レビュー
既存製品に対する“怒り”が結実した光学センサー搭載マウスの実力は?
SteelSeries Ikari Optical
» 既存のゲーマー向けマウスに向けた攻撃的なメッセージで,発売前から高い注目を集めていたSteelSeries,そして同社初のゲーマー向けマウス「SteelSeries Ikari」シリーズ2製品。大きく特徴の異なる光学/レーザーセンサー搭載製品なので,まずは光学センサー搭載製品からCrize氏のレビューをお届けしたい。“怒り”の矛先は,どこに向いているだろうか?
そんな同社が,2007年8月にドイツで開催されたゲームショウ「GC 2007」において,突如マウス市場への参入を発表したのはまだ記憶に新しいところだ。日本語の「怒り」から名付けられた「SteelSeries Ikari」(以下,Ikari)を発表したSteelSeriesは,高解像度競争や過度の装飾などといったマウスのスペック競争が,まったくゲームプレイとは関係のない方向に向かっているとして既存の(=他社の)ゲーマー向けマウスを公然と批判し,その注目を集めてきた。
もちろん,そこまで言うからには,ゲーマー向けとして明確なメリットがあるはずだが,果たしてどうだろうか? 世界大会で活躍するクラスのゲーマー,5000名以上からのフィードバックを得て登場したのは「Ikari Optical」「Ikari Laser」の2製品だが,本稿では光学センサーを搭載する貴重な選択肢である,Ikari Opticalについて,じっくりと掘り下げてみたいと思う。
MSIE 3.0やMXシリーズに近い印象の外観
ホイールボタンとサイドボタンの完成度は出色
このデザインはどうなのかというと,結論からいえば握りやすい。サイズは83(W)×130(D)mmで,大きさ的にはMSIE 3.0や,(MX510を始めとする)MXシリーズ,あるいは「G3 Optical Mouse」や「G5 Laser Mouse」に近いのだが,背は36mmと,MSIE 3.0やMX510より低く,あまり大きさを感じないというか,手の中にすっぽりと収まる印象を受ける。
また,右は右で,ラバー加工されているのは左側と同じだが,こちらには段差が設けられている。右クリックを中指で操作するときは上段に薬指,下段に小指を乗せることで,あるいは右クリックを薬指で操作するときは上段に小指を乗せることで,手をマウスの上から被せるように持つ,いわゆる被せ持ちを行うときに,がっちりとホールドできる。被せ持ちに近い握り方をしつつ,手首をマウスパッドに置いて操作するような使い方も容易だ。
もちろんつまみ持ちにも対応しており,左側面と右側は段差の傾斜部をそれぞれ指先で押さえることにより,しっかりと握れるようになっている。
スクロールホイールは一目盛りごとにカチカチという刻みのある,チルト機能のない一周24刻みのシンプルなホイールで,それ自体は“普通”という印象を脱却していないが,ホイールボタンについては話が別。Ikari Opticalのホイールボタンは,ボタンを押し込む深さが適度にあり,返りもシャープなので,かなり押しやすい。一般的なホイールボタンにありがちな「押し込むとホイールが反応してしまう(=回転の入力が認識されてしまう)」こともいっさいなかった。正直な感想として,Ikariのホイールボタンは,今まで触ったマウスの中でトップクラスの品質だと思う。
ホイールボタンの近くに用意されているボタンは(詳細は後述するが)解像度を「High」と「Low」の2段階を切り替えるためだけに用意されているスイッチだ。ほかの機能を割り当てたりはできないので,これ以上掘り下げる必要はないだろうが,あえて述べるなら,ボタンがマウスの表面からほとんど露出しておらず,邪魔にならないのはいい。
ただ,このデザインには明確な意図に基づいているようで,先ほど挙げたいずれの持ち方でも,親指が誤ってサイドボタンに触れて,入力されてしまう問題が起こりづらく,それでいて握ると親指のすぐ上にくる。もちろん指の長さや太さは個人差があるので,全員がそう感じるかは分からないが,例えば一般的な日本の成人男性なら押しやすいはずだ。さらに,肝心要となるボタン自体の品質も良く,マウス前方/後方側どちらも“浅い”ので,1クリックごとのボタンの返りがいい。前方側のボタンの方が若干返りがシャープな印象で,ジャンプなど,頻繁に使用する機能をバインドして,連続で入力するような場合にも不満はない。サイドボタンの配置,大きさ,押し心地はどれも秀逸である。
ドライバソフト不要のシンプルさは魅力
だが,キーバインドはあってもよかった?
しかも,このツールをインストールして起動したとろで,設定できるのは解像度周りのみ。Ikari Opticalは最高1600cpi――4Gamerの慣例表現では1600dpiに当たる――で,残る選択肢は800/400cpi。先ほど説明したように,マウス本体の解像度インジケータはHigh/Lowしかないが,ツールから行えるのは「1600/800/400cpiから,好みの二つを選択して本体に登録する」ことだけである。
せっかく品質のいいサイドボタンが用意されていても,利用できなければ宝の持ち腐れになってしまう。キーバインド機能があればこういった悲劇は回避できたと思うと,実に残念だ。
テスト環境は表のとおりだが,SteelSeries製の布製マウスパッド「SteelPad QcK mass」はもちろん,プラ系の硬質マウスパッド「Thunder 9 BK1(Smooth)」や「Razer eXactMat」などでも,マウスポインタの挙動はしっかりしている。個人的には,SteelPad QcK massや「QPAD Gamer Lowsense」といった,しっとりした表面加工の布製パッドとの相性がいいように感じた。
リフトオフディスタンスについても述べておくと,スペックどおりの3.5mmで反応しなかったのは,「QPAD Gamer Lowsense」と色の薄い木目調のフローリング,色の濃い木目調のテーブルで,「SteelPad QcK mass」「FatPad」「Thunder 9 BK1(Smooth)」,「Razer eXactMat」は5mm近く離すと基本的に反応しなくなったが,ロゴなどのプリント部だとポインタが動いてしまうことがあった。この点については,スペックを信じないほうがよさそうだ。
もっとも,光学センサー搭載マウスを用いて,比較的ローセンシでプレイする人だと,これまでもある程度の高さでマウスを操作してきただろうから,大きな問題にはならないようにも思われる。実際,MSIE 3.0を使い慣れた筆者は不満を感じなかった。リフトオフディスタンスの短いレーザーセンサー搭載マウスから移行すると,最初は戸惑うかもしれないが……。
マウスそのものの完成度は秀逸
一部制限と価格に納得できるならアリ
ただ,機能らしい機能がないにもかかわらず,2007年12月下旬時点で9000円前後という販売価格は,人を選ぶものになっているといわざるを得ない。また,実際に特定のタイトルで互換性の問題が発生していることを見るに,せめて単機能のキーバインド設定くらいは“保険”として用意しておくべきではなかったかと思う。FPSをプレイするうえでサイドボタンを頻繁に利用する筆者としては,この点,大きく減点する必要を感じた。
以上を勘案し,「自分専用のフルオーダーメイドマウス」を100点としたときの点数を与えると,Ikari Opticalのスコアは85点となる。価格や機能面を度外視して,純粋にハードウェアの完成度だけで採点すれば,歴代最高点を与えられるレベルの品質だ。純粋に性能の高いマウスを求めているのであれば,Ikari Opticalはその期待に応えてくれるだろう。
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