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第8回 4Gレビューコンテスト最終結果発表:4作品が同時受賞
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印刷2007/08/10 20:13

お知らせ

第8回 4Gレビューコンテスト最終結果発表:4作品が同時受賞

 2007年5月2日から作品を募集していた,「第8回 4Gレビューコンテスト」最終結果がまとまったので発表しよう。
 今回は,4作品が佳作に選出された。受賞作(※順不同)は,以下のとおり。

■パッケージ部門
<佳作>
Canvasさん作「パレドゥレーヌ」
Darongさん作「The Elder Scrolls IV: Shivering Isles」

■オンラインゲーム部門
<佳作>
meuniereさん作「マビノギ」
藤 瑞樹さん作「ネットdeすごろく す〜ぱぁ★リッチ」

 残念ながら大賞受賞者こそ出なかったものの,それでも4作同時受賞は,期待を上回る結果だ。受賞した4名には,心より拍手を送りたい。
 今回受賞するかしないかの分かれ目になったのは,レビューとして必要な要素が揃っているかどうか。選に漏れた中にも,読んでいて面白いものや,熱意が伝わってくるものが多くあったが,書くべきことが書かれていないと,そういった良いポイントが帳消しになってしまう。

ゲームの内容を伝えるために必要なものは揃っているか
それらを吟味して,良い点,悪い点を整理できているか
読者に対して,どのポイントをアピールするか

といったことに注意して,ぜひ再度挑戦してほしい。


■■選評■■

レビュワー:Canvasさん
「パレドゥレーヌ」(佳作)
 →作品は「こちら」

 一つながりの論理と文章の展開,一文の長さとリズムという,文章の基本ともいえる部分で見たとき,この作品は実によく書けている。論旨は明快で,破綻もない。本作品を佳作に留めるか,それ以上の評価がふさわしいかについては,最後まで議論が分かれたのだが,理由はまさに,このソツのない文章にある。
 ただし,それはあくまで表現形式の良し悪しであって,読者に伝えるべき「内容」とは別のものだ。良いレビューは,事実を正しく把握し,それを適切に判断して配置することで成り立っている。そしてそこがまさに,本作品の課題なのである。
 ゲーム各部の紹介が,制作意図の論証(追検証)を目指して収斂していることが,確かにこの作品の良い部分(=論理性)を形作ってはいる。だが問題は,そこから一歩も外に出ていないことだ。破綻がないので,説明されている事柄についてはよく分かるものの,この収斂の図式から外れる,実に多くの物事が平然と捨象されている。レビューを読む読者が知りたいのは「制作者が何を目指したか」(だけ)ではない。そのゲームが「現にどうなのか」こそが重要だ。
 パラメータがマスクされ,イベントの応酬で進む「ストラテジーゲーム」は,実際のところアドベンチャーゲームと呼ばれるべきではないのか? キャラクターへの思い入れによってストラテジーゲームに不慣れな人をも導き入れることを狙ったこの作品で,グラフィカルでないインタフェースが用いられていることについてはどうなのか? そうした疑問に対する書き手側の答えや論評となる文章は,残念ながら一行も出てこないのである。
 叙述スタイルとしての論理性に依存した結果,プレイされるものとしてのゲーム全体を捉え損ねたことが,本作品が佳作に留まった理由である。現状でも十分に高い文章表現力をさらに伸ばしつつ,かつ,書かれた文章から,そのゲームに期待できる事柄をあれこれ吟味する読者のことを,常に忘れないよう,努力を続けてほしいと思う。(Guevarista)


