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3Dグラフィックスをネットワーク越しに転送できる「ELSA VIXEL」を試す。「自宅のPCを遠隔操作して3Dゲームをプレイ」は可能か?
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印刷2009/03/21 11:00

テストレポート

3Dグラフィックスをネットワーク越しに転送できる「ELSA VIXEL」を試す。「自宅のPCを遠隔操作して3Dゲームをプレイ」は可能か?

ELSA VIXEL V200
メーカー:エルザジャパン
問い合わせ先:エルザジャパン サポートセンター TEL 03-5765-7615
実勢価格:11万円前後(2009年3月21日現在)
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 高性能な3Dグラフィックスカードを搭載した自宅のPCでゲームを実行しておいて,それを外出先でリモートコントロールしたい。そんなことを考えたことがあるPCゲーマーは少なくないだろう。
 外出先からリモートでPCを操作する手段としては,Windows標準のリモートデスクトップをはじめ,「VNC」(Virtual Network Computing)や「LogMeIn」など,有償無償を含めてさまざまな選択肢があるのだが,いずれもGPUを用いたリアルタイム3Dグラフィックス表示まではサポートしてくれないので,3Dゲームで利用することはできない。

 だが,グラフィックスカードでお馴染みのエルザジャパンから最近リリースされた「ELSA VIXEL V200」は,そんな従来型リモート操作の限界を打ち破り,3Dグラフィックスのリモート表示を可能にするという。本来的には,ビジネス市場――要するに“お仕事”向けのソリューションで,ゲーマー向けではまったくないのだが,「ネットワーク越しに3Dグラフィックスを利用できる」となれば,やはりゲームで使ってみるほかない。
 エルザジャパンに無理を言って実機を借りてみたので,“リモート3Dゲーム”の夢はかなうのか,試用レポートをお届けしたいと思う。


グラフィックスカードのDVI-D出力をキャプチャして

ネットワークで転送するELSA VIXEL V200


 ELSA VIXEL V200は,カナダのTeradiciが開発した「PC-over-IP」という独自技術を採用する製品だ。エルザジャパンとTeradiciの提携に関しては2008年5月27日の記事でお伝えしているが,枝葉を全部カットして一言でまとめるなら,PC-over-IPというのは,ネットワーク越しにPCを遠隔操作する技術で,ELSA VIXEL V200は,これを実現するためのハードウェアである。

 下に引用したのは,エルザジャパンが公開しているELSA VIXEL V200の接続イメージだが,同製品は,遠隔操作する対象となるPC側に接続するPCI Express x1カード「ELSA VIXEL H200ホストカード」(以下,ホストカード)と,一般ユーザー向けブロードバンドルーター製品のような外観をしたクライアント機,「ELSA VIXEL D200デスクトップポータル」(以下,デスクトップポータル)によって構成される。今回入手した製品ボックスにも,各1機が含まれていた。

ホストカードを接続したPCを,専用クライアントとなるデスクトップポータルからコントロールできるのが,ELSA VIXEL V200最大の特徴。ホストカードとデスクトップポータルは後から追加可能で,例えば1台のPCを2台のデスクトップポータルで共有したりすることも可能という。なお,ホストカードには「Tera1200」,デスクトップポータルには「Tera1100」という,Teradici製プロセッサをそれぞれ搭載する
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ホストカード(ELSA VIXEL H200)。遠隔制御したいPCにこのカードを取り付けるわけだ。カード長は168mm(※突起部除く)で,Low Profile対応のシングルスロット仕様
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ホストカードの接続インタフェース。左が1000BASE-T LAN用のRJ-45,右がデュアルDVI-D入力用のDMS-59コネクタになる
 まずはホストカードから紹介してみよう。
 外部インタフェースはDMS-59(DVI-D×2)とRJ-45(1000BASE-T LAN)で,ぱっと見,グラフィックスカードのような佇まいだが,実際には,付属するDVI-Dケーブルで,グラフィックスカードのDVI-D出力を入力する仕様。入力されたビデオ信号は,ホストカード上のプロセッサによってリアルタイム圧縮され,ネットワークを介してデスクトップポータルへ送出される仕掛けだ。「ディスプレイ出力のリモート送信」という処理に限れば,ホストカード以外のハードウェアは利用しない。

