連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第214回「ギャルゲー先生」
先に言っておく。そもそも今週は大漁なのよ。先週木曜日(1月24日)に,「神様と運命革命のパラドクス」「限界凸騎 モンスターモンピース」「デモンゲイズ」の3タイトルを購入したんだもん。いくらでもここに書けることはありそうなもんでしょ。
……だけど,まさかそれがあんなに悲しく,心をかきむしられるような事件に発展するとは,その前日,23日の私には予想だにできなかった。
私はだいたい毎週水曜日に,翌日発売されるゲイムの情報を仕入れるのね。で,とりあえず発売されるゲイムの公式サイトをチェックしてみて,引っかかるものがあれば,購入の意志を固めるの。で,買う気満々でゲイムショップに行って,そこにチン列されている新作ゲイムの数々を見て最終ケツ断するのね。
だから,当初は予定していなかったんだけど,ゲイムのパッケージを見て,ついつい買ってしまうという,いわゆるパケ買いも珍しいことではないの。ま,先週買った3タイトルは,パケ買いじゃなくて事前情報買いなんだけどね。
ちなみに,なぜ上記3タイトルを買うに至ったのか,それぞれの決め手を書いておくと……
■「神様と運命革命のパラドクス」
ヤり込みプレイで有名な日本一ソフトウェアの新しいタイトルで,だいぶ前から注目してはいたんだけども,やはりというかなんというか,事前に調べれば調べるほど「どうやら本気だぞ日本一さんは」という雰囲気が伝わってきたので順当に購入をケッ定。
■「限界凸騎 モンスターモンピース」
実は,これは迷ったのよ。最近はPlayStation Vitaがお留守になりがちだったの。そこで,PS Vitaで遊べるカードゲイムってだけでプレイしてみようかなと思って。要は,個人的にPS Vita強化週間を作ってみようかなって,そういう感じね。
ただ,このゲイムが標榜している「限界突破の萌えカードバトル」の「萌え」の部分が,私にとってはネックだった。だって,私は萌えの要素を必要としない人間なのよ。だってゲイだもん。そして案の定,この「萌え」が後に語る悲しい事件の一因にもなったりするんだけど。
でも,買うや買わんや悩んでいる狭間のタイミングで,このタイトルを高く評価している情報を目撃したのね。これが購入を後押ししたのかもしれない。……いや,他人のせいにするのはやめとくわ。
ともかく,その時の私は,“萌え”部分は無視してしまおうというケツ論に達したのね。だから購入したの。いや,後悔してるんじゃないのよ? あ,やっぱり後悔してなくもないんだけど,まだプレイはできていないから,内容に不満があるってわけじゃないの。そのあたりの事情も後ほど。
■「デモンゲイズ」
先に言っておくけど,今週,きっちり紹介するタイトルはコレ。何はさておき,ネーミングがいいわよね。直訳すると「悪魔のゲイ達」。
たぶん違うんだけど(編注:もちろん違います。あとWii Uの代金をそろそろですね……),私にはもう,そういったゲイムとして刷り込まれたわよ。ヒヨコが生まれて一番最初に見たものを親だと思い込むという,あの刷り込み効果ね。私にとってこのゲイムは,悪魔のゲイ達がノンケを食っていくゲイム。もしくは悪魔界にはゲイがたくさんいて,その恋愛模様をリアルに描いたシミュレーションゲイム。と,まあ,秀逸なネーミングによって私の中の妄想が高まった時点でデモンゲイズ購入決定。
ちなみに私のPCで「デモンゲイズ」を変換してみたら「出門ゲイ図」。そうそう,私が持っていたのはこういうイメージ。
そもそもこれ,3DダンジョンRPGだったわ。イメージと違った時点で,本来ならばブチギレ金剛と化しそうなもんだけども,実際にプレイしてみて面白ければ許せてしまうのが,ゲイマーとしての悲しい性ね……。ゲイムとして面白ければなんでもOK。とくに,このゲイムは3DダンジョンRPGとしてのツボをちゃんと押さえているから,本当に面白い。
