インタビュー
[OGC 2009#04]フィギュアそして3DCGへ,Wii Fitを作った男が狙うUGCコミュニティの可能性とは
いわゆる,キャラクターなどの「フィギュア」を中心としたコミュニティサイトで,ユーザーが作成したフィギュア画像などを投稿し共有できるサービスを展開している。「ニコニコ動画」などに代表されるユーザー ジェネレイテッド コンテンツ(User Genarated Contents:UGC)をテーマにしたコミュニティのフィギュア版であると理解してもらえば,だいたい間違いないだろう。
さて,fgを展開しているエンタースフィアの社長である岡本基氏は,もともとゲーム畑の人である。任天堂で「ピクミン」シリーズに関わり,「はじめてのWii」や「Wii Fit」を作った人といえばユニークな発想をする人だという雰囲気は分かっていただけるだろうか。
近年登場しているネット上でのUGCのムーブメントに注目していたものの,任天堂ではそういった分野での事業展開がなかったので(のちに「うごくメモ帳」なども出てくるのではあるが),独立してエンタースフィアを立ち上げたのだ。
OGC 2009で「fg」について講演されるエンタースフィアの岡本氏にゲーム屋が作るUGCコミュニティなどについて話を聞いてみた。
なぜUGCなのか?
本日はよろしくお願いします。そもそも,どうしてUGCに注目したのかから聞かせてください。
岡本氏:
単純に面白いからですね。ゲームの世界では,作り手が決めた範囲内でしかものごとが進みません。それはそれで面白いんですけど,UGCだとユーザーが勝手にいろいろ作ってきて,予想のつかない展開になることがあるじゃないですか。そういうのをやりたいというのが任天堂を辞めたきっかけでもあります。任天堂はファミリー向けのブランドですから,やはりそこに配慮しなければなりませんし,運営込みでやっていくには自由度が少ないかな,と。
4Gamer:
fgを立ち上げた経緯を聞かせていただけますか。
岡本氏:
もともとUGCでなにかをやろうと思っていたんですが,どういう分野だとクリエータが多くて競争も少ないだろうかと考えていました。あれでもないこれでもないと,スタッフとファミレスで12時間くらいぶっ続けでブレーンストーミングしまして,最後の最後に「フィギュアだとどうだろう」ということで話が飛び出して,行けそうだということで詰めていきました。その時期にちょうど任天堂をやめた後輩がフィギュアの原型師の会社を起こしていたので,じゃフィギュアでもいいかなと思ったのもありましたね。
4Gamer:
それでフィギュアの投稿コミュニティになったわけですね。
岡本氏:
動画とかイラストでは,すでにUGCのコミュニティが出来上がっていて,これは単純にやってもなあと悩んでいた時期もありました。もっとゲーム寄りの企画も考えて,FPSを作ろうかという話も出てたりしたんですけどね。ゲーム開発となると,どうしても期間が長くなってなかなか完成しないだろうなあということで,行き着いたのは,やはりシンプルなUGCがいいだろうということでした。
UGCについては,このへんが難しいんです。ついついゲームにしちゃうんですよね,ゲーム屋がやると。
4Gamer:
それはそれでよさそうな気もしますけどね(笑)。
岡本氏:
いや,それだと結局ただのゲームになってしまいますからね。あまりなんでもいじれるようにしてしまうとゲームとして成り立たなくなりますので,キャラメイクとか限定した部分にしかできないんですよ。そうなると,「ソウルキャリバー」でいいじゃないかということになってしまいます。
4Gamer:
なるほど。
「SPORE」などを見ても思ったのは,ゲームバランスそのものに影響を与えるようなUGCを入れるのは難しいなということでした。以前作ろうとしていたゲームで悩んだところでもあるんですが,SPOREを見て再認識しました。やはり,ユーザーの好きにやらせていたら破綻してしまうんだなと。でも,そこを抑えてしまうと,「あれ? キャラを作るのが一番楽しかったな」という感じになっちゃうんですよね。
4Gamer:
そのSPOREについてはどう思われましたか?
