レビュー
1万円台で購入できる45nm世代のデュアルコアCPUは“使える”のか
Core 2 Duo E7300/2.66GHz
Pentium Dual-Core E5200/2.50GHz
» 2008年8月にラインナップへ追加された,45nm世代のIntel製エントリーCPU,2製品の実力検証をお届けしたい。コストパフォーマンスを重視しつつゲーム用PCを組もうとしている人達に,これらは最適解となるだろうか。
オーバークロック耐性はいま一つか
E8000番台のようなインパクトはない
一方のE5200だが,こちらは従来のPentium Dual-Core E2000番台と比べると違いが大きい。まず,CPUコアの製造プロセスが65nmから45nmへと微細化し,L2キャッシュ容量も従来の共有1MBから同2MBへと倍増を果たしている。動作クロックも,従来のシリーズ最上位比でプラス100MHzだ。
ただし,(ゲームではそれほど重要でないとはいえ)SSE 4.1拡張命令がサポートされない点や,FSBクロックが800MHzに留まる点は,従来のPentium Dual-Coreから変わっていない。
今回は,4Gamerのベンチマークレギュレーション5.2で採用するテストがすべて完走したのをもって「安定動作」とする条件で,オーバークロックを試してみたが,表2に示したテスト環境では,BIOSのCPUコア電圧設定を「Auto」にしたままだと,E7300はベースクロック340MHz×10の3.4GHz,E5200は同256MHz×12.5の3.2GHzが限界。コア電圧を引き上げると,E7300は1.375V設定で390MHz×10の3.9GHz,E5200は1.375V設定で296MHz×12.5の3.7GHzで安定動作した。
イメージとしては,E7300の耐性はC0ステッピング版Core 2 Duo E8000番台と似たような感じだ。一方,E5200は動作倍率が元々高いこともあると思うが,オーバークロック耐性はそれよりも低めの印象を受ける。
テスト方法は前出のレギュレーション5.2準拠。ただし,GPU性能にスコアが左右されやすい「高負荷設定」は省略し,「標準設定」のみで検証を行う。また,同じ理由で「標準設定」の1920×1200ドットも省略した。
なお以下,オーバークロック状態については,その動作クロックを「@」の後ろに示し,さらに,CPUコア電圧も引き上げた状態についてはその設定内容も併記する。
オーバークロックでも埋まらない
L2キャッシュ容量差という溝
さっそくだが,グラフ1,2は「3DMark06 .1.0」(以下,3DMark06)の総合スコアとCPUスコアをまとめたものだ(※CPUスコアは,3DMark06のデフォルト設定である,1280×1024ドット,標準設定のものをピックアップした)。
E7300は,E7200と比べて順当にスコアが伸びているが,とはいえ動作クロックの違いが130MHzしかないこともあって,その差はあまり大きくない。しかし,オーバークロックで3.4GHz動作させると,E8600と同程度までスコアが伸び,さらに3.9GHz動作時はグラフ内でバーが頭一つ抜け出している印象だ。
一方のE5200は,E7200に一歩及ばない。3.7GHzまで動作クロックを引き上げると,E8600とE8500の間くらいに収まっている。
続いてはFPS「Crysis」のテスト結果だ。グラフ3はGPUベンチマーク「Benchmark_GPU」,グラフ4はCPUベンチマーク「Benchmark_CPU」の実行結果になる。
Crysisはグラフィックス描画負荷が非常に高いため,CPUの性能差がスコアに反映されづらいが,そんななか,E5200のスコアが1024×768ドットで明らかに低い点が目を引く。
動作クロックを3.7GHzまで引き上げて,やっとCore 2 Duo E8000番台と互角のスコアであり,4MBというL2キャッシュの容量差が,動作クロックだけではそう簡単に埋まらないことが見て取れよう。
同じFPSから,Crysisと比べると描画負荷がぐっと低くなる「Unreal Tournament 3」の結果をまとめたのがグラフ5。GPUへの負荷が低くなると,相対的にCPUの存在感が増すことになるが,ここではCrysis以上に,L2キャッシュ容量の違いがスコアを左右しているのが分かる。E5200は言うに及ばず,E7300も,動作クロックを3.4GHzに引き上げたくらいでは,E8500のスコアを超えることができない。
FPS「Half-Life 2: Episode Two」(以下,HL2EP2)の結果も,Unreal Tournament 3のそれとよく似ている(グラフ6)。むしろ,HL2EP2のほうがL2キャッシュの容量がゲームパフォーマンスへ与える影響は顕著だ。
