連載
インディーズゲームの小部屋:Room#315「Continue?9876543210」
2013年12月に始まった新連載「ハロー!Steam 広場」を担当しているYamaChanと激しくネタの奪い合いをしながらお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第315回は,Jason Oda氏が開発した「Continue?9876543210」を紹介する。本作は,ゲーム内で死亡したキャラクターが,自らが消されてしまう前にわずかな希望を求めて,メモリー空間のあちこちを旅するというアドベンチャーゲームだ。なにがハロー! だ,コンニャロー! と思ったけど,このタイトル案を出したのは自分でした……。
ゲームを開始すると,どこかの遺跡の入口のような場所で,一人のキャラクターが力尽きようとしている。画面にはコンティニューするかを問うメッセージが表示されるが,無情にもカウントダウンは止まることなく,ついにゼロになってしまう。その時,キャラクターの胸に去来したのは,まだ死ねない,死にたくないという強い想いだった……。
本作でプレイヤーが演じるのは,この,今まさに死のうとしているゲーム内のキャラクターだ。まだ死にたくないと強く願ったとき,何か不思議な力が働き,主人公の肉体(?)は見たこともない場所に転送される。主人公は“ゲーム的には”すでに死亡しており,今やメモリー上に何かの拍子に留まっているだけの,はかない存在だ。このままではいつか,ガベージコレクタによって自分の存在は跡形もなく消されてしまう。だが,果たしてそれでいいのだろうか?
主人公が転送された先には,同じように取り残されてしまったほかのキャラクターが,何の希望も持たず,ただ静かに自分が消される番を待っている。しかし,そこで顔なじみのキャラクターと出会い,Celiaという名の女性(のキャラクター)が自分よりも前にこの場所に来ていたことを知った主人公は,わずかな希望を求め,彼女のあとを追うようにして,さらに先へと進んでいく。なるほど,つまり「消されるな,この想い。忘れるな,我が痛み」ってことですね。ちょっと違うような気もするけど。
ちなみに,ガベージコレクタとは,不要になった(=プログラムが使用しなくなった)メモリ領域を自動的に解放するためのモジュールのこと。本作においては,天変地異のごとく稲妻と共に発生し,周囲のオブジェクトを何もかも無にしてしまう。主人公が訪れることになるすべてのエリアは,2つもしくは4つのラウンドに分けられており,ガベージコレクタによる消去がラウンドごとに一定周期で襲ってくる。本作をうまく言葉で表現するのは難しいが,各エリアにおける目的は,そのエリアが消滅する前に出口を見つけ出して脱出することだ。
本作では,エリアを2つ進むごとに,シェルターと呼ばれる小さな町に到着する。ここは,その名のとおり,ガベージコレクタの恐怖から逃げ延びられる可能性がある唯一の場所だ。ただし,ガベージコレクタの猛威をやり過ごすためには,シェルターに十分な数の建物が避難場所として残されていなければならない。つまりプレイヤーは,各エリアで脱出ルートを探しつつ,シェルターに建物を建てていく必要があるというわけだ。では,具体的にどうするのか?
各エリアでは,そこの住人達と会話し,情報を集め,鍵を購入して建物の扉を開けていく。建物に入ると,そこで“LIGHTNING”と“PRAYER”という2つの選択肢を迫られる。この時にLIGHTNINGを選ぶと,出口をふさぐ障害物のどれかをランダムで破壊でき,PRAYERを選択するとシェルターに建物が出現するという寸法だ。
また,エリア内をうろついている四角い敵に触れるか,1つのラウンドが終了すると戦闘が発生する。戦闘時の画面は,「ゼルダの伝説」風のトップビューだったり,「リンクの冒険」風のサイドビューだったり,「スペースインベーダー」風のシューティングだったりと,バラエティに富んでいる。
ここでは,戦闘に勝利することで鍵を購入するためのお金を得たりできるが,体力をすべて失うとシェルターの建物が破壊されてしまうので要注意。なんだか,だいぶややこしいルールだが,この点に関しては何度もプレイを重ねて,失敗しながらコツを掴んでいくしかないだろう。
ゲームの目的も複雑だが,そこで語られているテーマをどう解釈するのかも難しい。開発者であるOda氏は,ニューメキシコの山中で生死の境をさまよったりした時の体験にインスパイアされて本作を開発したと語っており,本作をあえて曖昧な内容に仕上げたことがうかがえる。
生と死,人の記憶,そして愛とは何か? 本作には,そうした哲学的なテーマが見え隠れしているが,再びOda氏の言葉を借りれば,そこにはニルヴァーナが歌う歌詞のごとく,ただ1つの答えは存在しないということになる。本作を通じてプレイヤーが何を感じたか,おそらくそれが,その人にとっての正解なのだろう。そんな不可思議な体験を与えてくれる本作は,Steamにて9.99ドルで発売中だ。
■「Continue?9876543210」公式サイト
http://continue9876543210.com/- この記事のURL:
キーワード