岡本氏:
エディタが一番面白かったですね。
4Gamer:
やっぱりそうですか。エディタは,よくあんなものを作ったなというくらい凄いデキなんですけどね。
岡本氏:
結局ゲームそのものに影響を与えるのでいろいろ抑えざるをえなかったんだと思います。自由にいじれると夢は膨らみますけどね。それと,社内でも話していたのですが,SPOREは途中でスケール感が変わるじゃないですか。UGCは同じスケールでみんな作っていくので,スケール感が変わるものには向いてないんじゃないかというのもありますね。
4Gamer:
SPOREについていえば,スケール感を変えるという前提が,おそらくUGCより先にあったゲームでしょうからねえ。
岡本氏:
そうですね。UGCを本格的にやろうとして作ったゲームではないと思います。神の視点というのが先にあって,結局,SimAntとかでの夢を捨てきれなかったのかなあという感じですか。
fgの採算とリアルへの展開
ところで,エンタースフィアでは,UGCをビジネスに結び付けることについては考えているのでしょうか。
岡本氏:
できればビジネスにしたいなという程度でしょうか。あまり大儲けしようとは考えてないです。まあ,ニコ動などを見ても,まだ赤字ですし,Pixivさんも赤と黒ギリギリくらいでしょう。その状況で,うちがビジネスにするといっても,なんの根拠もないですよね。現実的なところでいえば,トントンで行ければいいくらいで考えています。
エンタースフィアは,もとはUGCをやりたくて作った会社なのですが,他社の受託開発などをやっていて,忙しさにかまけて本業になるはずの部分に手を出せなかったんですよ。これではいけないということで始めたのがfgです。ですので,なにがなんでもfgを黒字化しないといけないわけでもないんです。
4Gamer:
fgではどのような収入源を考えていますか? この手のサイトですと,アフィリエイト,広告,会員制,サービス課金……といったところでしょうか。
岡本氏:
そのあたりですね。まあ,うちはニコ動さんほど回線を必要としませんし,Pixivさんほどユーザーは増えないと踏んでいます。イラストに比べてフィギュア人口は1/10くらいだろうと見積もっているのですが,Pixivさんが100万会員までいったとしても,fgで10万人くらい。これくらいであればサーバーコストも安く済みます。巨額な赤字になるとは思いませんし,黒字化もそれほど難しくないと思っています。
それと,フィギュアの人口って年齢層も高めなんですよ。20代,30代が多くて10代はあまりいません。10代が多いとなかなかお金を使ってくれないんですが,そのあたりはPixivさんなどより有利な点だと思っています。
4Gamer:
UGCでコミュニティを作り上げた以降の展開はなにか考えていますか? 例えば,オリジナルのフィギュアを作ったりなどは。
岡本氏:
そういうのも考えてはいますが,どちらかというとビジネスというよりは,盛り上げ策の一環ですね。
4Gamer:
ユーザー同士のコラボレーションの仲介などはどうでしょうか。
岡本氏:
どうでしょう。素材のやり取りなどは,自主的に行う人が出てくると思いますが,クリエイティブ系だとたいていみんな一人で作っちゃいますからね。UGCでは,チームを作るのが一番大変なんですよね。2,3人のサークルを作るのが大変で,なかなかうまくいかないというのは同人サークルなどでも見られることですし。
4Gamer:
なるほど。協業できないとちょっともったいない気もしますけど,原型製作とかだと分担は無理そうですね。確かに。
岡本氏:
コミュニティ自体はリアル方向に行くんだとは思いますけどね。Pixivさんがリアルの展覧会を行ったり,ニコ動でもリアルの集会をしたりとネット業界全体がそちらに向かっていますので,fgもその方向になるのではないかと思っています。
4Gamer:
fgでリアル系の展開だと,即売会とかでしょうか。
そうですね。フィギュアだとワンフェスというのがありますが,あれで4万人くらいの人が集まってきます。そういった即売会などもやりたいのですが,残念ながらそういうものを開催するノウハウがありませんので,ちょっと現状では難しいところです。
