連載
インディーズゲームの小部屋:Room#58「御伽噺食堂」
ストーリーの中心となるのは,舞台となる“安倍食堂”で働くフリーターの河口 亨,女子高生のアルバイト店員の大守 里子,安倍食堂に住み込みで働いている謎めいた美女,神楽とオーナーの安倍さんという4人のキャラクター。安倍さんにもきちんと下の名前があるのだが,オヤジのフルネームなどこの際どうでもいいだろう(いいですよね?)。それよりも,この4人の素性が重要だ。
プレイヤーが操作できるキャラクターは,亨,里子,神楽の3人。プレイヤーはこの3人のキャラクターを切り替えながら,それぞれの人物の視点を通じて物語を読み解いていく。
ゲームの進め方は,文章を読み進め,時折表示される選択肢の中から行動を選択し,ストーリーを進行させるというお馴染みのもの。もちろん,プレイヤーの選択によって物語の展開や結末が変化することは言うまでもないだろう。
本作では,それぞれの登場人物間に好感度が設定されており,相手のことをどう思っているかによって,そのキャラクターがどのように行動するかが変化する。ゲームの大まかな流れは,ストーリー前半が日常パート,後半が妖怪退治パートとなっており,操作キャラクターの切り替えは各話の区切りごとに行える。同じシーンでも,操作キャラクターを変更してやり直してみることで,そのときそのキャラクターが何を考えていたのかが分かるというのは面白い。
前半の日常パートで,うまく3人の好感度を高めて仲良しにすることで,より良いエンディングを迎えられるというのが本作の特徴で,ストーリーは大きく三つの流れに分岐していく。その中でさらに複数の結末が用意され,すべてのエンディングを見るとなるとかなりのリプレイ回数となり,やり応えは十分だ。
スクリーンショットだけではゲームの雰囲気が掴みにくいと思うので,今回は本作のプロモーションムービーを併せて紹介しよう。公式サイトで公開されているものと同内容のムービーだが,本稿で初めて本作を知ったという人は必見だ。
本作は,3人のキャラクターを切り替えながらストーリーを追うという,システム面での工夫もさることながら,和紙に描いたような独特の質感を持ったワイドスクリーンサイズのグラフィックスや,戦闘シーンでの凝った演出,同人音楽界で人気の高いt.Komine氏をゲストコンポーザーに迎えて制作された音楽など,なかなかに見どころ/聴きどころの多い作品だ。日常パートと比較すると,妖怪退治パートがやや短いのがちょっぴり残念だが,そろそろ秋めいてきた夜長に楽しめるノベルゲームを探している人にぜひオススメしたい。
Inverse Kinematicsの公式サイトでは,ストーリー序盤が遊べる体験版が公開されているので,興味を持った人はまずはそちらを試してみよう。
■Inverse Kinematics公式サイト
http://ik-web.sakura.ne.jp/- この記事のURL:
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