業界動向
Access Accepted第306回:E3 2011プレビュー 〜後編〜
超大型タイトルが激突する欧米ゲーム業界「秋の陣」
前回「E3 2011プレビュー 〜前編〜」でも書いたように,2011年は任天堂の次世代コンシューマ機,そしてソニー・コンピュータエンタテインメントの新しい携帯ゲーム機といったハードウェアの発表が予定されており,例年以上に注目が集まっている。
今のところMicrosoft関連でハードウェア系の新情報は聞こえてこないものの,何が飛び出すのかは,明日6月7日(現地時間の6月6日)に開催されるMicrosoftのメディア向けブリーフィングでハッキリするはずだ。
今週も,先週に引き続きE3 2011に出展する各社のフラグシップタイトルを紹介していこう。前回はActivision Blizzard,Bethesda Softworks,Electronic Arts,Microsoft,そしてソニー・コンピュータエンタテインメントの5社と,代表作5作を挙げた。
今週紹介するのも5社の5タイトルで,合わせて10作。そのラインナップを見ると,2011年末が,いかにすごいことになっているのかが分かるはずだ。
いずれもグローバルで200万〜300万本は当たり前。場合によっては1000万本や2000万本だって達成できてしまうようなタイトルばかり。あまりにも遊びごたえのありそうな作品ばかりであり,いくらコアなゲーマーでも「全部買って全部遊ぶ」ことは難しそうだ。どれから始めるか,今から真剣に考えておこう。
そのため今年のE3は,各パブリッシャにとって勝負どころになる。ここ数年のセールス実績から見て,「Call of Duty: Modern Warfare 3」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)が頭1つ抜け出ているようなムードがあるが,それだけに,各社とも同作に対抗するための広報戦略を練っているはずだ。ゲームの出来とは別の部分で,膨大な宣伝費を投じた熾烈な広告合戦が繰り広げられるだろう。
また今年は,E3で展示されるタイトルのアセットが開催前に公開されることが目立つが,これなども,大作ラッシュで埋もれてしまうことを少しでも防ごうとする工夫だろう。
ともかく,今年後半のラインナップが相当なものであることは間違いなく,それを避けて,発売を2012年以降に延期するタイトルもぼつぼつ出始めている。
このように,メーカーにとっては悩みのタネは尽きないが,我々エンドユーザーにとっては,あれがいいか,それともこれか? と嬉しい目移りが楽しめるのは間違いない。さっそく,残る5つのパブリッシャの一押しタイトルを紹介していこう。
E3 公式サイト
スクウェア・エニックス/Eidos
「Final Fantasy XIII-2」(PlayStation 3/Xbox 360),「FINAL FANTASY VersusXIII」「Final Fantasy Type-0」と,人気RPGシリーズの新作が一気に3作も発表されるスクウェア・エニックスだが,系列会社であるEidosの健闘により,海外でプロデュースされたタイトルも,これまでになく上質のラインナップだ。発売時期でいえば,日本でも知名度の高いアクションRPGの新作「Dungeon Siege III」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)が欧米では6月末にリリースされる予定で,同作が2011年の後半戦の先陣を切ることになりそうだ。
Eidos系タイトルには,どれも「久々の復活」を感じさせるアクションアドベンチャーが多い。ララ・クロフトを主人公にした「Tomb Raider」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)は,船の難破によって孤島に流れ着いた彼女が,そこで過酷なサバイバルを強いられるという話で,ララが10代のときに起きた出来事という,ファンには気になる設定。また,カルト的名作「Deus Ex」によって始まったシリーズの第3弾,「Deus Ex: Human Revolution」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)も,従来作で描かれたナノテクノロジー以前の時代を描く前章譚だ。
また,作品を重ねるごとに人気を高めてきた「Hitman」シリーズの最新作「HITMAN ABSOLUTION」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)も,具体的な制作発表がE3 2011で行われる模様。発売は,2012年以降になりそうだが,果たしてどのような進化を遂げているのだろうか。
THQ
「HOMEFRONT」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)のヒットで勢いの出てきた感じのTHQだが,オープンワールドのクライムアクションシリーズ第3弾「Saints Row: The Third」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)に期待しているファンも多いはずだ。
今回は,プレイヤーと仲間が銀行強盗に失敗して牢獄に送られている間,新たに登場したThe Syndicateという国際犯罪組織に,Stilwaterの街が乗っ取られてしまうという物語。街を追われたギャング団Saintsは,隣のSteelportに本拠を構えて反撃に出ることになるが,「空爆要請」など,戦争なみのド派手なアクションが用意されるなど,ハチャメチャぶりにさらに磨きがかかっているようだ。
Gears of Warばりのアクションゲームになった「Warhammer 40,000: Space Marine」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)や,ウクライナ生まれのホラーFPS「Metro: Last Light」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)なども面白そうな作品だ。
このほか,総合格闘技シリーズの最新作「UFC Undisputed 2012」と,そこから派生した男性向けフィットネスゲーム「UFC Personal Trainer」に注目しているファンも少なくないはず。
発表される可能性は低いものの,ギレルモ・デル・トロ監督が監修するホラーアクション「inSane」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)はどうなるだろうか?