 DVI-Dの2系統入力に対応することからも分かるとおり,ELSA VIXEL V200はデュアルディスプレイをサポートする。1系統当たり最大1920×1200ドットの解像度に対応するので,やろうと思えば3840×1200ドットのディスプレイをリモートから制御することも可能だ。
 ただし,1枚のグラフィックスカードでデュアルディスプレイ出力を行おうとすると,(当たり前だが)ホストカードの差さったPC(以下,ホストPC)からのディスプレイ出力ができなくなる。デュアルグラフィックスカード構成をとるのでもなければ,基本的にはディスプレイ出力とホストカード出力を,クローンモードで利用することになるだろう。

グラフィックスカードとホストカードの接続イメージ
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ホストカードを差した状態でPCに認識されるのはUSBホストインタフェースとHIDオーディオデバイスのみ。圧縮&送出用プロセッサはデバイスマネージャから見えないので,ドライバはもちろん不要だ。なお,ここでサウンドデバイスが三つ見えているのは,ATI Radeon HD 4870カードと,オンボードのサウンド機能も動作しているため
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 ところで,PCを制御するためには,キーボードとマウス,そしてゲームプレイでは重要なサウンドもデスクトップポータルから利用できなければならないが,ホストカード上にはUSBホストインタフェースと,Realtek Semiconductor(以下,Realtek)製のHD Audioデバイスが載っており,両機能を,デスクトップポータル側から利用できる。
 両コントローラはいずれもクラスドライバで動作するため,Windows Vistaで利用する限り,別途ドライバを入手する必要はない(※Windows XP環境では,Realtekのサポートページからドライバを入手する必要あり)。

 また,リモートからPCを制御するに当たっては,PCの電源をオンにする必要もあるが,ELSA VIXEL V200では,ホストカードとマザーボードのATXパワースイッチコネクタをつなぐケーブルが用意されており,これを利用することで,ホストPCが電源オフの状態にあっても,デスクトップポータルからホストカードに接続を試みるだけで,自動的に前者の電源がオンになる仕掛けになっている(※デスクトップポータルにはリモートパワーボタンが用意されており,やろうと思えばホストPCの強制電源オフも可能)。
 これはなかなか便利で,おそらく,ホストカードは電源オフ時もPCI Expressから供給されるスタンバイ電源によって常に動作しているのだろう。なお,ホストカードは,PCI Expressによる電源供給が不安定な環境に備え,4ピン電源コネクタによる給電へ切り替えることもできる。

専用ケーブルでホストカードとマザーボード側のATXパワースイッチコネクタをつないだ状態。専用ケーブルは,PCのフロントパネル側スイッチからの電源オンにも対応できるよう結線されているので,PCを普段使いする場合にも問題は生じない。なお,ホストカードで専用ケーブルが接続されているすぐ近くに見えるピンヘッダが,外部給電用コネクタだ
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デスクトップポータルとなるELSA VIXEL D200の前面(左),背面(右)。前面には本体のパワースイッチとリモートパワースイッチ,USB 2.0×2,ヘッドフォン出力×1,マイク入力×1を備える。背面はDVI-I出力×2,100BASE-TX(RJ-45)×1,スピーカー出力×1。電源は12V2Aの付属ACアダプタを用いる
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 続いてデスクトップポータルに目を移そう。本体サイズは50(W)×135(D)×213(H)mmで,それほど大きくないのだが,重量は実測で約970gもあり,ずっしり重い。持ち運んで使うのはちょっと難しい印象である。

