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印刷2010/05/22 09:58

プレイレポート

これは現実か,それとも悪夢か。ベストセラー作家の葛藤と苦悩を描いたサイコスリラーADV「Alan Wake」

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 マイクロソフトは5月27日に,Xbox 360用アクションアドベンチャー「Alan Wake」を発売する。本作は,スランプ気味のベストセラー作家,アラン・ウェイクを主人公としたサイコスリラー作品だ。静養のため,妻と一緒に郊外の街“ブライトフォールズ”へと移ることになったアラン。しかし,彼を待ち受けていたのは,妻の失踪と,闇に取り付かれた人々からの襲撃という,恐怖に満ちた体験だった。
 開発は,クライムアクション「Max Payne」「Max Payne 2」等で高い評価を受けたRemedy Entertainment。「こちら」のインタビューでも語られているように,本作は彼らが5年もの歳月を費やして開発した,渾身の一作だ。本稿では発売に先駆け,一足先にAlan WakeのマスターROMをプレイした感想と,本作の概要をお伝えしていく。購入を考えている読者はぜひご一読いただきたい。なお本稿は,“ノーマルノード”でプレイし,エピソード3まで進めた状態で執筆している。

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【ストーリー】
 ベストセラーサスペンス作家、「アラン ウェイク」 は、長いスランプから逃れるために訪れた小さな町で、妻、アリスの謎の失踪に見舞われる。彼女の行方を追うアランは、いつしか悪夢の世界へと足を踏み入れていた。
 一見のどかな町、ワシントン州ブライトフォールズ。夢と現実が交錯する世界で、アランは、「光」 を武器に闇に立ち向かっていく。複雑に入り組む登場人物、さらに深まっていくブライトフォールズを巡る謎。幾重にも織りなす恐怖に満ちた物語が展開し、驚愕の真実が明らかになる。



ゲームデザインは王道のアクションアドベンチャーだが

“光”を駆使した独特な戦闘システムは必見


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 本作をプレイしてまず感心させられたのは,丁寧に描かれた登場人物達と,ゲーム世界のリアリティだ。本作はスランプ気味の作家を主人公にしている作品だが,人生に疲れ果てたようなアランの表情や心理状態が,非常にうまく描かれている。妻アリスの失踪や,自分で書いた覚えのない“自分自身の原稿”の発見,そしてその原稿に書かれた出来事が,現実に起こるという奇妙な現象など,ゲーム序盤から数多くの問題が発生し,物語への没入感を高める。どこか陰鬱で寂しげな田舎町,ブライトフォールズの情緒感とも相まって,ゲーム序盤から,プレイヤーの不安感はかなり高まるはずだ。
 ちなみにゲーム中には,アランの独白が所々で挿入され,彼の心情を垣間見ることができる。これらのセリフの中には,さりげなくゲームのヒントが含まれていることもあり,単なる雰囲気作りで終わらず,説明的過ぎず,プレイアビリティの向上に結びついている。ここは,感情移入によってゲームの魅力が増すアドベンチャーゲームにおいて,かなり重要な要素といえるだろう。

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 本作のシステム的な特長としては,ストーリーが“昼パート”と“夜パート”の二つに分かれている点が挙げられる。昼パートでは主に,移動や会話によって“情報収集”を進めることが目的となる。本作独特の不気味さや,どこか不安げな感覚はいたるところで味わえるものの,“敵”が出現しないため,基本的に安心して探索に専念できる。

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 一方の夜パートでは,“敵”が大量に出現し,ホラー要素が極めて強くなる。画面写真を見てもらえば分かるように,本作のグラフィックスは,昼パートでもうっすら靄がかったように描かれており,不気味な雰囲気を演出しているのだが,日が落ちた夜パートでは,敵が出現することも相まって,それが一気に加速する。同じ風景でも,夜パートだとこうも雰囲気が変わるものか……と,プレイ中何度も心細くなったものだ。

 夜パートでは,先述したように敵……“闇の存在”が出現する。彼らは闇に紛れ,どこからともなく出現し,アランに襲いかかってくるので,一瞬たりとも油断ができない。
 ちなみに,闇の存在が出現した際には“アクティブカメラ”によって視点が切り替わり,闇の存在がアランに襲いかかる場面を,絶妙のアングルで伝えてくれる。実際にプレイしてみないと伝わりづらいかもしれないが,心拍数が高くなること請け合いの演出であることは保証しよう。