レビュワー:Darongさん
「The Elder Scrolls IV: Shivering Isles」(佳作)
 →作品は「こちら」

 今回の応募作はどれも,読みやすい丁寧な文体で書かれており好感が持てたが,その一方で「木を見て森を見ず」と感じる作品が多いことは,若干気になった。パラグラフ単位ではとても形が整っているのだが,それぞれにつながりがなく,要素説明の羅列になっていたり,結果全体についての印象が語られていなかったりする。例えば,戦闘がスピーディなのはよく分かるが,それがゲームプレイにおいてどのような効果をもたらしているのかが分からない,といった感じである。要素を個別に説明するだけでは,いくら文章がうまくとも,レビューとしては弱い。
 その点,一線を画していたのが,このDarongさんの作品である。Shivering Islesが,本体ソフト「The Elder Scrolls IV: Oblivion」から見てどういう位置にあるのか,何が追加され,それによってゲームプレイにどういう変化が出たのか,どういう部分に不満を感じるのか,といったことがきちんと書かれている。また,レビュワーなりの分析も散見でき,これがこの作品を,単なる紹介記事ではなくしている。
 そんなわけで,審査員一同から高評価を得たこの作品だが,残念ながら大賞には及んでいないのには,むろん理由がある。まず,Shivering Islesのテーマである“狂気”の質が,読んでもまったくイメージできないことが挙げられる。こういったものは形容詞を並べるよりも,一つの具体例を持ち込んだほうがはるかに理解が早い。ネタバレを避ける必要性からかもしれないが,少なくてもいいので,文章に説得力を持たせる効果的な例を挙げてほしかった。
 また,言い訳や,妙にへりくだった文章が多いこともマイナス点。「そもそも,主観でしかない」「敢えてNPCも追加したのは」「SIの魅力を少しでもお伝えできれば良いのだが……」「語学力を身につけたら(中略)より楽しめると思うのだが……」「筆者の拙い文章ではイマイチだろうか」。謙虚なのは良いことだが,程度が過ぎると,それは内容への不安にもつながりかねない。次回はぜひ,もっと自信を持って書いてほしい。(Iwahama)


レビュワー:meuniereさん
「マビノギ」(佳作)
 →作品は「こちら」

 文章は読みやすく,展開にはこれといった破綻がなく,章立てもしっかりして,小見出しも気が利いている。しかし,読後これといった印象を残さないというちょっと困った点で審査員の意見が一致してしまった。しっかり調べてゲームの構成要素を洗い出し,それぞれを過不足なく記述しているにもかかわらず,どこか総花的でマニュアルを読まされているような感じを受けるのは,本文がゲームの説明に終始してしまっているからだ。ニュース,あるいは紹介記事なのである。
 こうした文章は確かにアリで,需要も価値もあるが,レビューとして見ると物足りない。なにも思いがけない結論や,意表を突いた意見を述べるべきだと言っているわけではないし,冷静であることが悪いわけでもないが,筆者がどうして「マビノギ」を選んだのか,どこが面白くてプレイしているのかが今一つ伝わってこないのだ。
 もっとも,逆に言えば,そこさえ掴んでしまえば筆力に問題はないのだから,かなり面白いものが書けるはず。期待して次を待ちたい。(松本隆一)


レビュワー:藤 瑞樹さん
「ネットdeすごろく す〜ぱぁ★リッチ」(佳作)
 →作品は「こちら」

 今回「ネットdeすごろく す〜ぱぁ★リッチ」をテーマにレビューを投稿してくれた藤 瑞樹さんは,第7回 4Gレビューコンテストに引き続き,2度目の佳作受賞となった。
 前回の「R2BEAT」レビュー記事では,作品の魅力を的確に見抜く分析力と,読み手に「面白さ」を伝える文章の勢い/テンポが審査員達の評価を集めたが,今回のレビューにおいても,そういった持ち味が遺憾なく発揮されており,やはり多くの審査員から高い評価を得た。
 しかし,前回のレヴコンの選評でKawamuraも述べていた,記事としての基本要素に若干欠けているかな,という印象を筆者も受けた。題材となったゲームは,多くの日本人が遊んだことのある(あるいは知っている)スゴロクをベースとした作品なので,本作に関しては言葉の足りない部分があってもさほど違和感なく読み進められるが,背景設定/システムがより複雑な他ジャンルのゲームでは,そうもいかないだろう。全体的な構成力や,的確な厳しい指摘/建設的なフォローのバランス感覚などが光っていただけに,そういった荒さ(基本となる事柄への説明不足)が惜しまれる。
 ともあれ,2回連続の佳作受賞は決してまぐれではない。作品の魅力を見抜くセンスはプロ級といっても差し支えないレベルなので,さらなる研鑽を積めば大賞受賞も十分あり得る話だろう。若干カジュアルゲームに弱い4Gamer.netのために(?),次回のレヴコンでは,三度目の正直を実現してもらいたいところだ。(大路政志)

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