 ディスプレイ出力コネクタはDVI-I×2。ホストカード側はDVI-Dのデジタルでディスプレイ信号を取り込んでいるが,デスクトップポータル側はDVI-Iなので,変換アダプタを利用すればアナログディスプレイとも接続できる。
 キーボードやマウスを接続するUSBコネクタは計4ポート。PCで一般的なミニピンによるアナログサウンド入出力機能も備えるため,ホストPCのほぼ全機能をネットワーク越しに操作可能だ。

 なお,デスクトップポータルのパワースイッチは4秒以上の長押しで電源オン/オフ,短く押すとホストカードからの切断となる。リモートパワースイッチの挙動も同様だが,このあたりの挙動は慣れるまでやや戸惑うかもしれない。使う前には,マニュアルで確認しておきたいポイントといえる。


若干の注意が必要も

LAN内で使うのは非常に簡単


 前置きが長くなったが,実際の動作をチェックしていこう。ホストPCとして用意したシステムのスペックはのとおりだ。

※ホストPCは,Linuxを用いたルーターを介してインターネットに接続している。回線は「フレッツ光プレミアムスタンダード」(100Mbps)。VPN接続に用いているのはバッファロー製のブロードバンドルーター,「BHR-4RV」だ
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 今回はグラフィックスカードとして筆者私物の「ATI Radeon HD 4870」搭載製品を用いたのだが,どうもATI Radeon HD 4870(+ATI Catalyst 9.2)とホストカードの相性はあまりよくないようで,「ATI Catalyst Control Centerからクローン表示設定した状態でホストPCを再起動すると,グラフィックス出力が行われなくなる」問題が頻発した。いくつか試した限り,GeForceでは問題が生じなかったので,万全を期したいのであれば,ELSA VIXEL V200と同じエルザジャパン製品であるELSA GLADIACシリーズのグラフィックスカードを用意するのも一計だろう。

デスクトップポータルは,電源をオンにすると,自動的にホストカードを探し出せるようになっている(※MACアドレスは一部モザイクを入れました)
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 この相性問題さえ発生しなければ,LAN内で利用するのに難しいことはなにもない。ホストカード,デスクトップポータルとも,デフォルトで自動的にIPアドレスを取得する設定になっているため,LAN内にDHCP※1サーバーがあるなら,IPアドレスの設定も不要だ。
 デスクトップポータルはSDP※2を使ってLAN内を探索し,LAN内にあるホストカードをリストアップして,画面に表示してくれる。

 ここで,「リストアップされたホストカード」をクリックすればリモートコントロール開始という手軽さだ。基本的に設定レスなのである。

※1 Dynamic Host Configuration Protocolの略で,IPアドレスを自動的に設定するためのプロトコル。最近のいわゆるブロードバンドルーター製品には,必ずDHCPサーバー機能が組み込まれている
※2 Service Discovery Protocolの略で,ネットワークでつながった周辺機器を自動的にリストアップするための標準プロトコルのこと


3Dゲームを遠隔操作するには

若干の設定が必要


ホストカード側の設定を行うメイン画面。言語は英語のみだ。「認証エラー」と表示されているので気になるかもしれないが,これは,ホストカードが自前の証明書,いわゆるオレオレ証明書を用いているため。この種の製品ではやむを得ない(※クリックすると別ウインドウで全体を表示します)
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 もっともこのままでは,ELSA VIXEL V200が,使える限りのネットワーク帯域幅を消費してしまう。3Dゲームなどの3Dアプリケーションを利用したりする場合には,若干の設定が必要だ。

 設定は,ホストカード側だとWebブラウザから,デスクトップポータル側は組み込まれているソフトウェアツールから行う。ネットワーク帯域幅などの設定はホストカード側でのみ設定すればいいのだが,IPアドレスの固定などは,双方で行う必要がある。
 さらに,インターネット越しに利用する場合は,追加のネットワーク設定も必須になるが,それは後ほど触れることにして,まずは3Dゲームを遠隔操作するのに必要な設定を簡単にまとめてみよう。

1.帯域幅設定(Bandwidth)


