連載
ファンタジー作品に登場するモンスターというと,神話や民間伝承を起源とするものが多いが,すべてのモンスターが遙か昔に生まれたわけではない。現代にもさまざまなモンスターが生まれて(?)いるのだ。
それらの大半は,未確認生物(Unidentified Mysterious Animal)と呼ばれるのが一般的だ。詳しい内容は知らなくとも,なんとなくUMAという名称くらいは耳にしたことがあるのではないだろうか。
今回はUMAの中でも,ゲームへの登場率が比較的高いイエティ(Yeti)にスポットを当ててみよう。なお,これは余談であるが,UMAという語は元『SFマガジン』編集長の南山 宏氏によって作られたらしい。
前述したように,イエティはゲームとの相性がいいのか,RPG,格闘ゲーム,RTSなど,さまざまなジャンルのゲームに登場しており,ゲーマーにも比較的馴染み深い存在といえる。一般的には雪山に棲息し,全身が長い毛で覆われた,直立歩行する猿人のようなモンスターだとされている。
主な攻撃手段は腕力任せのパンチであったり,棍棒であったりと原始的。また生息地の関係からか,冷気に対して耐性があるほか,なかには冷気のブレスを吐くものもいるようだ。
また粗野なモンスターとして扱われる一方で,ずんぐりむっくりとした可愛らしいルックスと,優しい心が印象的なイエティもたまに見かける。
イエティというネーミングは,ネパール高地に生息するシェルパ族の言葉で「岩」を意味する「Yah」と,獣を意味する「Teh」の合成語であるらしい。よく似た存在として,北米のサスカッチ(Sasquatch),アメリカのビッグフット(Bigfoot),日本のヒバゴンなどが有名だ。
なおサスカッチは,ネイティブ・アメリカンの言葉で「毛深い巨人」という意味で,ビッグフットは大きな足跡からその名前がつき,ヒバゴンに関しては広島県の比婆山(ひばやま)をもじって付けられた名前である。
最も古いイエティの記録は1832年,ネパールに駐在していたB・H・ホジソンによるものだ。彼は,当時現地の荷物運び達が長い毛で覆われた野人を目撃したという話を,イギリスの科学雑誌で報告している。ただし,これはホジソンが目撃したわけではなく,あくまで荷物運び達の間の噂話。ホジソン自身は,オランウータンを見間違えたのだろうと語っていたらしい。
しかし,ホジソンの報告を皮切りに,1889年にはイギリスのウォーデル大佐,1921年にはハワード・ベリー陸軍中佐率いる偵察隊,1951年にはエベレスト探検隊のエリック・シプトンが,イエティ(あるいはイエティが存在する証拠)を目撃/発見している。
続々と公表されるイエティの目撃例だったが,やがてそのブームは終息に向かうことになる。科学の発達に伴ない,イエティの正体はヒグマではないか? との説が有力視されてきたのだ。これまでにイエティの体の一部と呼ばれていたものを分析した結果,カモシカやヒグマの毛皮であることが判明したのである。
また,昔は登山をするには今以上に莫大な資金が必要だったので,資金集めのための話題としてイエティをでっちあげたのでは? という推測も流れている
|
- この記事のURL: