インタビュー
「MHF」運営プロデューサー杉浦一徳氏インタビュー【シーズン3.5後編】:シーズン4.0以降の展開について
便利になったアイテムボックス周り
4Gamer:
アイテムボックス周りでは,ボックス内調合が実装されて,かなり便利になった感があります。
便利になりましたね! 私も実際に使ってみて,今後もこういった便利機能は優先して実装すべきだと改めて思いました。こちらも長らくお待たせしてしまいましたが,今後もこうした点にもお応えしていきたいと思っております。
4Gamer:
そのおかげで,“調合屋のあるじ”の影が薄くなってしまいましたが。
杉浦氏:
調合屋では最大99個まで一瞬で調合できるので,たまには使ってあげてください(笑)。
4Gamer:
ボックス内調合は調合レシピを覚えていないと厄介ですね。「秘薬の調合素材って何と何だったっけ?」みたいに,場合によってはメニューの「調合リスト」で調べる必要も出てくるので。
杉浦氏:
ああ,それは確かにあるかもしれません。レシピは一部公式サイトに掲載していますし,一度調合したものは調合屋でもレシピを確認することができます。そういう悩みをお持ちの方はぜひ参考にしてください。
便利機能については,簡単に実装できそうに見えるけど実は難しかったり,逆に難しそうなのに簡単だったりするところがあるのですが,これからも可能な限りいろいろな便利機能を実現したいと考えています。シーズン3.0から3.5にかけて大きな部分は実装できましたので,「ここが不便だから遊びにくい」という深刻な部分はかなりなくなったんじゃないかと思います。しかし,それで終わらせずに今後はリファインアップデートなどを中心に細かい部分も改善していくことになると思います。
個人的には,アイテムを買って送るときに,十字キーの右を押すと1回で250になってしまうので,10とか100刻みにして欲しいですね。
杉浦氏:
それは本当に細かいですね(笑)。でも私自身も実際プレイして同じ気持ちになったときもあります。そういったさらに突っ込んだ要望が出てくるのは,根本の機能ではご満足いただけてきたからかな,とも思いますから,ちょっと安心できます。
4Gamer:
ショートメールにアイテムを添付できる機能も実装されましたよね。実は今一つ使いどころがつかめていないのですが……。
そうですね。現状はクエスト中に借りたアイテムを返す,くらいの使い道しかないと思います。シーズン4.0では,一部のアイテムをレア度4以上でもショートメールで送れるようにします。ショートメールで送れるアイテムには「M」マークを付けてわかるようにしようと思っているんですが,これは,イベントと絡めたり,コミュニティツールとして使おうと考えています。
たとえば,「玉のかけら」をMマークのアイテムにしたと仮定します。通常の「渡す」機能では渡せないレア度ですが,Mマークがついているので,ほかのハンターにショートメールでプレゼントできる,といった仕様です。
4Gamer:
なるほど。手渡しでは渡せないけど,メッセージを添えて送るアイテムを用意することで,コミュニケーションを活性化させようという試みですね。
杉浦氏:
MHF自体,もともとハンター同士でアイテムを交換しあう文化の少ないゲームですし,もう少しささやかなところで人と人の繋がりを援助できたらと思って用意してみました。あと主に猟団長の方から,「猟団内でイベントを開きたいけど,何か価値のあるプレゼントをあげられるようにできないか」という要望もいただいているんです。そういった場合にMマークをつけたレア度の高いトロフィー素材などを用意してあげられたら,より楽しくなるんじゃないでしょうか。
「猟団チケット」の新たな使い道
猟団でいえば,シーズン3.5で「猟団員の証【耐】」「猟団員の証【鉄壁】」が普通に生産できるようになったのには少し驚きました。
杉浦氏:
そうですね。現状だと「猟団チケット」の使い道があまりない状態だったので,何かないかと考えた結果です。以前にキャンペーンで限定配布したときより性能もよくなっているので,猟団チケットの消費量も上がっていますね。
4Gamer:
確かに,猟団チケットの価値は低いというか,猟団クエストを受ける以外の使い道があまりない感じですね。猟団ストアでの猟団チケット交換も正直ラインナップは微妙ですし。
杉浦氏:
そうですね。チケット交換は割が合わない感じがありますので,猟団チケット1枚で回復薬グレート1個ではなく10個交換できるようにするとか,レート変更は見直し予定に入っています。あとシーズン4.0では,猟団チケットの売却価値を高めて,お金稼ぎの意義をちょっとだけ持たせようかと考えています。
4Gamer:
お金稼ぎができるとなれば,猟団クエストも利用頻度が高くなりそうですね。ただ,クエストをクリアしてもクエストを“受けた人”だけ猟団チケットが増えにくい傾向にあります。狩人祭の勝ち組限定のクエストでもお話しましたが,受注方法の見直しもお願いしたいところですね。あと,猟団クエストの追加依頼で手に入る特殊アイテムと猟団チケットの交換ができるようになったりしますか?