例えば,移動のストレスが無い点。3DダンジョンRPGって,スピード感が大切だと私は思っているのね。我々プレイヤーは,キャラクターが現在,3Dダンジョンのどのあたりにいるか? っていうのを脳内でイメージしているわけ。で,そのイメージと実際に画面が動いていくスピードが,一致すればするほど気持ちがイイ。逆に頭ではもう次に進んでるのに,画面がまだ進み切ってなかったりすると,それはプレイヤーにとってのストレスになってしまうのね。
私は3DダンジョンRPGの面白さの大半は,この無意識下での画面移動の疾走感だと思っているの。もちろん,違う楽しさを見出している人もいるんだろうけど,少なくとも移動スピードにストレスを感じるようだと,そのゲイムではあまり長く遊んでいられない気がするわ。
だって,移動がナンボのゲイムジャンルだから。会話が合わない人と仲良くしづらいのと一緒。やっぱり気を使わない人のほうが末永く仲良くできるでしょ? そういう意味で,この作品の疾走感はとても秀逸だと思える。
それに加えて,いい感じに淡々としているのもいい。例えば,戦闘で全滅したら,すぐタイトル画面に戻されるの。何もなかったかのように。「ゲイムオーバー」的な演出一切なしで。これがね,いい感じの虚無感と緊張感を生みだしてるのよ。
このゲイムにおいて,全滅なんてプレイしていたらけっこう頻繁に起こるの。だから,ゲイムオーバーの演出が無いことで,「あーあ終わったよ」ってプレイを止めてしまうことになりにくいし,「もう一回やろう」って気持ちへと切り替えやすい。トライを繰り返す作りだから,プレイヤーの気持ちもまた,切り替えやすい作りにしたんでしょうね。実際,私もまんまとプレイを続けているわ。
さらに,ダンジョンに潜るたびに成長が感じられるの。努力が正当に報われて,それを実感できるという,ゲイムならではの面白さが,この作品には詰め込まれているわ。
これまで3DダンジョンRPGをプレイしたことがないという人も,このゲイムを入り口にしたらいいんじゃないかしら。ただ,見た目がギャルゲイチックだから,そこでとっつきにくさを感じる人もいると思うんだけどね。そして,そんな見た目のせいで悲しい事件が起こるんだけどね……。
1月24日。毎週,多くのゲイムが発売される木曜日。
私はいつものようにゲイムショップに足を運んだ。お目当てのタイトルがある時は,入店してすぐにレジを目指すのだが,その日は迷っていた。
神様と運命革命のパラドクスとデモンゲイズを買うことは決めていた。しかし,限界凸騎 モンスターモンピースを買うかどうか,その点で悩んでいたのだ。ヤりたいゲイムはヤる。それが私のモットー。いつもだったら買っている。
でも,今週はほかに2タイトルもある。買ったところでプレイする時間はあるのか。プレイしないのに買うなんて,ゲイムに対して失礼だ。そしてそもそも,私はそこまでブルジョワではない。しかし。最終的に私はケツ断した。買おう。
たとえプレイしなくても,ここで私がゲイムに対価を支払うことでゲイムメイカーに利益が生まれ,それが次回作を生み出す原資になるだろう。さらに大げさに言えば,経済危機が叫ばれる現在だからこそ,私が消費することで経済が動く。経済はある種7並べのようなものだ。誰かが不安のために流れを止めると,その後の流れも悪くなる。無計画に出していくのも良くはないが,不必要に貯め込むことも停滞を招きかねない。
そして,経済に起因する社会の閉塞感は,治安悪化につながりかねない。お金のために起こる犯罪も増えてくるだろう。また,世界の歴史を見ても,長引く不況は戦争の引き金になり得る。それは避けねばならない。
ならば私は,世界情勢の安定のために,消費しなければ。世界平和のために,限界凸騎 モンスターモンピースを買わねばならないのだ。そんな大きな使命を背負い,レジに向かう。事件はここで起きた。胸を張ってレジに向かった行く途中,店員同士のひそひそ声が私の耳に届く。
「ギャルゲー先生来たよ」
……あれ?
えっと,……誰?
ギャルゲー先生って誰? わし? わしのこと? ちょっと待って,確かにあるよ? 常連のお客さんに対してあだ名をつけることは。私もゲイムショップでバイトしてたことがあるから,よく来る人の顔は覚えていた。その人がどんなゲイムを好んで買うかも,だいたい把握していた。だから,そこからあだ名を付けちゃうのは,ある程度は仕方ないことだと諦めてはいるよ?