帯域幅設定メニュー。画質の劣化が気にならない程度で使うのなら,20Mbps以上が必要な印象だ。0にすると無制限になる
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 ホストカード→デスクトップポータル間のデータ転送用帯域幅は,デフォルトで無制限。ピーク時には,100BASE-TXのめいっぱいまで使うようになっているが,この設定をここで行うわけだ。

 「Device Bandwidth Limit」はネットワークデバイスの上限,「Device Bandwidth Target」は帯域幅の目標値を設定する項目。後者はあくまで目標値なのでピーク時には超えてしまうこともある。
 3Dゲームのような,フルスクリーン,かつ動きのあるようなアプリケーションだと,メーカー推奨帯域幅は最大で67Mbps程度となるが,テストした限り,解像度を1024×768ドット以下に落とした状態なら,10Mbps程度もあれば,フレームレート,画質ともおおむね不満なく利用できる。詳細は後ほど。

2.ディスプレイエミュレーション(Monitor Emulation)


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 序盤で,ホストカードのディスプレイ解像度はDVI-D 1系統当たり最大1920×1200ドットだと紹介したが,その設定に応じて,ディスプレイをエミュレートするときの挙動を制御するのがこの項目だ。2系統のDVI-D入力それぞれに対して,EDIDやDDC※3をホストPCとどうやり取りするかを設定できる。

 標準では,デスクトップポータルとつながっているときだけ,ディスプレイ情報をホストPCのグラフィックスカードへ(DVI-D経由で)送るようになっているが,チェックボックスをオンにすると,デスクトップポータルとつながっていない状態でもディスプレイ情報を送るようになる。グラフィックスカードのディスプレイ検出タイミングに応じて設定を変える必要がありそうだが,設定を変えてみても,先述したATI Radeon HD 4870のトラブルは解決しなかった。

※3 EDID(Extended Display Information Data)はDVIやHDMIを介してPCに送られるディスプレイ情報。DDC(Display Data Channel)は,D-Sub 15ピン,DVI,HDMIで使用されるディスプレイの情報伝達方式のことで,どちらもディスプレイのプラグアンドプレイに必須である

3.サウンド(Audio)


サウンドの設定項目。サウンド入出力を利用したいなら,基本は上から二つをいずれもチェックだ
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 文字どおり,サウンドを利用するための設定項目だ。「Enable HD Audio」のチェックボックスをオンにすると,デスクトップポータル側でサウンド入出力を利用可能になる。また。「Enable Audio Compression」にチェックを入れると,サウンドデータの圧縮が行われ,消費する帯域幅が抑えられるようである。
 一番下の「Enable Microsoft Windows Vista 64-bit Mode」は,文字どおり64bit版Windows Vista専用のチェックボックスで,64bit版Windows Vistaでサウンド機能を利用するに当たっては,必ずチェックする必要があるらしい。上で示したとおり,今回は32bit版Windows Vistaを使っているので,チェックを入れていない。

4.デスクトップポータル側の画質設定(画像圧縮方法の設定)


画像設定の調整メニュー。ゲームで利用するなら,「画像圧縮方法の設定」スライドバーを左に振り切るのがオススメ
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 3Dゲームをプレイするのに必須となるホストカードの設定は1.〜3.のとおりだが,ELSA VIXEL V200は,グラフィックスデータを圧縮して転送するに当たって,十分なネットワーク帯域幅を確保できないときには,自動的にデータの圧縮率を上げる(=画質を落とす)ことで対応しようとする仕様になっている。
 そのときの振る舞いを設定するのが,デスクトップポータルの「オプション」−「ユーザー設定」−「画像」に用意された「画像圧縮方法の設定」スライドバーだ。

 ここでは,圧縮時に画質を優先するか,フレームレートを優先するかを選択できるが,3Dゲームをプレイするには後者のほうがいい。実際のテスト結果は後ほど示すが,画質を落としても,文字はそこそこ読めるので,フレームレートを優先したほうが,操作は行いやすいためである。