fgだと拠り所になる「モノ」がありますので,そこをどう生かすかだと思います。例えば,ユーザーさんが通販をやるにしても,なかなか大変じゃないですか。そういったものをサポートできるオークションのようなものを用意できないかと考えてはいます。
ただ,難しいのは著作権の問題ですよね。幸い,フィギュアではワンフェスさんが一つのモデルケースを作ってくれていますので,それに即した形であれば折り合いがつけやすいのではないかと思っています。売買時に手数料の一部として著作権料を著作権者に支払うようなことはできますし,マンガなどと比べるとまだやりやすいのかもしれません。
まあ,最終的には人数の問題になるでしょう。fgのユーザー数がフィギュア人口の1/3程度になれば,そういった話もしやすくなるのですが。幸い,フィギュア自体の単価が結構高いものですので,いわゆるARPU(Average Revenue Per User)が高いというのは有利ですし,ユーザーを囲い込みやすいのではないかとも思っています。
4Gamer:
日本のフィギュア人口というのはどれくらいでしょうねえ。
岡本氏:
おそらくワンフェスにくる人の2,3倍ではないかと思うのですが,一度もワンフェスに行ったことのない人もいるでしょうから,もっと多いかもしれませんね。
Pixivさんも最初は日本のイラスト人口を10万人くらいと見ていたらしいのですが,最近では150万人くらいまでいきそうだという雰囲気になっていますし。見ていても,1日1万枚近いイラストが上がっていますから,アクティブな人だけでも10万人はいそうな感じです。これを見るとフィギュア人口がどれくらいいるかというのも読みにくいところはありますね。
fgが目指すコミュニティのあり方とは
コミュニティ活性の策としてはどのようなものがありますか。投稿系ではランキングなどがモチベーションになることが多いと思いますが。
岡本氏:
fgでもランキングを取り入れています。Web2.0って,そういうものをプラスの方向に向けて持っていこうという流れですよね。しかし,ランキングがあるとどうしてもコミュニティ内での嫉妬なども起こってしまうので,必ずしもプラス方向に働くわけではないんです。
例えば,2ちゃんねる(2ch)はネガティブな場所だといわれがちですが,2ch内では序列がありませんから,内部での嫉妬などはないんですよね。
岡本氏:
それと,Web2.0的な展開をしているところだとカテゴリが少ないんですよ。
4Gamer:
カテゴリですか?
岡本氏:
そう。カテゴリは少なめで,あとはユーザーに勝手にタグで分類してくれって感じですね。ユーザーのタグでも検索は可能です。ただ,UGCのサイトではどうしても煮詰まりやすいという問題があって,作品が偏ってきちゃうんですよね。ニコ動ではVOCALOIDやアイマス,東方,Pixivだと東方が強いとかいった感じで。
それでカテゴリが少ないと煮詰まりやすい傾向があります。2chはメディアなんで単純に比較はできないんですけど,2chでは,負荷分散で板を新しく追加していって,それでうまい感じにユーザーが分かれて回っていますね。
(注:意図的に行われているもののようだ)
2chの構造は,Yahoo!のようなディレトリ型でWeb1.0のものなのですが,検索していくにはタグよりディレクトリ型のほうが分かりやすいのかなとも思います。
見ているとUGCサイトでは,カテゴリに対して住民意識を持つ人はいるんですが,タグに対しては少ないんですよね。例えば,ニコ動で「歌ってみた」というカテゴリには2chのカラオケ板の住人が流れ込みましたが,特定のタグに住民が張り付いてはいませんよね。
タグ検索でいえば,Pixivは,はてなブックマークとかに比べると「注目のタグ」とかタグクラウドが見えやすい位置にあるのでまだ親切なんですけど,ランキングが1種類なので特定の作品に人気が偏りやすいのかな,というのが私の仮説です。
4Gamer:
なるほど。
岡本氏:
fgでは,会員規模からするとかなり多めのカテゴリを最初から用意して,ユーザーを分散させるようにしています。また,まだうまくいってるとはいえないんですが,タグの下にコミュニティを作れないかと,タグに対して掲示板を付けたりもしています。
4Gamer:
そういう場所が多すぎるとユーザーが分散する危険はありませんか?
