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Access Accepted第567回:北米ゲーム市場の好調さを支える日本産タイトル
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印刷2018/03/05 12:00

業界動向

Access Accepted第567回:北米ゲーム市場の好調さを支える日本産タイトル

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 ひと頃,元気がなさそうな印象だった日本のゲーム業界だが,最近,そのプレゼンスを再び発揮し始めている。北米ゲーム市場のトップチャートには,日本のゲームがいつもランクインしており,また,2018年1月にリリースされた「MONSTER HUNTER: WORLD」は高い人気を得て,北米市場の1月の売り上げを大きく更新する原動力になった。今週は,好調な北米ゲーム市場を支える日本産ゲームの状況をお伝えしたい。


市場の急速な広がりの中で
埋もれかけていた日本のゲーム業界


 アメリカのリサーチ会社Newzooが2017年4月に発表したレポートによれば,2017年のゲーム市場の規模は,世界全体で約1089億ドル(約11.5兆円)に達したという。
 こうした数字は,どこまでを「ゲーム産業」の範疇に含めるかで変わってくるもので,異なる数値を挙げるレポートもあるようだが,2017年に経済産業省がまとめた「日本の2大コンテンツ,ゲームとアニメの制作企業の実情を比較する」では,日本国内ゲーム産業の規模は約1.8兆円とされている(ただし,レポートに用いられている数字は2015年のもの)。Newzooの報告と比較すると,日本のゲーム市場の規模は世界の約10%を占める計算になる。

 過去のデータを探ってみると,Bloombergは2007年,グローバルなゲーム市場の規模を316億ドル(約3.3兆円)と伝えており,つまり,この10年で市場規模が3倍以上に膨れ上がったわけだ。その一方,2007年に日本のCESAが発表した調査報告によれば,2006年の国内ゲーム市場の規模は約1.63兆円だった。

リサーチ会社Newzooのレポート。少し前には個別に紹介されていた日本が,気づけば「Asia-Pacific」に組み込まれてしまったのが悲しいが,この10年ほどのゲーム市場の広がりには驚くばかりだ。成長著しい中南米は,4%のシェアを獲得している
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 2012年,ヒットした「FEZ」の開発者であるフィル・フィッシュ(Phil Fish)氏がGDCで,「最近の日本のゲームは,何も生み出せていない」と発言して物議を醸したことは,同年の3月12日に掲載した本連載の第337回「日本のゲームの未来を考えさせられたGDC 2012」で紹介したとおりだ。その出来事を記憶している人も多いと思うが,確かにその頃の日本のゲーム産業は,市場の規模にも関わらず,「PlayStation 2」時代と比べて元気がない印象があった。

 一方で,海外の大手パブリッシャはそれまでの大量リリースという方向性を転換し,AAA(トリプルA)を超える時間と予算をかけた,いわゆるAAAA作品をリリースして1000万本単位のメガヒットを飛ばしており,モバイルゲームやインディーズゲーム市場では,「ワンヒット長者」が数多く誕生するという活況を呈していた。
 さらに,それまでゲームを開発していたことも知られていない国々から,次々に印象的なタイトルがリリースされるなど,かつてないほどの多様化も進んでいた。そうした視点から見た場合,フィッシュ氏の言葉が(暴言ではあれ)胸に刺さった日本のゲーム関係者も少なくなかったのではないだろうか。


日本産タイトルのヒットに見る,潮目の変化


 その流れが変わりつつあるようだ。「PlayStation 4」は発売から4年ほどを経た2017年12月,販売台数が7000万台に達したことを発表。また任天堂は,2017年12月の時点で「Nintendo Switch」の世界累計の販売台数が1486万台を突破し,現行のコンシューマ機の中で最も速いペースで成長していることをアピールした。このように,日本のゲーム市場の本丸と言ってよいハードウェアは非常な伸びを示しており,再び大きなプレゼンスを発揮し始めているのだ。

 これに合わせるかのように,日本のゲームがヒットを生み出している。
 リサーチ会社のNPD Groupが報告した2018年1月の北米ゲーム市場の規模は,約11億ドル(約1163億円)で,前年同月比で59%上昇した。このうち,ソフトウェア販売は約5億1700万ドル(約547億円)で,これは,2011年1月に打ち立てられ,いまだに破られていない「5.49億ドル」に迫る記録的な数字であるという。

2018年1月の北米ゲーム市場の成長を大きく支えた,「Monster Hunter: World」
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 この好調さを後押ししたのが,日本産のゲームだ。NPD Groupの発表によれば,2018年1月のゲーム販売本数の頂点に立ったのはカプコンの「MONSTER HUNTER: WORLD」で,日本と同じ1月下旬にリリースされたにも関わらず,トップを獲得したのだから驚きだ。2位にはバンダイナムコエンターテインメントの「ドラゴンボール ファイターズ」がつけており,こちらも北米では1月も終わりかけた26日にリリースされた新作となる。

 その下には,「Call of Duty: WWII」「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」など,毎月の売り上げ上位の常連が続くのだが,その中には「スーパーマリオ オデッセイ」「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」,そして「マリオカート8」という任天堂の3作品が並んでおり,日本産のゲームが実にトップ10の半分を占める。

 また,2017年12月に開催された「The Game Award 2017」のノミネート作を見ると,「バイオハザード7 レジデント イービル」「NieR: Automata」などの名前が並んでおり,ゲームとして高い評価を得た作品も少なくなかったことが分かる。このトレンドは2018年も続きそうで,「戦場のヴァルキュリア4」「北斗が如く」「二ノ国II レヴァナントキングダム」「KINGDOM HEARTS III」「ソウルキャリバーVI」,そして「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」など,海外でもファンの多い各社のタイトルが発売を控えている。

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 日本産のゲームが再び評価されている現状は,個人的にも嬉しい話だ。振り返ってみれば,日本のゲームが海外ゲーマーや開発者の注目をあまり集められず,「DARK SOULS」など,わずかな作品が孤軍奮闘していた時期があったのは間違いない。しかし現在,その潮目が変わりつつあるように感じられる。今後,日本からどんなタイトルがグローバル市場に飛び出していくのか,これからも注目していきたい。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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