レビュー
3000円で買えるDHARMAPOINT製キーボードは低価格市場の本命となるか
DHARMA GAMING KEYBOARD(DRKB109)
予想実売価格2780円前後で,本日7月23日の販売開始予定となっている本製品は,果たして低価格市場の大本命といえるものなのかどうか,細かく見ていくことにしたい。
シンプルな109キー配列は
話題作「GMKB109」をベースにしたもの
サイズは実測で450(W)×160(D)×18〜35(H)mm(※高さはキートップ含まず)。フルキーボードとしてはまずまず標準的な大きさだが,ゲーマー向けキーボードというと,パームレストや特殊キーの付いた大柄なものが多いので,それらと比べるとコンパクトな部類に入る。
キーは,列によって傾斜角を変えたステップスカルプチャー仕様ではなく,一段ずつ階段状に並ぶ仕様となっている。ステップスカルプチャーに慣れた筆者には少々違和感があったが,こちらのほうに慣れている人も少なくないだろうから,これは好み次第といったところか。
本体底面にはチルトスタンドが用意されており,奥側の高さを50mmにまで嵩上げ(かさあげ)可能となっており,キツめの傾斜を好む人にも対応できる。
意識してキーを奥方向へ強く押し込んでもとくに滑らなかった程度にはしっかり固定されるので,問題ないといえばないのだが,気になる場合は,別途滑り止めを用意するなどの追加対策が必要になるかもしれない。
なお,価格から想像は付くと思うので簡単な紹介に留めるが,端的に述べて高級感は期待できない。キートップと本体は粗目の滑り止め加工がなされてはいるものの,“プラスチック感”は剥き出しで,質感はよくある安価なキーボードと同程度と思っておいたほうがいいだろう。
GMKB109BKの詳細はレビュー記事に詳しいが,当時としては画期的な「エリア限定ながら,そのエリア内のキーについては複数キー同時押し対応」を実現しつつ,実勢価格で3000円を下回るというコストパフォーマンスの高さから,エントリー向けのゲーム用キーボードとして人気を集めた製品だった。
あれから2年半。外観上の違いはDHARMAPOINTロゴの有無と,かな印字の有無を含めた全体の書体のみという仕様で登場した今回のDMKB109が,「惜しまれつつ販売終了となったGMKB109BKの原型を流用しながら,“DHARMAPOINTチューン”を経て登場した製品」という理解で,おそらく間違いあるまい。
「同時押し対応エリアが変わっただけ」に非ず!
最大の強化ポイントはキースイッチのレスポンス強化
下に示したのは,DRKB109とGMKB109BKの同時押し対応エリアにそれぞれ半透明で赤色を重ねたものだが,ご覧のとおり,DRKB109では,カーソルキーのサポートが省略され,[W/A/S/D]キーを中心としたエリアに集中しているのだ。
数の上ではGMKB109BKの21キーからDRKB109で20キーへと1キー減ったが,[T][G][B]キーのサポートが追加されたことで,[E/S/D/F]派もショートカットキーを含めて同時押し対応の恩恵を受けられるようになったのは大きい。また,[W/A/S/D]派からすると,右方向のショートカットキーが3個増えるのは,地味ながら歓迎したいポイントといえる。
この「同時押し対応エリア」内で同時に押して認識されるキーの数は,DHARMAPOINTいわく「4以上。USB接続時は最大6」。これが公式のスペックだ。
USB接続時に[Ctrl][Alt][Shift]といった修飾キーを除いて6キーというのはUSB 1.1の仕様からして納得できるところだが,ポイントは,PS/2接続時の数値が公表されていないこと。最近のゲーマー向けキーボードでは,同時押し対応数を「ロールオーバー」というコトバを使うなどして,高らかに謳うケースが目立つのだが,DHARMAPOINTは,DRKB109で,そういった表現を意識して慎重に避けている節があり,実際のところはどうなのかが気になるところだ。
もっとも,実際のゲームプレイにおいて使うキーの数は,たいてい4程度。いわゆる音ゲーでもせいぜい5〜8キーがいいところなので,4キー以上の対応なら,エントリーモデルとしては十分といったところだろう。
いずれにせよ,DHARMAPOINTの公称値はまったくもって正しいといったところ。4キーしか同時入力されないケースは非常にまれで,少なくとも筆者がFPSをプレイした限り,キーが入らなくて困るということはなかったが,こればかりは運次第ということになりそうである。