TPSの「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」(以下,ロスト プラネット)のベンチマークモード「PERFORMANCE TEST」から,「Snow」と「Cave」のスコアをまとめたのがグラフ7,8である。
より実際のゲームに近い傾向を見せるSnowは,GPUボトルネックが生じており,E5200以外のスコアに差はない。一方,CaveはCPUベンチマークの色が濃いが,ここで動作クロックがスコアに大きく影響しているのは興味深い。
RTS「Company of Heroes」の結果をまとめたのがグラフ9になる。ここではCrysisのBenchmark_CPUにおける1024×768ドットと似たような傾向を見せており,もっといえば,E5200のスコアが明らかに低い。
……まあ,GeForce 9800 GTXと組み合わせた今回の構成だと,1600×1200ドットでも100fps前後なので,十分といえば十分だが。
定格動作時の消費電力には
目を見張るものがある
消費電力のチェックに移ろう。OSの起動後,30分間放置した時点を「アイドル時」,CPUだけに負荷をかけるべく,MP3エンコードソフト「午後のこ〜だ」ベースのCPUベンチマークソフト「午後べんち」を30分間連続実行し,最も高い消費電力値を記録した時点を「高負荷時」として,システム全体の消費電力を測定した結果がグラフ10だ。
なお,アイドル時についてはCPUの省電力機能「Enhanced Intel SpeedStep Technology」(拡張版インテルSpeedStep Technology,以下EIST)の有効/無効それぞれでスコアを取得。測定には,消費電力変化のログを取得できるワットチェッカー「Watts up? PRO」を利用している。
さて,グラフを見てみると,定格動作時で比較する限り,アイドル時の消費電力はE7300やE5200とCore 2 Duo E8000番台でほとんど変わらない。違いが出てくるのは高負荷時で,Core 2 Duo E8000番台との違いは明らかだ。なお,E7200の消費電力値が高い理由は個体差としかいいようがないが,チェックしたところE7300ではE7200と比べてVidが下がっているので,それが影響している可能性はある。
一方,オーバークロック時における消費電力の増加量は,見過ごせないレベルである。とくにE7300@3.9GHz[1.375V]のスコアは,唯一200Wを超えるなど,かなり高い。
最後に,アイドル時と高負荷時において,「CPUID HW Monitor」からCPU温度を測定した結果をお知らせしたい。テスト環境は室温24℃のバラック状態にあり,CPUクーラーは,オーバークロック検証時に用いたのと同じ,Core 2 Duo E7000番台の製品ボックスに付属のものを用いている。
結果はグラフ11にまとめたとおり。CPUコアが二つあるので,グラフのバーはCPU当たり2本ずつになっているが,消費電力のテスト結果をほぼ踏襲したスコアになっているといっていいだろう。E7300とE5200は,高負荷時でも60℃に達しておらず,発熱が少ない印象を受ける。
ただし,コア電圧を引き上げると温度も一気に上がり,E7300は80℃を超えてしまっている。オーバークロック設定での常用を考えるのであれば,CPUの冷却に気を配りたい。
ゲーム用途だとE5200は疑問
E7300はコスト重視の定格動作派に向くか
以上,E5200はやはりL2キャッシュ容量の少なさがデメリットになってしまう。2008年9月12日時点の実勢価格は1万円前後で,確かに安価なのだが,最新世代の3Dゲームを前にすると,力不足は否めないところだ。ゲーマーに広く勧められるCPUとは言い難い。
一方,E7300はCore 2 Duo E8000番台の上位モデルと比べると確実に劣るが,Core 2 Duo E8000番台との差はそれほど大きくない。十分なパフォーマンスを持つGPUと組み合わせれば,ゲーム用途にも十分利用できるだろう。実勢価格が9月12日時点で1万7000円前後というのは,L2キャッシュ容量6MBの「Core 2 Duo E8400/3GHz」が2万円で購入できるのを考えると,コストパフォーマンスでは分が悪いが,CPUのコストを少しでも抑えたい場合には,検討に値するだろう。
ただ,オーバークロックは,定格電圧だと今一つ伸びきらず,電圧を上げると45nmプロセスのメリットが失われるなど,あまりメリットがない印象だ。その意味では,定格動作を前提とする人に向くCPUといえそうである。
- 関連タイトル:
Core 2
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Pentium&Celeron(LGA775/LGA1156/LGA1155)
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