業界動向
Access Accepted第386回:E3 2013プレビュー
1995年の第1回開催以来,今年で19回めを迎えるE3。今年は,新型コンシューマ機の登場で,ゲーム業界だけでなく,一般メディアなどを巻き込んで大きな盛り上がりを見せている。そんなE3 2013のスタート直前となる今回は,各プラットフォームホルダーの動きや,紹介される予定の期待作などについてチェックしてみたい。
タイトル数は少ないが,大作だらけ
北米ゲーム業界最大のイベント,E3 2013が北米時間の6月11日から13日まで,ロサンゼルスのコンベンションセンターで開催される。前日となる10日(日本時間11日)には,まずMicrosoftのプレス向けカンファレンスが行われ,その後,Electronic Arts,Ubisoft Entertainment,そしてSony Computer Entertainment,とカンファレンスが続く。現地時間11日にコンベンションセンターがオープンすると,前日のカンファレンスで発表された新作や,ほかのパブリッシャが送り出すタイトルの数々が,フロアを埋めることになるはずだ。
改めて簡単に説明すると,E3とは,アメリカの業界団体Entertainment Software Association(ESA)が主催するゲーム業界関係者向けのイベントで,1995年に第1回がロサンゼルスで開催されて以来,今年で19回めとなる。
ここ数年は,ブースの設営など数億円もかかるといわれる参加費用や,この時期にデモを制作しなければならないデベロッパの負担などが問題になっており,E3の存在意義に関する議論が必ずと言っていいほど起きている。
とはいえ,規模を縮小し,メーカーの負担を減らした2007年,2008年のE3は明らかな失敗に終わっており,現在のE3に代わるやり方はなかなか見つからないようだ。
E3 2013に参加するメーカー数もゆるやかに減少しており,今年は190社ほどになる。THQやAtariなど,常連メーカーが相次いで倒産したということもあるが,2K GamesやParadox Entertainment,Perfect World Entertainmentのように参加を見合わせたメーカーも少なくない。発表された出展予定タイトル数は,今のところ130本あまりで,例年に比べてやや少ないという印象だ。
もちろん,PlayStation 4/Xbox Oneのカンファレンスで初登場するタイトルも少なくないはずだし,E3で初公開されるプロジェクトもある。2012年12月17日に掲載した本連載の第368回「Aクラスのタイトルが消えつつある2012年の欧米ゲーム業界」でもお伝えしたように,最近は各メーカーとも,いわゆる「AAA(トリプルA)タイトル」に資産を集中し,ゲーム全体の制作本数は減少傾向にあるのだ。今回,タイトル数こそ少ないが,いずれも大きなヒットを見込めそうな作品ばかりで,それがE3 2013の一つの特徴といえるかもしれない。
E3 2013公式サイト
ともあれ,PlayStation 4とXbox Oneの登場で,E3 2013がかつてないほどの盛り上がりを見せているのは事実。というわけで,ここで恒例のE3直前チェックをしてみよう。プラットフォームホルダーの動向は? そして,期待のタイトルにはどのようなものがあるのか? 開催前に軽く目を通してほしい。
E3 2013におけるプラットフォームホルダーの動向
Sony Computer Entertainment
E3 2013で40本もの対応ソフトを発表するというSony Computer Entertainmentだが,2月の発表後,多くのサードパーティが参入の意志を示しているだけに,その内容に対するメディアやファンの期待はかなり高い。PlayStation 3のローンチでは,ライバルのXbox 360に遅れをとってしまったが,その轍は絶対に踏まないというところだろう。
「InFAMOUS: Second Son」や「Killzone Shadow Fall」「グランツーリスモ6」などのおなじみのシリーズ最新作には,相当な準備期間をかけていたに違いない。
Sony Computer Entertainmentはサードパーティにかなりの自由裁量権を与えているようで,コンシューマ機市場では目新しい(つまり,成否は怪しい)Free-to-Playタイトルが次々と発表されているところからもそれが察せられる。また,インディーズゲーム業界にも強烈なアプローチをかけているようで,こちらは多くのインディーズ開発者達の発言からも分かる。こうした「開かれたプラットフォーム」は,これまでのPlayStationプラットフォームが築き上げてきた,「囲い込み」を主体としたビジネスモデルとは相容れないかもしれないが,時代の変化にしっかり対応してきたのは間違いない。
Microsoft
5月に行われたXbox Oneの発表会が,結果として不評に終わったMicrosoft。先週,公式サイトで「常時接続」や「中古販売」など,多くのファンが気になる点に答えたものの(関連記事),E3を前に行われる予定だったブリーフィングをキャンセルしたことが報道されるなど,ダメージコントロールに追われている雰囲気さえある。
Xbox Oneには,Remedy Entertainmentの「Quantum Break」やCrytekの「Ryse」といったエクスクルーシブタイトルが用意されているほか,ローンチから1年以内に15作がリリースされる予定となっている。また,新型Kinectの性能も高く,そこから生み出まれるゲームやサービスにも期待がかかっている。
現時点では北米編重のサービスばかり発表されているため,日本を含む海外市場への取り組みをどれだけ真剣に行うのかが気になるところだ。
任天堂
任天堂は,E3で恒例だったプレスカンファレンスを今年は取りやめたが,これは,ライバルの新型ハードにメディアやファンの注目が集まるE3 2013において妥当な選択だろう。その代わり,E3期間の直前に「Nintendo Direct」を配信して,代表取締役社長の岩田 聡氏が最新情報を直接ユーザーに紹介する予定だ(関連記事)。
また,E3会期中はアメリカ全土のBest Buyと提携し,E3 2013で公開される予定のタイトルを各地のBest Buyで楽しんでもらうというユニークな取り組みを行っている。Wii Uタイトルが「今すぐ遊べるゲーム」であることを印象付けつつ,「スーパーマリオ」シリーズや「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズなどの定番タイトルで北米のゲーマーにアピールしたいところだろう。
E3 2013で注目すべき海外の新発表タイトル
Destiny (Activision) |
Titanfall (Electronic Arts) |
The Witcher 3: Wild Hunt (CD Projekt RED) |
Thief (Square Enix) |
Assassin’s Creed IV: Black Flag (Ubisoft Entertainment) |
Murdered: Soul Suspect (Square Enix) |
Batman: Arkham Origins (Warner Bros. Interactive Entertainment) |
Killzone Shadow Fall (Sony Computer Entertainment) |
Battlefield 4 (Electronic Arts) |
Call of Duty: Ghosts (Activision) |
E3 2013公式サイト
著者紹介:奥谷海人
4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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