岡本氏:
タグのすべてでやると増えすぎますので,ある程度多く使われているタグのみでやっています。また,UGCではあまり言葉のコミュニケーションをする文化ができてないんですよ。
fgでは,SNSのくせに掲示板に匿名で書き込めるというよく分からないことをやっているんですけど,どうも作っている人の多くはシャイだったりするんですよね。fgを始める前に,クリエータの人にいろいろ意見を聞いたんですよ。すると,足跡は見られたくないとか,情報交換はしたいけど,交流はするつもりはないという声が意外と多かったんです。他人がどう作っているのかは興味があるが,ベタベタするのは嫌だと。
4Gamer:
最近はmixiでも足跡を消す機能が付いたりしてますしねえ。
岡本氏:
そうですね。記録が残ったり名前が出ると使いにくいという人も多いので,掲示板に匿名で書き込めるという変な機能を加えたわけです。あえてデザインも2ch風にしました。
それと掲示板には画像を貼れるんですが,現在はすでにアップされているサイト内の画像しか貼れないようになっています。これではちょっと敷居が高いので改善しようと思っています。
fgは作品を発表する場ですので,ずっと「残る」感じじゃないですか。一般の掲示板は,フローなので「流れて」なくなっていくので気軽に書き込めるというのもあるわけです。
4Gamer:
気軽に使えるというのは大事ですね。
岡本氏:
とはいえ,気軽に画像を上げられすぎることで全体のクオリティが下がるのは嫌なので,全体のクオリティが安定してから導入したほうがいいのかもしれません。
クオリティでいうと,Pixivさんとかのトップページって,ログイン画面で画像が並んでいるじゃないですか。あれは,最初は新着画像だと思っていたんですが,よく見ると新着ではなくてある程度クオリティの高い画像が並んでいるんですよね。
これはPixivさんのノウハウなんだなと気付きまして,最近ではfgでも人気作品を多く出すように,ロボットとかは控えめにするようにフィルタを入れています。ある程度作為的にやったほうが客が呼べるんだなと。
4Gamer:
ロボットを控えめってことはロボットが多いんですか? ガンプラ人口を考えると確かに多そうではありますが。
岡本氏:
メカは強いですね。Pixivとの最大の違いはそこかもしれません。向こうは美少女が強いですから。
フィギュアではとにかくメカが多いんですよ。ガレージキットにしてもメカのものが多いですし,半分くらいはメカなんですよね。ガンプラについては,自然と入ってきている感じですね。
最近はちょっと抑えられてきたんですけど,一時期,ある日はメカばかりどどっと上がってきて,違う日には美少女ばかりどどっと上がるなどの波があって,なんだこれはということがありました。おそらく,作り溜めていた作品をまとめて上げている人がいたのでしょうが,ちょっと面白い現象になっていました。今後どっちが主流になるのかはまだ予断を許さない感じですね。
4Gamer:
メカと美少女だと,どっちも好きって人も多そうですが(笑)。
岡本氏:
それと,fgではR18の部門を最初から作っているんですよ。
ほかのUCGサイトでは,ユーザーがバンバン上げてくるのでそれに屈して対応するというところも多いんですが,うちは後発なので,いろいろ考えて最初から付けておきました。全体の認証やアクセス制御などの問題がありますので,あとから加えることにすると面倒ですし。また,ディーラーさんと話をしたところ,フィギュアでは「エロは大事やで」と説かれまして(笑)。
Pixivさんだと,R18は目立たないところに入り口があるのですが,fgでは意図的に目立つ位置にリンクを置いています。先ほどのディーラーの人にも強調しないとダメだと言われまして。
そのおかげで人が増えたというのもあります。フィギュアでは魔改造というジャンルがありまして,既製品のフィギュアから服を削ったり,縄を付けたりといろいろやっている人達がいるわけですが,そういう人が集まる掲示板で「ここはR18もOKらしいぞ」ということで紹介されて,作品を発表するようになってくれたり,認知度も上がっていきました。作品数としてはそれほど多くないんですが,原動力の一つになったのは確かです。
4Gamer:
R18を導入することに迷いとか議論はなかったんですか?
