力! 製作者の愛情が伝わってくる筐体ではないか。ぜひ鉄道ファンじゃなくても,この臨場感は体験してもらいたいものだ。
 ソフトウェアはオリジナルのもので,運転席の前面に設置された3面モニターに景色が表示される。写真を見ればわかるようにワイドなスクリーンは大迫力。CGに関してもそれほど古さを感じさせないクオリティだった。筆者はそれほど京浜東北線に詳しくないので,CGからどのあたりの区間を走っているのかが分からなかったが,橋あり,トンネルあり,街中ありと,さまざまな景色を堪能できた。シミュレータなのでゲーム性は皆無だったが,間違えた操作をしていると,音声で簡単なアドバイスをしてくれる機能もあり,初心者の筆者にはありがたかった。ゲームセンターに導入しても通用するのではないだろうか。

 これまでにプレイした鉄道シムの中では,5指に入るデキだと思う(筐体が本物というだけでかなり甘い採点になっているかもしれないが)。ちなみにプレイしているお客を見ていると,みなかなり満足している様子で,中には「次の駅は〜」とアナウンスまでしてプレイしている"濃い"プレイヤーの姿も。いやいや,決して家では体験できない臨場感に,そうなってしまう気持ちも分かるというものです。
 最後に秋葉原に寄る機会があったら,一度くらいは交通博物館に立ち寄ってもらいたい。入場料さえ払えば何度でも大型シムがプレイできるし,さまざまな展示物を見学しているだけで,非常に有意義な時間が送れるはずだ。

ほかの鉄道シミュレータたち

■山手線(205系)

 実写系シム。景色が実写(しかも3面スクリーン)であることから,かなりリアルな運転が楽しめる。一見感心してしまったが,実は電車の速度に合わせて映像の再生速度を調整しているだけなので,電車の速度を落とすと駅を歩く人の速度まで遅くなってしまうという欠点も。ある一定の区間を走行すると,プレイヤー交代のアナウンスが流れるので回転率はよい。


■東北・上越新幹線(200系)

 実写系シム。展示されていた筐体の中では,一番の変り種。運転を楽しめるが,地震が発生したり,速度超過の時にはATC/ATSが働いて車両を守ってくれる。どちらかというと新幹線の安全性をアピールすることを目的に作られたシミュレータのようだ。新幹線の運転席からは動くものを目にする機会は少ないので,山手線のシムのような違和感は感じられない。


■東海道線(系統不明)

 実写系シム。藤沢〜国府津間を走行できる。運転席とモニター(1面)のみという,かなり地味な存在で,見ていた限りでは人気はあまりなさそうだった。これをプレイするなら,本物の車両を使った東海道線(211系)のシミュレータをプレイするほうが楽しいかもしれない。


■東海道線(211系)

 CG系シム。スクリーンが1画面なのは残念だが,本文で紹介している京浜東北線(209系)と同等のデキ。シミュレータなので得点が出ることはないが,誤操作をしてしまったときには,簡単なアナウンスで間違いを指摘してくれる。本物の車両を使った筐体なので臨場感も抜群だ。


おまけ
最歴史ある車両とご対面!
 シミュレータをプレイしたら,ぜひとも電車などの展示物も見学してもらいたい。筆者が気に入ったのは,入り口のすぐそばにある機関車の展示。残念ながら乗ることはできないものの,手で触れることはできるし,隣には機関車の断面車両などもあって,興味深く見学させてもらった。また筆者は一時期、機関車の「D51」や「C62」といったプレート(?)に凝ったことがあったが,壁側にはそうしたプレートを一挙に集めた展示もあり,ちょっと感激してしまった。

おまけ

 

交通博物館
住所 〒101-0041
東京都千代田区神田須田町1丁目25番地
TEL 03-3251-8481(代)
開館時間 9:30〜17:00
料金 310円 /小人150円
(小人は4才〜中学生)
アクセス
JR京浜東北・山手・総武線 秋葉原駅(電気街口)より徒歩4分
JR中央線 御茶ノ水(聖橋口)・神田駅(北口)より徒歩6分
東京地下鉄丸ノ内線 淡路町駅(A3・5)より徒歩4分
東京地下鉄銀座線 神田駅(6)徒歩4分
東京地下鉄千代田線 新御茶ノ水駅(B2)より徒歩7分
東京地下鉄日比谷線 秋葉原駅(5)より徒歩10分
都営地下鉄新宿線 小川町駅(A3・5)より徒歩4分

■■Murayama(4Gamer編集部)■■
今でこそこんなだが,かつてはNゲージにハマっていたこともあり,また子供の頃には当時の国鉄が実施していたキャンペーン「チャレンジ2万キロ」に参加したこともあったという。そのせいかどうかは不明だが,「交通博物館はなぜか子連れの母ちゃんが多かった」という点に複雑な表情を見せていた。

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