FPSは厳しいが,MMORPGならなんとか。

実際に遠隔操作を試してみる


 以上,大まかな設定を終えたところで,実際のパフォーマンス,とくに,画質と,その仕様上,必然的に生じるラグを検証してみることにしよう。
 先ほど述べたとおり,ELSA VIXEL V200は,十分なネットワーク帯域幅を確保できない場合,自動的に画質やフレームレートを落とすようになっている。そこで今回は,ホストPC側の帯域幅を手動で絞ることにより,実際の動作にどのような変化が生じるのかを調べてみることにした。

 まずは,解像度1280×1024ドットに設定した「Enemy Territory: Quake Wars」(以下,ETQW)のリプレイを見てほしい。下に示した三つのムービーは,上から順に,帯域幅無制限,10Mbps,5Mbps設定時のものである。ムービーには,二つのディスプレイが映っているが,いずれも左側がデスクトップポータル,右がホストPCと接続されている。サウンドは(今回は録音していないが)デスクトップポータルからヘッドフォンへと出力している。デスクトップポータルの画質設定はもちろん「フレームレート優先」だ。




 ちなみに,10Mbps,5Mbps設定時にある画面の荒れは,下に写真で示したとおり。ムービーで示したように,そもそも,帯域幅無制限でないとFPSを遠隔操作するのは無理だが,得られる画面もなかなか厳しい。また,解像度を1024×768ドットまで落としても,状況に大きな変化はなかったことを付け加えておきたい。

左が10Mbps,右が5Mbps設定時にデスクトップポータルから出力されたゲーム画面を撮影したもの(※クリックすると全体を表示します)。10Mbpsだとかなり荒れた印象で,5Mbpsだと細部のディテールも相当失われる
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 では,オンライン専用RPGだとどうだろうか。最近の3Dタイトルとして,MMORPG「アトランティカ」を,解像度1024×768ドット,そのほかの設定はETQWと同じにして,実際にプレイしてみた結果が下のムービー3点だ。




 総じて,アクション性がそれほど求められないゲームであれば,ネットワーク越しに十分プレイできる印象である。
 5Mbps設定だとさすがに画面の荒れが目立ってくるものの,ELSA VIXEL V200ではやや面白い圧縮方法を用いているようで,動いている部分は荒れても,文字はそこそこシャープに表示されている。キャラクターが動いたりすると,ブロックノイズとボケが生じ,停止させると,徐々に全体がシャープになってくるという,MPEG-2によくある傾向を見せるが,動きの少ない(あるいは動きのない)メッセージやメニューはシャープに表示され,5Mbpsでも読めなくなることはなかった。

左が10Mbps,右が5Mbps設定時にデスクトップポータルから出力されたゲーム画面を撮影したもの(※クリックすると全体を表示します)。5Mbps設定時にも,テキストは“何だか分かる”レベルで判読可能だった。キャラクターはだいぶ荒れるが……
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インターネット経由でゲームをするのは

現時点ではかなり難しい


 以上,ELSA VIXEL V200は,帯域幅の制限がある環境でも,それなりに利用できそうだ。いきおい,インターネット越しに遠隔地から自宅のPCでゲームをプレイしたりできるようになる可能性を期待してしまうが,実は本製品,インターネット経由の直接接続は想定されていない。というのも,(このあたり,いかにもビジネス向けなのだが)VPN※4などが前提となっているのである。そもそも,VPNを利用しないと,セキュリティ的にかなり危険だ。
 「VPN環境を構築したことがない」という人が,ELSA VIXEL V200を使ってインターネット越しにホストPCを操作するというのは,相当難しいということになる。