岡本氏:
R18をやるかどうかということではかなり悩みました。しかし,Pixivさんなども結局やってますし,放っておいてもそういう作品もくるんだろうなということで,最初から対応することにしたわけです。
それとR18カテゴリを作らないと,対策が非常に難しいというのもありますね。イラストサイトですと,最初は問題なかったものが,途中で1枚だけ描き換えられたりしてチェックするのも追いつかなくなって,「せめてこの中だけでやってください」と18禁カテゴリを付けたところもありますね。
4Gamer:
禁止するから相手も巧妙になるというのはありそうですね。
岡本氏:
意外とユーザーのモラリティは高くて,R18以外の場所にあると「すぐに違反です」という報告が届きます。
ただ,R18があると,どうしても男性ユーザーが増えてしまうというのはあるんですけどね。もともとフィギュア自体,男性が大半を占める趣味ですし,9割くらいは男性です。
fgではぬいぐるみやドールなども扱っていますので,女性のユーザーも増やしたいんですけどね。女性にももっときていただきたいので,もう少し可愛らしい入り口を作ろうかとも考えているところです。
4Gamer:
現状のグレーのページでも,かなりニュートラルな気はしますが。
もっと可愛いのがいいと思うんですよ。それと,直近では3DCGのサイトも作ろうと思っています(注:すでに公開済み)。
4Gamer:
おお,それは面白そうですね。
岡本氏:
3DCGをやっている人から,3DCG専用のコミュニティがないので,fgに投稿させてくれないかというメールがありまして,いいですよと答えたのがきっかけでして。フィギュアも3DCGも角度を変えて見れますので,共通点はあるのでいいかなと。
それと我々はFlashで3Dビューアも作っています。
会社のサイトにデモページがありましたね。
岡本氏:
本当は数千ポリゴンは出せるので,もっと見映えのするデモを置きたいんですけど,デザイナーがいませんので。Metasequoiaなどフリーで使えるモデリングソフトもありますので,3Dデータを投稿してもらって,ブラウザ上でグルグル回転して閲覧できるようなってくると面白いかなと。
いきなり3DのオンラインゲームみたいなものをFlashで作るというわけにはいかないんですけど,ユーザーさんのデータが上がって,それにチャット機能がつくだけでも面白いんじゃないかなと思っています。
最近は3Dのプリントアウトサービスなども出てきていますので,そういうものともつなぎ込んだり,ほかのオンラインゲームなどともコラボしたりといろんな展開ができるのではないかと思っています。
岡本氏:
あとは,海外ですね。海外のほうが3DCGは盛んですから。
うちは後発なので,むしろ早めに海外展開をしたいと考えています。海外は,3DCG自体は日本より盛んなのですが,掲示板などを見てもあまり面白くはないんですよね。ゲームに紐づいているMod文化によるものはありますが,いま一つ面白くないというか。
Flashの3Dエンジンは海外でもいろいろ開発されているのですが,見るからに初期の3DCGといいますか……。
4Gamer:
ティーカップとかヤカンですか?(笑)
岡本氏:
ええ,そんなのが多くて,フィギュアと同じで,こういうものにも日本のオタク文化は必要ではないかと思います。テーマがキャラクターということではっきりすると,盛り上がりも違ってくるでしょう。fgでやっていることは海外展開するときにも役立つのではないかと思います。
4Gamer:
そういう3DCGのサイトはぜひ出てきてほしいですね。
岡本氏:
3DCGも,どれくらい人口がいるのかよく分からないんですけどね。
4Gamer:
ゲーム会社や専門学校などもありますし,それなりにいるはずなんですが。
市場拡大には,「ブラウザで動く」ことが必須か
岡本氏:
正直な話,3DCGだと本業にも結び付けやすいですので。そういうサイトがあれば,ほかのゲームメーカーとも協力しやすいですし,3DCGで作ったものをfgに還元するという流れができればさらに盛り上がりますし。
開発に相当手間がかかるとは思うのですが,3Dモデルにボーンを入れて動かせるようになるとまったく違った展開ができるようになるんですけどね。Flashでボーンアニメーションをやることも不可能ではないんです。
4Gamer:
Flashでですか? それは大変そうな。モーションエディタなどもFlashで作成するわけですか。
岡本氏:
モーションをつけること自体は,それほど難しくないんです。3Dプログラマもそれなりにいますので,それはまだなんとかなるんです。ただ,ボーンを入れるインタフェースを作るのが難題ではあるのですが。モデルにボーンを入れるのがUI的にはとにかく大変です。
4Gamer:
いや,頑張ってください。
海外だとIMVUという3Dアバターのチャットがあって,モデリングデータなどを持ち込んで販売できたりというサービスが始まっています。会員数が300万人だそうです。やはり海外のほうが人口が多いですので,チャットができる程度のものですが比較的簡単に100万人とかいっちゃうわけですよね。
4Gamer:
市場の規模は大事ですよね。
岡本氏:
最近は,ゲームにしても,ほかのサービスにしてもインストーラベースのものはダメで,ブラウザ上でなければやってくれないという風潮になってきてますから,市場を大きく広げるにはブラウザ上でなんとかしたいですね。
4Gamer:
先ほどのFlash技術などもその一環ですか?
