連載
インディーズゲームの小部屋:Room#173「NightSky」
いよいよホワイトデーが近づいてきましたが,皆さん準備は進んでますか? もちろん,筆者も準備万端です。なぜならば,誰にもお返しする必要がないから! むしろ準備したい……いや,したかった! それもこれも全部,男だらけの職場環境が悪いんだ! どうしてくれるんですか,編集長!
と,いつになく「!」マーク多め(4個)でお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第173回は,北米のインディーズゲームデベロッパ/パブリッシャNICALiSの「NightSky」を紹介する。本作は,ガラスのような,クリスタルのような球をゴロゴロ転がしてステージをクリアしていくというアクションパズルゲームだ。
ある日の午後,海岸で不思議な球を見つけた主人公。まるでそれ自体が生きているかのような存在感と輝きを放つその球を持ち帰った主人公は,その夜,夢の中で不思議な体験をする……。
本作で最も特徴的なのは,影絵のようなアートスタイルのグラフィックスだ。モノトーン調のグラフィックスのインディーズゲームといえば,2010年のヒット作となった「LIMBO」を思い出す人もいると思うが,LIMBOがグレーの濃淡を使った不気味な雰囲気だったのに対し,本作では輪郭がくっきりした“シュルレアリスム調”とでもいうべき雰囲気に仕上がっている。
ゲームの目的は,不思議な球を転がし,とにかく右へ右へと進んでステージをクリアしていくこと。ボスモンスターはおろか,敵キャラクターすら登場しない。ゴア表現が山盛りのLIMBOと異なり,残酷な描写が一切ないので,家族みんなで安心して楽しめる作品だ。ゲームの操作も簡単で,方向キーの左右で球を転がし,「A」キーでブレーキ,「S」キーで加速を行うというもの。AとSに割り当てられる機能はシーンによって若干変わることがあるが,概ねこのとおりに覚えておけば問題ない。
また,シーンによっては球を直接動かすのではなく,ハンマーで打ち出したり,ピンボールのフラップ(のようなもの)で弾き返したりと,ステージのギミックを動かして球を進めていかなければならない場面も存在し,これらをいくつか組み合わせた,ちょっとしたパズル要素もある。さらに,球を動力源にした何種類かの乗り物まで登場するなど,見た目はシンプルながら飽きさせない構成になっている。
そんな本作を盛り上げるもう一つの要素は,効果的に使われる環境音と,ジャズミュージシャンChris Schlarb氏による音楽だ。雨の音や風の音,ガラスの球が硬い床に当たったときのようなカチンという音が本作の効果音のすべてであり,時折思い出したように控えめに鳴り出すSchlarb氏の音楽が,本作ならではの幻想的な雰囲気を醸し出しているのだ。
本連載の第171回で紹介した「Minecraft」が大賞にあたるSeumas McNally Grand PrizeとAudience Awardの2冠を達成したThe 13th Annual Independent Games Festivalでは,惜しくも受賞を逃したものの,本作はExcellence in Audio部門のファイナリストにノミネートされている。GDC 2011で行われた同アワードの授賞式の模様については,「こちら」の記事を合わせてご参照いただきたい。
そんな本作は,公式サイトでデモ版が公開されているほか,製品版が10ドルにて発売中。製品版はSteamでも9.99ドルで販売されているので,興味を持った人はまずはデモ版からお試しあれ。ちなみに,本作の開発元であるNICALiSは,Wiiウェアとして発売予定の「CAVE STORY」(洞窟物語)と「La-Mulana」という,どちらも日本人が開発したインディーズゲームの北米での販売も担当している。
CAVE STORYはなぜか日本での発売が予定されていないものの,NIGOROが開発したLa-Mulanaは日本でも発売される予定なので,インディーズゲームファンとしては楽しみに待ちたいところだ。なお,GDC 2011では洞窟物語の開発者,天谷大輔氏による講演も行われた。4Gamerではその模様を「こちら」の記事でお伝えしているので,未読の人はそちらにも目を通しておこう。
■「NightSky」公式サイト
http://www.nicalis.com/games-2/nightsky/- この記事のURL:
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