杉浦氏:
爆弾関係のアイテムは,どういう使い方がされるか読みきれていない部分があるので,取り扱いに慎重になっているんです。とくに「大タル爆弾G2」は威力がとても強力なので,入手が簡単になり過ぎると,ゲームバランスが狂ってしまいかねないんですよ。
実際,高難度クエストといわれている「古の賛歌」も,爆弾を持ち込んでいるかどうかでクリアまでの時間が大きく変わります。そこに大タル爆弾G2をみんなが気軽にもちこめたら……。
4Gamer:
高難度クエストどころか,眠らせて爆破するゲームになってしまいますね。
杉浦氏:
そうなんですよ。さまざまな影響を考慮しながら,チケットの売却価格と交換レートについては,今後のアップデートでの調整を目指しています。
4Gamer:
そのほか,猟団機能が追加される予定はないですか?
一通りの機能を実装したので,猟団関係の機能追加の優先度は低めになっています。これはあくまで個人的な意見ですが,そろそろ猟団部屋から定番のフリークエストやハンターズクエストにも行けるようにできたらと考えているところです。
というのは,ランドあたりの人口密度を上げるためにワールドを削減したのですが,今またハンター数が増えてきています。その結果,コアタイムに猟団で「ユーザーイベント開催中」など,仲間で遊ぶ街を立てることが難しくなっているんですよね。また,ワールド数の増減を短期間で繰り返すよりは,今ある中でギリギリまで人口密度を高めたいというのもあります。
4Gamer:
なるほど。猟団で集まるなら,猟団部屋をクエスト関連ではドンドルマの街相当にしてしまえというわけですね。
杉浦氏:
以前は全体チャットの範囲はランド内の最大100人まででしたが,今は全体チャットの範囲がワールドまで拡張されたので,猟団部屋にいてもコミュニケーション上問題ないだろうという判断もあります。
4Gamer:
最大収容人数の関係で,人の少ないランドに猟団部屋を立てることが多いですが,以前ならともかく,現在ならたとえば「謎のクエスト」の配信が開始されても全体チャットで分かりますからね。
充実した公認ネットカフェでのサービス
4Gamer:
ここ最近,公認ネットカフェ接続者向けのサービスが充実しつつありますが,プレイヤー全体における利用率はどのくらいなのでしょう?