岡本氏:
そうですね。GoogleがやっていたLivelyなどは,WindowsのBrowser Helper Object(IEプラグイン)を使っていて,OpenGLだかDirect3Dだかを利用していたはずです。
4Gamer:
Livelyってそうだったんですか。
岡本氏:
そのはずです。それにしては重かったんですが,おそらく通信がネックだったんじゃないかと思います。それと,以前あったWeb3Dとか……。
4Gamer:
VRMLの頃のですか?
岡本氏:
VRMLのちょっとあとですね。VistaみたいにWebを全部3Dでやろうというプロジェクトがいくつかあったんですが,全部失敗しています。当時は3Dの制作コストが高かったというのと,全部プラグインだったので不安定で使い物にならなかったというのが原因ですが,最近ならもっとちゃんとしたものにできますので,どこか使ってきてもおかしくないなとは思っているんですが。
4Gamer:
時代の流れとしてはFlashですかね。
岡本氏:
カジュアル系のオンラインゲームならFlashでできますね。
4Gamer:
2Dのものならいくつかありますね。3Dはちょっとつらそうですが。
岡本氏:
「Nicotto Town -ニコッとタウン-」などもそうですけど,Flashベースで行こうというものはいくつかありますね。
それと,ゲーム本体はともかく,それ以外の部分ではゲームの中に抱え込む必要のないものってありますよね。最近は,オンラインショップなどはWebベースになってきていますし。コンシューマ機のショップなども中身はWebベースです。更新が多いので,Webのほうが向いているようです。
4Gamer:
そうですね。サーバー側のノウハウも確立していますから,Webベースで作るほうが楽でしょうね。
岡本氏:
オンラインゲームの市場ということでいえば,これからはコンシューマ機に移行するのかなと感じています。コーエーさんが「大航海時代 Online」をPLAYSTATION 3で出しますよね。コンシューマ機もPCと比べるとスペックも上がってきてますので,やりやすいと思います。
4Gamer:
うーん,PCの上位機種と比べるともの足りないんですけどね。
岡本氏:
国内PC市場の場合,ノートPCが増えていますので,つらいところでしょう。オンラインゲームをやってる人に話を聞くとゲームのスペックを上げられなくなってきているようです。ノートPCやNetbookも無視できないくらい売れてますし。
4Gamer:
そこはインテルさんが頑張ってくれないとどうしようもないですねえ。
岡本氏:
まったくです。客層の問題でいうと,PCで大きく増やしていくのは難しいですので,ゲーム機に行くしかないかなと。まあ,どうやって客層を広げるかというのは,それに答えがあるならOGCなんかやる必要がない問題なのかもしれませんが。
ゲーム業界とWeb業界のコラボが成功の鍵?
4Gamer:
コンシューマゲーム機が主流になると,UGCの展開は難しくなったりしませんか?
岡本氏:
そうですね。しかし,CGレンダリングのツールとしてゲームというのは優秀ですし。アイマスなんかもそうですよね。スクエニさんの『ディシディア・ファイナルファンタジー』もプレイ動画をAVIで出力できて,ユーザーが動画をYouTubeに出力できるようにしていたりと,もはや動画投稿系は無視できなくなってきている感じはします。
4Gamer:
ゲームを通じての展開に期待ですか?
