テストレポート
「Batman:Arkham Asylum」に見るPhysX(前編)〜プレイムービーとスクリーンショットで“PhysXの現在”を確認
そんなBatman: Arkham Asylumの日本語版が,「バットマン アーカム・アサイラム」としてスクウェア・エニックスから2010年1月14日に発売予定であるというのは2009年11月2日の記事でお伝えしているとおりだが,日本語版が投入されるのはゲーム機のみと聞いて,筆者はちょっぴり悲しい思いをしていたりする。というのも,「NVIDIA PhsyX」(以下,PhysX)のハードウェアアクセラレーション,俗にいうGPU PhysXに対応するという追加要素があるのはPC版のみだからだ。
GPU PhysXによる効果物理を実現したタイトルの代表例としては,1月に発売された「Mirror's Edge」がある。4Gamerでも同タイトルにおけるPhysXの“効能”については同タイトルの解説記事で行っているが,あれから軽く半年以上。Batman: Arkham AsylumにおけるPhysXはどうなっているのかを通じて,GPU PhysXの現状と将来を考えてみようというのが,本稿のテーマになる。
→Mirror's EdgeにおけるPhysX効果の解説記事
ムービーとスクリーンショットで
PhysXの効果を確認
さて,いきなり結論めいたことから述べると,Batman: Arkham AsylumにおけるPhysXエフェクトは,以前紹介したMirror's Edgeと比べて明らかにワンランク上である。派手でありながら違和感は少なく,PhysXを有効にした状態でプレイしてから,無効に切り替えると,その違いがすぐ分かるほどだ。
というわけで,論より証拠。さっそく,ムービーを中心に,一部スクリーンショットも交えつつ,Batman: Arkham AsylumにおけるPhysXの使われ方をチェックしていきたい。
なお,本タイトルには,GPU PhysXの有効化に当たって,“適用度”を選ぶ選択肢が,「NORMAL」「HIGH」の2種類用意されている。NORMALだと,GPU負荷がとくに高い一部の物理効果がキャンセルされ,ミドルクラスのGPUでも体感速度に大きな影響を与えないようになっているが,今回のムービーやスクリーンショットでは,見栄えを重視し,HIGH設定で撮影を行った。
■風で揺れる/風に舞うオブジェクトの表現
Batman: Arkham Asylumでは,PhysXを無効化しても,煙や水蒸気,靄の表現は多少行われる。だが,PhysXを有効化したときに再現されるのは「Physically Simulated Wind」(フィジカリー・シミュレイテッド・ウインド),要するに,煙や水蒸気,靄が,風の流れによって影響を受けるさまだ。
キャラクターの動きによって空気の対流が生じて靄が動いたり,冷たい空気が下方に流れたりといったところは,あまりにも自然すぎるので,意識しないと気づきにくいかもしれない。
●地表を覆う靄
地面を覆う靄が,キャラクターの動きに合わせて移動している。靄がない(=GPU PhysXが無効の)状態でも,シーンに破綻はないが,一度靄のあるシーンを見てしまうと,靄がない画面は臨場感に欠けるような印象も受ける。
●水蒸気
水蒸気の再現は,ゲーム中の至る所で多用されている。今回は代表として,ゲーム冒頭,JokerがArkham Asylumへ連行されてきたシーンを取り上げるが,GPU PhysXが無効だと,見事にそこは何も描画されない。
●風(1)
Batman: Arkham Asylumでは,新聞紙やちらし,写真,葉っぱなどがよく舞い散るのだが,GPU PhysX無効時だと,例えば“新聞の束”というブロックがごろんと落ちてくるとか,一つの画面エフェクトとして,プログラムされたとおりに紙が動いているとかいった感じになる。
それに対し,GPU PhysXを有効にすると,多量のオブジェクトが画面を覆わんがばかりに待ったり,その一部が風によって壁やプレイヤーキャラクターに貼り付いたりする。これは必見だ。
●風(2)
非科学的な現象によって舞い上がる紙。GPU PhysX有効時に見られるオブジェクトの量は圧巻といえる。一部が風に流されてプレイヤーキャラクターにまとわりつくところも素晴らしい。
■オブジェクトの破損表現
何かが壊れたり,その結果として破片が飛び散ったりするシーンでも,GPU PhysXの効果をはっきりと確認できる。注目したいのは,ゲーム中盤,巨大な「Scarecrow」(スケアクロウ)が登場するシーン。一度これを目にすると,GPU PhysX有効でプレイしたくなること請け合いだ。
●ブロックの大規模な破壊(1)
Scarecrow出現シーン。GPU PhysX無効時だと,Scarecrowの大きさに驚くくらいなのだが,GPU PhysXを有効化すると,Scarecrowの動きに合わせて周囲の壁がバラバラと崩れ,Scarecrowの周りを回り始めるのだ。これは何度見てもすごい。
●ブロックの大規模な破壊(2)
ここも,GPU PhysX無効だと,これといった特徴のないシーンに感じられるが,GPU PhysXを有効にすると,大量の瓦礫(がれき)が円を描きながら空に吸い上げられていく。
●衝撃による破壊
敵を打ち付けたり,爆薬を爆発させたりしたときに,衝撃の程度に合わせて床や壁が壊れるのも,GPU PhysXの恩恵だ。無効化すると,昔からよくある「ちょっと焦げ目が付く」といった程度のエフェクトに留まる。
■旗,布シート,カーテンなどの表現
布の表現もPhysXの得意とするところで,物に被せられた布シート,風になびく旗,布カーテン&ビニールカーテンなどで,PhysX有効/無効の違いはよく分かるようになっている。PhysXを無効化すると,物理効果ごと,オブジェクトの描画そのものがキャンセルされたりするからだ。
●布
●ビニール
Mirror's Edgeにも出てきたビニール製のカーテン。PhysX無効時には何も表示されないが,有効化すると表示され,リアルに揺れ動くようになる。
●蜘蛛の巣
蜘蛛の巣は,PhysX無効時にも表示自体はなされるが,PhysX有効時だと,蜘蛛の巣が空中を這うように張られ,思わず手で払いたくなるほどになる。もちろん,プレイヤーキャラが通過すれば破れるし,風が起こるとふわっと揺れるといったエフェクトも再現されている。
Batman: Arkham AsylumのPhysXも効果は絶大
後編ではパフォーマンスを“いろいろ”検証予定
4Gamerでミラーしているデモ版でも,GPU PhysXのオン/オフはできるので,とにかく一度,体感してみてほしい。
近日掲載予定の後編では,GPU PhysXの有効化によって,ゲームのパフォーマンスにはどれくらいの影響があるのかを,多角的に検証してみたい。記事はちょっと長くなりそうだが,お楽しみに。
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PhysX
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Batman: Arkham Asylum
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