なお,「同時押し対応エリア」外のキーを含めた場合,同時に入力されるキーの数は最大5。認識されないというケースもあったので,これは付記しておきたい。
ただ,個人的には,もう一つの違いのほうこそが,DRKB109をDHARMAPOINTブランドのキーボードたらしめていると思われてならない。それは何かというと,スイッチである。
コインを載せて押下圧を計ってみると,最も軽かった[Enter]キーでは約30gで沈み込みが始まる。そのほかも40g程度のコインを載せると沈み始めるという案配だ。キーによってややバラツキこそあるものの,標準的なメンブレンスイッチ採用キーボード(やGMKB109BK)でキーが沈み始めるのに50g程度の重さを必要とするのに比べると,DRKB109のキーは,かなり軽く設定されている。
そう,軽いキーに浅いキースイッチという,今日(こんにち)的なゲーマー向けキーボードにおけるトレンドに沿ったチューニングがなされているのだ。断言するが,GMKB109BKというか,安価かつ一般的なメンブレンタイプのキーボードとは,打鍵感がまったく異なる。
キーの耐久性は公称500万回。SideWinder X4だと2000万回なので,このあたりでコストダウンが図られている気配だが,メンブレンスイッチ採用キーボードとして,耐久性を重視した製品であることは確かなようだ。
SideWinder X4には一歩譲る性能
GMKB109BKからは使い勝手の確実な向上が見られる
今回は,筆者が最もプレイし慣れている「Enemy Territory: Quake Wars」(以下,ETQW)と「Left 4 Dead」の2タイトルで3製品を比較したが,すぐに分かるのは,2008年の話題作と比べて,DRKB109が確実に進化していること。GMKB109BKだと,操作の軽快さを感じるのはまず無理だが,その点でDRKB109は間違いなく改善が見られ,プレイしやすくなっている。
また,「同時押し対応エリア」変更の効果も明らか。ETQWで筆者は[G]キーに「ビークルに乗り込む」機能を割り当てているのだが,GMKB109BKや,一般的なPC用キーボードでは,走ってビークルに乗り込むキー操作,例えば[Shift]+[W]+[G]といった組み合わせが同時押し制限に引っかかってしまい,「急いで乗り込む必要があるときに限って乗り込めない」という思いをすることが多かったが,DRKB109ではそういったトラブルがない。これは大きい。
同時押しといえば,PS/2接続時とUSB接続時とで条件が異なるが,少なくともFPSにおいて5キー以上を同時に押すことはまずないこともあって,両者の違いは感じられなかった。音ゲーでの8キー同時押しを想定してPS/2接続とか,抜き差しのしやすさを考えてUSB接続とか,使い方次第で選択しても不満はないだろう。
最後に,比較とは別に気になったことを書いておくと,一般的な109キー配列を採用するDRKB109は左[Windows]キーがゲーム用としては大きく,[Windows]キーの入力を受け付けてしまうゲームをプレイするにあたってはかなりやっかいだ。
自己責任でキートップを抜いて,テープか何かでスイッチを覆ってしまえば解決するものの,見栄えは悪くなる。また,上位モデルと同じような[Windows]キーを無効化するような機能をDHARMAPOINTに求めれば価格に跳ね返るわけで,なかなか難しいところだが……。
2000円台の市場で新たな定番となるのは間違いない
SideWinder X4との共存でゲーマーは幸せに
間違いなくDRKB109よりも完成度が高いSideWinder X4が5000円前後から購入できることを考えると,悩ましいと思う人はいるかもしれない。もちろん,反応速度の違いは歴然としてあるので,純粋に性能だけでどちらを選ぶかといえば,迷わずSideWinder X4ということになるはずだ。
だが,DRKB109には,価格,より一般的な19mmキーピッチ,余計な機能を持たないシンプルさという,十分な魅力がある。両製品にはぜひこのまま,(より優れた製品が登場するまで)低価格ラインナップの2巨頭として共存してほしいと思う。
本当にいい時代になった。
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