ただ,現時点ではピュアなUGCのほうが分かりやすいんだとは思います。分かりやすいというのは非常に重要なことです。それと,結局,ニコ動さんにしてもPixivさんにしてもツールは限定してないんですよね。ツールは各人が持っていることが前提となっています。
ゲームから入っちゃうと,エディタから作ろうとしちゃうんですよね。そこがちょっと問題です。ゲーム機だからエディタがないのでしかたないという問題もあるんですけど,
4Gamer:
「うごメモ」などはどう見ていますか?
岡本氏:
エディタなどは備えていますが,あれは,はてなと組まなければできなかったプロジェクトでしょうね。任天堂だけだったらできなかったでしょう。
4Gamer:
というか,手を出さなかったろうとは思いますね。
岡本氏:
子供にも自由にやらせていますから,ああいうリスクは任天堂だけだと負えないでしょうね。
4Gamer:
はてなを一段かませたことで,リスク回避ができて,慣れない部分も任せることができる。任天堂にはメリットしかない感じですか。
岡本氏:
メリットはまだ分かりませんが,リスクは少ないですよね。任天堂からは費用もなにも出してないらしいですし。もっと大きいところ相手だと,費用分担やレベニューシェアは必ず出てきたと思いますから,あれは相手がはてなさんだからできたんだと思います。
4Gamer:
うごメモの発表会では,はてなにどういうメリットがあるんだとしつこく聞かれて困ってましたねえ。ともあれ,ゲームメーカーとWeb業界のコラボという意味では画期的な一件になりましたね。
岡本氏:
ニコッとタウンはニフティとスクエニ系のコラボですし,スクエニはスタイルウォーカーなどを買収するなど以前から結構積極的にやってきています。カプコンは,ダレットでドワンゴと組んでますし,以前からゲーム業界とWeb業界の協業自体はなかったわけではないんですけどね。あの任天堂がやったから目立って取り上げられただけで。ただ,今年はそういうのが増えるんじゃないかと思います
オンラインゲームの中にはSNSの運営を公式に始めているところもあって,SNSでコミュニティ機能を底上げして,定着率を上げようとしているようです。これからはなにがなんでもゲーム内でコミュニティを作らなければならないというものではなくなってくるんじゃないかと思います。先ほどのショップ機能もそうですし,コミュニティ部分もネットと絡めて展開したほうがいいのではないでしょうか。
4Gamer:
そうですね。得意/不得意分野もあるでしょうし。
岡本氏:
オンラインゲームでいうと,ポータルサイト系はどこもうまくいってないように思うのですが。
4Gamer:
うまくいってるところは少ないですね。ポータルだけ作って,さあ,みんなきてくださいといっても難しいですし。
岡本氏:
そのへんの回し方を含めて,ゲーム屋は集客はうまくないなという話をあちこちで聞きますね。逆に,Webは人を集めるのは得意じゃないですか。課金については下手なんですけど。
4Gamer:
課金についてはゲームのほうがずいぶん進んでいる雰囲気はありますよね。
岡本氏:
これからは,そういったものがうまく補完できればいいんじゃないかと思います。
4Gamer:
なるほど。本日はありがとうございました。
「フィギュアのコミュニティ」というと,極度のオタクだけが集まる澱んだ空間をイメージする人も少なくないのではないかと思うのだが,エンタースフィアが展開しようとしている世界は,ゲーマーにとってもかなりそそられる部分があるのではないだろうか。fgを作っているのは,まさに「ゲーム屋」であり,それでいてゲームの範囲を超えたビジョンを備えている。
インタビュー中,「ゲーム屋」という立ち位置からの意見とWeb業界の狭間まで深く見通す見解の両方を織り交ぜて興味深い話をいろいろと聞かせていただいた。Web業界とゲーム業界の可能性について示唆的な意見も多く,興味深く読んだ人も多いのではないだろうか。
そういった見識を備えた岡本氏が,正面向かって取り組んでいるのがUGCである。現在,フィギュアおよび3DCGのサイトが立ち上がっているのだが,まだまだ取りかかったばかりの段階。これからどのような進展を見せてくれるのか非常に楽しみだ。
エンタースフィアの取り組みに興味のある人は,ぜひOGC会場に足を運んでみよう。
OGC 2009
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