※4 Virtual Private Networkの略で,LAN同士やLANとクライアントPCを,インターネットを経由して安全に接続する手法のこと

 それでも試してみたいという人のため,細かな説明を廃してざっと紹介しておくと,まずマニュアルには,次のポートをファイアウォールに通過させるよう記されている。

  • TCP:21,51,80,427,443,8000,59999,50001
  • UDP:53,67,68,427

ポータルからIPアドレスを指定してホストに接続することも可能
画像集#022のサムネイル/3Dグラフィックスをネットワーク越しに転送できる「ELSA VIXEL」を試す。「自宅のPCを遠隔操作して3Dゲームをプレイ」は可能か?
 1000番以下のTCP/UDP下位ポートはSLPやIPSec――つまりは足回り――で使用される。IPSecのポートは認証に使われるため,開けておかないと接続できないので注意が必要だ。

 また,マニュアルによると,パケットロスは0.1%以内に抑える必要があり,そうしなければ満足な操作性が得られないとのこと。VPNを利用すればパケットロスの可能性は低くなるが,それでも回線状況によっては,何らかの問題が発生するかもしれない。
 なお,説明するまでもないかもしれないが,ホストPCがあるLANにVPNで接続するデスクトップポータル側のLANでは,VPNクライアントをルーターに設定し,ポータルからVPNを介してホストのあるLANに正しくルーティングされるよう設定しなければならないので,単独のPCをVPNで接続するよりも,設定はやや面倒になる。

 ちなみに,筆者はVPNサーバーを仕事場で設定しているので,自宅のLANからVPNクライアントルーターを介して仕事場のLANに接続し,仕事場のホストPCを,自宅のデスクトップポータルから制御すべく接続テストを行ってみた。VPN接続の設定にやや苦労はしたが,接続自体は割とあっさり成功。
 ただ,筆者の自宅ネットワーク環境があまりよくないため,下りがせいぜい1Mbpsくらいしか得られず,3Dゲーム画面はほとんどコマ送り。残念ながら,実用はできなかった。
 先ほどテストした結果からして,デスクトップポータル側のLANは最低でも下り5Mbps,ホストPC側のLANで上り5Mbpsは確保できないと,実用に持ち込むのは難しそうだ。逆にいうと,双方ともにFTTH環境があれば,(時間帯にもよるが)帯域幅の問題はクリアできそうでもある。


現状では「会議室向け」(?)だが

技術的には見るべきものアリ。今後に期待


ホストカードとデスクトップポータルそれぞれの付属品一覧
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画像集#024のサムネイル/3Dグラフィックスをネットワーク越しに転送できる「ELSA VIXEL」を試す。「自宅のPCを遠隔操作して3Dゲームをプレイ」は可能か?
 まとめよう。
 今回のテストでは,帯域幅の制限がない状態なら,かなり快適に3Dアプリケーションのリモートコントロールを行えることが分かった。10Mbps程度の帯域幅を確保できれば,アクション性がそれほど求められないゲームなら十分プレイでき,場合によっては5Mbpsでもゲームになる。さらに,2chサウンドも含め,ほぼ完全なリモートコントロールを実現できているわけで,ELSA VIXEL V200で実現されている高い技術には,見るべきものがある。

 ただ,やはりこれは徹頭徹尾,ビジネス向けなのだった。VPNもサポートされてはいるが,基本的には,「社内LANにつながったグラフィックスワークステーションを,ちょっと離れた会議室で利用しつつプロジェクタに投影する」ような用途のための製品だろう。ミドルクラスのゲーマー向けデスクトップPCが買えてしまう価格であることも踏まえると,一般的なPCゲーマーにとっては残念ながらハードルが高い。

製品ボックス
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 だが,将来的にこうした技術が一般PC市場に“落ちて”くれば,新たな使い方ができるかもしれない。例えば,強力なCPUとGPUを搭載したPCはうるさいので別の場所に置いておいて,机の上はディスプレイとポータルだけにしたり,ノートPCや(Atom,あるいはARMベースの)Netbookにポータル機能を統合するなどして,外出先のさまざまな場所から,自宅にあるPCが持つ高い3D性能を使ったりといった応用も考えられる。
 ELSA VIXELというソリューションは,まだ立ち上がったばかりだ。いつか来る将来に期待して,使い方をあれこれ想像してみるのも,また面白いのではないだろうか。
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