Ubisoft Entertainment
アクションアドベンチャーからファミリー向けタイトルまで,例年になく充実したラインナップを誇るのが,フランスのUbisoft Entertainmentだ。ニンテンドーDSiやMicrosoft Kinectなど,新たなハードウェアのローンチタイトルを積極的に制作しているメーカーでもあるため,Wiiの後継機やNGP向けのゲームを発表する可能性が高い。ラインナップを絞って,フラグシップに力を注ぐ他社とは反対の方向に進んでいるパブリッシャだ。
そんなUbisoftの看板を背負っているのが,11月に発売される予定の超人気シリーズの第4弾「Assassin's Creed: Revelations」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)だ。イタリアから,オスマントルコが占領した直後のコンスタンチノープル(現イスタンブール)へ舞台を移し,主人公エツィオが暗殺者集団の命運を握る5つの封印を探すという内容だ。1年で1本というペースの早い開発を続けているシリーズだが,新作がリリースされるたびにゲーム性が向上し,ボリュームのアップが図られているのはさすがだ。前例に従えば,本作がさらに遊び応えのある作品になるのは間違いない。
エリック・チャイ(Eric Chahi)氏の新作「From Dust」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)や「Tom Clancy's Ghost Recon: Future Soldier」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)など,2012年に発売される予定の出展タイトルも少なくはなく,そのへんにも同社のマイペースぶりが感じられるが,発売の近いところでは“現代版西部劇”に変身したクライムアクション,「Call of Juarez: The Cartel」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)が6月にリリースされる。おそらく,今回のE3でも大々的に紹介されるだろう。
街を走る車を次々に乗り換えて,オープンワールドでのレースミッションを楽しめる「Driver: San Francisco」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)も,8月の発売に向けた最終段階に入っている。「Just Dance」シリーズや「Your Shape」シリーズの新作,さらに楽器型の周辺機器を利用した音楽ゲームの初参入タイトルとなる「Rocksmith」なども,E3 2011で紹介される見込みだ。
Warner Bros. Interactive
昨年,ワーナーエンターテイメントジャパンが設立され,日本進出を果たしたWarner Bros. Interactive。今後も,系列会社が制作する映画の資産を活かした,さまざまな新作が期待できる。そんな中,個人的に気になっているのが,「指輪物語」の世界観をテーマにしたアクションRPG「The Lord of the Rings: War in the North」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)だ。
ヒューマン,エルフ,ドワーフという,それぞれに特徴を持った3人のキャラクターが活躍するハック&スラッシュ系のタイトルで,オンラインでのCo-opも楽しそうだ。何度かの発売延期を繰り返しながら,ようやく8月中のリリースが見えてきたようだ。
Warner Brosの作品で,現在最も注目されているのが「Batman: Arkham City」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)だろう。前作「Batman: Arkham Asylum」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)は,あまり大きく宣伝されなかったものの,発売されるやメディアやファンから絶賛され,北米だけで470万本という大ヒットを記録した。今回は,ジョーカーの画策でハーレクイーンやドクター・ストレンジ,ツーフェイス,ペンギンといった悪役オールスターが集結し,バットマンが一度に何人ものギャングや悪漢と戦うという状況に陥ったりするようだ。
バットマン系のゲームでは,発表されたばかりのオンライン専用アクション「Gotham City Impostors」がどのような作品になっているのかが興味深い。さらに,こちらも発売が伸び伸びになっているホラーFPS,「F.E.A.R. 3」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)もE3 2011で間違いなく公開される予定で,ラインナップの数は多くないが楽しみな作品が多いメーカーだ。
2K Games
発売を目前に控えた「Duke Nukem Forever」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)で知られる2K Gamesだが,ほかに年内発売予定のソフトと言えば,4年ぶりの続編となるアメコミ系のアクションゲーム「The Darkness 2」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)が挙げられる。イタリアンマフィアのストーリーとデーモンパワーを混合させるというユニークな世界観がウリのゲームだが,今回は,デーモンに変身したときに利用できる4つの腕を,それぞれ別にコントロールする“Quad Wielding”と呼ばれる独特の操作が面白そうだ。
2012年に発売されるタイトルが多い2K Gamesのラインナップの中で,やはり最も目立っているのが「BioShock Infinite」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)。シリーズ第3弾では,海底ではなく天空都市Colombiaを舞台にするという思い切った発想の転換が見られるが,古き良きアメリカを思わせるノスタルジックなアートが目を引く作品だ。前作までのPlasmid同様,“Vigor”と呼ばれるパワーの源を服用でき,テレキネシスや動物を操るといった能力を使って戦っていくことになるようだ。
また,昨年のE3で発表された「XCOM」(PC/Xbox 360)も,コアゲーマーにとっては非常に気になる作品である。こちらも古き良きアメリカの1950年代,エイリアンの活動を監視するXCOMチームが,さまざまな事件を解決しつつも地球外テクノロジーを研究し,新たな兵器を作っていくというようなゲーム。また,発売が2012年に延期されたスクワッドベースのFPS「Spec Ops: The Line」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)の公開が,E3 2011であるのかないのかにも注目したい。
著者紹介:奥谷海人
本誌海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,北米ゲーム業界に知り合いも多い。この「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年に連載が開始された,4Gamerで最も長く続く連載だ。バックナンバーを読むと,移り変わりの激しい欧米ゲーム業界の現状が良く理解できるはず。
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