でも! でも! 何,ギャルゲー先生って。わし,そんなにギャルゲイ買ってねーぞ? それっぽいゲイムなんて,最近だと「特殊報道部」とか「WHITE ALBUM2 幸せの向こう側」とか「グラス ハート プリンセス」とかしか買ってないし! そもそもグラス ハート プリンセスに至っては,むしろ男を落とすゲイムなわけでギャルゲイではないし!
でも確かにわしが手に持ってるのは,可愛い女の子が描かれたパッケージの神様と運命革命のパラドクスとデモンゲイズと,さらには限界突破の萌えカードバトル! こ,これは違うんだたまたまというか偶然3タイトルを同時にだな……うぎゃーーー!
そうか! あれか! 不良が犬を助けると「実はいい人」みたいに扱われるあれか! 確かに客観的に見たら,ガタイのいい髭面のおっさんがギャルゲイ買ってたらインパクトあるわな! でも違うんだ! わし,ゲイであってプロレスラーであって,別に積極的に萌えカードバトルに興じる趣味はないんだけども手に持ってるこれはぐはあ!
いやいや,偏見はもう気にならないんですよ私ぐらいになると。ただ,正しく偏見持ってもらえたらなーって。私が好きなのは男であって二次元の女の子では決してないのだが,わざわざそれを説明するのもアレだし,説明すればするほど逆効果な気もするし。しかもこういう日に限って,バイクの防寒対策で重ね着スウェット上下着てるようなビジュアルだし,たまたま営業用のプロレスのポスターをリュックに差していて子供がやるガンダムのモノマネみたいになっているし,あああ違うんだこれは違うんだ私はゲイなんだ男が好きなんだギャルゲー先生ではないんだそもそも先生ではないんだああああああ!
もうこうなったらやり過ごすしかない。下手に動いても誤解しか生まない。今日はこのまましのいでやる。そしてもうこの店ではギャルゲイは絶対に買わない。無意味に「超兄貴」とか買ってやる。覚えてやがれ! さあ会計だ,払ってやろうじゃないか3タイトル分耳をそろえてな! ……あれ? なんか…高い? 予想よりも高いよコレなんで?
……はうあ! こ,こ,こ,これは!
神様と運命革命のパラドクスと限界凸騎 モンスターモンピースが初回限定版! 当然のことのように! ま,待ってくれ別に私はゲイムさえできればいいんだ! 初回限定のサウンドCDが欲しいわけではないし,限定のスペシャルカードが欲しいわけでもないんだ!
「あのう,普通のでいいんですけど…」
つい口に出す私。え? という表情で私を見つめる店員。
「通常版はもうなくて,限定版しかないんですけど……やめときます?」
ぽっちゃりモビルスーツに問いただす店員。こいつ,分かってやがる。私がやめるわけがないことを。こういうとき,私は無駄にプロレスラーなのだ。挑発されて引けるはずがない。
「あ,じゃあ限定版でいいです」
より高く。より強く。できるだけクールに。私は言ってのけた。完璧だ。クールビューティー,氷の智将。2013年で一番のそっけない態度を引きだすことに成功。
しかし! 私は今後一生忘れないだろう。その後の店員の「限定版ですよね。限定版“が”いいんですよね」といったまなざしを。遠くのほうでこちらをうかがっていたほかの店員のニヤついた表情を。
前略おふくろ様
あなたは小さな頃から私に教えてくださいました。お金はなくてもいい,出世もしなくていい。でも,人を欺かない,人から尊敬されるような,そんな人間になりなさい,と。それが,人生において最も豊かなことなんだよ,と。
どうやら35になって私は,ようやく先生と呼ばれる人間になれたようです。
ギャルゲー先生,母校に……帰れるかバカヤロウ!
今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 3:「龍が如く5 夢、叶えし者」
PlayStation Vita:「デモンゲイズ」
PSP:「グラス ハート プリンセス」
Wii U:「ZombiU(ゾンビ U)」
Wii:「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」
ニンテンドー3DS:「ファンタジーライフ」
Xbox 360:「トロピコ4 日本語版」
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