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Access Accepted第550回:「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」を作った「PlayerUnknown」とは誰なのか
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印刷2017/09/25 12:00

業界動向

Access Accepted第550回:「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」を作った「PlayerUnknown」とは誰なのか

画像集 No.001のサムネイル画像 / Access Accepted第550回:「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」を作った「PlayerUnknown」とは誰なのか

 現在,最も話題になっているゲームの1つが「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」だ。日本の映画「バトル・ロワイアル」にインスピレーションを受けたという同作は,2017年3月にアーリーアクセス版がSteamでリリースされて以来,わずか半年で1000万本を超える大ヒットを記録した。とはいえ,タイトルの“PlayerUnknown”とは,どういう人物なのだろうか。「知られざるプレイヤー」を自称する開発者のブレンダン・グリーン氏がこれまで歩んできた知られざる道を紹介したい。


ストリーマーの話題をさらった「バトル・ロワイアル」風新作ゲーム


 2016年の段階で,韓国のBlueholeが開発する「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)に注目していたゲーマーは,果たしてどれくらいいただろうか。PUBGの公式サイトがオープンしたのは2016年6月27日のことで,4Gamerでは同年7月4日,Kim Dong Wook氏によって第一報が伝えられている
 しかしその後,おそらくαテストが行われていた期間にはこれといったニュースも上がらず,ゲーマーやメディアの関心は低かった。欧米市場で最初に流れが変わったのは,2016年11月にアメリカで開催された「Twitch Con 2016」で紹介され,ストリーマー(Twitchのゲーム配信者)の話題をさらったときだっただろう。

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「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」公式サイト


 PUBGのアーリーアクセス版がSteamでリリースされたのは翌2017年の3月23日で,発売からわずか3日間で40万本のセールスを記録した。たちまちSteamの週間売上のトップに駆け上がり,同時にTwitchの視聴者数は15万人を超えてグローバルランキングの1位になった。続く16日間で100万本のセールスに達し,5月には販売本数が200万を記録したことを記念して,128人のストリーマーを招待した,数日間のチャリティイベントが開催された。

gamescom 2017と併催されていたゲーム開発者会議Devcomで,これまでたどってきた人生について語る「PlayerUnknown」こと,ブレンダン・グリーン氏
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 チャリティイベントではTwitchの視聴者から募金を行い,約12万ドルがゲーマー向けのチャリティを行う非営利団体Gamers Outreach Foundationに贈られているが,このイベントには,バトルロイヤル系タイトルをメインにしたトーナメントの形を模索する狙いがあったとも言われている。
 こうしたライブストリーミングに軸足を置いたマーケティング手法はPUBGに向いていたようで,9月には1000万本のセールスと,最大同時接続者数97万人を記録している。
 現在,DMM.comが日本での正式なサービスを行っているので,日本人プレイヤーでもより気軽に参加できるようになっているのではないだろうか。

 さて,タイトルにある「PlayerUnknown」(プレイヤーアンノウン)とは誰のことなのか。本連載の読者ならとっくにご存じかもしれないが,PUBGの開発をリードするクリエイティブディレクター,ブレンダン・グリーン(Brendan Greene)氏のハンドルネームだ。
 クリエイターの名前を冠したタイトルといえば,2Kで「シビライゼーション」シリーズなどを手がけるシド・マイヤー(Sid Meier)氏や,Ubisoft Entertainmentのトム・クランシー(Tom Clancy)氏の名前が思い浮かぶが,いずれもゲーム業界の内外で名の通った大物だ。
 それに比べて,「誰にも知られていないプレイヤー」という奇妙な名前をわざわざ冠したタイトルを不思議に思った人も少なくないだろう。


1年半前までは,プロのゲーム開発者になるなんて思っていなかった


 実を言うと,41歳のアイルランド人,ブレンダン・グリーン氏の名前は知らなくても,「PlayerUnknown」というハンドルネームは,「Arma II」「Arma 3」,そして「H1Z1」のMOD制作者として,ゲーマーの間ではかなり知られた存在だった。MODの内容はいずれもPUBGと同じバトルロイヤル風のもので,自分でこういうゲームを遊んでみたいから作ったのだという。

 フリーランスのグラフィックデザイナーやフォトグラファーを仕事としていたグリーン氏は,子供の頃からゲームに熱中していたというタイプではなく,「ゼルダの伝説」「メタルギア」シリーズなどは,遊んだこともなかったという。
 30歳になったばかりのときに恋人を追ってブラジルに移り住んだが,2年後には離婚を経験。アイルランドの実家に戻り,暇を持て余して「Arma II」や「コール オブ デューティ」のようなミリタリーシューターをプレイするようになった。ただし,ゲームがうまいほうではなかったため,アクションよりも気転を利かせることで勝てる,いわゆる「キング・オブ・ザ・ヒル」モードを拡張したようなゲームを遊びたいと思うようになり,そうしたゲームがなかったため,独学でMOD制作を始めた。

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 gamescom 2017に併催された開発者会議Devcomで初めて大勢の前で講演したというグリーン氏は,「自分は家族の中でも黒いヒツジだった。自分を含めて,全員から野たれ死にする運命にあると思われており,1年半前まではゲーム開発者という仕事につくなんて,考えてもいなかった」と話した。
 黒いヒツジとは,悪い意味で「違う存在」という意味であり,定職につかずブラジルへ行き,短期間で離婚して家に舞い戻って来たのだから,家族からそう思われるのは仕方ないかもしれない。暇つぶしで始めたMOD制作も,お金儲けにつながるとは考えておらず,それが「PlayerUnknown」というハンドル名に現れている。

 そんなグリーン氏の人生が変わったのが,2016年2月にBlueholeのプロデューサーであるキム・チャンガン(Kim Changhan)氏のメッセージを受け取ったときだった。グリーン氏が開発したMODのようなゲームの決定版を,Blueholeの新しいプロジェクトとして一緒に作らないか,という申し出だったという。
 MMORPGの「TERA :The Exiled Realm of Arborea」で,日本や海外でもそれなりの知名度を持ったBlueholeだが,それだけにグリーン氏は方向性の違いを心配していたという。しかし,数週間後にソウルで行われたミーティングでキム氏が進めていた企画を見せられたとき,そうした憂慮はすっかり払拭された。

映画「バトル・ロワイアル」や「ハンガー・ゲーム」をヒントにしたというPUBG。今後,多数のフォロワーが登場して,1つのジャンルを築いていくことだろう
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 かくして,Blueholeのクリエイティブディレクターとして正式に就任したグリーン氏。その3か月後の2016年6月に発表されたのが,彼のハンドルネームを冠したPUBGだったわけだ。Blueholeは自分達だけでゲームを作り上げる開発力を持っているので,「誰も知らない」と自称するMOD開発者の名をあえてタイトルに冠したのは,原作者を明確にするという同社の粋なはからいだったらしい。
 現状を見る限り,PUBGが「League of Legends」「Counter-Strike」のように,ジャンルを代表する作品になるのは間違いないが,開発者であるグリーン氏の,ある意味,数奇な人生も合わせて記憶に焼きつけておきたい。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
  • 関連タイトル:

    PUBG: BATTLEGROUNDS

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