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 Alan Wakeの戦闘システムは,基本的にTPS(サードパーソンシューティング)のそれで,一般的なTPSをプレイしたことがある人なら,すんなりとプレイできるはず。
 ただ,本作の敵は“闇のバリア”をまとっているため,通常の武器(銃)だけでは倒せないということを覚えておいてほしい。
 敵にダメージを与えるには,まず,対象に懐中電灯の光を一定時間当てて,闇のバリアをはがす必要があるのだ。懐中電灯は照準の役割も備えているので,バリアをはがしつつ狙いを定めるというのが基本的な戦い方になるだろう。

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 ちなみに,懐中電灯で照らすと,敵は一瞬目を覆ってひるむため,その間に逃げるという選択肢もある。本作では,(とくに序盤では)弾丸がそれほど多く手に入るわけではないので,ときには弾丸節約のため,逃げることも必要になってくるのだ。弾薬だけでなく,「こちら」の記事でもお伝えしたように,懐中電灯の連続使用可能時間も意外と短く,エピソードが進むにつれて,より的確な判断が要求されるようになる。
 そう,逃げるといえば“避け”ボタン(LB)も,本作の特徴的な要素だ。避けは,文字どおり敵の攻撃を避けることを目的とした操作。敵の攻撃にうまくタイミングをあわせて避けボタンを押すと,いわゆるバレットタイムのようなスローモーション演出が発動し,華麗に(間一髪で)回避が成功する。


非力な主人公だからこそリアルに感じる? 


 冒頭でも記述しているが,本作の主人公 アランは作家だ。バカでかい剣を振り回すわけではないし,超人的なジャンプ力を有しているわけでもない。こと戦闘能力に関しては,あくまで一般人レベルである。
 しかし本作の敵である“闇の存在”は,そんなことなどお構いなしに襲ってくる。序盤こそ数も少ないが,ストーリーが進んでいくと,同時に3体,4体と,その数を増してくる。さらに“闇の存在”は,移動速度がかなり速く,普通に走っているだけでは追いつかれてしまうのだ。しかもアランの体力は少なく,敵の攻撃を数発食らうだけで死んでしまう。

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 そこで役に立つのが,先ほど紹介した避けボタンというわけだ。というよりは,避けボタンを使用しないで敵の攻撃をかいくぐれるのは,“光”のある街灯の下や家の中くらいのものだ。街灯は,アランの体力の回復スピードを速めてもくれ,非常にありがたいのだが,これらの安全地帯はどこにでもあるわけではないので,必然的に避けボタンの使用は必須となってくる。
 もちろん,ストーリーを進めていくにつれ,ショットガンやライフルといった強力な武器は登場するものの,これらは弾数が少ないため,乱発するとすぐに弾切れをおこしてしまう。このことからも分かるように,本作は撃ちまくり系のアクションではなく,少ない弾丸をやりくりしつつ,いかに先に進んでいくかということが重要な作品なのだ。

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 また,実際にエピソード3までプレイした印象として,本作は一般的なアクションアドベンチャーと比べて,いわゆる“謎解き”要素が少ないほうだと感じた(まったくないわけではない)。それはつまり,唐突に“ゲームゲームしたギミック”のクリアを要求され,感情移入が妨げられてしまう機会が少ないということでもあり,世界観やストーリーにどっぷり浸りつつ,緊迫感溢れる戦闘が楽しめるというわけだ。

 細かい部分では,岩や壁に書かれたメッセージを探し出すのも面白い。メッセージ内容はさまざまだが,目的地への手がかり,アイテムの隠し場所,謎解きのヒントなど,プレイヤーにとって有益なものも多いので,普段から注意深く周囲を照らしていれば,ゲームに行き詰まるケースも減るだろう。

 さらに,ステージの各所で手に入る“原稿”には,街や森で起こった不穏な事件,そしてこれから起こる出来事が書かれている。取り忘れたからといって,ゲーム進行に悪影響があるわけではなさそうだが,本作の背景設定などが見て取れるため,ゲームを隅々まで楽しむためにも,可能な限り集めておきたいところだ。

 従来のTPSスタイルを踏襲しつつも,練り込まれた世界観やユニークなシステム,光と闇のコントラストが効いたゲーム展開が楽しめる「Alan Wake」。撃ちまくり系ホラーADVではないため,若干地味な印象を受けるかもしれないが,プレイから得られるドキドキ感はかなりのものだ。興味がわいたという人は,発売日である5月27日を楽しみに待っていよう。

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