杉浦氏:
同時接続でいえば全体の約1割になります。日本国内のオンラインゲームでいえば平均くらいじゃないでしょうか。ただMHFの場合,最初にネットカフェで体験していただいて,そのあと自宅からも引き続きプレイしていただいている方の割合は,全体の3割近くにも及んでいます。
4Gamer:
新規プレイヤーの獲得手段としては,一定の成果が上がっているわけですね。
MHFは月額課金モデルに近いですし,操作面でもゲームパッドの必要性が高いですから,ほかのオンラインゲームに比べて,始めるにあたってのハードルが高いのは事実です。そんな中では友達に誘われて気になっていても,いきなりスタートする踏ん切りのつかない方が,まずネットカフェで様子を見てみるというパターンが多いようです。
ネットカフェでプレイしていただいて「なるほど確かに面白い,じゃあゲームパッドを買って家でやろう」と思っていただけるのであれば,全体の1割でも力を入れていく大きな意味が出てきます。
4Gamer:
ネットカフェの存在が,プレイ開始までのハードルを下げているわけですね。
杉浦氏:
あとは実際,ネットカフェからのプレイは月額とは比較にならないくらいお金がかかりますから,それに見合う特典を持たせてあげたいという意味合いもあります。
その一方で,プレイヤーさんのためだけでなく,私達にもフィードバックがあるんですよ。公認ネットカフェは,実際にプレイヤーさんの生の声を聞くことができる場であり,店長さんからMHFが抱えている問題点についてアドバイスをいただく場であります。私自身はネットカフェをアンテナショップとして認識しているんです。
4Gamer:
サービスを提供するだけでなく,きちんと見返りもあると。
杉浦氏:
公認ネットカフェでMHFのコミュニティが形成されているのも面白い傾向です。韓国では珍しくないですが,日本のオンラインゲームだとあまり例がありません。今後どうなるか,見守りたいですね。
ただ,ネットカフェのインセンティブも「Nポイント」実装で一通り揃った感はあります。今後大きく何かが追加されるということはあまりないんじゃないでしょうか。あとはカプコン側で全国各地でネットカフェを通じてイベントを開催するなどして,生の声をいろいろ聞かせていただければなと思っています。
そのNポイントですが,公認ネットカフェ以外からの接続でも交換できますよね。Nポイントを素材と交換したいときに,公認ネットカフェまで出向かなくてもいいのは,便利だと思いました。そのためだけに出かけて料金を払うのもちょっとなあ,という場合もありますし。
杉浦氏:
あくまで公認ネットカフェのサービスなので,自宅でのプレイのことをどこまでフォローするか迷ったのですが,純粋に便利にすれば喜ばれるだろうと。今後公認ネットカフェをご利用いただいているお客様のご意見を取り入れていく中で,またさらに新しい画期的なサービスが生まれる可能性はありますが,今のところは現状の形態を継続していく予定です。
シーズン4.0では新モンスターだけでなく
待望の新フィールドがいよいよ実装?
4Gamer:
シーズン3.5も,中間アップデートという位置付けなのに盛りだくさんの内容でしたよね。
杉浦氏:
1年間の経験値が蓄積されてきたからですね。開発体制も大きく変わりまして,要素の追加についてはシーズン3.0からシーズン3.5にかけてある程度結果が出ていますし,シーズン4.0以降も期待していただけると思います。
4Gamer:
レスポンスが非常に早くなっている気がします。今月中にやるとお聞きしたことが,次の週どころかその週のうちに実現していたり。その半面,深刻ではないレベルですが,バグフィックスの見逃しのようなちょっとした問題点が目につくようになった気もします。
杉浦氏:
定期的なアップデートを行う以上,コンテンツ増加を取るか不具合の少なさを取るかは,私達としても非常に迷う部分です。現状,ハンターの皆さんは小さな不具合があってもコンテンツを求める傾向にあると感じていますので,今は仕方ないのかな,と思っています。もちろん,できる限り不具合をアップデート前につぶすようにはしていきます。
4Gamer:
これまでもけっこうお話していただいていますが,ここでシーズン4.0以降について目玉になるであろう要素についてお聞きします。
……新モンスターはシーズン4.0で登場するんですよね?
