連載
インディーズゲームの小部屋:Room#263「ファタモルガーナの館」
ちなみに筆者は昨年末,去年買った積みゲーを数えてみようとしたものの,数が多すぎてどれが去年のぶんか分からず断念したというほろ苦い経験を生かし,今年は買ったゲームを振り返らない方針でいきたいと思う。後ろ向き!
気づくと,“あなた”は古ぼけた屋敷の中にいた。ここがどこか,自分が誰なのかも思い出せないが,目の前にはあなたを旦那さまと呼ぶ1人の女中がいる。あなたに記憶がないことを聞かされた女中は,その屋敷で起きた数々の悲劇をあなたに見せる。それが,あなたが自分を取り戻すための手がかりになるかもしれない……。
本作は,文章を読み進めながら,途中に出てくる選択肢を選ぶことで物語の結末が変化するという,おなじみのノベルゲーム。どことなく不吉な陰のある女中はあなたに,時代と場所を変えて現れるこの屋敷で,過去に起こった4つの悲劇を見せる。ところで,女中といえば昨年末に開催されたコミックマーケット83で,Novectacleの中の人が素敵なメイド姿で接客していたので思わず胸がときめきました。
それはさておき,物語の鍵を握っているのは,どの時代の悲劇にも決まって現れる“白い髪の娘”。そして女中もまた,すべての時代,すべての場所で,その時々の屋敷の主に仕えている。ネタバレになってしまうので,あまり詳しくは書けないが,本作のテーマの1つは悪意と善意を持った,人間の二面性を描くことにある。どの登場人物にも,表と裏の顔があり,持ち上げておいて落とす系の展開が多いため,特定の人物に肩入れしていると,あとになってヒィーとなること間違いなし。とても心臓に悪い。
館の女中 |
白い髪の娘 |
ネリー |
メル |
ポーリーン |
貿易商の男 |
ヤコポ |
マリーア |
ミシェル |
しかし,女中が見せる4つの悲劇は,この物語における壮大な前フリに過ぎない。ストーリー中盤以降ではいよいよ,屋敷の謎,女中の謎,白い髪の娘の謎,そして自分自身の謎の核心に迫っていく。そこでどんな展開が待っているかは,ぜひ自分の目で確かめていただきたいが,二転,三転するストーリーでプレイヤーを翻弄しつつ,最後はここしかないという場所にぴたりと着地させてみせる手腕は見事。物語の結末を見届けたあかつきには,大きな感動とカタルシスが得られるだろう。
そんな本作は,公式サイトにて物語の一章と二章が丸ごと楽しめる体験版が配信されているほか,完成版が公式通販にて2000円で販売されている。また,2013年1月25日よりショップでの委託販売が開始される予定だ。詳しくは,Novectacleの公式サイトで確認してほしい。それでは,本年もよろしくお願いいたします!
■Novectacle公式サイト
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