杉浦氏:
そうです。11月7日から,順次ティザーサイトで発表していきますのでご期待ください。あと次のHR100以上の古龍種は,新モンスターの次なので実装は年末になるかもしれません。
そのほか,ハロウィン,クリスマス,お正月,バレンタイン,ホワイトデーと毎月季節イベントが目白押しです。下位ハンターと上位ハンターが協力してクエストをクリアするイベント「狩人塾」もまた予定しています。ほぼ毎週イベントがありますね。
実は,シーズン4.0以降,毎回のアップデートがかなりのボリュームになりそうな勢いなんです。“x.5”のアップデートでも“x.0”のアップデートと同じくらいなので,アップデートのスケジュールや名称なども含めてちょっと見直しているところです。このあたりは,シーズン4.0実装と同時くらいに2009年の所信表明ができるよう準備を進めています。
4Gamer:
あと,2008年のアップデートスケジュールでは,2008年内に新フィールド実装と表明されていましたが,これについてはいかがでしょうか? シーズン3.0では「樹海頂部」が実装されましたが,闘技場タイプでヒプノック希少種専用では,ちょっと肩すかしを食らった感が強いかと。……あれで終わりじゃないですよね?
杉浦氏:
今度こそは“フィールド”と呼べる新フィールドです。開発も大詰めに入っています。上手くいけば今までのMHFのフィールドとは異なる面白さを提供できるんじゃないかなと考えています。
※10月21日付けの運営レポートで,峡谷のような新フィールドのイメージイラストが公開された。新しい女性NPCのイラストも公開されているので,プレイヤーはぜひ見てほしい
4Gamer:
それは期待が高まりますね。シーズン4.0の実装が楽しみになってきました。
それでは最後に,4Gamer読者に向けてメッセージをお願いします。
シーズン3.5ではスタート早々狩人祭の不手際などがありまして,ご迷惑をおかけしました。今はシーズン4.0の準備と同時に,2009年前半の予定も着々に固めていますので,その充実にご期待ください。また,10月末には大きなビジネスパートナーとの提携の発表ができると思います。MHFは2009年も意欲的にアップデートを行っていきますので,そのためにも皆さんのご意見ご要望も是非お寄せください。よろしくお願いします。
4Gamer:
おお,最後にまた意味ありげなコメントですね。発表を期待して待ちたいと思います。本日はありがとうございました。
シーズン3.0は新モンスター「アクラ・ヴァシム」の実装と謎のクエスト配信,狩人祭本格始動と,夏休みに合わせて畳み掛けるような攻勢だった。ログイン時に表示されるプレイヤー数もそうだが,ゲーム内でもプレイヤーのアクティブ率は目に見えて上がり,入門区/自由区/求人区いずれも活気が出たように思う。その勢いは夏休みが終わってからも引き続いており,求人区だけでなく自由区においても,クエストメンバー募集など,全体チャットが活発に行き交うようになったと感じる。
そして,シーズン3.5で実装された要素も盛り沢山で,インタビュー前後編で触れた内容以外にも,10月8日からアクラ・ジェビアが実装された。実は筆者も,まだ特殊古龍武器やアクラUシリーズなどは強化しきれていなかったりする。社会人プレイヤーなどは,シーズン4.0の実装前にシーズン3.5の要素を遊び倒せるのか? という余計な心配までしてしまうほどだ。
また,オンラインゲームのアップデートというと,どうしてもベテランプレイヤー向けの要素に偏ってしまうのは仕方のないところ。ただ,MHFでは「謎のクエスト」「VS.クエスト」「通り名称号」といった,ゲームを始めて間もない人でも(それなりに)楽しめる新規コンテンツを用意し続けている姿勢は評価したい。
シーズン4.0は,以前に発表されたとおりであれば12月の予定だが,開発は順調に進んでいるようで,またボリュームも多めになりそうである。情報露出は11月7日以降とのことで,詳細が判明するまでもうちょっと待つことになる。
また,10月末には“大きなビジネスパートナーとの提携の発表ができる”そうで,またなにやら動きがありそうである。2008年末から2009年にかけて,MHFがどう進化していくのか注目していきたい。
(2008年9月24日収録)
- 関連タイトル:
モンスターハンター フロンティアZ
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